農業指導員か、大学院進学か……。そして選んだIT企業への就職の理由とは

▲NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 新原友美

新原 友美がNTTデータに入社したのは2008年。中高生の頃から生物や化学が大好きで、大学時代は農学部でバクテリアの研究をしていました。農学部出身者の多くは、将来的に研究職に就くため大学院に進むか、公務員になって農業指導員として働くことを選ぶといいます。

しかし、新原は違いました。

新原「当時から、様々な業界に関わることができるビジネスに興味がありました」

IT企業なら、幅広い企業と接点を持てる上、自分の身近な人たちにも便利さや面白さを実感してもらえるような“何か”を生み出すことができるはず。たとえば「おサイフケータイ」のような――。

新原「NTTデータがおサイフケータイの開発をしていることも知っていたので、『私もこんな先進的なことができたらいいな』という想いを持ってNTTデータに入社しました」

最初の配属先は、決済関連のサービスを手がける事業部。ここでなんと、入社前に理想のサービスとして思い描いていた、おサイフケータイ関連のアプリ開発に携わります。

そして入社5年目を迎えたタイミングで、事業部内での異動により、開発から営業に“転身”します。

新原「入社当初から、最初の数年間はまず開発を経験してITの基礎をしっかりと学び、その後は企画や営業をやりたいと考えていたので、希望通りの異動でした」

営業として扱うことになったのは、クレジットカード会社や決済事業への新規参入を希望する事業者向けのプリペイド決済サービス「PaySpreme ™」。

希望が叶い、ここでサービスの企画から拡販までを一通り経験することになる新原ですが、異動直後は大変な苦労を味わうことになりました。

営業への転身と育休取得。2つの転換点を経て、さらに前へ

営業に転身した新原を待っていたのは、“未経験”の壁。

当時、営業部内では、チームメンバーの大半が携わる大型企画が進行中でした。新原が担当することになったのは、その時新たに立ち上がろうとしていた企画。それを、上司と新原の2人体制で動かすことになり、右も左も分からない状態で営業の1から10までを任されることになったのです。

新原「まず、見積書の書き方からつまずきました(笑)。開発時代はまったく触れたことのない領域だったからです。いざお客様先に出向いても、とくに外資系企業の場合は、お会いする方がことごとく経験豊富で高いポジションの方が多くて……。そうした方たちと会話するだけの能力が、自分に伴っていないことがつらかったですね」

しかし、新原がくじけることはありませんでした。ここから、ソリューション営業としての自身のキャリアを着実に切り拓いていきます。

営業に転身して4年目の2015年には、約1年間の育休を取得。そして2016年、再び同じポジションに復帰します。時短勤務からフルタイムへの段階的な復帰を目指す社員が多いなか、新原は、最初からフルタイムでの復帰を選びます。

新原「育休明けの働き方については、もちろん不安もありました。ただ、復帰前に信頼している上司に面談の機会をいただいて、自分なりに考えている働き方について、いくつかのパターンを伝えたところ、『裁量労働で頑張ってみればいいんじゃないか』と言っていただけたことで、決心がつきました」

そうは言っても、以前のように融通の利く働き方はなかなかできない身。日々の業務に、しっかりと優先順位をつけた上で、いかに効率的に進めていくか。そのことを強く意識するようになったといいます。

一方で、復帰後の大変さは、子育てとの両立とは別のところにあったといいます。

新原「私自身は、以前と同じようにやりたいという気持ちが強かったのですが、周囲は“復帰間もない同僚”として配慮してくれました。そのため、内心の『もっと任せてほしい!』という想いと現実とのギャップで、少し葛藤した時期もありました」

しかし、入社当初から「やりたいこと」が明確で、一貫してその想いに正直に行動してきた新原。折に触れて自らの希望を口にすることで、次なるチャンスを引き寄せたのです。

憧れだった、新サービスを生み出す仕事。楽しみながら駆け抜けた5カ月間

▲育休明けもフルタイムで復帰。仕事にも子育てにも全力で向き合う

育休から復帰して3年目の2018年。新原は、この年新たに発足した組織に立ち上げメンバーとして加わることになります。

その組織とは、サービスデザインによる新事業の立ち上げをミッションとする部署。「自分の身近な人たちにも便利さや面白さを実感してもらえるような“何か”を生み出したい」という、学生時代からの夢に一歩近づいた瞬間でした。

しかし、組織立ち上げ当初は、そもそも“何を”やるべきかが明確ではない、言わば「迷走期」だったといいます。

新原「ミッションも新しいし、組織も新しい。メンバー全員、当時は試行錯誤の連続でしたね」

事態が大きく動いたのは、初年度が間もなく終わろうかという2019年3月末。「国内初(※1)のレジ無しデジタル店舗」を出店する計画が持ち上がったのです。新原は、3人のメンバーからなるチームのリーダーとして、この計画の推進を任されることになりました。

(※1)デジタル店舗をビジネス企画検証から収益化まで、全ての工程をカバーするサービスは国内初の取り組み。

まさに急転直下の展開。その後プロジェクトは、わずか5カ月間という短期間で実験店舗のオープンに漕ぎ着けます。

新原「当社に小売店舗を作るノウハウは無いので、あらゆることが手探りでした。初めに作成した見積には店舗の内装費を計上できておらず、あやうく木の枠組みだけの店舗を作ってしまうところでした(笑)」

間違いなく難関ではありましたが、チームの雰囲気は明るかったといいます。「日本で最初にレジ無し店舗をオープンしてみせる」という想いが、メンバーの熱量を燃やすエンジンになっていたからです。また新原自身、リーダーという重責を負いながらも、「分からない」状況を楽しむことができていました。

新原「性格的に、『どうしよう!誰に聞けばいいんだろう』という状況を楽しんでしまうところがあるんですよね。一人で悲観せず、どんどん周囲の人に相談にのってもらう。小売店舗開発のノウハウはなくても、社内には財務や法務、知財といった関連分野のスペシャリストが大勢います。色んな伝手を頼り、知恵を借りることで前に進めることができました」

開発パートナーである中国のベンチャー企業との交渉の際には、現地に飛んで丸二日間かけて交渉を行い、その場で契約を締結。短期のプロジェクトであるため、スピードの担保には細心の注意を払ったといいます。

「国内初」であり「将来の事業の柱」になるサービスを目指して

▲チームメンバーと。新たなサービス創出をめざします。

2019年9月、NTTデータのデザインスタジオである六本木AQUAIR内にレジ無し店舗がオープン。同時に、レジ無し店舗出店サービス「Catch&Go™」の提供を開始しました。

入店時に、事前に決済手段を登録したQRコードによる認証を受けることで、レジでの支払いが不要になるレジ無し店舗。メンバーが目指した通り、こうした店舗の開業は「国内初」。当然、注目度は高く、新原も複数のメディアの取材に応じることとなりました。 

新原「社外からの反応で一番多かったのは、『まさかNTTデータさんが最初とは!』というものでした。まだまだ、NTTデータと言えばミッションクリティカルなシステム、という印象が強いのだろうなと感じましたね」

Catch&Go™は2020年1月、新たに顔認証機能とダイナミックプライシング機能(在庫状況に応じて価格を変動させる仕組み)を導入。機能拡充を続けています。しかし新原は、現状に満足していません。

新原「コロナの流行がなければ、早期のタイミングで実店舗としてオープンさせたいと考えていました。状況的に、当初の計画通りにとはいきませんが、実験店舗のオープンから丸1年経ったことですし、次なる打ち手をと考えています」

現在は、さまざまな立地や条件でのレジ無し店舗出店について、お客様とともに議論を重ねているといます。

そんな新原の今後の目標は、事業部の新たな柱となるようなサービスを企画すること。

新原「何より新しいことに挑戦するのが好き、というのもありますが、花火のように打ち上げて終わりというのではなく、組織への貢献につながるようなサービスを企画していきたいです。想いを形にするべく、スピード感を持って行動あるのみですね」

「身近な人たちにも便利さや面白さを実感してもらえるような“何か”を生み出したい」。

新サービス創出にかける熱い想いは、“未知”を恐れない行動力の源泉となり、デジタルビジネスの最前線をフィールドにする現在の新原を突き動かしています。