自分発、世界へ。インターネットの可能性に魅せられて

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▲NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 王 俊傑

王がITと出会ったのは、小学1年生のとき。自宅のパソコンをインターネットにつなぎ、登場してまだ間もなかったポータルサイトに初めてアクセスした際の記憶は鮮明です。

王 「楽しそうなページが次々現れて『なんだこの世界は!!』と。子どもながらに驚嘆したことをよく覚えています(笑)」

インターネットが身近にある子ども時代を過ごし、大学進学時には迷わず情報系の学部を選択。このころには、「使う側」から「つくる側」へと関心がシフトしており、システム開発を学べるコースを専攻します。

大学3年次には、プロジェクト学習の一貫としてAndroidアプリを開発することに。当時は、Android1.6がリリースされたばかりのタイミング。アプリを開発し、Androidマーケットを通じて公開する人々が増え始めた時期とも重なりました。

王 「つくったアプリは実際に公開しませんでしたが、Androidマーケットに登録しさえすれば、自分たちがつくったものを全世界に向けて発信できる、と考えるだけで非常にわくわくしました。

『これ、いいよね!』という自分たちの価値観が、インターネットを介して誰でも瞬時にアクセス可能な状態になる。そこに魅力を感じました」

このときの経験から、王はユーザーに対してダイレクトに価値を提供できる「to C」のサービスへの憧れを抱くように。そして2012年、NTTデータへ入社します。

最初に配属されたのは、数百万人のユーザー数を誇るWebサービスの保守運用を担う部署。

「to C」のサービスという意味では、王の希望通りでした。ただし、所属はインフラ基盤チーム。「ユーザーへのダイレクトな価値提供」の観点からいえば、その手応えを感じにくい領域でもありました。

インフラ基盤担当として3年余りを過ごすうちに、当初抱いていた「to C」への想いはより強いものになっていきました。そんな折、同じお客様のもとで新しいプロジェクトが立ち上がります。

180°違う環境で生きた保守運用の経験。そして強みは「信頼」の土台に

王 「新プロジェクトの目的は、お客様が展開する全事業のWebサービスについて『検索機能の改善』を図るというもの。全社横断的なプロジェクトです。ここに、当社から私ひとりが参画することになりました」

Webサービスにおいて、「検索機能」はユーザー体験(UX:User Experience)そのものを左右する重要なファクターです。ユーザーへのダイレクトな価値提供を希望していた王にとって、願ってもない舞台でした。こうして、お客様先への常駐が始まります。

入社4年目にして、学生時代からの希望をかなえた王。しかし、プロジェクト参画当初は順風満帆とはいきませんでした。

使用するプログラム言語、データベース、開発環境。インフラ基盤チームのころとは、何もかもが異なりました。さらに、「検索機能の改善」というミッションを遂行するためには、それまで扱ったことのない検索エンジンやデータ分析に関する知識も必要でした。

王 「何より、お客様の技術力の高さに圧倒されました。中途入社の方も多く、精鋭ぞろいだったのです。システムのプロフェッショナルとしてお客様先にいる以上は、後れを取った状態ではいられない。だから必死で勉強しました」

知識面でキャッチアップするため苦労を強いられた王ですが、業務へのモチベーションが失われることはありませんでした。短いスパンでトライ・アンド・エラーを重ねる環境下で、ユーザーの反応を見ながら次々とアイデアを繰り出すことにやりがいを感じていたからです。

また、インフラ基盤の保守運用担当として過ごした日々は、王の強みになりました。

単独の事業に特化していたとはいえ、3年余りの間にお客様のサービスや業務への基本的理解ができていたからです。前へ前へと新機能の開発にまい進するメンバーが多いプロジェクトの中で、運用フェーズを見据えた提言ができる王のスキルは重宝されました。

王 「他のメンバーにはない観点から、プロジェクトを前進させるための発言ができたことで、徐々に信頼を得られるようになりました。結果、検索機能改善チームに要件が落ちてくる前の、各事業部との打ち合わせにも声がかかるようになり『よし自分の活路を見つけたぞ』と(笑)」

こうして、プロジェクトの前進に貢献する王ならではの価値を発揮したことにより、お客様とはベンダーとしてではなく、目的を実現する方法を共に考えるところから伴走するパートナーとしての関係を築けています。

データ+αのインプットから導き出す「仮説」を高速の検証サイクルに乗せて

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▲サービス価値向上につながる「検索」の改善に、スピード感をもって継続的に取り組んでいます!

王が検索機能の改善チームに参画して4年余り。プロジェクトは、サービスの価値向上につながる機能改善に現在進行形で取り組んでいます

ユーザーのダイレクトな反応をもとに、分析仮説検証のサイクルを高速で回すアプローチが「おもしろい」と王は言います。

王 「仮説が正しいかどうかは、もちろん机上である程度は予測できますが、実際にリリースしてみるまで本当のところはわかりません。

だからこそ、いきなり大きなスケールで新機軸を打ち出すよりは、比較的小さなスケールでスピード感を持って検証を重ねることで、机上ではわからないファクトを積み上げていく。そんなアプローチの大切さを日々実感しています」

実際にリリースしてみるまで本当のところはわからない。それは、データ分析の難しさと表裏一体です。

王 「抽出したデータは、人の検索行動のある一部分を反映したものであって、すべてではありません。たとえば、文字情報と画像のセットで検索結果を表示する画面があったとします。

ユーザーのその次のアクションが、最初の画面で表示された画像から受ける印象に大きく左右されるとすれば、文字情報だけに着目したデータ分析をどれだけ行ってもピントがずれたものになってしまいます」

ユーザーのアクションに関しては、データには表われにくい定性的な情報と、実際に取得できたデータとを相互に行き来しながら、裏づけのある仮説を構築していくことが重要です。

王 「各事業部では、かなり力を入れてユーザーインタビューを行っているので、ユーザーの特性や行動について定性的な情報を持っています。データのみに固執するのではなく、事業部の担当者と情報を持ち寄って、ユーザー像のイメージをすり合わせる。

それが、改善のサイクルを回す上で重要な拠りどころになりますし、各事業部のKPIを横断プロジェクトの立場からアシストする方法だと思っています」

お客様と良好な関係を築きながら、ユーザーへのダイレクトな価値提供に奮闘する王。他方で、自部門の後輩の育成にも力を入れています。

きっかけは、お客様の技術力の高さを目の当たりにしたことでした

王 「中途入社の方々だけでなく、新卒でも学生時代から技術をみっちりやってきている方が多くいらっしゃいます。

全体的にレベルが高い。さらに、社内でもスペシャリストと呼ばれるような中堅以上のエンジニアが新人育成を行うスキームもできていて、これはぜひ見習おうと考えました」

そうして立ち上げたのが、自部門の新入社員を対象にした4カ月の研修プログラムです。

技術競争力を備えたエンジニアを育てるため、研修プログラムを立ち上げ

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▲スタートから3年目となる、新入社員育成のための研修の様子

研修では前半2カ月にプログラミングの基礎講習を、後半2カ月にチームによるアプリケーション開発を行います。

重視しているのは、現場で経験を積んだ先輩社員が講師となり、「生きた知識」を教えること。そして、研修を通じて新入社員に数多くの「失敗」を経験してもらうこと。2019年現在、この取り組みがスタートして3年目になります。

王 「開発上のルールは集合研修で勉強しますが、実際にチームで経験して初めて、そのルールがなぜ必要で、守らないとどうなるかが理解できると思うんです。

研修は『失敗する場』。盛大に失敗した上で、本来はどうアクションするべきだったかを振り返るところまでがセットです。『じゃあ次はどうする?』という会話をメンバー間で交わす時間を重視しています」

王自身はお客様先に常駐している立場であり、業務外となる研修プログラムの運営には負荷もともないます。それでもこの取り組みを推進しているのは、先輩社員が実地に得た知見を事業部内に循環させるしくみが必要だと考えているからです。

初めて検索機能改善プロジェクトに加わった際、自身にとっても所属部門にとっても経験のない領域で奮闘した経験があるからこその着眼点です。今後も、運営にともなう負荷を軽減しながら、目的に沿ったかたちで継続する方法を模索していきます。

王 「私の所属する事業部では、中途入社の採用も積極的に行っています。『やりたいこと』がある人、そしてそれを実現する意志のある人が活躍できる職場だと思います。データサイエンスやデータ分析に興味がある方も大歓迎です」

そんな王自身のキャリア展望は、「ビジネスを創出できるエンジニア」になること。

王 「新たなビジネスやサービスの創出にあたっては、どんなに自分が『これはいい!』と思うアイデアでも、お客様にすぐには受け入れていただけないことが往々にしてあります。

でも、諦めずにノックし続けて、自分が信じる『これはいい!』をひとつずつ形にしていきながら、お客様やユーザーに価値を届ける。そんな心意気で、新ビジネスにつながるアクションを積み重ねていきたいです」

画面の向こうに広がる世界に、新たな「価値」を届けたい。その想いを原動力に、王はデータとユーザーの声を相互に行き来しながら、分析を起点にしたサイクルに挑み続けています。