さまざまな部署と業務を経験。大切にしてきたのは、専門性より仕事の幅
手がける事業の幅広さに惹かれて農林中央金庫に入庫した柏原。希望していた通り、さまざまな部署で多様な業務を経験しながらキャリアを積んできました。
最初に配属された本店営業部では法人融資業務を担当。札幌支店に異動後は、農林水産業向け貸出業務に従事し、さまざまな組織・事業者の事業再生業務に奔走しました。
その後、コンサルティング会社への出向を経て複数部署で企画業務を担当し、現在のポジションに至ります。
柏原 「振り返ると、キャリアの3分の1ほどを融資業務に費やし、その後はさまざまな部署で企画業務を担当してきました。『これがやりたい』とか『専門性を磨きたい』と主張したことはなく、ただ『いままでやったことがない仕事をしてみたい』と希望を伝え、結果さまざまな仕事に挑戦することができました」
幅広い業務を経験する中で、柏原の仕事観に影響を与える出来事がありました。そのひとつが、札幌支店で携わった事業再生業務です。
柏原 「いわゆる“前向き”な仕事ではないため、厳しい場面が多くありました。当時、私はまだ若手の部類でしたが、担当者としてお客様に向き合う以上は甘えが許されません。自分で判断し、その場その場で最適な行動をすることが求められました。そこで考え、悩み抜いた経験はいまに生きていると思います」
また、コンサルティング会社に出向したことで視野が開けたと話す柏原。
柏原 「農林中央金庫は、同じような想いを持った真面目な人が多い組織。いわゆる大企業はどこもそうだと思いますが、良くも悪くも同質的だと思います。
一方、コンサルティング会社で働く方は、外資企業や事業会社、金融機関、弁護士などバックグラウンドが実に多様です。出自の異なる人たちが集う組織では、農林中央金庫の常識がまるで通用しませんでした。
文化も風土も違う組織の中で考え方もまったく違う仲間と意見を交わしながら案件に取り組んでいく、擬似的に転職が経験できたようなものでした。視野が大きく広がったと感じます」
出向先で学んだことは、そのまま農林中央金庫での仕事に活かせていると言います。
柏原 「コンサルタントには、決められた時間内でクライアントの課題を整理し、必要な打ち手を提示することが求められます。独り善がりではなく、あくまでも真にクライアントのためになることを考え抜く。
ファクトを押さえて分析して解決策をひねり出す力と、それを相手にわかりやすく伝える力は、企画にも必要なスキル。出向の経験がとても役立っていると感じます」
IT統括部の総括班とDX班を指揮。専門性を補う幅広い経験が糧に
2023年2月現在、柏原はIT統括部の総括班とDX班の部長代理として10名のメンバーを率いています。
IT統括部は、農林中央金庫で利用するシステムの開発を行う部署。実際に開発作業に携わるグループ会社やベンダーとユーザーの調整役を務めています。中でも、金庫のプロパー業務システムとJAバンクの基幹システムの企画や調整が仕事の中心です。
柏原 「総括班での私の役回りは、全体を見渡しながら必要な調整をしたりコスト管理をしたりといった企画・調整機能。一方のDX班では、金庫のDX推進やワークスタイル改革に寄与するような各種クラウドサービスの全社導入を順次進める立場になります」
柏原が管理職として部下をマネジメントするようになったのも、IT統括部に配属となってからのことでした。
柏原 「部下がいなかったころは、自分ひとりが頑張ればなんとかなる部分がありましたが、いまはそうはいきません。私がいくらきれいな絵を描いたとしても、その絵をかたちにしてくれるチームメンバーをうまく巻き込むことができなければ何も始まりません。以前といまとでは目線や考え方がずいぶん変わったと思います」
柏原はITの専門家ではありません。しかし、さまざまな立ち位置、角度から農林中央金庫を見つめてきた経験が専門性を補い、成果に結びついていると言います。
柏原 「ITやデジタルを活用して業務を効率化していこうという軸で企画を行っているので、ITやソリューションの知識もさることながら、『この業務をこういう風に変えていくんだ』という当事者意識と提案する力がものをいうところがあるんです。
さまざまな部署、組織を経験してきたからこそ、農林中央金庫の業務を客観視できるところがあると思っていて。これまで培ったキャリアが上手い具合につながっていると感じます」
一体感と自律が組織づくりの鍵。全員が同じ方向を向いて、各自が自由に動けるチームに
100数十名のメンバーが所属するIT統括部には、さまざまな経験やスキルをもつメンバーが揃います。統括班には、柏原のように総合職としてさまざまな経験を積んできたメンバーが多数いる一方、DX班には、グループ会社のメンバーやITバックグラウンドの金庫メンバーの姿も。それら多彩なメンバーを束ねる上で、柏原が重視していると言うのが、“一体感”と“自律”です。
柏原 「農林中央金庫の働き方を変えていこう、職員が働くためのITインフラを圧倒的に良くしていこうという共通認識が必要だと思っているので、フラットに意見交換しながら、皆が一体となって同じ方向へと走れるよう努めています。
一方で、目指す方向がぶれてさえいなければ、各自が自由に動ける状態のほうが、のびのびと心地良く働けるし生産性も高いと思っていて。そのための組織づくりやマネジメントを意識しています。知らない間に部下が仕事を拾ってくることさえあります(笑)」
チームの先頭に立って農林中央金庫の業務改革を導いてきた柏原。グループウェア移行の実施やファイルストレージサービスの全社展開のほか、ワークフローシステムを導入して業務フロー自体を抜本的に見直す取り組みも始めるなど、職員の業務にインパクトを与えるツールを積極的に取り入れてきました。
スピード重視でしっかり成果を出していく、それを実践していくなかで大事にしてきたのがシンプルなレポートライン設計。意思決定のスピードを強みに、理想的なチームづくりができていると柏原は言います。
柏原 「コア業務以外で負荷がかかることがないよう、何もかもエスカレーションするのではなく、方向性だけ共有し、必要なタイミングで相談や報告をしてもらっています。
メンバーには、『柏原や上層がどう思うか』ではなく『農林中央金庫としてどうすればいいか』という視点で、自分で考えて答えを出してほしいんです。私がそれを遮らないようにしたいですし、メンバーが自分で『こうあるべき』と答えを出した方向に向かって走れるようなチームでありたい。それを支えるようなマネジメントをしていきたいと思っています」
専門性が叫ばれる時代を、あえてゼネラリストとして生き抜く
柏原の当面の目標は、職員が日々共通して利用するITインフラを徹底的に使いやすくし、場所や時間や端末に関係なく生産性高く働ける環境を整えること。そして、それをしっかり利活用することで組織の文化や働き方を変革していくこと。IT統括部の部長代理として、その意気込みを次のように語ります。
柏原 「以前はユーザーとして農林中央金庫のITインフラに対して不満を言う立場でしたが、いまはその矢面に立つ真逆の立ち位置にいます。そうなったからには、『柏原がIT統括部に行ったことで便利になり、働き方が変わった』と言われるように、使いやすくて便利なシステムをどんどん提供していくつもりです。
それがひと段落した後は、ビジネストランスフォーメーションを実現していく必要があると思っています。新しい働き方や考え方に向き合えるような価値観へとアップデートすることで、職員が本業部分でいま以上に付加価値を提供できるような状態にしていきたいですね」
“専門性”の重要性が叫ばれる中、ゼネラリストの管理職だからこそできることがあると話す柏原。自身の今後のキャリアをこう展望します。
柏原 「プロジェクトを進めていくためには、物事を突き詰める力のある専門家だけでなく、横串を通して全体を俯瞰しながら、圧倒的な当事者意識を持ってチームを引っ張っていける存在が欠かせません。
今後、専門性がますます深化していくと予想される中、バランサーとして機能するゼネラリストの働きがこれまで以上に重要になると思っています。全体最適をひたすら考えられる存在を目指し、あくまでゼネラリスとして生き抜く道を模索していきたいですね」