プライベート・エクイティ分野の投資拡充を目指し、農林中金キャピタルを設立

▲農林中金キャピタルのロゴマーク

農林中央金庫へ入庫以来、農林水産業者の事業再生とプライベート・エクイティ投資の部門で実績を上げてきた中條。投資専門子会社である農林中金キャピタルの設立に携わり、現在は同社の企業投資部ディレクターを務めています。

農林中金キャピタルは、プライベート・エクイティ分野における投資の拡充を目的に設立され、2021年10月より事業がスタートしたばかり。

中條 「当社のおもな事業は2つあり、1つは『ベンチャー・キャピタル投資』。食農関連(アグテック、フードテックなど)を含む立上げ期のテクノロジー企業から、上場が視野に入った大規模ベンチャー企業まで、さまざまなステージにある成長企業へのリスクマネーの提供や経営支援を行います。

もう1つが、『バイアウト投資』。事業承継や事業再生など、経営、事業上の課題を抱えている成熟企業の過半数の株式(経営権)を取得し、より踏み込んだ支援を行います。

通常農林中央金庫は、農林中央金庫法という法律で『議決権の10%までしか企業への投資ができない』と定められています。そのため、本来はバイアウト投資ができないのですが、農林中金キャピタルという投資専門子会社をつくることで、それを可能にしました」

投資専門子会社を設立し、リスクを取ってまでなぜバイアウト投資にチャレンジするのか。その背景には、おもに社会的な課題となっている中小企業の事業承継にソリューションを提供したい、という想いがありました。

中條 「プライベート・エクイティ投資は、日本ではまだまだ一般的に知られていない発展途上のビジネス。一方で現代日本には、素晴らしい技術や製品、サービスがあるのに、オーナーの高齢化や後継者不足で事業や雇用を継続できない、などの課題を抱えている中小企業が数多くあり、リスクマネーや担い手の不足を感じています。

そういう社会的な課題に対して、プライベート・エクイティ投資で貢献したい。直接的なソリューションを提供していきたいと考えています」

リーマンショックをきっかけに考えた、金融という仕事の本質

中條のキャリアは、2007年に入庫した政府系金融機関からスタート。創業から成長、再生、破綻に至るまで、1,000社を超えるさまざまな業種・地域・ステージの企業を担当しました。コンサル会社や自動車部品メーカーへ出向し、経営インフラ強化や事業再生にも携わったといいます。

中條 「多種多様な企業に関わり、出向も経験し、充実したキャリアを築けたなという手応えがありました。一方で、前職では中小企業への融資という限られた切り口の業務しかできない。より幅広い業務に携わりたいと考えたのが、転職の動機でした」

また、中條には、金融という仕事の本質や向き合い方を考えるきっかけとなった出来事があります。

中條 「私が政府系金融機関に入庫した翌年に起きた、リーマンショックです。当時は先行きが見通せない中、事業継続に不可欠な融資でさえお断りせざるを得ないことも多く、次第に『金融って何なんだろう』と深く考えるようになって。

金融機関に身を置くと、お金は重要なソリューションのひとつではあるけれど、それ以外で一体何ができるのか、と模索するようになったのです。自ら手を挙げて出向したのも、金融以外の一般企業でさまざまな経験を積みたいと思ったからでした。

そこで転職先を探す軸としたのが、『お金がソリューションとなる金融業界であること』『融資以外のプロダクト、サービスが豊富にあること』、そして『企業ミッションがしっかりあって、やりがいを感じられること』の3つ。農林中央金庫は、これにぴたりと当てはまる会社でした」

こうして中條は、農林中央金庫へ中途入社。札幌支店へと配属され、食肉の畜産農家が集積した地域を担当します。

中條 「畜産農家さんたちは、長年の経営不振で存続が厳しい状況にありました。しかし我々としては、農林水産業と食と地域のくらしの観点で事業自体は残したい。そのために、事業承継の受け皿となる法人を設立し、並行して個人の負債整理も進めました。

2~3年をかけ、どちらの目的も達成することができたのですが、これが今携わっているプライベート・エクイティ投資に興味を持った原体験かもしれません。お金を出すだけでもなく、コンサルティングのように筋道や仕組みを示すだけでもない。両面をやれるビジネスがとても大事で、意義が深いと感じましたね」

そんな折、偶然にもプライベート・エクイティ投資に携われる、オルタナティブ投資部(現開発投資部)へと異動が決まります。

中條 「オルタナティブ投資部では、おもに新興国でプライベート・エクイティ投資を行うバイアウトファンドへの間接投資(運用原資の提供)を行っていたのですが、やはり我々自身がよりリスクを取って直接投資した方が、お客様の課題をダイレクトに解決できると感じたんです。チャレンジングですがやってみたいという想いがあり、社内ベンチャーを立ち上げることにしました。

なぜやるのか、収益はどうするか、どんなリスクがあってどう手当てするのかなど、1~2年かけて関係部署を交えて協議を重ねました。それと並行して、既存の枠組みのなかでできる、ベンチャー企業への議決権10%未満のグロース投資を実施し、実績を積み上げました。

特徴的だったのは、ボトムアップでスタートしたこと。金融規制を含む環境変化などで今後は既存ビジネスのまま継続していくことが難しいと、当時のメンバーは危機感を持っていました。今動かないと、次の100年は見えてこないから早めに着手しよう。そんなパッションを持ったメンバーが多かったですね。それもあり、短期間で投資専門子会社の設立を実現できたんだと思います」

金融と事業の中間領域に立つ感覚──直接投資の醍醐味と責任

▲投資先の上場祝賀会の様子

こうして立ち上げた社内ベンチャーこそが、現在の農林中金キャピタル。役職員数は非常勤を合わせて25名。その中で、投資に直接携わっているのが15名ほどです。

中條 「直接投資になったことで、企業の方がいかにさまざまな課題を抱え、悩み、困っているのかがわかるようになりました。金融と事業の中間領域に立っているな、という感覚がありますね。

我々は非常勤取締役やオブザーバーを派遣して、投資先企業の取締役会にも出席するので、事前に経営や事業に関する議題をかなり深くディスカッションすることも。資金を提供して終わりというスタンスではなく、企業とより密に関わっている状態です」

設立以来、投資先を徐々に増やしている農林中金キャピタル。投資先のソーシングは、事業拡大の重要なポイントでもあります。

中條 「基本的には、証券会社やメガバンクの投資銀行部門、M&A仲介会社などに当社の存在や取組み、強みなどを知ってもらい、彼らを通して投資先候補を探しています。

当社がグロース投資や経営支援した企業は、1件目も2件目も見事上場を果たしました。3件目以降も着実に成長しています。そうした実績を見聞きしたベンチャー企業から直接お問い合わせをもらうことも増えましたね。ベンチャー企業は横の繋がりも強いため、そういった紹介も含め年間200件ほど相談があります」

投資先候補の紹介、相談の数が増え、事業が少しずつ軌道に乗ってきたと感じる中條。今後の展望について、JAバンク・JFマリンバンク・JForestグループの全国機関ならではの視点でこう語ります。

中條 「これからは食品加工やインフラメンテナンス、介護など、食と地域のくらしを支えるような企業のお手伝いもできればいいなと思っています。農林水産業はもちろん、グループの総合事業体としての強みを活かせればと思うんです。

やはり農林中金グループのおもしろさというのは、食だけでなく生活のすべてに関わっている点ですよね。直接農業に投資しなくても、他のビジネスと農業がコラボレーションすることによって、双方の課題解決ができたりもします。ポテンシャルは非常に大きいと感じますね」

ベンチャーのフラットな雰囲気×数字にこだわる銀行の緻密さが魅力

プライベート・エクイティ分野で新たなビジネスに挑戦するために誕生した農林中央キャピタル。新設されたばかり、業務にも前例がないからこそ、皆でアイディアを出し合うベンチャーのような雰囲気があります。

中條 「アイディア出しまではベンチャーっぽいのですが、出てきたアイディアを選んでいくフェーズでは、銀行らしく精緻に数字を分析します。このアクセルとブレーキのバランスが絶妙で、風通しも良く、働きやすい環境だと思います」

また、農林中央金庫時代の経験も含め、中條は農林中金グループの魅力をこう語ります。

中條 「農林中金って堅苦しいイメージもありますが、実は結構おもしろい歴史があるんです。たとえば、日本の銀行がおもに国内でビジネスを行っていた1998年に、他行に先駆けて『国際分散投資』のコンセプトを本格導入したのが農林中金。時代に合わせ、必要な時にはチャレンジングな変化ができる会社だと思っています。

また、農林中金は農林水産業と食と地域のくらしを支えるリーディングバンクであり、金融の世界ではグローバルに活動する機関投資家としての顔も持っています。農林水産業と機関投資家という、普段あまり交わらないような両面でエッジが立っている組織って珍しいですよね。

そんな特色あるグループのなかで、社会的課題にプライべート・エクイティ投資で挑み、大きなインパクトを与えたいと考えています。目指すは日本有数のプライベート・エクイティ・ファンド。当社ビジネスを育てていくことがグループ全体のPRにもなりますし、より多くの解決策を提供できるようになると思います」

今まさに、新たな変革期を迎えた農林中金グループ。プライベート・エクイティ・ファンドに興味を持つ人に向けて、中條はこう語ります。

中條 「プライベート・エクイティ・ファンドは、一般的に小規模な組織でシニア層が固定化されており、入社後ポジションが上がっていくまでに時間がかかるケースが多いように思います。

その意味では、当社のような立ち上げ期のファンドなら、自分のポジションを早期に確立し、希望するキャリアパスを描きやすいと思います。農林水産業と食と地域のくらしへの貢献という理念に賛同し、新しいことに挑戦したいという方に是非来ていただきたいですね」

社会や農林水産業の課題に向き合い、金融や投資の在り方を模索し続ける中條。

農林中金キャピタルという新しい舞台で、革新の一歩がはじまります。