データ活用時代の到来が謳われて久しくなります。蓄積され、流通するデータ量が爆発的に増えている一方で、果たしてどれだけの企業がそのデータを十分に活用できているでしょうか。データ活用が劇的な進化を遂げるためには何が必要か、そのポイントを解説します。

データ活用における4つの課題 

データ流通量の爆発的増加は2000年代から言われ始め、今もその勢いは増し続けています。データ活用に関するソリューションがさまざまなベンダーに存在するのも、市場の大きさと注目度の表れです。一方で、さまざまなデータ分析ツールが世に出ているにも関わらず、70%以上の企業が今のデータ活用に不満を抱えています。

なぜこのようなことが起きるのかを考えてみると、問題はツールではなくデータのほうにあるのではないかという考えに至ります。素晴らしい資料やツールもありますが、肝心のデータがなかなか整備されていない、もしくは本当に必要なデータを網羅的に使えていないのです。 

NTTグループをはじめ、いろいろな企業が調査した結果では、データ活用におけるポイントは大きく「組織」「コスト」「人材」「未活用データ」に分けられます。それぞれのポイントで抱える課題を解決し、お客さまのデータ活用を推進するソリューションブランドとしてNTTデータが提供しているのが、「ABLERⓇ」です。

ABLERは、さまざまな要素技術を組み合わせ、機械による人間と同程度のデータ解釈を可能とし、あらゆるデータを圧倒的なスピードで処理することができます。企業内外の色々なデータの中から、営業活動や経営判断に使えるようなインテリジェンスの情報抽出をする、もしくはエンドユーザーに速やかにお届けすることを追求しています。以下で、それらのポイントを説明します。

①「組織」づくりのサポート
DXやイノベーションを専門とする部署が立ち上がったものの、新しい領域であるがゆえに担当できる人がいない、実態としての組織づくりができないという問題があります。私たちはABLERを単なるシステム導入にとどまらず、コンサルティングから運用まで一気通貫のソリューションとして提供しています。

必要なデータを収集するために、利用者が情報を入力しやすいシステム設計とするのはもちろんのこと、例えばデータを登録することをKPIと関連付けるなど、組織や風土づくりのお手伝いも実施します。人間が一生懸命機械にデータを渡せば渡すほど機械はどんどん賢くなるので、そこのインセンティブ設計は非常に重要と考えています。

②明確な「コスト」効果
データ活用のためにデータウェアハウスを作りましょうといっても、投資対効果を明確にしづらいことがあります。なぜなら、データ活用で得られる利益や、圧縮できるコストを明確に定量的に表すのが難しいからです。投資には、業務効率化やコスト削減といった「守りの投資」とトップライン向上や利益を生み出す「攻めの投資」の2つがあります。

私たちは、お客さまと守り/攻めの両輪で投資を考えていくことが重要だとお話をしています。守りの投資によって削減されたコストをもとにコアコンピタンス業務に投資したり、業務効率化によって人材の最適化がはかったりと攻めの投資に転じることで、最終的にトップライン向上につながります。

➂「人材」の有効活用
お客さまの中には、データサイエンティストやアナリストが絶対的に不足しているという問題もあります。それらの職種の方は、業務の60%以上を分析作業の前のデータ準備作業に費やしているケースが多いとの調査結果もあります。

ABLERはいままでは人間でなければできなかったデータの整形などの作業をシステムで代替できるため、データサイエンティストやアナリストの方が本来の分析業務に100%の力を注げる環境をご提供することができます。

④「未活用データ」の活用
活用のために蓄積したデータの量や質に問題がある、もしくは使えていないデータが多くあることで、データ活用が進まないケースもあります。データを活用する上では、自然文・テキスト文、いわゆる非構造化データが実は企業にとっての宝物なのではないかと思っています。

過去にNTTデータが提供した、情報をシェアするためのシステムでも、必要なデータをプルダウン選択式にして、そこに入り切らないものはテキスト欄に入力してもらう形態にしたことがありました。

プルダウンの値を取れば分析ができると想定していましたが、実は一番大切なメンバー間・会社間での共有情報がすべてテキスト欄に書かれているというケースが多く見られました。テキスト欄に重要な情報が入っていると、その部分は機械が意味を理解することが難しく統計解析ツールでは扱いづらい。

このように、せっかく高度なアルゴリズムを使って予測をしても、インプットデータに大事な要素が欠けているということが発生しています。テキストの中から企業経営や営業活動に資するデータが抽出できれば、統計処理するツールもより役に立つアウトプットが出せると考えています。

ABLERでは、点在しているさまざまなシステムにある非構造化データを一箇所に集め、効率的に探せる状態、見える状態にします。また、人間が見るのと同じようにデータの種類や意味を判断して自律的に動けるシステムへと進化させるため、取り組みを進めています。

非構造データの処理というと複雑なイメージを持たれるかもしれませんが、私たちのやっていることは実はシンプルです。たとえば、携帯電話のマニュアルに「SIMカードが認識されてない場合はこうしてください」という解説があるとします。人間の目で見ればこれはどういった時に発生するのか、どこで故障が発生しているのか、問題への対処方法がわかります。

今述べたような人間の考えを、自然言語処理やさまざまな技術でタグという形で意味を付与してデータとして蓄積していくのです。

アプローチ手法はいくつかあります。一番ベーシックなものは辞書を登録して、キーワードベースで当たりをつけるパターンです。辞書登録にかかる負担を軽減するため、最近では自然言語処理のエンジンや機械学習を組み合わせています。まずキーワードベース、ベーシックなルールベースで自然言語処理をしてみて、振り分けがうまくいかなかったところに対して機械学習を追加する形をとっています。

最終的な理想は、入力がなくなることです。音声でマイクに向かって話した内容がテキスト化され、それがABLERに流れて自然言語処理がされ、画面で見えるような流れになります。私は、あと5年したらキーボードが世の中からなくなると思っています。音声入力は非構造化データに対応する部分であるので、よりABLERの活躍できるフィールドも広がるでしょうし、そんな世界が来たら面白いなと期待しています。

なぜ、金融分野で「データ活用」に取り組むのか?

私は入社以来、リース会社向けのWebシステムの開発と営業、地方銀行向けのパッケージ商品やメガバンクのプロジェクトなど、金融分野のお客さまを相手にさまざまな仕事を経験してきました。

金融機関でもシステム統合案件が多くあり、また私自身もそういった案件にも関わっていました。システム統合の対応においては、元々それぞれが異なるシステムを使っていたため、異なるフォーマット同士のデータを整理する作業には特に苦労しました。

そんな折に、社内で「データレイアウトをしっかり整えて移行するべき」という従来の概念から脱却できるのではないか、という動きが出てきました。そこでNoSQLデータベースに着目し、私自身も「データ活用」の分野に深く関わるようになりました。

もともとは金融機関向けに始めた取り組みでしたが、システム統合はどこの業界でも発生するものです。自分たちの取り組みは他のインダストリーにも展開できるものだなと思い、最近では法人分野や公共団体のお客さまの支援も行っています。

データ活用の未来に向けて 

いままでは、お客さまの意識も含めて、データ活用の土壌を築くことに注力してきました。今後は、各社の中で整備されたデータの流通を促すような取り組みを行っていきたいと考えています。

私の経験として、お客さまとデータ活用の案件に取り組む中で、一箇所に溜まっているデータだけを分析しても想像を超えるような結果が出てこないこともあることがわかってきました。一方で、種類の異なるデータをかけ合わせて分析すると、想定以上の面白い結果が得られることもありました。

会社の中で溜まっているデータを会社の中で活用するだけではなくて、FinTechやAPIも活用しながら、企業同士がデータを共有することで新しい付加価値が生まれるのではないかと思っています。

例えば、自動車会社と損害保険会社がデータを共有することで、双方にとって新たな付加価値が生まれています。

自動車の走行距離や運転特性といった運転者ごとの運転情報を取得・分析し、その情報を基に保険料を算定するテレマティクス保険が増えてきていますが、保険会社は自動車会社の持つコネクティッドカーのデータの活用によって更なる保険商品の開発を進めています。一方、自動車会社は保険会社の持つドライブレコーダーのデータや事故データを活用し、自動運転の発展につなげていけます。

私は、NTTデータがずっと大切にしてきた「繋ぐ」役割を、データ活用の分野でも発揮できれば、と考えています。金融機関をはじめとするさまざまな業界のお客さまを支援しているからこそ、NTTデータがその役割を担えるのです。

データを「繋ぐ」ためには技術的なイノベーションが必要となるので、そこもNTTデータの力の見せどころです。技術とビジネスの両方の側面で、お客さまを支えるイノベーションを起こし続けていきたいと思っています。