使命感を負えるような仕事を──農林水産業に尽力するため、農林中央金庫へ
2019年に新卒で農林中央金庫に入庫、同年から農中信託銀行へ出向している和田。信託事務業務を経て、2022年8月は、同行でクレジット戦略(ローンや社債)のファンド運用に従事しています。
今から遡ること約4年、和田が就職活動時の軸としていたのは、“明確な目的を設定できるかどうか”でした。
和田 「中・高と受験勉強が中心の生活を送っていた反動で、大学では新しいことを始めたいと思い、これまでとは正反対の体育会の柔道部に入部したんです。柔道といっても、“七帝(ななてい)柔道”という寝技中心の特殊なルールで行われる柔道で、大学からはじめた人でも、努力すれば超弩級の選手になれる競技でした。
稽古をしていて何度も壁にぶつかりましたが、そのたびに『なんのために柔道をしてるんやろ?』と自分に問いかけては、『七帝戦で優勝したい』という目的に立ち返りました。われわれは年に一度開催される“七帝戦”という試合に向けて日々練習を行い、この七帝戦で優勝するというのが4年間の柔道生活における一番の目的でした。そうやって、常に拠り所とするものがあり、モチベーションの源泉となる明確な目的があったからこそ、頑張れたと思っているんです。だから、就職活動でも、“明確な目的を設定できるかどうか”を軸にしていました」
関西の企業への入社を希望していた和田。はじめのころは、本店が東京にある農林中央金庫への就職は考えていなかったといいます。
和田 「農林中央金庫を受けた部活の先輩から、『農林中央金庫の人は和田に合っていると思うよ』と勧められました。なんとなく受けてみたところ、農林中央金庫が“農林水産業の発展のために”という明確な使命を掲げていることを知り、自分の軸に叶う企業だと感じたんです。
また、面接の中でお会いした職員の皆さんが共通して“一次産業に貢献する”という目的意識を持たれていたことは特に魅力的に感じました。面接を重ねるうちに、先輩が話していた“人が合う”という言葉の意味も実感でき、最終的には農林中央金庫の“人”といったところも大きな決め手になりました」
こうして和田は、“世界に誇れる日本の一次産業を発展させる”という明確な目標を設定し、農林中央金庫に入庫することになったのです。
思いがけない仕事。立ちはだかったのは、英語と専門知識の壁
後継者不足などの課題解決や一次産業の経営支援に取り組みたいと、営業職を希望していた和田。ところが、入庫して最初に出された辞令は、農中信託銀行への出向でした。
和田 「1年目は、いわゆる営業事務。入金されたお金などの数字をシステムに入力して、出力紙に1個ずつ点をつけて1円単位で間違いがないかを確認することが主な仕事でした。2年目に現在の運用部に異動。ローンや社債などを扱うフロント業務に携わるようになりました」
現在の仕事は、“ファンド”と呼ばれる金融商品の運用です。
和田 「われわれのビジネススタイルは、お客様からお金をお預かりし、われわれが選定した海外の運用会社が販売する商品に投資していただくというものです。ファンド運用では、その運用商品の値動きの要因や金融市場の動向を分析したり、ファンドが“ガイドライン”と呼ばれる運用制限を遵守しているかを監視したりするのが主な仕事。海外の運用者から得た英語の情報をベースに日本語の報告書を作成したり、定期的に報告会を開催したりしながら、運用状況の説明や投資継続の判断、今後の投資提案を行っています」
就職活動していたときにはまったく想像していなかった資産運用の世界。運用部に異動した当初は、苦労があったといいます。
和田 「なんといっても英語です。英語が苦手なのに、海外商品を扱い、日本語と同じくらい英語に接する部署に来てしまいました。書類は英語だし、海外の運用担当者ともコミュニケーションを取ります。しかも、日本語でも聞いたことがない運用の専門用語が英語で飛び交っていて……。英語と専門用語の勉強が急務でした」
しがみつくような気持ちで必死に勉強した和田。3カ月もすると、変化を感じるようになったといいます。
和田 「次第に、なんとなく英語の資料も理解できるようになってきました。新しく得た情報をもとに資料作成に挑戦したり、チーム内に情報を共有したりすると上司がほめてくれることがありました。また、お客様からの照会事項に迅速に対応するように心がけていると、お客様の窓口役である営業部からも『頼りになる』といってもらえて。自分の成長を実感できることがモチベーションになり、頑張れました」
先輩たちの存在も助けになったという和田。
和田 「とにかく必死だったので、わからないときは恥じらいを全部捨てて。とにかく上司や運用会社に聞いて、なんでも教えてもらっていました。質問した以上のことをていねいに教えてもらえたことで、着実に知識が深まっていきました」
3年目にして任されたビッグプロジェクト。大きな成長とやりがいを実感
日に日に成長を重ねた和田。異動から約1年後、運用商品の商品化というビッグプロジェクトを早くも任されることに。
和田 「昨年、はじめて新規の運用商品の商品化を担当したんです。新規商品の方向性が決まった後、お客様の意識や需要を探りながら、どのように提案をすればお客様に投資してもらえるかを考え、プランを練っていきました。運用会社など関係各所と密に連携をとりながら一つひとつの作業をていねいに進め、半年以上かけて商品が完成。
その後も、モニタリング体制を整えたり、新たに報告書を作成したりする作業が残っていました。通常、商品化というと、先輩社員と一緒にやるような仕事。上司とふたりでの作業が中心だったので、たいへんでしたね」
数年に一度といわれるビッグプロジェクトを入社3年目で担当した和田。そうやって若手が大きな仕事を任されるのは、子会社ならではと話します。
和田 「農中信託銀行では、若手に与えられる裁量がかなり大きいと思います。親会社の農林中央金庫と比べて任される仕事のレンジが広いことも、人数が少ない子会社の特長かなと。もしかしたら、自分ががむしゃらに粘り強くやっていたところを評価してもらったのかもしれません」
商品化を通して、自身が大きく成長できたと語る和田。
和田 「商品のストラクチャー全体を見られたことで、一つの商品をより広い視野で見られるようになりましたし、英文の契約書に触れたことで、より専門的な知識を身につけることができました。以前は、『なぜこの商品はこのようなリターンになったんだろう?』という一つの課題に向き合うことでやっとでしたが、商品化を通じて、より幅広い課題に対応できるようになったと感じています。
また、ひとつの商品を作るにあたって、営業部門やリスク管理部門、私が1年目に所属したバック部門にもサポートしてもらうなど、いろいろな人が関わることを知りました。とくに、営業部の方にサポートしてもらったおかげで、たとえば『どういう情報に価値があるのか』『どういう伝え方をすればお客様に理解してもらえるか』など、営業目線で考えられるようになり、大きく成長できたかなと思います」
成長と同時に、仕事へのやりがいも増したといいます。
和田 「営業部経由で、お客様から『迅速な対応をありがとう』『タイムリーな情報をありがとう』という言葉をいただいたときは、『この仕事をやっていて良かった』と感じます。自分としても、どうすればお客様に喜んでいただけるかが、以前よりわかるようになってきたと思っているんです。『ありがとう』と言ってもらえるよう、また頼りにしてもらえるよう日々努めています」
深い金融知識を得られたことが、一次産業の発展に貢献する上での大きな財産に
入庫前はまったく想定していなかった業務に従事してきた和田。今あらためて、「出向して良かった」と話します。
和田 「子会社には、農中信託銀行のプロパー、私のような農林中央金庫からの出向者、さらに転職してきた人もいて、いろいろな経験をしてきた人に出会うことができました。もし農林中央金庫に配属されていたら、社内でこれほどいろいろな人と交わることはできなかったと思っています。また、子会社では社長や専務などとの距離が近く、入庫4年目で経営陣と面談する機会もありました。これも農中信託銀行の特長かなと思います」
周囲の和田への期待は高く、2022年9月からは新たに農林中金全共連アセットマネジメントへ出向。
和田 「新しい出向先では、引き続きファンド運用に従事し、グループの運用機能の一層の高度化に挑戦します。短期的な目標は、農中信託銀行と農中全共連アセットマネジメントの業務連携を進めること。運用機能の高度化というJAグループのひとつの転換点を迎えるにあたり、その中心にいられることに大きなやりがいを感じています」
将来的には、これまでの経験を活かして、農業者と直接関わるような仕事がしたいと語る和田。
和田 「中長期的な目標は、世界から高く評価される日本の一次産業の発展に貢献すること。農業法人の方と一緒に、農業を目に見えるかたちで拡大させていく夢を描いています。その夢を叶える上で、この4年間はとても有意義でした。農林中央金庫は、JAや信連などを通じて一次産業の皆様からお預かりしたお金を運用するビジネスを行っているので、そのビジネスの根幹で深い金融知識を勉強できたことは、自分にとって大きな財産になると思います」
相手に寄り添うように一つひとつ言葉を選びながら話す姿に、その誠実な人柄をうかがわせる和田。これからも、実直に金融スキルを磨き続けます。
お客様と同じ目線に立って、世界に誇れる日本の一次産業を支えられる自分へと成長するために。