再エネに関わるステークホルダーをプラットフォームでつなぎ、脱炭素社会をめざす

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2020年にNTTデータへ入社した小山は、2022年現在カーボンニュートラルや脱炭素化に着目した新たなビジネスの創出に携わっています。

小山 「NTTデータのなかでもインフラ基盤を支えるシステム構築などを行っているテレコム・ユーティリティ事業本部に所属し、ITを活用した再生可能エネルギーの導入拡大を促す仕組みづくりを行っています。

市場はこれから立ち上がるところで、ゼロベースからのスタートです。私は企画から構想立案、開発などの全般をとりまとめ、お客様と対話しながらプロジェクトを推進させていく役割を担っています」

国が掲げる2050年のカーボンニュートラルや、2030年度までに温室効果ガス46%削減(2013年比)という目標に貢献するため、再生可能エネルギーの普及をさらに高めていくことが目的です。NTTデータはカーボンニュートラル実現に向けてITの力を活用し、再生可能エネルギーに関わるステークホルダーをつなぐプラットフォーム「グリーン分散電源情報流通基盤」の構築をスタートしました。

小山 「太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーのほか、小型の発電源や蓄電池などの分散電源エネルギー(以下、DER)の情報を可視化し、電力会社や自治体などDERに関わるステークホルダーをつなぐためのプラットフォームです。2025年までに3,000万台規模のDERを管理する基盤を作り、商用展開することをめざしています」

DERのさらなる普及が求められているものの、現状ではその情報を公開・流通させる仕組みが整っていません。さらに、今後DERが急速かつ大量に電力系統へ接続されるような事態が起こると電力のバランスが崩れ、安定供給へ課題が生じるおそれがあります。

そういった課題解決をめざし、NTTデータではDERの情報を取り込み、流通させるための仕組みとしてグリーン分散電源情報流通基盤を立ち上げることに。しかし、その道のりは決して楽なものではないだろう、と小山は予測します。

小山 「DERの情報の扱いはルール化されていません。したがって現状ではデータを取ることができず、まずはルール作りから取り組む必要があります。DERの情報を集めることでどんな価値を創出できるかという仮説を立てて、国や官公庁などと意見交換し、ステークホルダーを巻き込みながらルール化へ向けて動いているところです」

電力の安定供給を実現し、レジリエンスも強化──エネルギーのあり方を変えていく

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DERの情報を収集・分析し、セキュリティーを担保したうえでそれらを電力会社や国、自治体、太陽光や蓄電池のベンダーなどの事業者に提供できるグリーン分散電源情報流通基盤。

DERの電力取引や融通を推進できるため、運用されることで再生可能エネルギーを確実に活用でき、カーボンニュートラルの実現に貢献できるようになります。さらには電力を安定的に供給でき、災害時の停電などにも迅速に対応できるレジリエンス強化にもつながります。

小山 「DERに関わるステークホルダーのみなさんの手をつなぐようなプラットフォームをイメージしています。必要な情報を共有しつつ、一方で秘匿しておきたい情報は守りながら、つないであげる。NTTデータの技術を活用し、強みを活かせる取り組みだと考えています」

2025年の商用展開をめざし、2022年7月からは沖縄県宮古島で情報流通基盤に関する実証実験を開始しました。地域の脱炭素化の実現に向けて、NTTデータをはじめとする3社で共同してDERの情報の収集や可視化、分析を行っています。

小山 「今後はさらに他のステークホルダーへとつながりを拡げ、市が提供している防災情報や地域コミュニティのサイトなどと連携していくことなどもめざしています。さらに、宮古島は台風による停電が発生しやすい地域であり、災害時にも役立つと考えています。停電時に電気自動車や蓄電池などのDERがコントロールできる仕組みがあれば、電気供給が可能になるはずです。

たとえば、蓄電池を導入・活用している地元の銀行が、災害時には住民に対して電気供給をするといった電気の地産地消のような取り組みができたらおもしろいのではないかと感じています」

あらゆるステークホルダーの手をつなぎ、電力のあり方そのものを変えていこうとする取り組み。小山はNTTデータだからこそやる意義があると考えています。

フラットなNTTデータだからこそ、違う立場の人たちの手をつないでいける

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小山 「NTTデータはフラットでニュートラルな立場にある会社です。NTTグループという色はあるものの、相手を強い色で染め上げるような事業は展開していません。だからこそいろんな人たちと協調し、互いをつないでいかなければならない会社だと考えています。

同時に、さまざまな社会インフラの整備にも長年携わっていることから、エネルギーの領域にさらに携わっていく意義は大きいのではないでしょうか。ビジネスとして価値を生み出すことはもちろんですが、まずは社会課題の解決をめざしています」

NTTデータはソリューション志向を基盤として産学官を巻き込み、新規ビジネスの立ち上げに挑んでいます。そんなNTTデータに新しい風を吹き込む存在の小山は、ハードウェア開発のエンジニアからキャリアをスタートさせました。

小山 「新卒入社した会社は、エンジニアとして通信インフラ機器や無線LANのシステムなどの開発に携わっていました。そして2011年からはシステムエンジニアとして再生可能エネルギーの領域に関わるように。その後転職したものの、社会の仕組みを作りたいという想いから、NTTデータへ入社しました」

キャリアのターニングポイントとなったのは、前々職で2011年に携わった再生可能エネルギーに関する実証実験のプロジェクトです。東日本大震災が発生した直後に青森県で行ったこともあり、小山にとって忘れられない取り組みとなりました。

小山 「当時青森にも震災の影響で多大な被害が発生しました。さらに、原子力発電所の問題もあったことから、電力に関する実証実験を行うのは難しいのではないかと思われました。しかし、自治体や地元の方々と社会の今後を考えたうえで必要なものだと話し合い、実施することができたのです。

さらに地元の方々だけでなく、関係する法人や企業のみなさんをとりまとめ、一致団結して取り組めました。ひとつのシステムを作ることをめざし、会社の枠を飛び越えて意見交換も多く行いました。

震災という苦難を乗り越え、みんなで手を取り合い、社会に必要な仕組みを作っていく。このときの経験があって、日本全体で手をつないでいきたい、そして手をつなぐ役割を果たしたいと考えるようになったのです」

一緒に取り組んだメンバーのなかには今も深い付き合いがある人も多く、現在も支えてくれていると振り返る小山。当時の取り組みが胸に残っているからこそ、NTTデータで新たに大きな輪を作り、多くの人たちと手をつなぎ合わせていこうとしています。

“つなぐ”ことが使命──さまざまな人を巻き込み、ともに新たな未来を作っていく

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▲学生時代からずっと続けているバレーボール

小山 「まずは、現在掲げているグリーン分散電源情報流通基盤の構想を社会に根づかせることを短期的にめざしています。この構想が社会に役に立つものだと世間に認識してもらうため、われわれは発信していかねばならないと思っています。

中長期的には、この構想を成功させるためにはどうすべきか考えることです。われわれだけで難しいのであれば、誰と手をつなぐべきかといったところを見出していきたいと考えています。

より大きな世界観としては、電力だけでなくガスや水道なども一括で運用できる仕組みを作り、さらにカーボンニュートラルな社会を実現したいと思っています。こういった仕組みを生み出すことで、NTTデータとしても、私としても社会へ貢献していきたいです」

経験者採用で入社した小山は、NTTデータへ新たな風土を持ち込むことを意識しながら、日々の業務に臨んでいます。そんな日々の中で小山が感じるのは、NTTデータの人を大切にする文化です。

小山 「NTTデータはお客様の要望に基づいてきっちりとシステムを作り上げ、社会の仕組みを作り上げるSIerとして成長してきました。しかし、私のやり方はボトムアップでアプローチし、事業を立ち上げていくというもの。逆方向のやり方ではありますが、違った観点を持ち込むことがNTTデータのさらなる発展につながると考えています。

こうしたアプローチを展開する中で、NTTデータでの社歴が短い私の意見にもしっかりと耳を傾けてくれる環境があることに感動しました。上層部にもきちんと話を聞いてもらえる機会があり、人を財産だと思っている会社だと感じています」

そんな小山が仕事をするうえで大切にしている価値観は、“つなぐ”ことです。過去の取り組みでも、現在携わっているグリーン分散電源情報流通基盤の構想においても、さまざまな人の手を取り、つなぎ合わせる役目を担っています。

小山 「地元の方々や事業者、自治体、官公庁などを巻き込みながら、手をつなぐこと。これまでの経験を通して、その重要性を強く感じるようになりました。

学生時代からバレーボールをずっと続けているのですが、バレーボールもボールを“つなぐ”競技なんですよね。渡ってきたボールを落とさずにつないでいくことが、プレーするうえでも、仕事をするうえでも大切だと思っています」

豊かな経験と知見を活かし、情熱を持ってプロジェクトを推進している小山。多くの人々をつなぎ、カーボンニュートラルな世界の実現をめざして、ビジネスと社会課題解決の最前線をひた走ります。