パイロットになりたくてなれなかった学生時代、空から海に視点を移す

▲学生時代の友人とは変わらず親交がある。最前列右が舩田。

私は現在、本社の環境グループ 環境規制チームに所属しています。主な業務内容は、IMO (International Maritime Organization:国際海事機関)が発行する世界の最新環境規制の動向把握とその社内周知、社外調整、また日本郵船のGHG(Green House Gases:温室効果ガス)総排出量計算とその取り纏めです。

日々、船舶からのCO2などの排出量を把握し、グループとしてそれらをどう削減していけるのかを検討しています。CDP(旧Carbon Disclosure Project:気候変動問題への取り組みやGHG排出状況に関する調査・評価)などの外部からのアンケートや、国土交通省の関係者とのやり取りなど、社外とのコミュニケーションはありますが、社内への周知や調整といった業務もあるので、様々な人と仕事をしているなと感じています。

2020年のSOx(硫黄酸化物)規制によって、船舶の燃料に含まれる硫黄分を3.5%から0.5%へ減らすという大幅な削減が義務化されました。加えて、海外各国でも地域ごとに規制があるため、それらの情報について政府発行の公式情報を中心に集めてマップを制作し、全社的な情報共有を行っています。こういった規制を守らないと、会社として法を犯してしまうことになるため、入念に確認していますね。

現在はこのような業務に就いていますが、大学では船とは関係のない英米文学を専攻していました。そのため外国語に馴染みがあるのではと思われるかもしれませんが、文学とは使用する言葉も専門用語も異なっているので日々学びながら過ごしています。

もともと、私は飛行機のパイロットになることを志望していました。きっかけは、中学生のときです。ハワイへ旅行に行き日本へ帰る際、遠ざかっていくハワイの海を見ながら「また戻ってきたいな」と感じたと同時に「自分で飛行機を飛ばして来たいな」と思うようになったんです。そうして、大学の時にパイロットを目指しました。

実際にパイロットにはなれなかったのですが、同じく航空業界を目指していた友人から「空の世界を見ているなら、海の世界も見てみると面白いよ」と言われたんです。そうして海上での仕事について調べる中で、日本郵船と出会いました。

乗船業務の中で気づいたこと──自分の仕事が会社の信頼につながっている

▲船上では様々な国籍の乗組員と共に業務にあたる。後方中央が舩田

2009年の入社後は、他の自社養成海上社員と同様に、最初の半年間は神戸での研修、その後は海技大学校に通って基礎を身につけていきました。続いて、研修生としてコンテナ船2隻、LNG船1隻にそれぞれ乗船し、三等機関士としては LNG船2隻、自動車専用船2隻、ばら積み船1隻に乗船しました。2016年からは二等機関士としてLNG船1隻と、日本マントル・クエスト株式会社へ出向して地球深部探査船「ちきゅう」に乗船しました。

出向期間中に一等機関士へと昇進し、日本郵船に戻ってきたタイミングで次席一等機関士としてLNG船で実職を執りました。LNG船では、機関実務を行う一等機関士と貨物関係機器を担当する次席一等機関士がいて、一緒に乗船しています。

業務の経験を積んでいく過程で、文系出身としての難しさを実感しました。高校では甲子園常連校の野球部に所属していたので、とにかく野球に集中していました。そのため、理系の基礎的な知識がごっそり抜けていたんです。特に物理的な思考や計算の知識が抜けていました。理系の方はまず頭の中でイメージを作るそうですが、私は文章で読んで文章で理解しようとしていたので、日々の業務で求められるメンテナンスの流れや機器の構造のイメージが湧きづらく、苦労しました。

なので、経験の豊富なフィリピンクルーから学ぶことも多かったです。彼らとのコミュニケーションはとても大切にしています。なかなか、取扱説明書を読むだけでは難しかったことも多かったので。

船に乗船するようになった当初は「何のためにこの作業をやっているのかわからない」状態でした。船を動かすことに対して、自分の働きがどのように影響しているのかが掴めませんでした。自分の仕事が「運航に影響する」と言われてもリアリティが持てなかったんですよ。

そんな中、二等機関士として最初に乗った船では、一等機関士から「仮に船が1日止まったら、どのくらいの損失が出ると思う?」と聞かれました。その時は答えられず「船が止まる、それだけで何百万円、何千万円とビジネス上の影響が出るんだよ」と説明を受け、そこで今の仕事の意義がようやく理解できました。

改めて安全運航の大切さに気が付き、事前の予防保全やトラブルにも的確に対処して船を止めないことの重要性がわかったことは自分にとって非常に大きかったですね。自分の仕事一つひとつが会社の信頼に直結していると本当の意味でわかった瞬間でした。若い時はとにかく目の前の仕事をやりきるだけで目的意識を失いかけていましたが、その時からは仕事に対する責任ややりがい、覇気が高まった感覚を持って仕事をしています。

海の仕事と違う陸の仕事──新たな挑戦を通して学びを得ていきたい

▲フィリピンのマニラにて。当然のように海外での研修や業務がある

海上職は、数年毎に海上勤務と陸上勤務を経験していきます。そのため、海上勤務をしていた私は、ジョブローテーションの一環で環境グループに配属されました。

私自身は以前から「陸での仕事をしたい」と思っていたので嬉しかったですが、もっと船での業務を積んでいくものと思っていたので、最初は驚きました。ただ、せっかく陸上勤務になったので、これまでの船での経験で生かせる部分は生かしていきたいし、学べることはしっかり学んでいきたいと思っています。その上で、今後は陸上勤務での知識や経験を海上で生かし、後輩にもやりがいを持たせてあげられる、そんな機関士を目指したいです。

現在の業務は環境課題に特化した専門的な業務であるため、条約・法律が関わることも多くあります。そうした法律は船の運航にどう影響するのか、どういったメリット・デメリットがあるのかを考え、日々学ぶことばかりです。

上司からは「全体像を描け」とよく言われています。とある法律の動きによって、どの部門の人たちがどういう動きをする必要があるのかをしっかり全体像を想像した上で、号令をかけていくことが重要な役割なんだと捉えています。

私の仕事には社内外との調整といった事務局的な役割が大きいのですが、日本郵船は全体の組織が大きいため、全員が同じ方向を向いているようで向いていないことがあります。それを調整していくことは、難しいことが多く、苦労することはありながらも、私自身の学びとして感じられていますね。

現在の業務は「一つのことをやっていればいい」というものではありません。船での仕事は、一つひとつの仕事を100%完結させて、故障が起こっても自分たちで直していくことが大切でした。しかし、今は何かが壊れるわけではありません。なので、まずは積極的に挑戦してみること、そして、その中で得た経験から学べることを学んでいます。経験したからこそ身に付くことも多いですね。働く中で、新しいことに取り組めることが面白さであり、モチベーションになっています。

よりオープンに、広い関係性を持って、信頼される人間になりたい

▲日本郵船本店を背景に。「社内外から信頼される人間になる」と語る

今後はこれまで以上に環境課題に対する注目が集まるでしょうから、より正確なデータや、より安全な運航に対してできることを打ち出していく必要があります。そして、お客様からの環境に関するデータの開示要望などには、これまで以上に気を引き締めて臨み、さらには投資家や株主の方々に対しても恥ずかしくない情報を開示できるよう、環境問題に対する取り組みにおいてより良い方向性を示していきたいです。また、社内に対しても今まで以上に、環境課題に対してより良い方向性を示していきたいです。

私個人としては、三菱マーケティング研究会に所属しており、まずは三菱グループでの連携をつくり、外部とのより良い関係性をしっかり築いていきたいと思っています。現在は新規事業開発の分科会に参加しており、このコロナ禍における必要な事業について、事業企画書の作成と実際のサービスローンチを行うべくメンバーと日々ミーティングと作業を進めています。

今考えているアイデアは、2021年の3月までにローンチしてサービスとして実際の世の中に出していきたいですね。また、10月からは労働組合の中央執行委員に選ばれたこともあり、社内メンバーとの連携や外部との連携も進め、日本郵船を更に良い企業へ導くお手伝いが出来ればと考えています。

私は、よりオープンな人間として、社内外から信頼されるようになっていきたいと考えています。今後、業務や様々な活動を通し成長し、より信頼される人間になっていくことで、会社に対する貢献も更に行っていけると確信しています。