3.11を機に湧き出た「IT」への興味。待っていた非日常的空間

▲NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 小倉 広大

大学時代は、情報系学部に在籍していた小倉 広大。プレゼンテーション用のAR技術(人が知覚する現実環境を、コンピューターにより拡張する技術)の研究に没頭する生活を送っていました。海外の国際展示会への出展も経験するなど、充実した日々。

そんな小倉が、卒業後の進路としてIT業界を明確に意識するきっかけになった出来事があります。2011年の東日本大震災です。当時、小倉は大学1年生でした。

小倉 「地震発生後は携帯電話で通話ができなくなったり、計画停電が行われたり、いろいろな制約がありましたよね。

コミュニケーション手段が限られた中、私は情報収集や知人との連絡手段としてSNSを使っていました。非常時でも当たり前のように動き続けることに感動を覚え、 “止まらないシステム” をつくりたい、と思うようになりました」

その後、就職活動を進める中で、システムの運用業務というものを知って興味を持つようになったという小倉は、2014年にNTTデータに入社。

最初の配属は、自社の仮想デスクトップサービスBizXaaS Office®を手がけるチームでした。希望がかない、ここで運用業務に携わることになります。

入社1年目ながら、トラブルの発生時には夜通し解析作業にあたることもしばしば。

小倉 「思っていたより泥臭い日常でした。また、障害発生時の復旧作業はとにかく急を要するので、周囲の人たちの “本気” や “特性” がむき出しになる、ある意味で非日常的な空間でもありました。

当時新人の私の目には先輩社員達が超人に見えましたね。そういった本気の一面を垣間見られるのが楽しくもあり、自身の成長にもつながったと思います」

アメリカで触れた「クラウドサービスの今」に衝撃。そして定まった想い

▲海外での国際展示会にも出展するなど、研究に没頭した学生時代

ときに過酷を極める現場の中でも、周囲の人との関わりを通じて自らを奮い立たせていた小倉。周りからは「人に興味がなさそう」と言われることが多いと言いますが、自身について「根本的には人に興味がある」と分析します。

入社3年目には、お客様の運用業務の改善を目的とするプロジェクトのリーダーに。障害対応の場合とは異なり、現行のプロセスを見直し、新たなプロセスの導入・定着を図るのがミッションです。そこでは、変化への抵抗感からくる “摩擦” を味わったと言います。

小倉 「慣れ親しんだしくみを取り払って新たなしくみを導入するときに、人が身構えるのは自然な反応だと思っています。

そうは言っても、改善の手を緩めるわけにはいかないので、納得を得られるようにはたらきかけながら進めていくことになります。つまり、コミュニケーション抜きにしては何も進められない。このとき、仕事におけるコミュニケーションの大切さを思い知りました」

その後は、運用業務からいったん離れ、官公庁様向けのOA環境システムの提案業務に携わります。堅牢かつ信頼性の高いシステムを求められる中で、システムの設計から構築までを経験しました。

そんな折、小倉はある印象的な経験をします。それは、米サンフランシスコで開催されたBOX社主催のイベントへの参加。会場には、クラウドサービスのベンダー各社がプレゼンターとして多数出席していました。

小倉 「各社とも、自社の製品のアピールというよりも、クラウドサービスの提供価値や、目指す未来についてスピーチしているのが私には新鮮に映りました。

とくに、『デジタルツールはもはや福利厚生の一環である』『社員自らツールを選択できるべき。それによってエンゲージメントやパフォーマンスが高まる』といったフレーズには衝撃を受けました。自社の従業員も、サービスのユーザーであるという視点が感じられて興味深かったですね」

デジタルツールの最前線のムーブメントに触れたことで、小倉の胸にはある想いが芽生えます。

「日本のワークスペースの今を変えたい」

帰国後、入社6年目の2019年秋、現在の担当である「働き方改革」の推進リーダーに任命されることになった小倉。ミッションは、お客様およびNTTデータ社内のワークスペースのデジタル化。

最新のデジタルツールの活用方法の検討から、海外ベンダーとのディスカッション、さらには導入にあたっての方式検討から実際の導入支援までを担当することになりました。

アメリカでの経験をきっかけに芽生えた想いを原動力に、デジタルツールを駆使して「働き方改革」を推進していくことになったのです。

Afterコロナの「ワークスタイル」をクラウドサービスで変革

▲米サンフランシスコで開催されたBOX社主催のイベントにて

小倉が真っ先に取り組んだのは、自社の事業部内へのSlackの導入でした。しかし、ここでも運用改善業務のときと同様に、現行のしくみを変えることへの不安感、抵抗感からの “摩擦” を経験します。

事業部内でセミナーを企画したり、管理職層へも利用を促したり、若手を集めてどうすればより浸透するかを検討したり……。さまざまなアプローチを試しましたが、あまりいい結果は出ませんでした。そして小倉は、自身の考えを整理するためにも、いったん冷却期間を設けたと言います。

小倉 「自分のアプローチを見つめ直した結果、『なんとかして使わせる』というような考えが前に出てきてしまっていて、それぞれの立場や役職、感覚的な部分などへの考慮が足りなかったと反省しました。

その後は無理に使わせるという考えではなく、Slackを利用する上で悩みやすい部分のルール化など、アプローチの仕方を変更することで、徐々に浸透させることができました」

NTTデータはミッションクリティカルなシステムに強みを持ち、それに見合う強固なセキュリティルールを会社として長きに渡り運用してきた背景があります。

しかし、クラウドサービスを導入するためにはセキュリティの考え方から変えなければいけない。そのため、社内外を問わずデジタルツールの導入に対して、一歩引いたスタンスになりがちな人は少なくないと小倉は言います。

それでも、「日本のワークスペースの今を変えたい」という小倉の想いが揺らぐことはありません。

小倉 「2020年4月以降、新型コロナ感染拡大の影響を受け、在宅勤務に移行する社員が大幅に増えました。また、緊急事態宣言が解除された今も元の日常は戻って来ていないし、今後もいつ何が起こるかは、誰にもわからない。

ただ、どんな状況でもケースバイケースで選択できるツールがあれば、安心して業務を継続することができます。最新のデジタルツールを導入して終わりではなく、複数の選択肢から最適なものを選ぶことができる環境を整える。それが、『働き方改革』の目指すべきところだと考えています」

そして、「選択できる」環境を用意するためには、「ゼロトラスト」の前提に立った方式の検討が必要であると小倉は考えています。

ゼロトラストとは、いかなるアクセスも信頼せず、ユーザーとデバイスを毎回認証するセキュリティモデルのこと。基幹システムのクラウドサービス化へ。オフィス常駐からリモートワークへ。「働き方」を取り巻く環境が大きく変化している今、セキュリティの新たなスタンダードとして注目されています。

小倉 「ゼロトラストの世界観に移行することができれば、今あるテクノロジーを最大限に活用しやすくなります。そうすればきっと、ワークスペースのデジタル化のスピードも加速していくはずです」

新世界へのナビゲーターとして、デジタル未経験者が一歩踏み出す手助けを

▲趣味のスノーボード。仕事もプライベートも充実させ、小倉の挑戦は続きます!

「働き方改革」という正解がない領域に挑む毎日は、試行錯誤の連続です。また、思い描いた通りに物事が進展しないことも少なくありません。それでも、小倉は今が「楽しい」と言います。

小倉 「クラウドサービスは日々アップデートされています。ときに海外ベンダーともコミュニケーションをとりながら、最新のデジタルツールに触れ、それらの活用方法を検討するのは純粋に楽しいです。アプリと連携させるためのコードを書いて、さっそく自分で使ってみたり、複数のサービスの連携を試してみたり。今のポジションだからこその経験かなと思っています」

何より、変革につきものの摩擦や抵抗に、小倉は怯んではいません。

小倉 「今は遠巻きに眺めている人たちに、デジタルツールをもっと身近に感じてもらえるようなはたらきかけをしていきたいです。実際に触ってみれば、『こんな世界があるんだ!』という前向きな発見がきっとあるはず。新たな世界に一歩踏み出すお手伝いができればと考えています」

さらに、クラウドサービスの最前線に触れる中で、いつかは既存のサービスを利用する側ではなく、提供する側に。そんな想いを抱くようにもなりました。

小倉 「世界中の人々のワークスタイルを、より良いものに変化させることができるNTTデータ発のサービスをいつか生み出したいです。そのためにも、もっと知見を広げていかなければと考えています」

「移動」の必要性が問い直され、「働く場所」のあり方についてもより多様な視点での議論が起こりつつある2020年。大きな環境変化のただ中で「働き方改革」を目指す小倉の挑戦は、ますます熱を帯びています。