NTTデータ ビジネスソリューション事業本部の高橋 淳です。

企業内のデジタルワークスペースを実現するためのソリューション開発部隊に所属しており、世にあるセキュリティ技術や最新クラウドサービスの技術検証、お客様への提案活動・導入支援を行っています。

労働時間の削減や少子高齢化による労働人口の減少といった社会課題に対応すべく始まった働き方改革。多様な働き方の実現に向けて、企業のワークスペースも大きく変化していく必要があります。これまでの企業の従業員のためのIT環境である「ワークスペース」は、セキュリティを理由とした制限事項が多く、ユーザにとって使いにくくかえって生産性を下げてしまう環境が大多数でした。昨今では、最新技術を活用し、セキュリティは担保しつつもユーザの使い勝手の良い、働く意欲を高める環境を目指した「デジタルワークスペース」に注目が集まっています。

なぜ従来のワークスペースが問題か?デジタルワークスペースになると何がうれしいか?デジタルワークスペースにするにはどうすれば良いか?について、私なりの知見や考えをご紹介していきたいと思います。

企業のワークスペースは時代遅れ?
従業員目線の企業内IT環境とは?

ITの技術進化はとても早く、我々の日常生活にも深く浸透しています。プライベートでも、スマートフォンをはじめとする最先端の機能を備えたデバイスを高速インターネット回線につなぐことで、生体認証での端末ログイン、クラウドストレージ/チャット/テレビ電話といったリアルタイムコミュニケーションツールなどを、クラウド上で利用することができるようになりました。クラウドアプリケーションを利用することで、自分が意識しなくても、常に最新のIT技術を日常生活の中で利用できるようになっています。

ところが、ひとたび企業のワークスペース環境に入ると、一気に時代が逆戻りします。スマートフォンの利用が許可されていない、モバイルでのチャットが利用できない、インターネットの利用が制限されている、端末やシステムのレスポンスが遅い、自分の好きな端末が使えない、レガシーなブラウザでしか動かない使いにくい社内システム、ネットワークや端末の制約でテレビ会議が快適に行えない・・・。

IT管理者も限られたリソースでIT環境を懸命に整備しようとしているものの、セキュリティやシステムリソースの制約により、我々が普段プライベートで利用しているIT環境に比べると、どうも使いにくい、効率が落ちるシステムになっている場合が多いと思います。

このようなワークスペース環境に今のデジタルネイティブな新入社員が入ってきたらどう思うでしょうか?まさに「原始時代」にタイムスリップしたような感覚になるかと思います。

自分たちは大学などでは最新デバイスを駆使して、最新のクラウドサービスを活用してきたのに、企業ではそれが使えなくなる。生産性が大きく下がるため、優秀な人財であるほど企業に失望しパフォーマンスが発揮できないと感じ、下手をしたら転職されてしまう可能性もあるでしょう。

制限されたワークスペース環境は社員の生産性が下がるだけでなく、その企業で頑張って働きたい・貢献したいと思う気持ち、エンゲージメントが低下していきます。

最近では入社前のQ&Aで、macOSを使えますか?Slackは使えますか?みたいな質問もあるようです。入社を検討している社員にとっても、まさにワークスペースは福利厚生の1つであり、優秀な人財に企業が選択されるためのカギとなるでしょう。

このように、企業ワークスペースの近代化はユーザにとって悲願となっているのです。

問題が山積み?対応に苦慮するIT管理者

従来のワークスペースはセキュリティ上の懸念もあります。従業員が不便に感じれば感じるほど、抜け穴を探して便利に仕事ができる方法を探すからです。

例えば、社内外とファイルのやりとりをする際、容量制限のあるメールでしかファイルのやり取りができなければ、アクセスできる大容量のクラウドストレージを探してファイルを共有したり、モバイルチャットが許可されていなければ個人所有のスマートフォンにインストールしてあるチャットツールで業務連絡したりすることも考えられます。特にLineでの業務連絡は身に覚えのある方も多いのではないでしょうか?

これらのIT管理者が把握していない行為をシャドーITと呼びます。従業員はあくまで現在の環境が不便だからシャドーITの行為を行うため、単純に利用を禁止するのは根本的な解決になりません。従業員にとってより便利な環境を提供することがシャドーIT撲滅の1番の近道となります。

また、IT管理者の稼働増加も問題になりつつあります。ITシステムの複雑化により、企業内の管理サーバが増加しており、毎月セキュリティパッチを適用する業務も増加しています。近年はOSのバージョンアップやソフトウェアのバージョンアップも頻繁に行われる傾向にあるので、サポート切れを防ぐために管理サーバのシステムのバージョンアップ等も頻繁に行う必要があり、対応に苦慮しているIT管理者も多いでしょう。

このように、従来のワークスペースの対応で疲弊しているIT管理者も多くなっています。

企業競争力の低下?経営者の課題

従来のワークスペースは経営者の目線でも問題になります。従来のワークスペースはオンプレミスで構成し、NW機器や管理サーバ等のハードウェア、そしてそれに関わるパッケージソフト等、導入のために莫大な初期投資を行います。そしてひとたび導入してしまうと、そのシステムを途中で変更することは困難であり、通常は耐用年数の期間(通常5年)は維持する必要があります。

するとどうでしょうか?IT技術の進化に伴い企業競争力を高めるため新しいシステムを入れたくても、一度入れてしまったらなかなか変更できないことになり、外部環境の変化に弱くなります。ライバル企業はWeb会議やクラウドストレージを使いこなして生産的な活動をしている一方で、自分たちの企業はオンプレミスの使いにくいシステムを使い続けると当然企業としての競争力も失っていくでしょう。他社は最新のITシステムを導入して生産性を上げているのに自社は指をくわえて次の更改時期を待っていることしかできないのです。

また、次のシステム更改時には莫大な投資をしてシステムを入れ替える必要があります。定期的に莫大な投資が必要になることは、経営上のリスクにもなるでしょう。

このように、経営者にとっても従来のワークスペースは悩みの種になります。

課題の多いワークスペースになってしまう理由は?

ではなぜ、このように企業のワークスペースは課題の多いワークスペースになってしまうのでしょうか?私は以下の理由があると考えています。

・オンプレミス環境に依存している
企業はこれまでオンプレミスのシステム(自前でサーバ機器を用意し、そこにシステムを構築)でワークスペース環境を構築してきました。結果、前述したように、一度作ってしまうとシステムの変更が難しくなってしまいます。オンプレミス環境では、時代のトレンドや技術のトレンドに追随できず、気づいたときには時代遅れとなった使い勝手の悪いシステムになっていくのです。

今はOSやアプリケーションは日々更新され機能追加がされていますが、オンプレミスのシステムだとその更新を適用し続けるのは人員・コスト・時間の面で非常に困難になります。

・境界に依存したセキュリティの守り方になっている
企業としてセキュリティインシデントの発生はすなわち企業価値の低下、最悪の場合、企業存続が難しくなるため、何より守らなければならないことです。守る方法は簡単で、境界を作ることでした。すなわち、インターネットは危険、社内NW環境は安全と考え、インターネットと社内NWの間をFWやVPN等の技術で守ります。

 ところが、そうすると社外へのデバイスの持ち出しも制限され、技術進化の源泉であるインターネットやクラウドサービスの利用にも制限が掛かります。今や守るべきデータの大半はクラウドにある企業も増えています。また、リモートワークで境界の外にデバイスを持ち出すケースも増えている等、境界防御の意義は無くなりつつあります。

そして昨今は標的型攻撃やファイルレス攻撃など高度なセキュリティ攻撃により、境界を突破される事例も多く、社内であっても安全だとは言えない環境になっており、境界型の防御は限界にきていると言えるでしょう。

このように、企業のワークスペースはどうしてもオンプレミスや境界防御に依存し、閉鎖的になってしまいます。そこで次回では、企業のワークスペースをオープン化し、既存のワークスペースの課題を解決できる「デジタルワークスペース」について、ご紹介していきます。

次回予告:DX時代のデジタルワークスペースVol.2
「デジタルワークスペースに移行せよ!」

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