病院に大きな影響を与えるITシステム導入で、社会に価値をもたらす

IT技術を用いて社会に貢献したい──。

その思いを軸に藤井 裕城が就職先として選んだのは、NTTデータでした。

そして2010年の入社以降、藤井は2021年現在に至るまでの約12年にわたり、医療、健康、医療費関連の大きく3軸の事業を展開するヘルスケア事業部に所属。病院を顧客としたサービス提供やシステム開発のキャリアを重ね、医療業界のIT化の一端を担ってきました。

藤井 「入社後2年間は医事会計のシステム開発に携わり、その後は病院に電子カルテのシステムを導入するプロジェクトに約6年間従事しました。電子カルテなどの新しいシステムを病院に導入することは、病院全体に大きなインパクトを与えます。電子カルテ導入プロジェクトでは、1つの病院に対し約半年常駐し、各施設が抱える課題の分析などから参画する経験を重ねてきました」

そして2018年には、医療業界にもDX(デジタル・トランスフォーメーション)の波が訪れます。AI活用やデジタル技術による業務効率化が難しい医療業界に対し、内閣府が主導してその浸透を目指す「AIホスピタル」プロジェクトが立ち上がりました。

藤井はこのプロジェクトに、参画したNTTデータの一員として、そして病院の業務や課題を理解するメンバーとしてアサインされています。

藤井 「医療現場を支えるシステムは、複雑かつ細分化されています。血液検査やリハビリなどの各業務に応じて個別のシステムが存在し、数十から百近くのシステムが密に連携し、病院全体が回っています。

また、病院で働く医師をはじめとした医療従事者の皆さんはとにかく多忙です。当時は、とくに診察以外の業務、例えば診断に関わる書類作成などの業務に時間を割かれていることが、大きな課題だと感じていました。

こうした課題を解決して、先生方が医療行為により専念できる環境を作り、患者さんが適切なケアを受けられる地盤を整えることが、私たちの使命です」

藤井はそんな使命感のもと、AIホスピタルプロジェクトでは、音声認識や自然言語処理を中心に、社内の技術開発本部やNTTの研究所と連携しながら研究開発を推進していきました。

一方、このプロジェクトの中では、全国の大学病院や官公庁との調整、ベンチャー企業との連携など、業種・文化が異なる多数のステークホルダーと取り組みを進める必要がありました。それまで病院と相対していた時には経験できなかった環境に身を置き、仕事に力を注ぐことで、藤井の視野は広がり、視座も高まりました。

医療現場の高度化を目指すデジタル医療チームの先端プロジェクト

▲遠隔ICUのイメージ

内閣府のプロジェクトを経て、現在、藤井がデジタル医療チームの一員として関わっているプロジェクトは大きく分けて2つあります。

藤井 「1つがICU(集中治療室)の遠隔化プロジェクトです。現在、ICUでの治療を専門に行う集中治療専門医は日本全国で二千人程度しかおらず、専門医が十分でない医療機関では、外科・内科系医師が重症患者に対応することで成り立っている状況です。

このような状況を改善する一手として期待されているのが、遠隔ICUの導入です。複数の病院をネットワークで結び、専門医が複数病院の情報を一覧できるモニタリングシステムを構築して、各病院の先生が専門医と連携しながら治療にあたれるような環境を目指しています」 

このICU遠隔化プロジェクトが実現すれば、物理的に離れた場所にいる医師同士が患者の病状を確認してアドバイスをし合えるようになります。ICUを利用しなければならない、つまり命に危険のある患者の適切なケアについて知の共有ができることは、医療の高度化に直結するものです。

藤井 「そして、もう1つが、RWD(Real World Data)収集です。RWD収集とは、各病院が個別に管理している電子カルテのデータを共有し、利活用できるプラットフォームを作ろうという試みです。

例えばがんの場合、同じ肺がんと診断された患者さんでも、個々の症例は異なります。1つの病院で記録できる年間症例は少ないのですが、これを複数病院で連携すれば、多くの症例の中から患者さんのステージや状況に応じた対処を詳細な形で参考にすることができるのです」

RWD収集は、患者のケアはもちろん、医師の研究や、今後の製薬開発の領域などでも役立つものです。ヘルスケア領域のステークホルダーがセキュアに患者データにアクセスできる環境が生まれることで、人々の健康を守る技術が発展していくでしょう。

こうした医療現場のための先進的なIT技術開発は、事例が積みあがってきているものの発展途上といえます。藤井は単にシステム開発を進めるだけでなく、そのシステムの運用・保守、さらにはメディア露出や学会発表などの広報・啓発活動にも携わっています。

周囲を巻き込み、自分が最終責任をもつ──プロジェクトの原動力とは

▲社内新入社員研修の講師も務めた。最終日の一枚

医療業界に大きなインパクトを与えるデジタル医療チームですが、そのメンバーは約10名と小規模です。少数精鋭のチームでは、主体性をもって働くことが大切だと藤井は考えています。

藤井 「電子カルテに携わっている頃から、自分はNTTデータの顔だという自覚をもってきました。『現場の最終責任者は自分だ』という意識で、病院側にも、誰かの受け売りではなく自分の言葉で説明できるよう心がけています。

一方で、最終判断を独断で決めるのではなく、しっかり周囲を巻き込んで、各領域のプロフェッショナルに意見を仰ぐ姿勢も大切です。自分自身がオーナーとしてボールを持つことと、そのプロジェクトをドライブすることは、重なるようでまったく異なります。より最適な判断をするために、周囲の皆さんの知見を借りるようにしています」

このように周囲を巻き込みながらプロジェクトを進めることの大切さを藤井が学んだのは、入社5年目のこと。初めて電子カルテ導入プロジェクトのリーダーに就任した頃のことでした。

藤井 「病院職員が100名近く集まる会議で、自分が病院側の質問に的確に答えられず、先生方に不安感を抱かせてしまった経験があります。周囲には疑問を解決できる仲間がいたのに、私は『自分が何とかしなければ』という思いが強すぎて、彼ら、彼女らにうまく相談できませんでした。

自分一人でプロジェクト全体を完璧にフォローすることはできません。だからこそ、全体像を把握しつつ、『この分野ならあの人に聞こう』という人脈マップを常にアップデートしていくことが大切だと気づきました」

医師や医療従事者、そしてIT技術を活かせるチームメンバーや連携企業。両者の架け橋となって藤井が創ろうとしているものは今までにない仕組みであり、“未来のヘルスケア”そのものです。

一人ひとりが適切な医療を受けられる世界の実現を目指して

▲休日は子どもの写真を撮ってばかり

NTTデータが構想するヘルスケア領域のDX化を進めるためには、各病院やその周辺ステークホルダーからの情報共有が必要不可欠です。これまで閉じられていたシステムやネットワークを開き、共有を促すプロセスには、さまざまな課題もあります。

藤井 「病院と病院をつなぐとき、まず大きな課題となるのが個人情報である患者のデータの取り扱いです。また、病院は複数のシステムが集合しているので、その集合体同士をつなげようとすると、技術的な課題も多く生じてきます。

さらに、仮に技術的な課題をクリアしたとしても、結びつく先生同士の信頼関係が構築されていなければ、医師間でアドバイスし合う体制は整いづらいでしょう。

人と人、システムとシステム、組織と組織。それぞれ結びつけることに難しさがありますが、一つひとつ解決できるよう、日々取り組んでいます」

病院が扱うデータに触れ、システムを構築する。それは、人々の命の一端を担うことでもあります。システム上のミスが許されない領域に挑戦するからこそ、社会的な意義やインパクトも大きい仕事なのかもしれません。

藤井 「私たちは医療データを利活用できる地盤を整え、医療業界全体の高度化を進めたいと強く願っています。医師の業務効率化や、遠隔集中治療が実現できれば、環境や条件に左右されず、適切な医療を受けられる人が増えるはずです。

誰もが健康であるために適切な治療を受けられる。当たり前のようで難しいことですが、そんな世界の実現を目指したい。私たちは医療行為はできないですが、それを支えることはできます。これからも病院の方々と連携しながら邁進します」

医療業界の課題を解決することで、人々の健やかな生活を支える“未来のヘルスケア”を実現したい。そのゴールに向けて、各専門領域のプロフェッショナルと連携しながら、藤井の挑戦は続きます。