ボールを蹴ることを諦めた大学時代。「プロジェクト」に憧れITの道へ

▲NTTデータ 製造ITイノベーション事業本部 上野 哲明

幼いころからサッカー一筋だった上野 哲明。大学入学後もプレーを続けるつもりで、スポーツ系の学部に進学したものの、そこに集まっていたのは全国の強豪校出身者ばかり。周囲とのレベルの差を痛感し、サッカーの道を諦めます。

同時に、初めてスポーツ以外のジャンルに興味が向くように。在学中に1年間のアメリカ留学も経験し、就職活動では幅広い業界を見て回ったといいます。

上野 「当時は、グローバルビジネスが経験できること、世の中の変化に貢献できること、そしてサッカーのように一体感を持って仕事ができること、という軸で考えていました」

NTTデータへの入社を決めたのは、経営方針としてグローバル戦略を明確に打ち出していたことに加え、「プロジェクト」で取り組む仕事の進め方が、長年チームスポーツを続けてきた自身に合いそうだと感じたからでした。

2010年の入社後は、AMO(アプリケーション・マネジメント・アウトソーシング)ソリューションの開発・拡販をミッションに掲げる部署に配属になります。

AMOとは、お客様のシステムの基幹系システムにおける運用・保守の巻き取りを目的としたソリューション。いきなり新規の開発案件を受注するのではなく、現行システムの運用・保守フェーズを引き受けることで顧客理解や業務理解を確かなものとし、次期開発案件受注への確度を高める。そんな中長期の戦略を背負った部署でした。

ここで上野は、ふたつの壁にぶつかります。

第1に、開発経験や知識がほとんどなかったために、自部署が手掛けるソリューションの実態を把握しようにも、イメージが湧かなかったこと。第2に、ようやく完成したソリューションの拡販に奮闘するも、なかなか受注につながらなかったこと。

上野 「知識に関しては、ずいぶん苦労しましたが、携わっていく中でおのずと蓄積されていきました。本当につらかったのは、初めの2年間受注がなかったこと。開発プロジェクトに参画している同期を羨ましい気持ちで見ていました」

3年目にようやく、初受注。お客様から引き継いだシステムの運用・保守に、プロジェクトのリーダーとしての立場で携わることになります。

上野 「実際プロジェクトにアサインされたことで、お客様の業務を肌で感じられ、業務とシステムがどう密接に関わり合っているかを体感することができました。お客様の業務を知るおもしろさをこのときに初めて味わうことができたんです」

運用の構造改革のはずが……。降りかかる難題の数々

その後、AMOのチームは、ソリューションの提案という当初のアプローチに加え、運用・保守のコンサルティングサービスを展開。これにより、一気に引き合いが増加していきました。

上野は、数カ月スパンでのコンサルティング案件を通じて、運用・保守に関する経験値を着実に積み上げていきました。

そして入社6年目の2015年、関西にあるお客様先に単身で常駐することに。お客様の運用部隊の構造改革プロジェクトに参画することになったのです。

毎週月曜日は早朝6時台の新幹線で関西へ。週末前には深夜に東京へ帰る。そんな生活が2年ほどつづくことになりました。

常駐開始後、上野のもとには保守・運用の枠組みを超えた幅広い相談や要望が次々と寄せられました。

上野 「運用体制だけでなく開発体制も変えたいとか、新たに品質保証組織を立ち上げたいとか、そのほかにも、各種プロセスの標準化や人財育成に至るまで、私自身初めて向き合うテーマが複数寄せられました。お客様から見たら、私は“NTTデータの代表”です。だから、たとえ得意領域ではなくても、相応のアウトプットを出さなければなりません。身近には相談相手もおらず、このときはかなり苦労しました」

関連書籍を買って読む。調べる。週に一度のペースで帰社した際に、社内の有識者にヒアリングをする。そうやって仕入れた情報を、お客様に合うよう自分なりにカスタマイズして提示する──。

こうした地道なアプローチによって、それまで自身の知見の範疇外にあったテーマについても、お客様の期待に応えるアウトプットをし続けました。

上野 「自分の得意領域以外のことを求められるのは、苦しい経験ではありますが、そんな中でも自分なりに仮説を立てることで進めていけるものだな、とこのときに思いました。今の自分にできないことだからこそ、頭を使って考える中で工夫も生まれるし、大きな学びも得られる。関西に常駐していた2年間で、自分の業務の幅は大きく広がったと思います」

「自分にできること」の範囲を自ら狭めてしまわないこと。同時に、世の中の新しい技術や、お客様の業界動向に敏感であること。

知見のないテーマに直面した際にも、進んで手を挙げることができる自分でいるために、上野が心がけているスタンスです。

初めてのプロジェクト体験。ビール製造の常識を変えるDXの先進事例に貢献

▲KIRINビール横浜工場でのビール造り体験に、チームメンバで参加

ここまで、単独で業務を遂行することが多かった上野。プロジェクト体制で、かつ1社に長期間伴走し続けるような業務が経験したいと、入社8年目を迎える2017年、自ら希望して現在の部署に異動しました。

そして、異動から1年半ほどたったころ、キリンビール株式会社様(以下、キリンビール)の、AIを活用した濾過計画自動化のシステム構築プロジェクトを担当します。

濾過計画とは、発酵したビール類から酵母や原料を濾過するためのプロセスを、ビールの製造計画や多数あるタンクの使用状況、製品ごとに異なるタンクの洗浄ルールといった複数の制約条件を考慮して計画すること。生産現場でこれを担当できるのは熟練者のみであり、かつ最大6.5時間ほどもかかる難易度の高い業務です。それをAIの活用によって自動化するという狙いでした。

上野は、このプロジェクトのPMを担当。制約プログラミング技術を有するNTTデータセキスイシステムズのメンバーと共に開発を行い、2019年にはキリンビールの福岡工場での本格稼動に漕ぎ着けました。

2020年6月現在は、全国にある工場への導入を進めているところだといいます。

上野 「生産工場のDXを推進する非常に先進的な事例で、当社にとっても、キリンビールさまにとっても注目度の高いプロジェクトです。私自身も、お客様の業務に迫ることができて興味が尽きません。ビールという身近な品の製造工程に携わることができる喜びも大きいですね」

そして、「プロジェクトで取り組む」。これも、上野にとっては念願だったことのひとつです。

上野 「初めて10名規模のプロジェクトを率いることになり、チームの力を最大限に引き出すためにはどうすればいいかという観点で仕事を捉えるようになりました。ひとりではなし得ないことも、チームならば達成できる。サッカーをしていたころに感じていた、“チームで挑む喜び”を今あらためて実感しています」

目指すは、ワンランク上のDX。パートナー連携で可能性は無限大

▲事業部長も参加したオンライン飲み会。お客様の商品で乾杯!

メンバーの力を最大限に引き出すことのできるチームをつくる上で心掛けているのは、それぞれの役割を強固な“枠”にはめすぎないこと。

上野 「あえて“枠”をつくらないことで、“枠”以上の成果が見込めるし、その先にプロジェクトの成功があると思っています。当然おのおのの役割分担は必要ですが、互いの欠けているところを自然に補完し合えるような関係が理想ですね。

ちなみに、サッカーをやっていたときのポジションはセンターバックでした。ピッチ後方からチームメンバーを見守り、勝利のために失点を許さないところは、今のスタンスにも通じているような気もします(笑)」

そんな上野が今見据えているのは、お客様のDXにもう一段踏み込んだ形での貢献を果たすことです。

濾過計画システムは、人の手で行っていた計画作業の自動化という点で、工場の生産性向上に大きく寄与しています。今後は、お客様の競争力強化や企業価値向上に貢献できるような付加価値をさらに高めていきたいといいます。

上野 「これまで以上に品質の良いビールをつくれるようになるとか、個人の嗜好に合ったビールをつくれるようになるとか……そんな一歩踏み込んだDXの実現に貢献していきたいと考えています」

ITを活用すれば、どんなにハードルが高く思えるチャレンジもきっと実現できるはず。そう思うようになったのは、濾過計画システムの開発において、NTTデータセキスイシステムズと連携したことが大きく関わっているといいます。

上野 「制約プログラミングという特殊技術に初めて触れて、まさかこんなことが実現できるとは、という衝撃と喜びがありました。NTTデータグループには、ほかにもさまざまな得意領域を持った組織がありますし、それこそ社外にはまだ出会ったことのないたくさんの企業があります。

ユニークな強みを持った組織と積極的に連携しながら、ITの範疇にとどまらない“事業パートナー”として、お客様のDXを高い次元で実現していきたいですね」

孤軍奮闘の厳しさと、未知に挑戦することで得られる圧倒的な成長実感を誰よりも知る上野。今後は、未知の領域にチームの力で挑み、メンバーと共にいっそうの飛躍を遂げていきます。