「金融ITオープン戦略」を牽引しているNTTデータの深堀 桂典。3つの“オープン”をキーワードに、さまざまな業種と共創していく社会を実現するべく奮闘しています。入社以来、一貫して銀行の勘定系システムに力を注いできた深堀が、金融を軸に横へと広がっていくワンストップで便利な未来への想いを語ります。

勘定系システムに力を注ぎ続けた、金融システムのスペシャリスト

NTTデータの深堀 桂典は、入社以来一貫して地方銀行向けビジネスに携わっています。深堀が構築初期(要件定義)から携わった「BeSTA(ベスタ)」は、NTTデータが開発した標準バンキングアプリケーション。預金、為替、融資といった銀行の勘定処理を実行する業務システムです。2004年のサービス開始から2021年6月現在までの間に約50もの金融機関で安定稼働しています。

深堀 「金融に拘っていた訳ではありませんが、規模の大きなシステム開発を担当したいと希望していました。入社してすぐに配属されたのがBeSTAの開発部門です。まだ要件定義などが始まったばかりだったのですが、開発や試験にも携わり、カットオーバーまで経験させてもらいました。途中2年間ほど違う業務に携わりましたが、社会人人生のほとんどを勘定系システムに注いできたといっても過言ではありません」

20年近く、勘定系システムの第一線で力を注いできた深堀。現在は戦略企画担当部長として、地方銀行向けの新しい事業創造や、BeSTAを使った次世代のバンキングシステムの検討、戦略立案などの業務を担っています。

検討中の次世代バンキングシステムが実現できれば、エンドユーザーにとって利便性が高くなり、銀行側にとってもコスト削減と作業の効率化につながります。しかし、銀行の場合、ただコスト削減や効率化を目指せば良いというように単純にはいきません。

深堀 「勘定系システムは“信頼第一”。非常に安全性が高く堅牢に作っています。また、地方銀行向けに提供している勘定系システムは、複数の銀行が共同でひとつのシステムを使っているため、結果的にメガバンク並のデータ量になることも多いのです。大量なデータをいかにトラブルなく処理していくのかという点も重要になってきます」

勘定系システムがダウンすると、お客様である銀行はもちろん、その先にいる個人利用者や企業にも迷惑がかかってしまいます。そのため「いかに安心安全に永続的に使ってもらうか」という点に最も気を配る必要があるのです。

深堀 「さまざまな課題をお客様と一緒に乗り越えていき、安定して動きだせたときは感慨もひとしおです。失敗してしまうと社会的な影響が大きいというプレッシャーがある一方で、うまくいったときの喜びはとても大きいと実感しながら仕事をしています」

信頼や安定は必須──ニューノーマル時代に求められる金融のデジタル変革

時代の流れとともに、銀行に求められるものが変化している、と深堀は語ります。 

深堀 「たとえば、昔ならば銀行は、預金や融資などの方面から新しいサービスを提供して他行との差別化を図っていました。しかし、最近ではキャッシュレス決済のような、FinTech(フィンテック)を中心としたさまざまなサービスが顧客の利用体験から作りだされることが増えてきています。顧客がいいな、と思う商品をどんどん出していき、そこに決済や貯蓄といったバンキング機能を繋いでいく。そういう形でサービスが広がっています。

銀行側もそうした従来とは異なるアプローチで、バンキング機能に入ってくる動きに合わせて対応しなければいけなくなってきているのです。当然ながら、銀行を支える私たちシステム開発側もその変化に柔軟に対応していかなければなりません」

これまで銀行が新しいサービスを始めるときは、勘定系システムを改修する形で実現するケースがほとんどでした。信頼性を第一に考える銀行としては、勘定系システムに変更を加える際には時間と手間をかけ、企画検討から実現までに年単位の期間がかかってしまうることも少なくありません。しかし、その作業にもスピードが求められる時代になってきているのです。

深堀 「お客様自身も“新しいことを早く実現したい”という気持ちが強くなっていると感じます。しかし、勘定系システムは、ここまで何十年もかけて重要な機能を備え、堅牢に作ってきました。今後はさまざまなアプローチで銀行の機能が使われていくことを前提に考えなければいけませんが、勘定系システムの既存の機能や信頼性はそのまま活かせるようにしていくことが大切です。

そのため、安定性を重視したい勘定系システム部分には手を入れず、外部とスムーズにつながることができる環境を整えていく必要があります。ほかのサービスと手軽に連携できるようなAPIを整備し、勘定系の機能を使いやすく開放していくような開発の流れになっていくと考えています」

勘定系システムを安全にかつ使いやすく開放していく流れが、NTTデータの金融ITオープン戦略へとつながっているのです。

キーワードは「オープン」。ポストコロナ時代に求められる異業種との共創

新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、対面が当たり前だったもの・ことが非対面やリモートで完結するようになるなど、人々の働き方や生活様式が大きく変化しました。もちろん、銀行にもこれらの波が来ていると深堀は感じています。

深堀 「最近の傾向として、現金支払いやATMの利用数が減っているのに対し、オンライン取引が急増しています。コロナ禍がすぐに収束するのは難しいと考えると、銀行もこの1~2年がデジタル変革を強く求められるタイミングになるかもしれません」

NTTデータは、新時代に対応した「金融ITオープン戦略」に基づく「Open Service Architecture ™(オープンサービスアーキテクチャー、以下OSA)」とその関連サービスを2020年10月に提供開始。深堀は、金融ITオープン戦略の立案および実現の担当者です。

深堀 「これからは、1社だけで何か新しいビジネスを実現するのではなく、異なる事業を行う人々が共に同じ方向へ動くようになっていくのではないかと思っています。そのときに必要になってくるのがOSAで掲げている3つの“オープン”です」

3つの“オープン”とは、まずそれぞれの事業者がAPIを開示することで共にビジネスを組み立てていく「Open API」。BeSTAの動作プラットフォームにオープン基盤を加え、他社勘定系なども利用可能にすることで外部とつないでいく「Open Platform」。そして、行政や一般企業と新しいビジネスを共創していく「Open Innovation」です。

この3つの“オープン”により、金融だけでなく多種多様な業界がつながりあう、ポストコロナ時代に向けた新しい社会の実現を目指しています。

深堀 「自社サービスにこだわりすぎてしまうと、どうしても限界があるのです。そのため、今回は他社も含めて既存の勘定系サービスを活用していきたい。そして、その先にいる利用者にとって1番メリットがあるようにしつつ、多くの事業者と協業・共創できるような形でつながっていけると良いなと思います。

ただし、当然のことですが、オープンにすることでセキュリティリスクをともなうことになります。このあたりについては、長年培ってきたインターネットバンキングなどの厳格な認証機能を用いて、しっかりと安全性を担保して外部サービスを使っていただけるように準備しました」

“他社を含めてオープンにする”というコンセプトを発表した際には、周囲から驚きの声が聞こえてきました。

深堀 「特定の事業者がサービスを提供する際には、その事業者の製品をベースにするのが一般的です。そういう意味で、自社のサービスにこだわらずオープンにすることは、今までにないスタイルなのだと思います。今後の展開や一緒に何ができるのかという点も含めて、周りの方から期待されているのをひしひしと感じています」

社内でも繰り返し議論が行われ、さまざまな意見が出ました。しかし、最終的には「取り組み自体に参加してもらうためには、他社を含めてオープンにする部分に関してブレてはいけない」という結論になったのです。

金融×異業種で創る未来──目指すはワンストップで使える便利な世界

OSAがスタートしてから約半年。金融ITオープン戦略を進めていく上で、さまざまな課題点が見えてきました。 

深堀 「現在は、APIの提供者と利用者がそれぞれ個別に取引しており、効率が悪いと感じています。たとえば、利用者側から見た課題は、適切なAPIを選べないという点。数多くのAPIから、どれを選択すれば自分がやりたいことができるのかを判断するのが難しいようです。

逆にAPIの提供者側からすると、利用者と個別の対応や調整をするのが大変だという課題があります」

利用者と提供者が互いに課題を抱える中、NTTデータは金融APIの利用拡大を活性化させる“市場”として「APIマーケットプレイス」を整備中です。

深堀 「まず、第一弾として“カタログ機能”と“共創機能”の提供を考えています。APIを利用したい人が簡単なアカウント登録をするだけで、API提供者が掲載した詳細仕様やサービス事例などを確認でき、テスト実行まで行うことができるのです。

また、コミュニティ機能を持たせることで、利用者と提供者の共創を促しています。その結果マッチング率が上がり、API利用の活性化が可能になるのです。有料にしてしまうと広がりにくいというデメリットがあるため、最初は無料で使ってもらえるような形で準備を進めています」

多くの利用者に、上手に活用してもらいたいAPIマーケットプレイス。今後は、まず自社APIや金融系APIを中心にスタートし、将来的には行政や他業種法人などのAPIも増やしていく予定です。

深堀 「利用者目線で見ると、やはりワンストップでさまざまなサービスが使えるのは便利だなと思います。OSAを介して、金融機関だけでなく、自分の生活や事業に密着したサービスが連携して使えるような世界が理想ではないでしょうか。

金融×自治体のコラボサービスや、一般企業と金融を掛け合わせるようなことも実現できるのではないかと思います。そのような、業際ビジネスに貢献できるようなシステム提供ができるのが理想です」

OSAを活用し、金融業界から横へ広がっていく未来を描く深堀。業界の垣根を超えたサービス連携により、利用者がより使いやすく生活しやすい世界の実現を目指して突き進んでいきます。