農林水産業から生まれる「いのち」の連鎖を、より豊かで確かなものに

近年、気候変動をはじめ、環境・社会課題の深刻化、コロナ禍による働き方・ライフスタイル・価値観の変容など、農林水産業を取り巻く環境は大きく変化し続けています。

それを受け、2023年12月に創立100周年を迎える農林中央金庫は、改めて企業としてのパーパス(存在意義)を定めました。

篠﨑 「農林中央金庫のパーパスは、『持てるすべてを「いのち」に向けて』というものです。農林水産業から生まれる『いのち』が、その先に連なるたくさんの『いのち』の営みにつながっている、という考えから定められました」

未来へと受け継がれる「いのち」の連鎖を、より豊かで確かなものにするため、農林中央金庫は「農林水産業と食と地域のくらしを支えるリーディングバンク」というビジョンを掲げます。

篠﨑 「それを達成するために定めたミッションの一つが、『持続可能な財務・収益基盤の確保』であり、会員の皆様に対する安定的な利益貢献。世界がどう変わっても、新たな価値・安定収益を生み出すことで、世の中から必要とされる存在になることを目指しています。どうすれば社会の皆様のお役に立てるかを考え、新たな挑戦を続けています」

現在は、海外クレジット・オルタナティブ投資に関わる企画・執行を担う篠﨑。20年以上在籍する農林中央金庫には、ある想いを持って入庫したといいます。

篠﨑 「私がこの組織を志望した理由は、『ユニークかつ明確なミッションがある組織は、働きがいがある』と考えていたからです。入庫後は、当社ビジネスの3本柱の1つといわれる『食農法人営業』でキャリアの一歩を踏み出しました」

食農法人営業として、名古屋支店や本店営業部で企業向け融資業務を担当した篠﨑。担当企業の影響もあり、よりグローバルな視点を持ちたいと考えるようになります。

篠﨑 「当時、企業融資をしている業種が総合商社だったため、『彼らが見ている世界とはどんなものなのか見てみたい』と思い、海外MBA留学をして知識を深めました。帰国後は、収益の柱となる投資業務に長く携わっています」

安定的な投資・還元を続けていくために。新しいビジネスの柱を構築

篠﨑が属するグローバル・インベストメンツ部門(以下、GI部門)は、市場運用部・開発投資部、不動産FS(ファイナンス・ソリューション)部、PF(プロジェクトファイナンス)部、資金為替部、投資契約部の6部署で構成されています。

篠﨑 「国内外の債券・株式に対する投資業務を行っている市場運用部。この部では、投資部門全体の運用ポートフォリオのアロケーションの作成も行います。

開発投資部では、海外のクレジット資産や、近年人気のオルタナティブ商品、プライベートエクイティやヘッジファンド、インフラファンドなどを投資対象にしています。

不動産FS部は、2021年4月に立ち上げたばかり。主に、国内外の不動産に対する投資を行っています。また、投資だけではなく、融資のお取引先様に対する不動産の利活用のソリューション提供も行っています。

そして、PF部では、国内外のプロジェクトファイナンスに対する融資や、太陽光発電、風力発電などへの融資も行っています。

これらの4つの部署を支えているのが、ドルやユーロなどの外貨の調達をする資金為替部と、投資関連の契約書の実務を行う投資契約部です」

また、ニューヨーク、ロンドン、シンガポールの海外3拠点に加え、オーストラリアとオランダには現地法人を設立。海外とも連携しながら、安定的な収益を上げています。

篠﨑 「当庫の投資部門の一番の特徴は、各部が連携し、その時々の市場環境を踏まえた最適なポートフォリオを目指し、最終的に市場運用部がとりまとめつつ各部が執行するというスタイル。ひとつの部が細かい最適化を目指すというよりも、それぞれが投資しているアセットの特徴を理解し、バランスを取りながら運用しています」

そんなGI部門には、ホットなトピックスが2つあります。1つは、昨今注目されるESG投資を本格的に推進し始めたこと。

篠﨑 「具体的には、2030年までにサステナブルファイナンスに対して、新規で10兆円を投資していくことを目指しています。ESGへの貢献、SDGsの実現にも直結するような案件に積極的に取り組んでいるところです」

そしてもう1つは、農林中央金庫が20年以上の実績を持つ国際分散投資について。蓄積したノウハウを外部の顧客に提供することで、新たな価値を作れないかと画策している段階です。

篠﨑 「特に開発投資部が投資している海外のクレジット資産とオルタナティブ資産、不動産FS部で培っている不動産投資。この部分のノウハウをグループ会社に移植し、連携しながら、新たなビジネスモデルを作るという挑戦をしています」

グループ会社へノウハウの移植し、新たなビジネスモデルを作るというチャレンジは、すでに3つの企業で実践しています。

篠﨑 「1つ目は、『農林中金全共連アセットマネジメント(NZAM)』での資産運用ビジネス強化。もともと債券や株式の取り扱いがあった会社ですが、クレジットやオルタナティブ資産についても、人も含め大幅にリソースを投入し、商品ラインナップを拡充しました。幅広いお客様の運用ニーズにお答えするため、新たにスタートしたところです。

2つ目は、2021年8月に新設した『農林中金キャピタル』。様々なステージの企業様へのリスクマネーの提供や経営支援を目的にした投資専門子会社です。革新的な技術を有するベンチャー企業への投資も行い、本邦企業の社会的・持続的発展も目指してスタートしました。

3つ目は、グループ会社のJA三井リースとともに設立する新規の子会社にあたる、『農中JAML不動産投資顧問』での国内不動産を対象とした私募リートの運用です。ここでは、農林中金の不動産投資経験とJA三井リースの不動産開発の実績と業界のネットワークを活かしていきたいと考えています」

最も大切なのは、5つの共有価値観への想い

投資に限らず、融資やリテール関連など多岐に渡るサービスを提供している農林中央金庫。働く人たちのバックグラウンドもさまざまです。

篠﨑 「たとえば投資部門に限っても、他の金融業態での投資経験者、運用会社でのファンドマネージャー、アナリストなどさまざまな経歴を持つ方が活躍しています。

また、『農林中金キャピタル』であれば金融機関職員として企業分析や融資をした経験、コンサルティングの実務経験も役立ちますし、今後力を入れていく不動産投資顧問ビジネスでは、不動産実務にも精通した人を求めています」

ただし、採用にあたって重視するのは、スキルやバックグラウンドに限らないと篠﨑は語ります。

篠﨑 「採用では、当社の共有価値観(シェアードバリュー)に共感していただけるかどうかを最重視しています。その内容は、グローカル・プロフェッショナリティ・チームワーク・チャレンジ・成長の5つ。

逆に言うと、シェアードバリューに共感できる方は、新卒・中途関係なく、いろんな部門で活躍していますね。バックグラウンドは異なっても、同じ価値観を共有しているからこそ、同じ方向を向いて仕事ができる。

最近読んだ本のなかで、『企業における真の多様性というのは、企業理念や文化に賛同しているという同質性を前提にする』という言葉が印象に残っています。まさしくそういうことで、理念や文化への共感が不可欠だと感じますね」

5つのシェアードバリューのなかでも、投資部門で特に重視しているのは、グローカルとチームワークだと語る篠﨑。

篠﨑 「当社のビジネスモデルとして、地域や系統会員の皆様のお役に立つ組織を目指す一方で、国際分散投資などグローバルな世界で勝負をしている、という背景があります。この2つは一見すると真逆の要素であり、ややもすると乖離してしまいがちですが、常に両方を意識して仕事に取り組むことが非常に重要だと思います。

もう1つ重要視したいのは、チームワークですね。月並みな言葉になりますが、1人でできることにはやはり限界があります。まさしくいろいろなバックグラウンドを持つ人間が、チームとして仕事をすることで、新しい価値が創造でき、いい仕事・いい循環・やりがいに繋がるのではないかと思っています」

チームワーク、ボトムアップの文化を育み、新たなステージへ

目まぐるしく変わる社会情勢の中、農林中央金庫が今後も世の中に貢献し続けるためには何が必要なのか?篠﨑は今後の展望について、こう語ります。

篠﨑 「パーパス・ミッションの実現に向けて、従来以上に農林中金本体がしっかり運用し、安定的な還元を目指していくのは変わりありません。それに加え、前述した新たなビジネスに挑戦し、収益の安定化に結びつけることで、次のビジネスの柱を作っていきたいと考えています。その結果が、世の中や会員の皆様に対する貢献につながると信じ、前進していきたいですね」

新しいビジネスへの挑戦の中で苦難を経験しつつも、チーム全体を新たな目標に向かうことにやりがいを感じているという篠﨑。

篠﨑 「一緒に働く上司・同僚・後輩と新たな事業の方針や目的を完全に共有し、みんなが納得感を持って進めていくのは本当に難しいことです。しかし、100周年を迎えた先の組織を見据えると、変化することが絶対に必要なチャレンジだと感じています。価値観や想いをチーム内で幅広く共有し、一丸となって進めていきたいですね」

そして、篠﨑がチームワークとともに大切にしたいのが、トップダウンではなくボトムアップで意見を発信できる企業文化。

篠﨑 「投資の最終決定をするにあたっても、判断材料となる大切な情報を幅広く収集し、しっかり分析するのは、各メンバーの重要なミッションだと思います。

そしてこれだけ世の中が動き、何が主流になるかわからない時代においては、ボトムアップでいろいろな意見を共有していくことが必要。そこに何か、次の打ち手やビジネスの種になるものがあるのではないか、と思っています。農林中央金庫として変わらない価値観を共有しながら、世の中に応じて柔軟に変化できる組織を目指したいですね」

100周年のさらにその先を見据えた、篠﨑の挑戦。変えるべきもの、変えてはいけないものを見極め、すべての「いのち」のために貢献し続けます。