こんにちは、NTTデータ ビジネスソリューション事業本部の津田宗宜です。

私は2001年の入社以来、情報通信ネットワークの設計構築と運用を担当しています。いまや情報通信ネットワークはライフラインの1つとも言えますが、安心して使っていただけるよう日々取り組んでいます。

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変わりはじめている「ネットワーク運用」と危機感

皆さんは、「ネットワーク運用」の仕事に対して、どんなイメージを持っていますか?
こんな風に問いたくなったきっかけは、今年の新年会。久々に会った同期に、「今は“ネットワーク運用”の仕事をしているんだよ」と話すと、「それは大変そうだね」と言われたんです。

会社の同期ですので、当然の事ながら同じ業界に長く身を置いている人たちばかりですが、それでもやはり”運用”というと、「昼夜を問わずトラブル対応して、報告書を書いて、お客様のところに謝罪しに行く人」というイメージがまだまだ根深いように思います。

事実、「システム(やネットワーク)に何も問題が起こらず、無事に稼働し続けること」が重要な目標の一つである運用業務において、運用担当者が営業担当者や設計担当者と真剣に会話をするのは、トラブル対応の時がほとんどなので、「コイツら、いつもトラブル対応ばかりさせられていてツラそうだな……」と、思われてしまうのも仕方ないのかもしれません。

革新的な技術やサービスが次々と出てきて目のまわるようなスピードで進化し続けるICTにおいて、このように、止まった時間の中でひたすらインシデント対応と課題の消し込みばかりをやっていると思われがちな”運用”ですが、最近、さまざまな外的/内的要因の影響で、生き残るための変革を強く迫られているという危機感を感じています。

その変革への対応には、運用を担ってきたサービスマネージャが今まで実践してきた”業務の標準化”や”PDCA”、”なぜなぜ分析”等とは、別のアプローチが必要となりますし、最も大切にしてきた”顧客志向”についても、今までとは違った方向性での実現が求められると考えています。

トラブルの度に改善を繰り返し、安価でミスのない運用サービスさえ提供すれば良かったのも今は昔。運用による付加価値を訴求できないサービスマネージャが淘汰される時代が来ています。では、これから必要とされる運用の付加価値とは何でしょうか。

ここでは全3回に分けて、私が日々悩みながら取り組んでいる、「次世代運用人財」と「運用のデジタル化」について、お話しするとともに、”運用”という仕事の楽しさも伝えられればと思います。

<目次>
- サービスマネージャの役割の変遷
- これから必要な人材像
- RESって?

サービスマネージャの役割の変遷

サービスマネージャの役割の変化を振り返ると、大きく3つの流れがあるように思います。

 (1)システムを安定的に運用する”守りのIT”
一昔前、ITシステムは効率化やコスト削減を目的とした守りの手段でした。お客様の経営層からITシステム部への要求は明確で、システムインテグレータはITシステム部の担当者と一緒に、その要求に応えることを求められてきました。

サービスマネージャもそれは同様で、運用対象のシステムを守り、停止させることなく稼働させ続けることがそのシステムの価値を最大化させることになり、お客様コストの削減(=ビジネスへの貢献)となっていたのです。インシデントが発生したら、それを検知し迅速に復旧処置を行う。結果を分析し、根本原因を見つけ、対策を実施する。

そうした日々の営みの繰り返しの中で、対応の品質を上げ、お客様の高い要求レベルを満たす運用サービスを提供することがサービスマネージャの役割でした。

 (2)システム運用を通して新しい価値をつくる”攻めのIT”
少し時が進み、”攻めのIT”という言葉が出てきました。ITシステムをコスト削減の手段としてのみ捉えるのではなく、新たな価値の創出や企業の競争力強化の源泉とするという考え方です。

こうなるとサービスマネージャの仕事も少し変わってきました。IT投資の内訳を見てみると、その大半がシステムの維持運用に費やされているという調査結果もあり、それらのリソースを攻めのITに積極的に投資するために、高い品質を維持しつつ、今まで以上に費用の圧縮(今まで以上の守りのIT)を推し進めることが求められました。

役割が若干変わったとは言え、コスト削減のための標準化や改善のPDCAを回すことは、まさにサービスマネージャの得意とするところですので、この時点ではそこまでの苦労はありません。今も多くのサービスマネージャが日々定型業務や手動オペレーションの自動化を推進し、より安価で高品質な運用サービスを提供することを目指しています。

(3)経営判断への貢献をもたらす主体的なIT運用
そして今、サービスマネージャに求められる役割がさらに大きく変わってきていると感じています。

お客様がデジタルを活用した新たなビジネスを模索し、業種業態まで変わることすらある中で、お客様の変化に迅速に対応し、ITシステムを追随させることができる柔軟性を持つとともに、蓄積された運用データから、お客様が適切な経営判断を行うためのインプット情報を提供するといった、より直接的な関与がサービスマネージャに求められるようになってきています。

今まで、守りのITでお客様の攻めのITを後ろ支えしてきたサービスマネージャですが、ここにきて初めて、攻めの運用サービスでお客様のデジタルトランスフォーメーションに、より主体的に貢献する必要が出てきたと言えます。

運用の現場に向き合うなかで感じた、これから必要な人材像

そのような大きな外的変化が起こるなかで、運用の”現場”も厳しい逆風にさらされています。

例えばインシデント対応を主に行うオペレーションセンタの場合、対応開始のトリガーは常に何らかのトラブルです。アラートを検知しITシステム部担当者に連絡をすれば「いつになったら直りますか?」と困った声で聞かれます。お客様収益の根幹となるシステムを回復させるためのオペレーションには万が一の操作ミスも許されません。

加えて、新技術の活用、グローバル対応、高いセキュリティ要求等、やることだけはどんどんと増えていきます。そんなプレッシャと減点方式の日々にオペレータは段々と疲弊していきます。サービスマネージャはそんなメンバのモチベーションを高めるべく現場を鼓舞し、オペレータが少しでも楽に業務ができるプロセスを整備し、先頭に立ってインシデント対応を行います。また、従来の運用は、「同じことをやっているのなら、年々価格が下がって当たり前」と言われてきました。

サービスマネージャもその期待に応えるべく、日々の改善と効率化によって、運用原価の低減(と、価格競争力の強化による業務拡大)を目指してきました。ところが、最近はその図式が成り立たなくなってきています。

例えば、運用センタのオペレータの1名が離職し、新規に人を雇う必要が出てきたとします。

ですが、業界全体の人手不足や運用対象の多様化に伴う要求スキルのハイブリッド化の影響で、以前と同じ条件では全く人が集まらなくなってきています。そうなると方法は2つしかありません。

高スキルなオペレータを集めるために高い単金を支払うか、スキルが十分で無いメンバでも対応可能な運用のプロセスを費用をかけて再整備するかです。

今までのように効率化と品質向上だけに注力していては価格低減どころか、従来と同じレベルの運用を行うことすらできなくなってしまうのです。今後、労働者人口の減少によって、この傾向はさらに進むと懸念しています。

上記のような外的/内的環境においてサービスマネージャは、構築されたシステムを引継ぎ、日々の改善や業務の自動化で低価格/高品質に維持運用するだけでは不十分です。

お客様と同様にビジネス視点を持ち、お客様や運用センタのオペレータに対してデジタルを活用した様々な運用サービスを開発し仕事のプロセスそのものを変えていく、さらに、そのサービスを利用者の要望や業界の動向に合わせて進化させ続ける、といった、サービス提供者としての営みが求められます。

このような次世代運用人財を、NTTデータでは「RES(Reliability Engineering Service)人財」と名付け、その育成と、次世代運用サービスの創出を推進しています。

RES(Reliability Engineering Service)

RESという名称ですが、最近Web系の運用手法として広がりつつある「SRE(Site Reliability Engineering)」にヒントを得た造語です。運用に対して普遍的に求められる信頼性(Reliability)に加え、エンジニアリングという少し工学的な要素を組み込むことで、運用に携わる方々は単なる作業者ではなくサービスを創出する技術者であるという側面を表現しています。

前述のように”運用業務を行う”と言うと「トラブル対応で謝罪ばかりしているんでしょ?」とか、「標準化された定型業務をミスなくやるのは大事だけど、それでエンジニアとして成長できるの?」と考えている方も多いかもしれませんが、そうではありません。

故障対応や問い合わせ対応、申請対応といった従来のリアクティブな運用業務は、今後自動化や低価格化が進み、人手を介す部分はどんどん減少していくと考えられます。ですが、その仕組みを検討/実現することや、それを超える新しい運用サービスの創出には、既存のサービスマネージャの枠にとどまらない活躍のフィールドが広がっています。

今、私が従事している業務が、そこまでのレベルに達しているかと言うとまだまだですが、そこを目指していますし、明るい未来のビジョンを考えながら仕事することに、今までにない楽しみを感じています。

次回は、そんなRES(次世代運用)人財が実現する「運用のデジタル化」について書きたいと思います。

次回予告:RES(次世代運用)人財が実現する「運用のデジタル化」