プロジェクト推進者として、ベトナムでの医師育成支援に従事

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——2022年12月現在のお仕事の内容について教えてください。  

ガバメントアフェアーズは、日本政府の官公庁や業界団体の窓口としての機能を担っています。 関わる省庁、団体は多岐にわたり、厚生労働省や経済産業省、総務省、内閣官房など。業界団体では日本医療機器産業連合会(医機連)などに関わります。 その中で、私が担当しているのが官民連携による国際協力活動です。政府の補助や助成を得て、業務委託や請負といったかたちで、新興国での医師の育成支援、制度整備支援などを行っています。

現在は、ベトナムでの医師育成を支援するプロジェクトに携わっています。近年、ベトナムではがん患者が増えているにもかかわらず、がんを早期発見・治療できる内視鏡専門医数が日本に比べて少ないのが現状です。そこで、オリンパスは日本の教育NGOや医療従事者と協力して、ベトナムの内視鏡医の技術レベル向上を目指す研修を企画・実施しています。

また、日本の学会が制定した診療に関するガイドラインをベトナムへ導入することを目指す、制度整備支援も行っています。具体的な業務としては、プロジェクト推進者という立ち位置で官公庁の担当者や現地法人であるオリンパスベトナムの駐在員、現地スタッフ、講師役となる日本の医療従事者と連携しながら、ベトナムと日本で実施する研修の企画を担当しています。

現在は、上司を含めて5人の体制。プロジェクトごとに主担当者を決めて動いています。国内や海外のマーケティングを経験した人、海外に駐在した経験のある人など、それぞれ異なるバックグラウンドをもっています。輸出や貿易といった物流のことなど、わからないことを詳しい人に教えてもらうこともあれば、逆に私がこれまでの経験を活かして教えることも。うまく協力し合えるとても良いチームだと感じています。 

——仕事をする上で大切にしている姿勢、ポリシーはありますか? 

外部や他部署からの依頼事項にはできる限り迅速に、そして正しい情報を伝えるように心がけています。経産省など官公庁が相手の場合、伝えたことがそのまま省内の資料に使われたり、公的情報として公開されたりもします。そのため、誤りがないかなど、細かいところまで精査するようにしています。

また、その場にふさわしいコミュニケーションの取り方、表現をすることも大事にしている点です。これはある苦い経験から学んだことでした。国内営業をしていたころ、とある病院で看護師さんからの問い合わせに対して、自分なりに調べてから回答したことがあったんです。ところが、後になって先輩のほうにクレームが入ってしまって。伝えた内容に間違いはなかったのですが、それまでほとんどお付き合いがなかった方にお伝えする場面だったのもあって、お答えする際の表現、態度に問題があったのだと思います。

同じ内容だとしても、言い方が違うと伝わり方も違ってくるもの。それ以来、円滑なコミュニケーションのために、とりわけネガティブなことを伝えるときや重みのある仕事を依頼するときは、表現方法に注意するようにしています。 

国際貢献に携わりたいという想いが医療機器への興味につながり、オリンパスへ

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——学生時代や入社までの経緯について教えてください。  

学生時代の経験から、なんらかのかたちで国際協力・国際貢献したいと考えるようになり、その延長で医療機器に興味をもち、オリンパスに入社しました。 大学生のとき、スタディツアーに参加してフィリピンに1週間ほど滞在したことがあったんです。都市部だけでなく奥地も訪問して目にしたのが、極端な貧富の差でした。

まず驚いたのが、観光地には普通に生活する人に紛れて物乞いをする子どもたちがたくさんいたこと。山奥の農村では学校や現地のお宅を訪問させてもらったのですが、裕福な家庭もあれば、木造の小屋で肩を寄せ合うように暮らす家族などもいて、小さなコミュニティの中にも歴然とした経済格差があることにも衝撃を受けました。

また、大学4年生のときにイギリスへの留学を経験しています。国際関係や国際開発に関する授業を通してさまざまなことを学ぶことができたほか、『夏休みにNGOに参加してアフリカに行ってきた』と話すイギリス人学生が周りにいるなど、国際協力を身近に感じる機会にもなりました。 

——これまでの仕事内容について教えてください。   

国内営業として採用され、内視鏡や処置具などの医療機器を担当しました。基本的な医学情報や製品情報はもちろんですが、子会社である販売会社に出向するという経験もさせていただき、医療の現場について学ぶところが多かったと感じています。

当時、周りに営業職の女性がほとんどいませんでしたが、特別扱いすることなく教えられ、叱られ、飲みにも誘ってもらえました。上司や先輩に支えられたおかげで営業職もやり抜くことができたと思っています。 5年目に、広報部へ異動。メディア対応としてプレスリリースの作成と発行、質疑対応や記者会見などのイベント企画に携わるほか、社内報の作成なども担当しました。

当初、カメラや顕微鏡など、まったく知識がない製品もありましたが、実際にカメラを購入して撮影してみたり、部署内の詳しい人に教えてもらったりしながら仕事を覚えていきました。医療に関する知識があまりない記者に対し、当社の情報を正しくまたわかりやすく伝えるのに苦労しましたが、記事としてかたちに残る仕事には社会的な影響力もあり、とてもやりがいを感じていました。

ガバメントアフェアーズには、社内公募制度を利用して異動しました。ベトナムのプロジェクトに関わる前は、総務省から受託したインドでの事業に関わっていました。インドでも内視鏡医不足が課題となっています。それを解決する手段のひとつとして、内視鏡AI診断システムを使用したトレーニングを実施し、AIシステムの普及実証行いました。 営業時代に学んだ医療知識だけでなく、広報で培った伝える力、イベント対応力、社内調整力、報告書執筆力などが活かせていると感じます。

現地の課題解決に貢献できている実感。プロジェクト終了後も持続的な医師育成活動を

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——難しさを感じているところや、苦労している点はありますか? 

政府から委託された仕事では税金が使われているわけです。オリンパスが主導する自社の事業とは違って、制約が大きく動きづらさを感じることが少なくありません。

また、現地からいただくさまざまな要望を踏まえた上でプログラムをつくったり、イベントを開催したりしていますが、予算の関係や医師の先生のスケジュールの都合で、すべてに応えることができていないもどかしさもあります。

コロナ禍の影響でいうと、この2年ほどの研修イベントはすべてオンラインで実施しました。日本人医師が外国人医師に向けて行う座学の講義であれば問題ないのですが、ちょっとした手技のコツなどが伝わりにくいため、内視鏡の実技研修をオンラインで実施するのは難しいと感じています。今後は、対面によるハンズオン実技を復活させ、進めていく計画です。

言葉の壁にも日々直面しています。駐在員を除く現地法人スタッフ、あるいは現地の医師とやりとりすることがあるので、英語を使う場面が少なくありません。これについては、自身が学生時代に学んだことを思い出しながら、なんとかやっているといったところでしょうか。ヒーヒー言いながら(笑)。楽しんで取り組んでいます。 

 ——どんなところにやりがいを感じていらっしゃいますか?  

企業での活動を行いながら、地球規模での社会貢献ができているということです。医師育成支援に携わる活動を通じて、途上国における内視鏡医の数が増加し、結果的にその国の医療課題の解決に貢献できていることに喜びを感じています。また、日本政府とのプロジェクトに関わるという意味で、相手国の医療水準の向上だけでなく、国益に資する活動ができていることにもやりがいを覚えます。

政府とのプロジェクトは1年など実施期間が限定されていることがほとんどですが、正直なところ、そのような短期間で目に見える成果を出すのは困難です。たとえば、インドのプロジェクトでは、1年間のプロジェクトを実施した後も、当社の現地法人の担当者が現地の病院と連携しながら継続的な研修を実施することになりました。政府主導で行ったプロジェクトが、その後の活動につながっていることには大きな意義があると感じています。

いま取り組んでいるベトナムのプロジェクトも、実施期間は残り1年半の予定ですが、プロジェクト終了後も現地にて持続的かつ効果的な医師育成活動が行われる仕組みづくりができればと考えています。

オリンパスの事業としてプロジェクトを発案し、自ら主導で進めていくことが目標

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——オリンパスだからできること、オリンパスならではの強みをどんなところに感じますか? 

メーカーとして製品を作って売るっていうことだけではなく、その国の医療を作り、医療の基盤を作っていくところがこの仕事の醍醐味だと感じています。とりわけ消化器内視鏡の領域においては、リーディングカンパニーとして数多くの優良な製品を持ち、製品や医療に関する豊富な知識・情報を社内に蓄積している点にアドバンテージがあるからこそ、地球規模の貢献ができるのだと感じています。

また、著名な先生をはじめ、これまでに医療業界との強固なネットワークを築いてきた点も、オリンパスならではの強み。実際、世界の内視鏡市場におけるシェア70%を持つオリンパスだからこそ官公庁から声がかかることも多く、期待にも応えられていると思いますので、そこは自信を持っていきたいですね。 

——今後、どのような存在になっていきたいですか? 

この部署では、自分はまだまだ半人前だなと思っています。業務を進める中でわからない点も多く、その都度周りのメンバーや上司に相談しながら、プロジェクトを動かしています。はやく単独でプロジェクトを動かせるようになりたいですね。

また、私がこれまで関わってきたプロジェクトは、オリンパスが実施または協力すると決まった時点でプロジェクトを任され、業務を遂行してきました。いずれは、各国の課題を解決できるようなプロジェクトを関係者らと発案し、主導して進めていけるようになることがいまの目標です。

この仕事はなかなか知られていないと思いますが、一企業人として自社の利益生み出すことだけでなく、当社のビジネスを通じて世の中を良くしていくことにも貢献できます。大きな社会的意義を果たせるように、これからも取り組んでいきたいと思っています。