答えのない金融商品、はっきりとは見えないお客様のニーズと向き合う仕事

▲オフィスにて

2021年現在、私は法人オーナー様に事業承継、ご相続対策などいわゆる金融周りのコンサルティングをご提案する業務を行っています。野村證券として、専門的なご提案ができるよう、法人オーナー様を専門に担当する部署が設置され、私はそこに所属しています。

また支店においては、チームリーダーとして部下の育成も行っています。

仕事をする上では、法人オーナーであるお客様に対して、お客様に寄り添い、お客様の資産の悩みにお応えするために、どれだけコンサルティングに特化した目線でアプローチできるかというところを重視しています。

法人オーナー様を担当させていただいて個人的に感じていることは、金融資産など資産を多く保有されていますので、事業承継を含めたオーナー様個人としての相続対策などのニーズが高いということです。

ただし相続対策ニーズが高いと言っても、当然ながらお客様ごとにお悩みのポイントは多種多様です。お客様が求めているニーズがハッキリわかるととてもご提案しやすいのですが、そのような状況は決して多くはありません。お客様のことをとことん考え、求めているであろうことをイメージしながらスピーディーかつ的確にご提案します。

その提案にたとえご満足いただけなかったとしても、それを続けていく、そうしますとお客様がどこかのタイミングでこちらに振り向いてくださることがあります。その振り向いてくださったタイミングを逃さず、そこからさらにどれだけ本気でお客様に向き合えるかが重要だと思っています。

金融商品には確実な答えがありません。だからこそ私は情報収集に力を入れ、自分なりの考えを持ってお客様とお話しするようにしています 。

また自分の性格もありますが、事前に情報収集した内容に基づいて自分なりの考えをお客様にお話しした際、たとえお客様がポジティブなご反応をされたとしても決して満足することなく、常にもっとお客様にとって最適な解はないかを自問自答し、さらに調べてより良い提案することを大切にして仕事に取り組んでいます。

困難を極めた事業承継──多数の金融機関から野村證券を選んでもらうには?

▲お客様との面談へ 事前準備を念入りに

ある日、お取引いただいていたご法人のオーナー様が急にお亡くなりになってしまったことがありました。普段お会いしていたオーナー様は会長職で、すでにご子息様が社長になられていました。当社とは会長様個人とご法人の両方でお取り引きしていただいていました。

当時、会長様のご年齢は80歳を過ぎており、金融資産も決して少なくない額を保有されていました。また、会社の自社株をまだ会長様ご本人が保有していらっしゃいましたので、事業承継や相続対策についてご提案をしていましたが、なかなか進まないという状況でした。

そのような中、ご相続が起きたわけです。ご子息である社長様とはお会いしたことはあるものの、普段のお取引はほとんど会長様とさせていただいておりましたので、社長様とは十分な信頼関係が築けておりませんでした。当社にお預けいただいているご資産の相続手続きで、お会いさせていただいた際にお話を聞くと、多数の金融機関から提案を受けていることがわかりました。

まず、今の状況でお客様のお役に立つために野村證券として何ができるかを考えました。

会長様がご保有されていた自社株は未上場株式であり、マーケットで日々売買されている上場株とは異なり、容易に換金ができない資産です。したがって、会長様個人の財産も円滑な承継を考えなければなりませんが、会長様の自社株をどうするかということが最優先になるだろうと考えました。実際に社長様にお話を伺うと、想定した通りでしたので、即座に本社の専門部署とオンラインを活用して自社株の承継の方法についてご提案いたしました。

しかし結果としては当社の提案ではなく、顧問税理士の方が助言された方法を選択されました。

ただし、ご相続はそれで終わりというわけではありません。自社株が移ると、次は個人の財産の承継を考えなければなりません。会長様個人の財産について会長の奥様も相続人のお1人にあたるわけですが、会長様の奥様もご高齢でしたので、奥様の財産の相続対策が必要になります。

その際に奥様のご資産を次の世代に贈与していく、これは近々の課題になると考えましたので、ご子息である社長様に今回の会長様の相続をきっかけになるべく早いタイミングで検討し、対策を取られることをお勧めしました。

しかし、この時点ではまだまだ社長様との信頼関係は築けておらず、「話は聞くけど、そういった話は銀行と進めるから」と、なかなか私の提案をご検討いただけない状況が続きました。とはいえ会長様の自社株承継の実務対応、個人の財産の承継や相続税の納税までには時間の猶予は数カ月あり、まだご検討いただけるチャンスはあると思っていました。

「少しでもお役に立ちたい」その想いが社長様の心を動かした

▲お客様への説明はできる限りイメージしやすい言葉で

それからは、運用のご提案も社長様にさせていただきながら、社長様との信頼関係を築くことに努めました。するとある日、顧問税理士の先生が助言された自社株の具体的な承継方法について社長様からお伺いすることができました。

ここでは詳しいお話は言えませんが、そのお話をお伺いしたときに税制面で「あれ?おかしいな」と思うことがありましたので社長様にご説明したのですが、その時はあまりご納得いただけませんでした。

しかし社長様から顧問税理士の方に私のご説明をお話しいただけたようで、後日、顧問税理士の方から私の意見に関してお礼の言葉をいただきました。

これは色々ある中の1つに過ぎませんが、継続的にフォローを続ける中で「少しでもお役に立ちたい」という想いで接しているからこそ、社長様にその想いが伝わり、信用を得ることができたのだと感じています。

会長様の奥様の贈与の案件については、当初は私のご提案を聞いていただく余地はほとんどありませんでしたが、この後も継続的にフォローさせていただいたことで最終的には私の提案を具体的に聞くと言ってくださいました。そして銀行からの提案内容とほとんど差はありませんでしたが、結果的に社長様から「母の件については佐藤君の提案でお願いしたい」と言っていただくことができました。

事業承継においては、多くの競合が存在し、銀行は銀行の、保険会社は保険会社の、税理士は税理士の強み、特長を活かしたサービス提供をしているわけですが、野村證券は野村グループ全体で様々なサービス・ソリューションを有しており、事業承継のみでなく資産のお悩みに関することであれば常にお客様と関わることができるというのが良かったのだと思います。

最初は金融機関の1つとしか見られていませんでした。社長様も厳しい目で警戒心を持って見られていたと思いますので、なかなか心を開いていただけませんでした。

しかし、ご相続の手続きなど、細かいやり取りにも「少しでもお役に立ちたい」と誠意をもって丁寧に対応をしていくことで少しずつこちらを振り向いていただき、私のご提案、お話を聞いてくださるようになっていきました。

大切にしていたことは決して打算的なことをしないことです。当社のメリットだけをお伝えするのではなく、当社の提案内容よりも他社からの提案内容の方がお客様のためになると思ったときには素直にその旨をお話ししていましたし、それぞれの提案のメリット、デメリットをご理解ご納得いただけるまで丁寧にご説明するようにしていました。

“地域のかかりつけ医”のような存在になるために

▲趣味のバスケットボールで心身ともにリフレッシュ

事業承継・相続対策と一口に言っても、お客様によってそれぞれ状況や内容が違いますので、十人十色です。私の提案によってお客様のお役に立てることができた結果、感謝していただけたときはこれほど嬉しいことはありません。そして何より、お客様の悩みはどの点にあるのか、どうすればその悩みにお応えできるのかを必死に考え、お客様に真摯に向き合うことで、自分自身が成長できている実感があります。

お客様の資産に対して“地域のかかりつけ医”のような存在になりたいというのが、私の中期的な目標であります。そのために今経験しているようなことを、どんどんブラッシュアップして、さらに勉強していきたいです。

欧米では、法律、医学、金融のプロ、すなわち弁護士、医者、そしてファイナンシャルアドバイザーの3つの分野で優秀な人が自分の身近にいると豊かな人生が送れると言われています。こと日本では、この金融分野は伸びしろのある分野だと思っています。

「お客様の金融の窓口」となり、たとえば地域に根差したお医者さんのようなかかりつけ医のイメージで、お役に立てるかもしれない情報を分かりやすくお伝えし、より高度な専門家のアドバイスが必要となれば野村グループの総合力を活かして専門家につなぐ。そうすることで、お客様に何かお困りのことがあれば「まずは佐藤君に聞いてみよう」と思っていただける存在になりたいと思っています。

野村證券には高度で専門性の高いプロフェッショナルな人材がたくさんおり、お客様のお悩みにお応えするためにそうしたプロフェッショナルな人達とやり取りし、一緒になってお客様に提案していくことを繰り返す中で、私も少しずつ成長できている気がします。

単に専門性の高い人材をお客様に紹介するだけでなく、そのときの内容についてしっかりとインプットを図ることで私の話す内容が少しずつ洗練されていき、これまでお客様から質問されてお答えできずに持ち帰っていたことをその場でお答えできたり、違った角度から提案することができるようになったりしています。こうした成長を感じることができることに仕事のおもしろみ・やりがいを感じます。

いわゆる老後2000万円問題によって日本人の投資、資産形成に対する意識が変化してきていますが、まだまだ日本人の金融リテラシーは高いとは言えないと思います。

野村グループとしても大学向けの講座提供など金融リテラシー向上のための取り組みを実施しておりますが、今後の日本のことを考えると、若年層である20代30代の資産形成層や、さらに言うと小学生などの学校教育の中でもっとお金に関する知識は提供されるべきであり、日本人が普通に自分の資産形成について考え、話し合うような世の中になればと思っています。

繰り返しになりますが、今後もお客様のあらゆるライフイベントでお役に立てるような、コンサルティングができる、“地域のかかりつけ医”のような人間になりたいです。

今後より一層IT化が進み、人を介さずともデジタル上で完結できる部分は増えていくと思いますが、どれだけIT化が進もうとも、人と人の直接のコミュニケーションが重要であることは変わらないと思います。とくに、今取り組んでいるコンサルティングにおいては、お客様の悩みをお伺いし、お客様が認識されていない本当のニーズを明確化して解決に導くことが求められます。それだけにより高度な専門的な知識が必要となり、それをわかりやすくお客様にお伝えることが重要だと考えています。

私は今後も直接のコミュニケーションを大切に、お客様に選ばれるコンサルタントでありたいと思っています。