バリデーションは品質を守る最後の砦。不具合を決して見逃さない

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▲業務の様子

2018年、日産自動車株式会社(以下、日産自動車)に入社した谷本は、e-POWER用パワートレイン制御の実験部に所属しています。日産自動車のe-POWERとは、発電専用エンジンで発電してモーターだけで走る電気自動車の新しいカタチ。通常の電気自動車は外部からの充電が必要ですが、e-POWERは充電の必要がありません。

パワートレインの制御は、エンジン、バッテリー、発電モーター、駆動モーター、など、その他多くのコンポーネントとコントロールユニットで構成されています。谷本は、パワートレインの統合コントロールユニットの機能品確を担当しています。

「所属部署には10人弱のメンバーがいて、私はアシスタントマネージャーをしています。主な業務である『バリデーション(品確)』は、品質を守る最後の砦。私のところで不具合は決して見逃してはいけません。品質を担保する役割に責任を持って従事しています」

パワートレインの統合コントローラーは、人間でいえば頭脳にあたるもの。その開発においては自動車全体を俯瞰してチェックしていくことが大切です。

「統合コントローラーは、たくさんのコントロールユニットと協調することで車を動かします。そのため、自動車の全体像を捉えながら機能を確認しなくてはなりません。

よって私たちのチームは自動車全体に関する知識や経験が豊富です。実験室での開発評価だけではなく、試作や量産の立ち上げでは工場へ、市場不具合の調査でディーラーさんへ赴くなど、幅広く活躍しています」

不具合をなくすために日々尽力している谷本ですが、そのとき大切になるのは、お客さまの存在を考えることだといいます。

「設計仕様通りだとしても、品質に疑問を感じた場合には、お客さま視点で考えることを第一に、改善に向けて積極的に意見を出しています。また大前提として不具合を起こさないようにするのが重要なので、設計の方と連携をして未然に不具合の芽を摘むこと。そして同時に、不具合を流出させないためのプロセスを構築することも大切です」

アメリカやドイツへの出向を経験。困難な状況を乗り越える力を身につける

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▲アメリカでの写真

谷本が自動車業界をめざしたきっかけは、高校生のころに抱いた自動車に関わる仕事への憧れでした。はじめは自動車の整備士を志しましたが、単に組み立てるだけではなく、機械そのものの構造を学びたいと思い、大学への進学を決意。大学を卒業後、ベアリングを扱う部品メーカーに就職します。

「ベアリングは機械における重要な部品。ベアリングに携わることができれば、機械への深い学びを得ることができるのではないかと思ったのです」

実際、ベアリングに携わる中で機械に関する多くのことを学んでいった谷本。

しかし、しだいに高校のときから憧れ続けた自動車への想いが強くなっていったと語ります。そして、自動車に関わる仕事をするため、自動車の部品である湿式クラッチを扱うメーカーへ転職することを決意します。

「お客さまからクラッチの要求仕様書をいただき、それを実現するための仕様を私がリーダーとなって社内で検討。お客さまと技術面でのコミュニケーションを重ねながら、実現可能なクラッチを提案し、契約していただくことが当時の業務でした。

社内での試作から工場の生産まで、多くの部署の人々を巻き込んでひとつのものを作り上げていくことで、技術領域にとどまらない、幅広い知識と経験が身につきました」

世界中ほぼすべての国の自動車メーカーに湿式クラッチを納入している企業だったので、海外出向のチャンスを狙うように。海外での挑戦に向けて仕事を頑張った結果、見事に希望していたアメリカへの出向が決定しました。

「当時の英語能力はなんとか一人で海外旅行に行けるレベルでした。実際に現地に行ってみると本当に苦労しました。住居の契約をはじめとして、アメリカでの生活に必要なことを、すべて自分でやらなければならなかったので、大変でした。

また仕事では、本来は現地のローカルスタッフ帯同のもとお客さまと交渉するのが一般的なのですが、私はひとりだけで訪問し、現地のエンジニアと直接話をしていました。現地の商習慣やビジネス英語など、すべて一から学ぶ必要があり、最初は本当に苦労しました。

その後ドイツに出向になるのですが、このアメリカでの経験が次のドイツで役に立ちました。もちろん技術面やコミュニケーション能力も向上しましたが、なにより身についたのは苦難を乗り越える力かもしれません。現在、スペインの拠点と仕事をしているのですが、そこでもこのときの海外での経験が役に立っています」

部品メーカーから完成車メーカーへ。高校のころに思い描いていた以上の仕事に

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▲マイカーとのツーショット

部品メーカーに携わる中で、最終的なプロダクトに関心を抱き始めた谷本は、高校生のころからの夢であった自動車全体に関わる仕事、完成車メーカーへの憧れを膨らませていきました。

そして数ある完成車メーカーの中から日産自動車を選んだのは、前職での経験と挑戦心を同時に活かせる環境だと考えたからです。

「100年に1度の変革期を迎えている自動車業界。私が前職で扱っていたクラッチは、将来への存続が懸念されている部品です。そのため先を見据えて、電動化に積極的な完成車メーカーに行きたいと考えていました。それがひとつめの条件でした。

そして、新しいことにチャレンジできるというのがふたつめの条件。これは前職での海外の経験が関係しているのですが、日産自動車はフランスのルノーと提携しており、多様な国々の方々が一緒に働き、さまざまな価値観や考え方を認め合いながら仕事をしている環境に惹かれました」

こうして2018年に日産自動車に入社。以来、一貫してソフトウェアやシステムの品質管理に取り組んでいる谷本。自動車全体に関わり、将来性のあるソフトウェア分野という、これまでの希望がかなった配属でした。

「それまでは目に見える部品、ハードウェアに携わってきたので、ソフトウェアやシステムを扱いはじめた当初は非常に大変でした。35歳で中途入社し、基礎も用語もほとんどわからないところからスタート。苦戦しました。

けれどハード面とソフト面、両方の知識を学んだので、全体を理解した上で自動車に携わることができているのは自分の強み。可能性を広げていけるような将来性のある分野なので、選んだ道は正解だったと感じています」

中途入社後、谷本にとってはじめてシステムをのせて実験した試作車が「NOTE」でした。問題なく試作したシステムが立ち上がった際には、わが子の産声を聞いたような感覚だったと言います。現在、自身もNOTEに乗車していると谷本は嬉しそうに話します。

「単に組み立てるだけではなく、今の仕事では自動車全体に関わっている。高校生のころに想像していた以上の業務に取り組むことができ、夢がかなう喜びを味わっています」

フィールドは違っても根本的な仕組みには共通項が。仕組みを考えることが重要な仕事

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自動車の頭脳にあたる統合コントローラーを扱う部署は、他部署を巻き込んでプロジェクトをリードしていく存在。アシスタントマネージャーになり、チーム全体としてのアウトプットを意識するようになったと語る谷本は、前職での経験を活かしながらコミュニケーションを工夫していると言います。

「こちらからリードして『こうしませんか?』、『ここを一緒にやりませんか?』という調整の仕方や協力の仰ぎ方を意識しています。多くの人を巻き込んでひとつのものをつくることが、日産自動車で働く最大の魅力です」

さまざまな課題に取り組む際、もっとも必要になるのは根本的な仕組みを考えること。そして、そうしたスキルがあれば異分野・異業種からの転職でも挑戦できる環境が、日産自動車には整っていると谷本は語ります。

「入社してすぐのころに大変だったのは、大前提となる知識が不足していたから。その後、知識が身についてくると、フィールドは違っても、根本的な仕組みはどれも似通っていることに気がつきました。それに気づいてからは、これまで培ってきたスキルを応用できるように。そのことが、ソフトウェアの中の仕組みを考える、ひいては自動車自体の仕組みを考えることにつながっています」

「とにかく前向きにチャレンジしたいという想いがあれば、当社はそれに応えてくれる環境が整っている」と谷本は環境の良さを表現します。あえて未経験のフィールドに飛び込み、チャレンジを続けてきた谷本。100年に1度の変革期を迎えている自動車。根本的な仕組みを考えながら、谷本はこれからも新たな挑戦を続けます。

※ 記載内容は2023年7月時点のものです