誰もまだ見たことがないビジネスを。生物多様性保全の持続化に向けた取り組みに従事

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豊嶋が所属するイノベーション戦略室が設立されたのは2021年7月。社会にインパクトのあるビジネス創出をめざして立ち上げられました。

豊嶋 「イノベーション戦略室は、スタートアップ等と連携した事業創出・QUINTBRIDGEを核とした事業共創のエコシステム形成など多様なミッションを持ち、そのうち私が在籍するのは事業創出チーム。そもそもどこに課題があるのか、それをどうやって、またどのようなかたちでビジネスに結びつけていくかはもちろん、ビジネスの種をどこまで育てていくかも含め議論しているところです」

事業創出チームの4つの分野(生活、健康、経済、環境)のうち、豊島が担当するのは環境領域。現在はとくに生物多様性保全分野での新ビジネス創出に向けた取り組みを進めています。

豊嶋 「環境と言うとカーボンニュートラルなどが話題を集めていますが、私が現在関わっているのは生物多様性の保全です。人間の生活が成り立つのは、微生物から動植物に至る地球上に生息するすべての生き物が支え合い均衡を保った状態があってこそ。そうした生態系の維持に貢献できるようなビジネスモデルづくりがいまの目標です」

事業創出チームの取り組みは社内にとどまりません。グループ会社や他社との連携のもと、ビジネス化していく道を模索しています。

豊嶋 「沿岸生態系保全をはじめ、生物多様性保全やTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)に関わるスタートアップや企業・団体等と面談しながら、生物多様性保全が持続的に行われるしくみ、もしくは事業において生物多様性を主流化できるしくみづくりを進めています。

NTT西日本では、2022年8月から未来共創プログラム“Future-Build For Well-being society”を進めていて、現在はそこで採択されたパートナー企業とともに課題解決に向けた実証実験に着手した段階です。

一方で、省庁やグループ内の研究所、各支店といった従来のネットワークも駆使しながら情報収集し、課題の明確化や解決に必要な要素の分析も行っています」

これまでの生物多様性保全活動というと、なかなか事業化されておらず、ボランティアのような活動やNPOなど寄附によって成り立っているものが多いそうです。生物多様性をビジネスにしていくという点において手探りの状態で進められていると言います。

豊嶋 「生物多様性保全を持続的に実施していくには資金が欠かせないため、ビジネス化するのは理にかなっていると思うのですが、取り組みの前例がこれまではあまりありませんでした。私たちがやろうとしているのは、誰もまだ見たことがないものをゼロからつくること。難しさを感じています」

正解のない難題に取り組む豊嶋。仕事をする上で大切にしていることがあります。

豊嶋 「生物多様性という視点では、何か事業等を実施するときに一方で生態系を守りながら、もう一方では破壊してしまうことや、他の社会課題が見過ごされてしまうこともありえます。ビジネスをつくるところにとらわれすぎて本質的な部分を見失わないよう、全体を俯瞰しながら、その中での自分の立ち位置、本来めざすべきビジネスのあり方を常に確認するように心がけています」

情報通信技術に感じた可能性。“ビジネス×環境”の課題を解決するためNTT西日本へ

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小学生のころから昆虫や動物などの生き物が好きで、虫捕りをしたり動物を飼ったりしていたと言う豊嶋。大学では環境学を専攻しますが、卒業後に就職先として選んだのは製薬会社。組合活動の一環で海外を視察したことが転機となりました。

豊嶋 「製薬業界で働いていたのですが、内戦終了後の復興途中にあったスリランカで短期ボランティアに参加させてもらう機会があって。そこで日本と異なる生活環境を目にしたことで、やはり学生時代に学んだ環境を仕事にしたいと思うようになったんです」

豊嶋は製薬会社を辞職。国際協力にも興味があったことから、東南アジアで環境教育の普及に従事する道を選びますが、そこで得た気づきがきっかけで、その後のキャリアが大きく変わることになります。

豊嶋 「途上国支援の現場で、環境保全や気候変動の分野で専門性を高める中、この先も環境保全の分野でずっとキャリアを築きたいと思う一方、環境保全や気候変動対策を持続的に進めていくためには、お金が回るしくみが必要だと感じる場面が多々あって。“ビジネス×環境”の分野に関心を持つようになっていきました」

発展途上国での初めての仕事を通じて豊嶋が痛感したのが、より高い専門性の必要性。環境学への知見を深めるためにイギリスの大学院へ進学、修士号を取得。帰国後は、国際協力の世界で環境問題に関する仕事に従事することになります。

豊嶋 「最初に携わったのが、アフリカの自然資源管理。森林保全とそこに住む人々の生活をどう両立していくかといった課題とともにカーボンクレジットのスキームをどう活用するか、検討していました。

その後、大洋州にある小島嶼国に駐在して環境・気候変動分野のプロジェクトの形成や運営支援に従事して生態系保全や気候変動対策に関わったのち、ベトナムへ。気候変動の緩和対策に入り込んで、温室効果ガスを抑制するための政策支援プロジェクトに参加していました。そのときに知り合った方とは、いまでもやりとりしていて情報収集に協力してもらっています」

海外で働く中で、環境問題が途上国だけのものではなく日本でも取り組む必要があると強く感じたと言う豊嶋。国内で地球環境の保全に貢献できるポジションを探していて出会ったのがNTT西日本でした。

豊嶋 「気候変動や生物多様性保全の分野でカーボンニュートラルやネイチャーポジティブを実現するためには、これまでにない技術やアイデアを組み合わせた解決が必要だと考えていました。帰国後はアイデアをかたちにする事業会社で働きたいと考えていたところ、タイミング良くNTT西日本で環境、しかも生物多様性の分野でビジネス創出するポジションのお話をいただいたんです。

カーボンニュートラルについては、これまでもさまざまな取り組みがなされてきましたが、いまの技術では減らすことはできてもゼロにすることは到底不可能。そんな中、NTT西日本の情報通信技術があれば、ブレークスルーを起こせるかもしれないと思ったんです。それは生物多様性の分野でも同じ。ここなら自分がめざすキャリアがかなうと感じ入社を決めました」

グループ内の組織とうまく連携し、新ビジネス創出の力に

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豊嶋が入社して5カ月目。NTT西日本に抱いていたイメージが大きく変わったと言います。

豊嶋 「当社の中でもイノベーション戦略室は新規事業を創出する部署。スタートアップと協働していること、また経験者採用の方が多いこともあって、想像していたよりも仕事のスピード感が速いと感じています。

かと言ってギスギスしているところはまるでありません。月に1回、部署の集合ミーティングを対面で行っているのですが、室長や部長も参加する中、メンバーどうしが自由に意見を言い合っていますし、チームを超えて悩みについて話すことも。風通しがとても良い職場だと思います」

現在、豊嶋が力を入れているというのが未来共創プログラム“Future-Build For Well-being society”における実証実験。大きな組織ならではのおもしろさを感じていると話します。

豊嶋 「まだ実証実験の準備中で環境整備をしている段階。今後かたちにできそうかどうかを検証している状況ですが、関係者の数がとても多いことに驚いています。調整に苦労する反面、いろいろな人とのつながりが増え、誰がどんなことやっていて、何を考え、どんな課題を抱えているのかなど、毎日が発見の連続。人との新しい出会いを機にアイデアが広がることもあるなど、とても刺激的です」

また、各都道府県に支店があることがNTT西日本の強みだと話す豊嶋。グループ内の組織とうまく連携しながら、新ビジネスの創出につなげていきたいと言います。

豊嶋 「ありがたいことに、グループ内からたくさんのお問合せをいただいていて、つながりは広がる一方です。環境チームじゃない方からも、『こういう会社さんがいますよ』『社内でこんなことをやってる人がいるんですよ』と声がかかることもあります。

ただ同じグループとはいえ、それぞれが違う組織。持ち株会社の研究所さんや他社さんなどとどう連携するのか、もしくは棲み分けるかの見極めが必要だと感じています。そのためには、まず私がNTT西日本のことをもっと知らなくてはいけません。組織に対する理解が深まれば、できることが増えていくだろうと感じています」

NTT西日本が生物多様性保全に取り組む先進的企業であるとの認知を国内外へ

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環境チームの最終的な目標は、一過性ではないビジネスモデルを構築すること。次のように続けます。

豊嶋 「生物多様性の保全はこれから先、人類が長く取り組んでいかなければならない課題です。当然、対策は長期的なものでなくてはなりません。とはいえ、なかなか資金の循環が難しい領域。いままでの対策とは一線を画す、革新的かつ長期的に使われるような、生物多様性を持続的に守ることができるようなビジネスを生み出したいと考えています。

大事なのは、無理なく続けられること。普段の生活の中で当たり前にできるような、誰にとっても負担にならないサービスであることが大切です。努力したりお金を払ったりすることなく、気がついたら環境保全に貢献できているようなしくみづくりができるといいですね」

それと並行して、個人的に実現したいことがあると言う豊嶋。

豊嶋 「自身の仕事を通じて生物多様性保全のモデルビジネスを生み出し、NTT西日本が生物多様性保全に先進的に取り組んでいる企業であることを対外的にアピールしていきたいという想いもあります。温室効果ガスを見える化するなど、いまも環境に関する複数のサービスが社内にあります。これから作っていく新しいビジネスに関しても、国内だけでなく国外にも広めていきたいと夢見ています」

 NTT西日本が挑む、持続可能な社会にむけた課題解決。未来のために準備は着々と進められています。