パートナー戦略立案・実行を担当。サプライヤーとの信頼関係の構築がやりがいに
──Category Management部門での仕事について教えてください。
電気・電子部品のカテゴリーで、パートナー戦略立案・実行に携わっていました。どのサプライヤー様からどんなプロセスで部品を仕入れるかといった戦略を立て、実行するのが職務。取引のあるサプライヤー様は海外に拠点を置くメーカーが中心で、その日本法人とやりとりするケースがほとんどです。
私が担当していたのはある半導体のメーカー。新型コロナウイルス感染症の蔓延にともなう急激な経済活動の停止と再開による需給バランスの崩れ、SCの混乱などを受けて半導体不足が問題となった2022年は、タスクフォースの中心メンバーとして、中長期視点での在庫不足への対処も行いました。
また、通常の商流で必要な部品を入手できない場合に別ルートを検討したり、価格交渉して次の期の標準原価を決めたりといった業務もCategory Management部門が担います。
オリンパスの製品を構成する部品の多くは、社外から調達されています。そのため、調達できない部品がひとつでもあれば、製品を完成させることができないんです。加えて、在庫は資産であると同時に負債でもあるため、必要な部品が必要なタイミングで供給されなくてはなりません。ある部品は調達できたけれど、別の部品が調達できなかったとならないよう、全体を見渡しながら購入計画を立て交渉するのがCategory Management部門の仕事です。
──Category Management部門ではどんなところに仕事のやりがいや魅力を感じていましたか?
コロナ禍で供給不足が生じた際、部品供給が止まることで、事業損失だけでなく、ひっ迫している医療体制へ与える悪影響をなんとか防止すべく、その想いをサプライヤー様と共有し「医療製品の供給を止めるわけにはいけない」と、サプライヤー様と共にどうしたら実現できるかを考えました。
医療機器業界では外注先への部品に対する要求事項がきわめて高く、サプライヤー様に対して他業界では考えられないような水準で要求を出すことも多いのですが、信頼関係に基づいた強固なパートナーシップが構築できているのは、医療機器業界ならでは。
医療現場を止めないという、両者が同じゴールを向いて進んでいく。部品供給が止まることが、事業損失だけでなく、コロナでひっ迫している医療体制へ与える悪影響をなんとか防止すべく、その想いをサプライヤー様と共有し、供給懸念が起きないよう重責を担っています。そのような点で、オリンパスで調達の仕事に関われることに大きなやりがいを感じていました。
調達管理、生産現場を経て海外グループ会社へ出向。幅広いSC領域を経験
──入社後、どのような仕事を経験してきましたか?
調達管理部門に配属され、在庫量や購入計画を管理する業務を担当しました。ただ、調達管理の仕事では、部品を扱っているにもかかわらず、実際に現物を見る機会がほとんどありません。そのため、システムに登録されている番号を処理するだけで、それがどの製品のどの部分であるか、また部品の価格が適正なものかを判断できませんでした。
最初は図面を見たり、製品の概要を学んだりして製品の知識を身につけようとしていましたが、机上の勉強ではどうしても限界があると感じていました。そこで、製造現場への異動願いを提出。上司の勧めもあり、4年目に会津オリンパスへの出向が実現し、生産管理の仕事に携わることができました。
生産計画調整・工程移管・工場運営計画立案などの業務を通じて、部品が使用される箇所や製品化プロセスの全体像を理解することができました。 また、現物を見て実態を確認しながら生産計画を進めていくことの大切さを知れたことも有意義でした。たとえば、理論上は1日に10台の製品を組み立てられるようなケースでも、実際はその通りにいかないのが普通です。
また、現場で遭遇するアクシデントやトラブルを、システム上ですべて見抜くことはできません。現実的な計画の組み立て方を学べたのは、現場に出てオペレーターやラインリーダーの方とコミュニケーションを取ることができたからだと思っています。
──その後、海外グループ会社に出向されますが、どのような経緯で?
海外の製造プロセスも学ぶようにということで、7年目にOlympus Surgical Technologies America(以後、OSTA)に出向しました。入社当初、海外に関心があると伝えていたことを覚えていてくれた当時の上司の後押しを受けるかたちで実現した海外赴任です。
現地では、SCMや購買などさまざまな業務を経験しましたが、最大のミッションは製品製造移管。国内の製造プロセスを、アメリカの工場へと移すことが私に課された役割でした。
とはいえ、製造工程をただ複製するだけで終わりではありません。日本とアメリカの製造における文化的なギャップや、法規制の承認を得るための検査や試験など、新製品立ち上げのためのプロセスを新たに導入する必要がありました。
また、製造移管することで国内での製造量を減らすわけですが、アメリカと国内とでは製造や輸送のリードタイムが異なるため、単純に製造移管するだけだと、サプライヤー様への部品発注の負荷が一時的に高くなってしまいます。そのため、限られた時間の中、サプライヤー様に負荷をかけすぎないようなかたちで切り替える方法を模索しました。
それまであまり関わる機会がなかったヨーロッパのSCのチームと、安全在庫の考え方についてコミュニケーションを重ねるなど、SCのほとんどすべての工程を経験できたことは大きな収穫だったと思います。
どんなに強い主張があるとしても、低姿勢を保つ。ただし、決してブレない
──帰国後、Category Management部門への配属となりましたが、これはご自身の希望ですか?印象に残っている仕事とあわせて教えてください。
SCをひと通り見てきて、やはり調達の領域がもっともおもしろいと感じました。サプライヤー様から新しい技術や電子部品の紹介があったり、商社様を通じてそれまでに取引のないメーカー様を紹介されたりと、常に新しい情報に触れていられることが理由です。
また、当社のようなモノづくりの企業においては、部品がひとつ仕入れられないだけで大問題になります。プレッシャーが大きい反面、責任ある仕事ができるのも調達部門の醍醐味だと思っています。
調達の仕事で印象に残っているのは、アメリカで部品の供給不足の危機に直面したときのことです。現地のサプライヤー様から部品がまったく入らなくなったことを受けて、日本のサプライヤー様に声掛けしたことがありました。
通常、新製品を立ち上げるとなると、部品の供給までに半年から1年以上かかるのが普通。そんな中、5カ月で製造ラインを立ち上げるといってくださったんです。プロトタイプの性能や品質を評価・検証するプロセスを数週間で行うなど、オリンパスのためにかなりの工数を割いていただいたおかげで、事なきを得ました。
そのサプライヤー様の執行役員の方がとても気さくな方なんです。当社からの曖昧な要求事項を見て、「洋平さん、こんなんじゃつくれないよ」と言いながらも、こちらが意図するところをうまく汲み取ってくださり、スムーズに進行できたことはとても楽しい思い出です。 社外のパートナー様とそうやってフランクな関係性を築けるのも、調達部門らしいところだと思います。
──調達の仕事をする上で大切にしていることがあれば教えてください。
“押しは強く、腰は低く”という言葉を胸に仕事をしています。以前、どんなに強い主張があるとしても、前のめりに攻めるのではなく、決してブレることなく低姿勢を保てと上司から教えられたことがありました。
相手に対する言葉づかいや伝え方に気を配るのはもちろんですが、押しを強くするためには、自分の中に確固たるロジックがなくてはいけません。「これが正しい」と確信できるまで自分で考え抜いてから交渉に臨むようにしてきました。
仮にそのロジックが間違っていたとしても、腰を低く保てていれば、そうとわかったときに訂正させてもらえばいいだけ。今もそうありたいと願いながら仕事と向き合っています。
風通しの良さがオリンパスの魅力。グローバル化の浸透も実感
──オリンパスで働く魅力をどんなところに感じていますか?
年次に関係なく意見ができて、成長・活躍を後押ししてくれる環境があるところに魅力を感じています。できそうにないことでも、段階的に取り組ませてくれて、やりたいことができるように導いてくれるような、何気なくしかもしっかりとしたサポートをしてくれる上司が多かったと思います。
また、集中購買センター、会津オリンパス、OSTA、技術開発センターと、これまで4つの職場を経験してきましたが、出会った社員の中に壁をつくるような方はいませんでした。その気にさえなれば、世界中にいる社員とすぐにつながれる風通しの良さがオリンパスにはあると思います。
グローバル化が進んで、その傾向はより強まったと感じています。たとえば、アメリカやヨーロッパのメンバーに向けて、「A社さんについて知ってる人はいますか」と投げると、すぐに答えが返ってくるんです。「じゃあ10分ほど話ししよう」と言って気軽に通話やWeb会議が始められるなど、人脈が広がり、それまで見えなかったところに手が届くようになりました。
調達部門では、グローバルで協業していこうという考えが習慣化してきています。最適な供給を最適なタイミングでという基本原則は変わりませんが、グローバル化が各メンバーのレベルにまで浸透しつつあるのを感じます。
──今後の展望について教えてください。
2023年4月現在、新設されたばかりのGlobal Collaboration PMOにマネージャーとして所属し、各エリア同士の連携を強化していくための枠組みづくりを行っています。これまでのオリンパスは、各拠点ごとのルールや標準作業手順のもとで動き、なおかつ地域だけで完結するケースがほとんどでした。しかし、真のグローバルメドテックカンパニーをめざすに当たって、ベストなサプライヤー様とパートナーシップを結ぶ必要があります。
たとえば、アメリカで生産する製品にとって、現地のサプライヤー様がベストとは限らないため、アジアやヨーロッパなどとの連携が欠かせません。そのための仕組みを標準に落とし込み、グローバルでのスムーズな連携を実現し、グローバルナンバー1の調達部門、メドテックカンパニーにしていきたいですね。