ニーズを見据えて。車内の過ごし方や移動中の楽しみ方まで、新しい車両像を考えていく

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▲自由に作業ができるNATCのオープンエリア

先行車両開発部に在籍する堀内は現在、先行車両計画と呼ばれる仕事を手がけています。

「具体的には、5~10年先のお客さまのニーズを見据えた車両コンセプトを考え、それを実現するための具体的な車両パッケージや乗員配置を計画する仕事です。コスト、性能、質量、部品のレイアウトなど車に関わる要素をバランス良く成立させ、1台の車両として具体化していく必要があります。

先行車両計画では、車両・キャビン計画、質量計画、PFレイアウト計画に担当が分かれて、一つのチームとし車両開発を行います。配属されて最初のころはe-POWER車両開発を担当し、現在は2030年頃を見据えたEVのキャビン計画を担当しています」

先行車両計画では、未来にどのようなお客さまがいて、どのようなニーズが生まれるのかについて仮説を立てるところから始まります。求められるのは、時代を先読みする力です。

「将来を考えると自動運転が普及し運転の操作も少なくなると考えられます。そのため車内の過ごし方や移動中の楽しみ方などにまで範囲を広げ、車の新しい価値を提供していかなければならないと思っています」

堀内がキャビン計画においてめざしていることのひとつが、“移動中は、暗くて狭い車内でずっと同じ姿勢で座っていなければいけない”という常識を変えること。そのためにキャビン空間としてどういう空間になっているべきかを考え、乗員配置や部品配置、車両パッケージの構想立てを行っています。

一方、キャビン計画の前はe-POWER車両開発を担当。キャビン計画の仕事とは違い、お客さまが触れられないエンジンルーム内のレイアウト業務を手掛けていました。車両としての競争力を持たせるため、魅力あるスペックとコストを両立するパワートレインパッケージを検討し、エンジンルーム内のレイアウトを成立させました。

「車両全体を見ている部署なので関連部署が多く、車両について広く知っておく必要があります。私が携わるのは、お客さまが触れられる部分と、お客さまが触れられない部分の両方。どちらも見ることによって、車両全体を見る力が少しずつ培われてきたように感じています」

目標とする車両にとって最適な形を模索する上で、堀内には大切にしていることがあります。

「確かな意見をもち、それをきちんと伝えることを心がけています。それが大切な理由は、意見を外に出す過程で自分がなぜそう考えるかを突き詰めることができるからです。自問自答をすることで原点の車両コンセプトに立ち戻ることにつながり、自分がどのような車両をつくりたいかを常に意識して仕事をすることができます」

新しい移動手段を創り出す。柔軟な発想を知り、心動かされて、日産へ

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▲大学時代はインダストリアルデザインを専攻していた

幼少期から工作に興味があったという堀内。とりわけ、表面的なデザインよりも新しい機能や仕組みを考えることが好きだったといいます。

「小学校に入る前から、いつも家で紙工作をしていました。とくに好きだったのが、輪ゴムなどを使って、からくりで動く船や車をつくること。よく部屋中を散らかして叱られたものでした」

その後、ものづくりへの関心の先は、工業製品へ。大学ではインダストリアルデザインを専攻しました。

「学生時代に主に勉強していたのは工業製品のデザインです。研究室では、多変量解析といって、アンケートやさまざまな統計データなどの大量のデータを統計的に処理し、その結果をサービスやデザインにどうつなげるかを考える研究をしていました。

卒業研究では、シェアリングサービスを取り上げ、清潔志向の強い日本人に他人と物を共有していくためにはどのような方策が必要かというテーマに取り組んでいました」

ものづくりに携われる仕事がしたいと考え、メーカーを志望していた堀内。自動車づくりにまったく興味がなかった彼女にとって、日産自動車株式会社(以後、日産自動車)への入社のきっかけは社員の言葉でした。

「自動車が好きな人が入る企業だと思っていたので、自動車メーカーはまったく考えていませんでした。ところが、合同説明会でリクルーターの方に声をかけられて、流れで面談を受けて話を聞くことになったんです。後日、軽い気持ちで話を聞きに行ったところ、日産自動車は自動車をつくることを目的にしているのではなく、移動手段を豊かにして人々の生活を変えたいという情熱がある企業だと知って大きく印象が変わりました。

とくに心を動かされたのが、『便利に移動できるのであれば、ソリューションは自動車でなくても構わない』というリクルーターの言葉でした。プロトタイプ開発の工程を大学で学んでいたので、自動車に興味がない自分だからこそ、いまの自動車の形にとらわれない新しい移動手段の提案ができるかもしれないと考え、入社を決めました」

希望していた先行車両に携わる部署へ。試作車を体感してもらい、得られた手ごたえ

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▲チームでのミーティングの様子

入社後、堀内が配属されたのは現在の部署。最初に任されたのはe-POWER車両開発の質量計画でした。

「質量計画では、競争力ある車両とするための目標質量を決め、それに向けて各部品の質量をコントロールします。質量計画は、車両すべての計画や性能に関わる大事な部分です。その後、エンジンルーム内レイアウトを経て、4年目にEVのキャビン計画を担当しています」

希望していた通り、入社当初から車両全体に携わることができた堀内でしたが、自動車についての知識は皆無。当時の苦労をこう振り返ります。

「車両の部品はどれも初めて見るものばかり。最初は周囲の人の会話がまったく理解できず、これではやっていけないと思ったこともありましたが、仕事を覚えるにしたがって少しずつ不安が解消されていきました。

心がけてきたのは、周囲の人に聞きながら、なんとか形にできたと思えるところまでやり遂げること。どんなに難しいことだとしても、回を重ねるごとにできるようになっている実感があります」

先行車両計画では、机上で計画を練るだけでなく、その実現性を確認するための試作も行います。2022年には、堀内も試作車の製作に参加しました。

「役員や製品化を判断するプロジェクトリーダーの方に試乗してもらったのですが、これが大成功。実際に車両の魅力を体感してもらったことで、製品化に向けて一気にドライブがかかりました。試乗する前と後で、皆さんの表情があきらかに変わったことはいまも忘れられません」

また、現在は内装の検証するためのモックアップ制作にも携わる堀内。いまの仕事に大きな手ごたえを感じていると言います。

「構想段階にある車両のシートやハンドルなどの配置を検討するための模型をつくるのですが、実際に物があるとダイレクトに反応が得られます。開発へのモチベーションも高まりますね」

自由度の高い環境でこそ実現する自由な発想。新たな移動ソリューションの実現に向けて

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今後は、内装やエンジンルーム以外にも範囲を広げ、車両全体を手がける力を身につけていきたいと意欲を見せる一方、ワークライフバランスの実現にも努めたいと話す堀内。それができるのは日産自動車だからこそ。同社の労働環境の魅力についてこう続けます。

「開発職であるにもかかわらず在宅勤務も取り入れているのが魅力ですね。社内の設備もとても充実していて、私の職場はNATC(日産先進技術開発センター)にあるのですが、個人の執務机のほかに、好きに座って仕事ができるオープンエリア、ひとりでこもって集中できるシンクルームなど。従来の研究開発オフィスとは違う独創的な空間の中、自由度の高い働き方ができます」

また、風通しの良さも部署の魅力のひとつ。

「温厚な性格の持ち主ばかりで、人の話にきちんと耳を傾けてくれる人が多いと感じます。年齢に関係なく、尊敬できる人がたくさんいるのも部署の特徴です」

構想が何も固まっていないゼロの状態から開発プランを組み立ていくのが先行車両開発部のミッション。いま求めている人物像について堀内はこう話します。

「自動車に興味がない人も来てほしいと思っています。というのも、自動車にそもそも興味のないお客さまも少なくないから。私たちがめざすのは、お客さまを第一に考えたものづくり。お客さまと同じ眼差しを起点として、どうアプローチしていくかを考えていけたらと思っています」

経営戦略の重要な柱のひとつとして、“ダイバーシティ&インクルージョン”を掲げる日産自動車。新しい仲間に向けて堀内はこうメッセージを送ります。 

 「自分がやりたいことを提案することが好きな人、提案の上手な人、進むイメージを描いて発信できる人などがフィットするのではないでしょうか。また、いまの新卒社員には、海外経験があるなど外交的な人が多いのですが、一方で内向的な人がいてもいいと思っています。多様性が広がっていけばうれしいですね」

自動車メーカーの枠に収まらない、“他のやらぬこと”に挑んできた日産自動車。堀内はまさにその核を担う場所で、次世代の移動ソリューションの実現に向け、新たな可能性を追求し続けます。 

※ 記載内容は2023年6月時点のものです