ソフトウェアアーキテクトに期待される役割と仕事の醍醐味

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──2022年12月現在の業務内容について教えてください。  

外科手術で使用する内視鏡のビデオプロセッサーに搭載する、ソフトウェア開発のアーキテクトを担当しています。「ソフトウェアアーキテクト」とは、新製品の開発において、ソフトウェア全体の設計や仕様策定や要件定義、全体のプロジェクト管理などを行う仕事です。医療機器なので、遵守すべき法規制に適合できるよう、ソフトウェアでのリスクマネジメントに対応することも大切な業務のひとつ。そのほか、実際のソフトウェア開発過程で生じる課題解決など、アーキテクトの業務は多岐にわたります。 

──どんなところにやりがいを感じていらっしゃいますか?  

今、世の中では、あらゆる分野において、ソフトウェアへの依存度は高まるばかりで、大きなものから小さなものまで、どんな機械製品にも組み込まれています。医療機器も例外ではなく、期待される役割を果たすためには、高度な機能を備えたソフトウェアが欠かせません。

時流に乗り、最新の技術を取り入れながら、製品開発に携わることはもちろんですが、中には数年単位で大規模な開発に関わるときもあり、先を見据えることも重要です。たとえば、開発している間に法規制が変わっていくこともありますので、その周りの環境変化をどう取り込んでいくのかというのを常に考えなければならないので、簡単なことではありません。

難しいことをやりきり、自分の手がけたソフトウェアを搭載した、新しい機能を備えた製品が実際に動くのを目にするときに、やりがいやおもしろさを感じますね。また、患者さんの役に立てるという点で、医療機器を扱うこと自体が社会貢献につながると思っています。日々の業務に誇りを持って取り組むことができている理由のひとつです。 

未経験は成長の糧。新しい発見の連続を楽しむ

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──どんな経緯でこの仕事に就くことになったのでしょうか? 

もともと大学では機械工学を専攻していましたが、大学院へ進むときに、興味のあったシステムやソフトウェアのプログラム系の世界に飛び込んでみました。すると自分に合っているなと感じたことから、ソフトウェア開発ができるところで働きたいと思うように。また、大学、大学院とも人間工学で、人の視線情報と感情表出との関係について考えるような研究をしていましたので、その主要な研究領域でもある介護や福祉、医療といった分野の企業を中心に探していました。

今担当しているアーキテクトの部分は、プログラムを書くのではなく、この製品を実現するために、ソフトウェアをどんな設計で作り上げ、どういう方向性でどういう技術を持った人たちを集めていけばいいのかを考えながら全体設計をしていく仕事です。なので、どんどん製品開発の上流工程に行っているイメージがあります。全体を俯瞰する必要があるため、その意味でもステップアップしている感覚はあります。

2008年の入社当時は、オリンパス製品のプロダクトウェア開発を手がける子会社で、開発経験がほとんどない状態で、組み込みソフトウェアに触れることはもちろん、やることなすことのすべてが初めてでした。とはいえ、そこからさまざまな経験をして、苦労したというよりは、新しい発見の連続を楽しんでいたように思います。

その後、医療機器のソフトウェア開発に2年ほど携わった後は、自身の技術力の幅を広げていくため「電気設計の経験がしたい」と申し出て、医療関連事業に特化したグループ企業に出向し、基板設計やFPGA設計を担当。そこからは、外科系内視鏡のビデオプロセッサーにずっと関わり続けています。 

──印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

入社して最初に携わった製品ですね。内視鏡挿入形状検出装置という、大腸内視鏡検査をサポートする機器です。内視鏡の挿入部に内蔵された磁気コイルが発信する磁気を受信し、その位置や形状をコンピューターが計算して、3Dでグラフィック処理しモニターで表示していくというものです。大腸の形状は非常に複雑で、人によって千差万別といわれているため、無理のない大腸内視鏡の挿入には習熟度が求められます。患者さんの負担を軽減するための装置を、自分の手で作ることができたとき、嬉しかったのを覚えています。

配属されて、「まずこれ作ってみて」って言われて。今思えば、私自身、ずっと同じことをやっているより、自分が知らないことを、難しくても調べながらやっていくということにおもしろみを感じるタイプなので、学びながら新しいものにチャレンジできるという環境は、自分を活かせる場でもあったのかなと思います。

プロジェクト全体を俯瞰する視点で、ソフトウェアだけでなく製品の開発に関わる自覚を

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──仕事をする上で大事にしていることは? 

2022年12月現在、担当しているアーキテクトの業務は、ソフトウェア全体の設計や要件定義など、上流工程を担うポジション。自分が関わるパーツだけを見ていれば良いだけではなく、ソフトウェア以外の部分も含め、プロジェクト全体、製品すべてを俯瞰する視点が欠かせません。見る範囲が広がれば、それだけ多くの課題に直面することになります。それらを一つひとつ解決していく過程で、ソフトウェアが本質的に抱える問題点だけでなく、将来的にこのようなかたちにしていきたいなど、思考が展開するようになってきたと感じています。

開発にかけられる期間やコストにも配慮した上で、関係部署と擦り合わせを行いながら、どういう体制、どういう仕組みを導入すれば、目標とするものに対する最適解を出せるかを考えることが、アーキテクトの役割なんです。 

アーキテクトに必要なのは、課題解決力。それに加え、スペシャリスト人たちをうまく束ね、ディレクションしていく考え方やマインドだと思っています。

開発期間が長期に及ぶ中、想定通りに物事が進むことはほとんどありません。メンバーたちが迷わなくて済むように導いていくことが大切です。技術者一人ひとりとしっかりコミュニケーションを取ることを大事にしながら、実現したいことに向かって進んでいくようにしています。 

──仕事をする上で大切にしている姿勢、ポリシーはありますか?  

仕事をする上では、ふたつのことを大切にしています。ひとつ目は、製品に対して愛着・興味を持って取り組むこと。自分が作っているものをどれだけ知っていて、自分が作っているところだけではなく、その製品に自分がどれだけ関わっていると思えるかというところが大事だと思います。ソフトウェアの開発をしていると、どうしても目の前のことに深く入り込んでしまいがちです。ソフトウェアではなく、製品の開発に関わっていることを常に自覚するようにしています。

ふたつ目は、スピード感を意識すること。最初から100点を目指そうとすると、何も進みませんから。まずはやってみて、それでだめなら戻ればいい。もちろん、医療機器ですから、最終的には100点の品質が必要です。ただし、開発過程では実際に手を動かしてみて、浮かび上がってきた課題を吸い上げ、対策を打つというプロセスを重視しています。

やりたいことへの熱い気持ちだけあればいい。やりがいを感じられるオリンパス

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──今後の目標を教えてください。 

将来的には、ソフトウェアアーキテクトの次のフェーズとして、製品のシステム全体の設計に関わるシステムアーキテクトの仕事をやってみたいという想いもあります。そのためにも、今後、ソフト以外の部分にも関わる幅を広げていきたいです。

オリンパスが製造している内視鏡システムは、消化器の領域で世界トップシェアを誇っています。医療機器という責任も社会的意義もある分野で、ソフトウェア開発という、自分にとってやりたい仕事に取り組めているので、オリンパスという会社を選んで本当に良かったと思っています。少なくともオリンパスは、自分がやりたいことへの熱い気持ち、それひとつだけを携えてきてもらえれば、やりがいを感じながら仕事ができる職場です。