自分の提案が最新の自動車やスマートフォンに搭載されて市場へ

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狭間は、オーエスエレクトロニクス東京営業所に所属。車載製品やスマートフォンなどの家電製品を開発、製造する東北、関東エリアの顧客に対し、半導体や電子部品を提案するのが主な業務です。カスタム製品においては、部品が採用された後も試作や改良を重ね、完成した顧客の製品が市場に出ていくのを見守っています。

たとえば、自動車の場合、商談成立から完成品が販売されるまで、実に4年や5年を要することも少なくありません。狭間が担当するのは15社ほどで、製品化に至る期間もさまざま。年単位のプロジェクトが多く、そこにやりがいを感じています。 

狭間「本当にスパンの長い仕事です。お客様に部品を紹介しても即決されることはありません。だからこそ、回答を長く待ったときほど『御社の提案部品を採用します』という言葉をいただけると嬉しくなりますね。

さらに数年後、完成した製品がマーケットに出ていくときも感動します。こうしてふたつの喜びに出合え、規模の大きい案件にチャレンジできるという、飽きない仕事です」 

オーエスエレクトロニクスは半導体や電子部品を扱う技術商社で、あらゆるメーカーの部品を扱うため日々の勉強は必須ですが、苦ではないと話す狭間。営業担当は一人ひとりが3カ年計画を立案し、各年の売上を達成することが重要なミッションです。さらに、それぞれの数字を合算した金額がチームの目標になっています。 

もともと人と接することが好きだった狭間は、「企業の“顔”として最前線で活躍できるのが魅力」と、社会に出てからは営業ひと筋。2002年にオーエスエレクトロニクスに入社するまでは、新卒で不動産業界に身を置き、ハウスメーカーにてマンションを販売していました。 

狭間「オーエスエレクトロニクスに転職したのは2002年のこと。父が半導体メーカーに勤務していたので縁を感じ、面接を受けることにしました。面接官や先輩の話を聞く中、自身の成長を感じられて、働く意味を見いだせる企業だとわかり、迷わず入社を決めたんです。 

自分の提案した部品が人気のスマートフォンや最新の家電製品に組み込まれ、マーケットに出ていくという点が働く上での醍醐味になると考えました」

小型化とコスト減をコンセプトに提案。6度の試作品提出を果たす

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▲本人(右)、隣はデバイス販売推進部 的野さん

狭間は現在、大手電機メーカーのプロジェクトに注力しています。2015年からは新規ベンダーとして参入するためのアプローチも始め、2021年になってようやく認可された7年越しの案件です。

このメーカーは年間売上が数千億円規模で、すでに多くの会社が出入りし、積極的に新たな取引相手を増やす雰囲気ではありませんでした。しかも新規ベンダーの場合、ベンダー認定審査や部品工場の監査が実施されるなどハードルが高く、初めから参入を見合わせる企業も少なくありません。

狭間「営業活動の中で、お客様がOA機器も製造していることを知りました。そこで『ACアダプタの需要があるはず』と見込み、私が窓口になって、技術面は社内エンジニアの的野(まとの)さんに任せてふたりで新規参入を目指したんです。『やるしかない!絶対にやり遂げる!』と覚悟を決めましたね」

チャレンジが始まった当初、現行の機器では日系メーカーのアダプタが採用されていました。一方、狭間が提案したのは、約2/3へ小型化と低コストをコンセプトにした海外製。現地の部品メーカーは実績も知名度も申し分ないのですが、それでも顧客には簡単に認められなかったのです。

狭間「メールと対面、Webでやり取りし、試作品のテストと改良を6回繰り返しました。毎回仕様変更が入り、かつ、短納期でサンプルを提出する必要あったため、顧客とのスケジュールを調整に苦労しました」

徐々に顧客の信頼を得て、初めて“検討の土俵”に立てたのが2018年。そして翌2019年、次期製品機器に用いるアダプタのコンペが開かれ、狭間と的野の提案が選ばれました。このとき、狭間が意識していたのは顧客が望むスピード感。アダプタはカスタム製品であることから、開発に必要な情報をタイムリーに顧客から引き出し、いち早く海外仕入先に伝えるという3者間の関係づくりを大切にしたのです。

狭間「やはりコミュニケーションは非常に重要です。コミュニケーションが円滑にできれば、お客様から重要な情報を優先的に聞き出せますし、私たちの話に耳を傾けてくれます。そのためにも、先方に有益な話題を提供するなど工夫しました。仕事は人と人との間で成立するものだな、と改めて認識しましたね」

限界を作らない前向きな性格。現在もこれからも、相手への思いやりを持ち続けるだけ

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コンペで採用が決まってからが本当のスタートだったという狭間。スピード感を求める一方、言葉も文化も異なる海外メーカーに対し、顧客の意図をそのまま伝えても理解を得ることが難しいケースが数多くありました。的野と共に適切な表現を探して翻訳し、説明を重ねたといいます。

狭間「海外仕入先の担当者は日本語が堪能ですが、細かいニュアンスまでは伝えきれません。定期的に進捗を確認するため大きな問題は生じないものの、思い違いからの軌道修正は多々ありました。

さらに、試作品に対しても、お客様からは毎回のように『合格ですが少しだけ改善できませんか』と、より高いレベルに仕上げるためのリクエストがあったために的野と懸案事項を洗い出し、ダブルチェックをしながら、よりレベルに高いアダプタに仕上げました」

タッグを組む的野とは同年齢で、プライベートでも交流があります。一人で課題を抱え込まないよう必ず一日の終わりに情報を共有し、有効な対策を練りました。また、互いの不在時には業務の垣根を越えてサポートするなど、助け合いながら案件を進められたと振り返ります。さらに狭間は仕事中、的野への思いやりも忘れませんでした。

狭間「相手を思いやる姿勢は、オーエスエレクトロニクスに入ってから培われたように思います。的野さんに対してだけでなく、他のメンバーや社外に対しても同様です。たとえば、何か質問されたとき、回答しないと相手は困ることになりますよね。ですから、即答できなくても、回答見込みの日時や途中経過を伝えるなど、その人がなるべく不安や疑問を持たないよう努めています。

私はこうした姿勢の積み重ねで信頼関係を構築してきたと自負しています。これはビジネスの基本だと思いますが、今後も続けていきます」

「自分に限界を作らない」という狭間はいつでも前向きです。企業間の調整役に徹する営業職も性格的に合っているといいます。「まずはチャレンジすることが大切。だめならだめで構わない」といい切れるからこそ、大きなプロジェクトを前にしても臆さずに挑めるのです。

自由度が高く、チャレンジを後押ししてくれる会社だから、幾度となく難題も克服。

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▲本人(左)、隣はデバイス販売推進部 的野さん

今回のプロジェクトを通して狭間は、仕事への自信をさらに深めました。20年近くオーエスエレクトロニクスで働く中でも印象に残るプロジェクトだったのです。

狭間「これまでの仕事の中で、一番嬉しい案件ですね。出会えて本当に良かった。仕事人生の中で一番楽しい時です。特別な経験でした」

より売上額の大きいプロジェクトも担当していますが、長い時間を費やして結果が出た分、感無量だと感じています。

狭間「少し気が早いのですが、もうすぐ次期モデルの開発もスタートします。次はアダプタだけでなく、液晶パネルやUSBコネクタなど複数のアイテムでも参入したいですね。すでに構想を練っています」

また、今後も自ら立てた3カ年計画に責任を持ち、営業として売上を達成していくのが目標です。数字を現計画の2倍にも3倍にも増やし「再びお客様とのスピード感の世界に浸りたい」といいます。さらに、顧客に紹介できる部品の知識を深めること、語学力を向上させることにも注力する心づもりです。

狭間「自分を高めるとともに、担当しているお客様のことをもっと知りたい。事業は数年もすれば方向転換します。だからこそ、常にニーズやキーマンを把握し、製品開発のサイクルをキャッチして、積極的に企画段階から商談を始めたいんです。

加えて、やはりお客様、部品の仕入れ先、社内メンバーとの関係性が鍵になるので、このつながりも強めていかなければなりません。こうして自身も組織も成長できれば嬉しいですね。自由度が高く、チャレンジしやすいオーエスエレクトロニクスの社風も後押ししてくれています」

最後に語るのは、やはり的野のこと。プロジェクトの規模が大きくなるほど営業だけでは対応しきれず、彼が所属するデバイス販売推進部との連携がさらに重要になると認識しています。

狭間「的野さんには非常に感謝しています。彼がいなかったらACアダプタの案件は存在しませんでした。改めて、オーエスエレクトロニクスという組織や仲間の大切さを感じました」

仕事で幸せを感じるのは、案件を受注できたときと、複数のプロジェクトを抱えているとき。もちろん提案がすべて採用されることはなく、時には手持ち案件の1割しか見込みがない場合もあります。この可能性を増やしていくことも、狭間が考える営業の大切な仕事。

「もう何でもできそうですね。怖いものはありません」と続ける狭間は、社内を巻き込みながら持続的なチャレンジを続けていきます。