ニトリはシステムエンジニアのキャリアを広げる

ニトリの情報システム改革室は、単なる社内の情報システムの構築“だけ”を行うのではありません。経営指標に直結するという視点で自己評価を行っており、常に経営視点、全体最適で社内のシステム改革を推し進めているのです。

藤家 「一つひとつのプロジェクトが終わった後に、その費用対効果を3カ月おきに取っています。かけた工数や費用に対して、実際にどれくらいの効果が出ているかというのを、きちんと数字で追いかけ、改善を図っている点は私たちの強みでもあります」

また、求められるスキルも、単なるエンジニアの枠には収まりません。中途採用でニトリへ入社した藤家だからこそ感じる、ニトリで求められるスキルセットや仕事への向き合い方について、次のように語ります。

藤家 「“はいはい言う病”は中途採用で入社した方の最初の難関ですね。SIerから来た人はとくにそう。

SIerはクライアントワークですから、お客様がやりたいことを引き出して、受注し数字を積み上げていかなくてはなりません。それが本質的に効果がある施策かどうかは別としてです。

だから基本的にすべてに『はい!』と返事をして持ち帰ってくるという習性が身に付いているんですね。だからうちに来た中途採用の社員も最初は部署の要望をそのまま聞いて来ちゃうんです。でも『いやでも結局それって』とか『本質的な課題はこうですよね』としっかりと経営視点の発言ができるようになることが、成長のひとつの節目ですね」

システムエンジニアとの出会い

藤家 「僕が新卒でSIerに入ったのは、ちょうど前年にWindows95が登場した年でした。大学の専攻もシステム関連だったので、時代的に『ITはこれからの時代に必須のスキル』という感覚がありました」

Windows95によって一般家庭にまでインターネットが広がりを見せる中、学生だった藤家はITの重要性を意識し、進路を見定める一方、会社で働くことには後ろ向きだったと言います。

藤家 「僕らの時代は就職氷河期で大変だったんです(笑)。本当にこのまま働くという選択で良いのか?と自問自答をくり返しました。だけど、卒業旅行で訪れたネパールで考え方が変わりました。

当時、ネパールは世界最貧国。ある地域では、電気が通っておらず夜も真っ暗。そんな中でランプを点けて、四つん這いになって勉強している少女を見かけました。その姿を見て、今まで当たり前と思っていたことが当たり前じゃなかったんだと思い、日本に帰国したら働こうと決めました」

あらためて社会人となることを決意するものの、帰国したのは大学4年生の3月も末。短い時間の中で、たまたま受けた会社に縁があり、すぐにシステムエンジニアとしての入社が決まったと言います。

偶然の出会いでしたが、藤家は働くほどにエンジニアとしてのやりがいを見いだしていきました。

藤家 「入社してしばらくはコーディングを担当していて、いろんなプロジェクトにちょっとずつ顔を出していました。そのうち医薬品関連のプロジェクトに携わるようになったんです。元請けの案件だったので、お客様のところにも通って、仕様を決め、モノをつくるということを始めました。

人がやるよりもシステムがやったほうがいいことがいくつもあって、それを実現してあげることで、製薬会社や医療従事者の仕事が楽になっているという感覚に満足感を得ていました」

ニトリは「おもしろい!」

そんな中、システムエンジニアとして、自らの価値を自覚する出来事が起こります。

藤家 「お客様は『この画面に印刷ボタンをつくってほしい』とおっしゃるんですよね。でも『なんのためにつくるんですか?』って聞くと、印刷してFAXを送るからと言うんです。『じゃあ印刷するボタンではなくFAX送信のボタンにしませんか?』みたいなやり取りをすることが多々ありました。お客さんが望んでいる機能と、本当に実現したいことは違うんだなっていうことを教えてもらいました」

こうした経験から、藤家は「現場」を意識するようになりました。

藤家 「システムを使っているのは現場の方なので、直接話がしたいって思うようになりました。でも結論としては、現場の人は、問題点はわかるんだけど『答え』は知らないんですよね。答えを知っているのはもう少し俯瞰して物事を見ている本部や情報システム部の人なんです」

エンジニアとして事業そのものに貢献する方法を模索し続けた藤家が、自ら事業会社のIT部門に入ることは自然な流れでした。そうして2008年の8月、ニトリにジョインします。

藤家 「入社するまで、ニトリは一度利用したことがあるくらいでした。『すごい安い!』って感じたことだけを覚えていましたね(笑)。

『この店はこの価格でどうやって成り立ってるんだろう?』って。普段いろんなお店に入っても入っただけで忘れるじゃないですか。一度入っただけですが、その感覚をずーっと覚えていたんです」

自らが事業会社に入るにあたって、基準としていたのは仕事を「おもしろい」と思えるかどうかだと言います。

藤家 「それまでにも、SIerの立場で、事業会社に常駐したことがあります。長く勤めていて、社員への誘いもあったのですが、たとえ良い条件の年収を提示されたとしても行かなかったでしょう。その一方で、ニトリは『おもしろそう!』って思えたんです」

藤家が見いだしたニトリのおもしろさとは、社員が持つ変革への前向きな意思でした。

藤家 「結局システムってただの手段なんです。たとえば売り上げを上げるためにITの力を使って結果が出るかもしれないけど、ITの力を使わなくてもできることはいっぱいある。だから、手段というより組織が一丸となって、そのなかで何かを実現しようと変革を起こしていくということがすばらしいことだし、僕はその中心にいたいんです。

ニトリではそれができるし、その芽がいっぱいある。いつも誰かが何か新しいことを考えていて、どう変えていこうかって試行錯誤しています」

社内横断プロジェクトをマネジメントする、ニトリのシステムエンジニア

一方、変わろうとするエネルギーをうまくまとめて、結果に結びつけるには、システムエンジニアとしての経験が重要です。

藤家 「私の部署を端的に紹介するなら、お客様のために『やりたい』『実現したい』といった社員の声に対して、それを実現するための手段であるシステムを提案し、一緒につくりあげていく部署です。だいたい相談の多い部署単位に人が割り当てられているのですが、私は、そういった枠組みに当てはまらない案件を多く担当しています」

複数の部署をまたいだ案件は、近年ますます増えてきています。

藤家 「ニトリは横串の課題にまだまだ弱いと感じています。一人ひとりが課題にコミットメントできるので、部署ごとにトップダウンで行う課題解決はすごく強いんですけどね。

しかし、複数部署が関与するときって、自分の部署の利益に必ずしもなり得ないことがあるんです。全体最適を目指すべき課題とかになると、途端に弱くなっちゃうんですね。音頭を取る部署もなくなってしまう。そんなときこそわれわれの出番です」

もちろん、そうしたプロジェクトには難しさがともないます。

藤家 「課題の洗い出しから問題点の合意形成、やり方を決めてシステム化の構想図までつくるという一連の工程に、多くの部署に関係するステークホルダーがいます。きめ細かい根回しは一朝一夕にできるものではありません。

ただ唯一言えるのは、こうした横串の動きをフレキシブルにできるのはうちの部署だけだということ。他の会社では、業務革新室なんかが取りまとめるケースが多いと思います。ニトリにおいては、全社最適で見ることができるという点で、私たち情報システム改革室だからできることです」

システムエンジニアの活躍の幅が広がり続ける現代──。

請負のシステム部門ではなく、経営にコミットし、改革のブレ―ンとして活躍できる環境は限られています。弊社は“自前主義”のもとに、システムの開発を内製し続けています。そうした環境が、藤家のようなエンジニアを引きつけているのです。