物理を学ぶことで得た2つの力を強みに、SIerの道へ
大学では物理学を専攻していた金子 周史。実験結果の解析やシミュレーションにコンピューターを使用した経験を通じ、ITの可能性や面白さに目覚めたといいます。
そこで、就職活動ではIT企業に絞り進路を検討。いくつかの企業を見比べた上で、多様な業界に触れるチャンスが多いと感じたSIerを選択しました。
また、SIerを選んだのには、もう一つの理由が。
金子 「自分の強みは、ロジカルな思考力と、情報へのキャッチアップ力だと思っていたので、様々な業界や技術に関する幅広い知識が求められるSIerでなら、それらの力が活かせるのではと考えました」
どちらの力も、物理という学問に取り組むことで磨かれたものでした。
そして2013年春、金子はNTTデータに入社。
最初に加わったのは、自動車業界のお客様向けの開発プロジェクト。ここでシステム開発の基本を一通り学びます。また、技術面の事柄以上に金子にとって大きな学びとなったのが、ビジネスの現場におけるコミュニケーションのとり方でした。
金子 「開発チームには自分より年上のメンバーが大勢いましたし、中国でのオフショア開発も行っていたので、中国のメンバーとコミュニケーションをとる必要もありました。初めの頃は、それぞれ違った立場の方たちと会話をすることの難しさをよく感じていました。それが変化したのは、自分は『NTTデータの代表』なのだと自覚するようになってから。言うべきことを臆さず発言できるよう心掛けることで、コミュニケーションも円滑になりました」
関わる人たちが気持ちよく仕事をするためにコミュニケーションはどうあるべきかを考え工夫した当時の経験は、今でも活きているといいます。
入社4年目の決断。自身が願う働き方に近づくため社内公募を活用
そんな金子に転機が訪れたのは、入社4年目の秋のこと。他部門への異動を決心し、社内公募に手を挙げたのです。秋に開かれた部内のキックオフミーティングにて、今後の部門戦略と自分の希望との間にギャップがあると気付いたことがきっかけでした。
金子 「入社当初から、自分の強みを活かして様々な業界のお客様のビジネスに関わる仕事がしたいと考えていたのですが、キックオフでは、ある特定のソリューションの拡販を主軸にした戦略が掲げられていたんです。自分が願う働き方に近づくため、公募に手を挙げました」
その時、募集期限のわずか2日前。自分の希望をより具体的なキーワードに落とし込んだ結果、「ビッグデータ」領域へのチャレンジを決意した金子は、周囲の理解もあり、2017年6月に現在所属する組織へ異動。
そして希望通り、ビッグデータ基盤の開発に関わるプロジェクトに参加することになりました。
それまで携わっていたベーシックな開発案件とは、180度趣が異なる領域。これまで触れたことのない開発言語やソリューションとの出会いが待っていました。
また、お客様は、デジタルの活用において国内有数と言われる先進的な企業です。
金子 「本当に初めて触るものばかりだったので、自分で望んだこととは言え、異動当初は『これはマズイかも……』と内心かなり焦りを感じていました」
それでも、初めの半年間はビッグデータ基盤の運用メンバーとして、日々の運用と障害対応に奔走。そうこうするうちに、プロジェクトに入り初めて触れたソリューションへの理解も徐々に深まっていきました。
世界に新たな可能性を。ビッグデータを扱うことの面白さ
そして、異動から半年が経った頃、金子に大きなミッションが与えられます。従来データ分析のために使用していたデータウェアハウスサービスを、別のサービスに切り替えることになり、新サービスに対応したデータ連携の仕組みを一から設計・実装することになったのです。
チーム内のメンバーと二人で設計を行い、実装は金子がほぼ単独でやり遂げました。
この事例は、新たに導入したデータウェアハウスサービスのベンダーからも注目されるところとなり、NTTデータのエンジニア向けに開かれるベンダー主催の勉強会で、ベンダーの求めにより金子もスピーカーの一人として登壇しました。
もともと経験のない領域で、持ち味である「キャッチアップ力」が存分に発揮された結果でした。
金子 「チームには『皆で一緒にいいものを作りましょう』というムードがあって、お客様とも近い距離感で仕事ができているので、相談や質問を気軽にしやすい。そういった環境も、短期間でのキャッチアップを可能にしたポイントかなと思っています」
そして何より、ビッグデータに関わる今の仕事が「楽しい」と金子は言います。
金子 「データ分析では、データベースにデータを収集してから活用するまでの間に、目的に応じた処理や分析をロジカルに積み上げていくイメージです。もとのデータを起点に、世界を縦にも横にも広げられるような仕組みを作っている感覚があって、そこに面白さや魅力を感じています」
データ=資源。その価値を分かち合える未来をめざす
今後も、ビッグデータに関する領域を突き詰めたいという金子。
また、データ基盤の重要性や難しさをよく知るからこそ、「データ分析」に比べて一般的にはまだ認知度が低い「データ基盤」の領域に、もっと光が当たるようにしたいのだといいます。
金子 「ITの世界に限らず、とかく基盤は注目されにくいですよね。でも、『データ基盤』なくして『データ分析』はなし得ない。今、データは「新しい石油」と言われてその利用価値が期待されていますが、採掘した石油を蒸留することで初めてガソリンになるように、ビッグデータを利用価値のある状態にするには、データ基盤を介した加工が不可欠です。その意義や、データ基盤に関するノウハウを伝え広める役目が担えたらと考えています」
その先に金子が見据えているのは、「データの価値を皆で分かち合う」ことができる世の中。
金子 「業界を問わず、DX推進が盛んに言われていますが、そこで一番の肝になる要素はデータだと思っています。データに基づく意思決定を可能にするために、誰もがハードルなくデータを取り扱うことのできる社会になったらいいな、と。そんな社会を実現できるように、自分も貢献していきたいです」
思い描いた働き方に近づくため、入社4年目にして社内公募を活用してチャンスを掴んだ金子。データ基盤のスペシャリストとして、目の前のお客様はもとより社会への価値提供にまで思いを巡らせる挑戦の日々は、これからも続きます。