船と共に歩み芽生えた、「船の一生に携わりたい」という思い

▲荻須本人、現場にて

2004年、私は技術系社員として新卒で入社をしました。

当社を選んだ背景には、船の一生を見たいという思いがありました。一族に流れる血のようなものや、祖父に刷り込まれた船・海のイメージが影響しているのかもしれません。

代々海に関わる家系で、曾祖父は船主兼、船長兼、建造監督をやっていました。使われてきた船具、画家であった祖父の描いた船やヨットの絵が家に所狭しに飾ってあり、小さいころから船・海のイメージが刷り込まれていたんです。

おかげで高校と大学ではヨットに勤しみ、大学では造船を学ぶというところに発展しました。そして卒業後、何をして生きていきたいか考えたときに、船が生まれるところから死ぬところまですべてを見ていたいという漠然とした思いが自然と芽生えていました。

現代において、それが実現できるところは船会社しかないんですよね。造船所に入ると生まれたての船は見られますが、古いものは見られません。

船主という立場でいくら船を維持していても、売ってしまったら古いものは見られないですし、結局船主も運航も営業も全てやっているところは船会社しかないんです。そこで船会社へ行こうと決めました。

実際に入社後から今まで、船を造るところから墓場までのフェーズを経験させてもらったり、造船に限らずMarCoPayのような金融の仕事にも挑戦できたりしています。

思いを抱いて入社したことで、ずっと飽きずにいろんな仕事に関わることができているように思いますね。

入社当初、一般研修が終わった後に造船所へ行き建造監督の研修を受けたのですが、その時に船会社の技術者とは何かとても深く考えさせられました。

結局、船を造ることは造船所の方のほうがよくご存じで、われわれが言えることは上辺に限られているわけです。だとするならば、船会社の技術というのは何が求められるのか──私は運航の技術という答えに辿り着きました。

しかし、運航の技術を習得するためには、海の上のことも知らなければいけません。それが、技術系の社員で入社をしながら、航海士資格を取るきっかけになりました。

航海士と技術者として、営業とも働く。多様な立場から得た学びが力に

▲乗船中に色々な経験をしたことで、色々な視点からの考察につなげることができているという

自社養成コース(※1)を会社がはじめるにあたって、最初の一人として自分が免状を取りに行くことになり、航海士の海技免状をとりました。その後、就航中の本社側のサポート部署に配属されました。

船に乗った経験を得たうえで、就航中の技術サポートを担当できたことはラッキーだったと思います。 

乗った経験があると、船員さんの気持ちが多少なりともわかりますよね。メンテナンスしづらいとやりたくないなとか(笑)、どういったマインドを持つのかが想像できるので、それにあわせてコミュニケーションをとることができます。

また、老齢船を少しでも長く維持する仕事にも関わったのですが、船を長く維持するためにはメンテナンスが必要不可欠です。そこで壊れやすい部分はここだなとか、船に乗った経験をもとに乗組員の目からも船を見ることができていたなと感じています。

乗船中にいろいろな経験をしたことで、多角的な視点からの考察につなげることができているんです。これは造船技術を学ぶだけでは身につかなかった視点でした。

就航船サポートでいろいろな経験を積んだ後は、コンテナ自体の技術に関わる仕事の担当になりました。船とは関係ないわけではありませんが、少し毛色の違う業務になりましたね。

コンテナ部門はコストを1セント以下まで見るのですが、この1セントまでみる目線は造船の現場にはないものでした。船の建造においては大きな単位の金額で表されてしまうのがほとんどだったので、ここで数字の見方を細かく営業の方に教え込まれました。

そういった営業の視点について学べたことは非常に大きな収穫だったと思います。技術者だと技術をてんこ盛りにしたくなる傾向があるので(笑)、そこをバランス良く考えていく必要性を学びました。


※1:自社養成コース:日本郵船では、商船大学や商船高専を卒業した船舶の運航に必要なライセンス(海技士免許)を取得するための課程を修了した学生ではなく、一般の4年制大学・高専の卒業生を採用し、2年かけて海技者に必要となるライセンス習得のための講義・実習を課し、自社でゼロから海技者を養成する制度を2006年から開始しました。

荻須はその先駆けとして2005年から取得開始、在職社員として初めて2007年に航海士の海技士免許を取得しました。(現在の自社養成コースは新卒採用が対象で、在職する陸上職社員は対象外となります)

海外駐在で感じた学びと刺激。猪突猛進に突き進んでいた

▲熱意が通じて、工場を訪問させてもらった瞬間。

その後海外の造船所へ配属されたため、トラブルが起きても本部に確認する時間はなく、多少のことは自分が決断していかないといけない場面が結構ありました。外国人の部下もいる環境の中で、どう決断していくかが問われていましたね。

印象的だったのは、工程をどうやって縮めていくのか造船所の方々と考えて、工場として初めて進水予定日を一日早めて実行することができたことです。遅延が続いて全行程が錯綜している中、予定日を一日早めることはすごく大変でした。

みんなのモチベーションを高めていくことも大変でしたが、いろいろ考えて実践していくのはおもしろかったですね。どうマネージしていくかという点が養われました。また、今いる中国の監督事務所では、当時一緒に働いたフィリピン人や韓国人も呼んで、一緒に働いてもらっています。そうした人の繋がりもよい糧となっていますね。

その後に配属された本社の技術グループでは、世界で数隻しかない特殊な船を計画・建造しました。その後また異動して、シンガポールでは実際に船を技術的に管理する仕事をしました。

シンガポールはオフィスのすぐそばが港で、いろいろな船が目の前を通っているんです。船の技術関連の集まりも頻繁にあって、お互いによい刺激を受けました。

そんな刺激もあって「当社で出来ることってなんだろう?」というアイディアを常に形にしようと考えていましたね。ちょうどその時期に携われたのが、MarCoPayやCoolLaserです。

CoolLaserは、レーザーで錆が落ちる瞬間の映像がオンラインのニュースにでていたのを見つけて、これはおもしろい技術だと思いました。

というのも、船の錆を落とす錆打ちは埃が飛んで環境に良くないと言われてしまうことがあるんです。しかし、このCoolLaserなら埃を最小限に抑えることができると思いました。

他の船会社に認識される前に、うちで頑張らなければいけない素晴らしい技術だと思い、同僚にメールを送りましたね。みんなすぐメールを返してきて、「これはヤバい!」という話になりました(笑)。

問い合わせもなかなか繋がらない状態だったのですが、なんとかアポをとり、シンガポールから日本に飛んで会社へ足を運びました。そして運良く、相手の会社の方が暑苦しい私に振り向いてくださったんです。熱意というものはどんな時にも必要なのだなと思いました。

その後は異動のため担当を引き継いだので、自分が担当した所は先発で終わった感じにはなりますが、結果として猪突猛進に動いて良かったと感じています。よく暴走といわれることもありますが(笑)、直感で突っ切って良い場合もあると感じましたね。

思いを抱き続けてきたこれまで。全ての経験が自分の強みにつながっている

▲チームメンバーや造船所・船級と一緒に

2021年現在は、中国という当社の船の建造において新たな地となる場所で、重たいものを特殊クレーンで吊り上げる船の計画・建造を担当しています。

中国と日本の造船所の合弁会社に発注したことはあったものの、中国単独資本の造船所で長期保有する船を建造したことはなかったんです。今回は当社グループ会社で長期保有する予定の船を、中国単独資本の造船所にオーダーするという新しいチャレンジになります。

今までの経験は、全て今の仕事に活きているなと思います。例えば、中国と日本では船の建造の仕方が少し違っています。日本では全て造船所が取り纏めてくださるのですが、中国ではメーカーから買ってきたものを組み合わせていくというイメージで造っているんです。

そのため、船にその機器が取り付けられていれば良いという意識になり、あまり運航の視点がありません。なぜこの機械やディスプレイがここになくてはいけないのか、この配置はやりづらいという判断は、乗組員でないとわからないところがあります。

その際は、乗組員の視点を建造の現場に持ち込むことが必要になりますよね。その他にも、特殊な船を計画・建造した経験や海外でマネージメント力を養った経験、新しいことにチャレンジした経験など、全てが紐づいている感覚があります。

もう集大成に近い感覚というか、満足しているような気持ちもありますが、まずは今の仕事をしっかりやっていきたいですね。船の一生を見たいという当初の思いに対して、無駄のない人生を送らせてもらっているなと思います。もちろん苦労はしますけれども、やりたいことはやれる環境があることを身をもって感じてきました。

なので、物流や郵船だったらこういうことができそうだとか、思いを抱くことは大切だと思います。そういうことがないとあまりおもしろい会社人生にはならないと思うんです。

うちの会社は意志のある人やチャレンジする人を否定しない土壌があると思います。

そうした思いを持ち、挑戦していきたいという方と共に、これからの人生をよりおもしろくしていきたいですね。