働き方改革やテレワークの導入、様々なセキュリティ対策が進む中、NTTデータでデジタルワークスペースオファリング BizXaaS Office®を中心に、お客さまに様々なご支援を進めてきました。数々のお客さまの「働く場」をデジタル化する取組みに奮闘してきた経験から、現在、そしてこれからの企業に必要なことについてお伝えします。
デジタルワークスペースにまつわる3つの変化
NTTデータでは、企業等におけるPC環境をクラウド上で提供する「BizXaaS Office(以下:BXO)」を2010年から提供しています。私はBXOのオファリング責任者として、日々お客さまの「働く場」のデジタル化ともいえる、デジタルワークスペースを提供し、働き方改革のお手伝いをしてきました。
ここ数年、テレワークの導入をはじめとする、デジタルワークスペースが浸透してきたと感じていますが、特に、昨年から今年にかけては大きな環境の変化がみられています。
まず一つは外部環境の変化です。
2019年の働き方改革関連法施行、2020年の新型コロナウイルスの流行で、これまでデジタルワークスペースの導入に懐疑的だった企業も取り組まざるを得ない状況になってきました。ただ、「まずは始めてみる」という状況においても、明確なゴール、目標を設定し、目指す姿と実態とのギャップ改善に向けた具体的なアクションに繫げられている企業はまだまだ少ないことは課題の一つだと思っています。
2つ目は、IT環境に対するコスト意識の変化です。
BXOでは、デジタルワークスペースにおける代表的サービスとして、お客さまのPC環境に代わる、仮想デスクトップというサービスを月額利用料の形態で提供しており、ウイルス対策やOSのアップデートをユーザーは意識する必要はありません。しかし、数年前までは、ハードウェアとしてのPCの購入費用と、仮想デスクトップの利用料のコスト比較をされるケースが多くありました。
PCの購入費用は「モノ」のコストでしかありません。しかし実際は、ウイルス対策やOSのアップデートといった、それを「使う」ためのコストが継続的に発生するのです。こうしたいわゆる「シャドーコスト」は、これまでユーザーであるお客さまの従業員一人ひとりが負っていました。それが昨今、PC紛失による情報漏洩等のリスクが広く認識されるようになったこともあり、PC利用に伴うリスクやシャドーコストを含めた全体的な視点で、仮想デスクトップ利用との比較を考慮するケースが増えてきたと思います。
3つ目は、従業員に対し多様な働き方の選択肢を提供するという企業の意識変化です。
以前はテレワークを実施していても、「生産性の高い業務は会社に行かないとできない」といった風潮がありました。しかし最近は「従業員がライフステージにあわせて多様な働き方ができる仕組みを整備しないと、間接的な損失になるのではないか?」という観点でご相談いただくことが増えつつあります。
これまで、デジタルワークスペースといったIT環境の整備は、コスト削減の観点を中心に検討されてきました。しかし昨今、企業が従業員にとっての利便性や、働き方の多様性を提供することが、優秀な人材を確保し、企業の競争力を維持するために重要視されるようになっています。その手段としてIT環境の整備をするという考え方に変わってきたと言えます。
特に若い世代は、大学でSlackなどのデジタルツールを使いこなしている人も多いでしょう。入社した途端に古い非効率なツールを使わざるを得ないことが理由で辞めてしまうケースもあると聞きます。
日常生活で多くの先進技術に触れることが出来る今、プライベートだけでなく業務の中にもその技術を迅速に取り入れていくことは、従業員の生産性やモチベーション向上にとって必要不可欠であり、この傾向は今後より加速していくと私たちは考えています。
ゼロトラストのセキュリティ環境
デジタルワークスペースの導入を進める企業おいて、必ず懸念材料として挙げられるのが、セキュリティに関する問題です。お客さまからは、「これまで社内のネットワークに閉じた世界でやり取りされていた業務情報が本当に守られるのか」といった声をよく聞きます。
しかし最近では、その社内ネットワークについても、安全であるという前提を捨て、「すべて信頼しない、常に検証する」という「ゼロトラストネットワーク」というセキュリティの考え方が日本国内で浸透してきています。
デジタルワークスペースの導入は、テレワークをはじめ、場所を選ばずに自由に働くことが出来る環境を生み出します。ただ、自由度が増す代わりにセキュリティ面の課題も増えることでしょう。
そこで必要となるのがゼロトラストの考え方なのです。ゼロトラストの考え方に立てば、従業員がオフィスで業務することと、テレワークで自宅から業務することにリスクの差はありません。
どのような場所からのアクセスに対してもセキュリティを確保するために、すべてのアクセスを監視し、制御する。ゼロトラストネットワークは、デジタルワークスペースの構築にあたって今後必要なパーツとなってくる可能性が高く、BXOでもゼロトラストネットワークを構成するオファリングの提供を2019年から開始しています。
導入企業にあわせたシステム構築
セキュリティと並んでデジタルワークスペース導入において重要なことは、「企業毎に業務の全てを利便性高く実行可能か」という点です。
業務内容や、それを支えるワークスペースは企業によってさまざまです。決まったものを提供すればそれで完成といったことは、まずありません。私たちは、お客さまごとのワークスペースをヒアリングし、あるべきデジタルワークスペースへと移行するためのグランドデザイン策定にとどまらず、WANの構成やファイル統合管理、デバイスまで含めた幅広いコンサルティング、パイロット導入を通してボトルネックや効果を確認しながら全社展開に向けた支援など、一気通貫でのサービスを提供しています。
BXOにおけるデジタルワークスペース環境は、クラウド型(プライベート/パブリック)のしくみと、お客さまデータセンタに配置するオンプレミス型の2種類に分かれます。お客さまの情報セキュリティーポリシーや適用業務等に応じて、クラウド/オンプレを選択されることが多く、最近ではAWS/Azureなどパブリッククラウドの認知度も高まり、クラウド型を選択するお客さまも増えつつあります。BXOではお客さまの要望に合わせてどちらの形態でもサービス提供できるだけでなく、オンプレミス型においても、ゼロから個別に作るのではなく、クラウド型をベースに最適化されたスタックを流用するなど、コストを効率化し、迅速にデリバリできるノウハウや体制を整えています。
きめ細やかなアップデート
お客さまにとって、利便性やセキュリティ対策の観点において常に先進的技術やサービスを活用することはとても重要なポイントです。サービスを提供している私たちにとって、機能やセキュリティ関連のアップデートは、BXOを選択してくださったお客さまへのいわば責務だという思いで、サービスアップデートはもちろん、その実現のために必要な検証や最新技術の情報収集など定常的に行っています。特に新サービスのリリースなどは概ね半年に1度のペースで行ってきており、アーリーアダプター層のお客さまにも受け入れてもらえるよう改善を続けています。
また、NTTデータでは他の企業に先駆けてテレワーク導入をはじめとする働き方改革の取り組みを2008年頃から進めており、それを支えるサービス基盤として全社でBXOを利用してきました。この経験によって得られた知見を、お客さま向けサービスに反映しています。
自社でのノウハウや最新の技術動向を常に収集し、お客さまの利便性や安心に繋がるものは積極的に取り入れていく。これは、BXOのサービス開始以来、最も大切にしていることの一つです。
必要なのは従業員と会社 両面をふまえた企業変革
新型コロナウイルスの感染拡大は企業の意識変革に大きな影響を与えました。
これを期に、多くの企業が変革の必要性を強く感じています。
日本において、企業におけるIT投資の位置づけが、コスト削減の手段から、ビジネス拡大への手段へとその意識が変わる中、社内に向けたIT投資は後回しにされがちです。しかし、社内に向けたIT投資は、ビジネスを動かし、そして利益を生み出す従業員を支えるために重要な投資です。そのバランスこそが企業の競争力に繋がるのです。
企業の変革にむけては、目の前のコストやリスクを過度に怖れるのではなく、経営層の方が中長期的な視点をもってトップダウンで推進することが必要です。デジタルワークスペースの導入も、企業変革を実現する一つのツールとして、積極的に検討していただけたらと思っています。
デジタルワークスペースの導入効果は一度使ってみてもらえれば、必ず感じていただくことができます。
業務をする際に、どのデバイスからでも同じデスクトップにアクセスできる。会社でおこなっていた業務を、自宅を含むオフィス以外でそのまま変わらず進めることができる。加えて、スマートフォンを使って決裁などのワークフローを進めることもできる。こういった積み重ねにより、日々の業務が楽になっていくことを、実体験をもって感じていただけると思います。
2010年から提供を始めたBXOですが、これまでにほぼ解約がないのは、実際に使った方々がその効果を実感してくださっているからだと確信しています。
新型コロナウイルス感染症をきっかけに、企業も個人も働き方や、働く上での価値観が変わってきた今、働き方の変革は、これから進んでいく企業の変革の第一歩だと言えます。従業員にとって重要なこと、会社にとって重要なこと、今後はその両面を踏まえて全社で変革を推進していくことが不可欠です。私たちは、これからもBXOを進化させていくことで、働き方の変革、ひいてはお客さま企業全体の変革を支援していきたいと思っています。