変化するビジネスモデル──変化に合わせて自社の強みを活かす

▲イラン/テヘラン駐在時代 現地の先輩、同僚と一緒に(左から2番目)

2021年現在、日鉄物産の常務執行役員を務める吉田 周市。そんな吉田の商社パーソンとしてのキャリアは、40年前に三井物産(株)からスタートした。

吉田 「私は1981年に三井物産に新卒で入社し、主に鉄鋼製品の国内営業、輸出営業や鉄鋼に関する事業投資などを担当していました。また、これまで海外にも5カ国で、計20年ほど駐在していて、マレーシアとドイツではそこの国の拠点長、いわゆる現法社長を務めておりました。その後には、三井物産スチール(株)の副社長を務めました。」

商社パーソンとして多くのキャリアを積んできた吉田は、2019年4月、前年に三井物産スチールから一部事業及び人材の譲渡を受けた日鉄物産の常務執行役員に就任した。

現在は、鉄鋼事業本部の事業の一部及び中国、バングラデシュ、フィリピン、ミャンマーの海外事業拠点に加え、産機・インフラ事業本部の管掌も手がけている。

そんな吉田が日鉄物産に来てから力を入れていることの一つは、(事業の)“インサイダー化”だ。

吉田 「これまでは、インフラ需要が伸びている新興国への鋼材供給について、日本の高炉や電炉で作られた鋼材を輸出してきました。しかし、現地にも鉄鋼メーカーができ、技術的にもレベルが上がってきたため、現地でつくって、現地で消費する地産地消の動きが顕著になっています。

そういった中では、地場に入り込み、現地の人間あるいは会社になりきって、インサイダーとして、地場マーケットで仕事をしていくことが大切です。そうしないとなかなか現地の需要の伸びを捕捉できないのです。」

実際に吉田は、新興国のビルの骨組みをつくる鉄骨を加工するメーカーを、ASEANや、香港などでネットワーク化して、一部投資も絡めた、グループ化、パートナー化をすることで、東南アジアや中国のインフラ需要を捕捉していく取り組みを行っている。

その中で、日本だけでなく地場や第三国で生産された鋼材の物流にも関与しつつ、事業投資先からは配当や事業投資益を享受するなど、新しいビジネスモデル創出に、動いているのだ。

そうしたビジネスモデルの変化に対応する上で、吉田は日鉄物産の強みが、活きてくると感じている。

吉田 「当社の強みは営業面、技術面で、専門性の高いプロ人材が揃っていることです。だからこそ、われわれがお客様、パートナーとして組む相手や事業投資(していく)先の企業価値をアップするための多面的なサポートができるのです。その結果、お客様からも非常に信頼されますし、われわれをパートナーとして認めていただけるわけです。」

パートナーシップを通じて目指すのは、互いの良さでシナジーを生み出すこと

2018年、日鉄物産は三井物産スチール(株)から一部事業及び人材を譲り受けた。

事業移管をする時期、吉田は海外にいたため、そのプロジェクトに直接参画したわけではないが、当時の事業移管をこのように分析する。

吉田 「規模は世界で一番大きいわけではないですが、品質や技術、パフォーマンスという意味で私は世界最強だと考えている日本製鉄のグループ中核商社が日鉄物産です。

そんな日鉄物産が自社の持つ特長を発揮し、鉄鋼流通の中心的な役割を担うことで、お客様のニーズにも応えられるし、お客様の成長をサポートする一つのモデルケースになれる。だからこそ、三井物産も自社の持つ事業やアセットを日鉄物産に移管することを決断したんだと思います。」

吉田がそう語るのは、鉄鋼のマーケットが変化しているからだ。国内の鉄鋼マーケットは今も縮小していて、これからも少子高齢化の中で、停滞・縮小傾向は避けられない。一方で、海外では新興国を中心に、まだまだ鉄鋼のマーケットは拡大傾向にある。

その中で、地産地消の動きが強くなり、鉄鋼に関わる物流や流通の仕組みが大きく変わってきているからこそ、こうしたダイナミックな動きが未来をつくると考えたのだ。

両社での経験を経て、吉田は語る。

吉田 「日鉄物産単体、三井物産単体では、できなかったことを、ダイナミックに実現していけるところが、お互いが一緒にやっていこうと思った一つのきっかけのはず。だからこそ、互いの良さをうまく噛み合わせることで、成長していけるように日々研鑽していきます。」

相手のためになることを徹底的に考え抜く。それが、未来の成長をつくる

▲香港のパートナーが来日した際の1枚(右から2番目)

日鉄物産の目指すべき姿、今後のVisionについて吉田はこのように描いている。

吉田 「今までの歴史の中で育んできた、知識や経験、お客さまとの関係、メーカーとの関係、これは非常に強いものがありますし、私はここをどんどん強くしていくべきだと思っています。この会社の強みを武器に事業の幅を広げていきたい。

そして、国内に留まらず、海外のマーケットも伸ばし、物流と事業投資を組み合わせた仕事を積極的に行うことで、今後の成長につなげていきたい。

ただ、事業投資をすると言っても、気をつけることがある。それは、闇雲に事業投資の案件を探し出してきて、投資をすることだ。

行き当たりばったりの投資は、大抵失敗します。したがって、われわれが未来に向かって良質なアセットとして持つためには、やはり自分たちの知見が及ぶ、今やっている仕事の延長線上や、その周辺を狙って、事業投資をするべきだと思います。」

これまでいくつかの事業投資を経験してきた吉田。自分たちの知見が役に立つ投資であっても、判断する上では、大切にしていることがある。

吉田 「投資を判断するとき、お客様や相手の会社を成長させるために、自分たちができること、自分たちの持つ機能や人、をどう使えばいいのかを考えて、確信を持てるかどうかが大切です。だからこそ、『とにかく相手のためになることを徹底的に考える』ように意識しています。」

日本のマーケットと、海外のマーケット両方で、「圧倒的な存在感を示せる会社を目指したい。」と語る吉田。そのためにも、事業規模、収益規模にとどまらず、他企業を圧倒する機能を身に着けていきたいと考えている。

吉田 「機能を考えるにしたって、相手のためになることを徹底的に考え抜くことが必要です。お客様が何を考えていて何を求めているのか、そして、それを実現するためにはわれわれが何をして、どんな機能を提供すべきなのかを突き詰めて、どんどん考えていきたいと思っています。」

商社パーソンとして未来の日鉄物産を作っていく人材とは

これまで積み上げた経験や知見、人脈を活かしながら、日鉄物産というリソースを活用して第一線でビジネスを行う吉田。商社で働く上で感じるおもしろさをこのように語る。

吉田 「商社で今までやってきておもしろいなと思ったのは、世の中に足りていないもの、一人ひとりが持つ想い、技術をうまく結びつけて新しい仕組みをつくることです。それは、新しいイノベーションのように、さまざまな材料一つひとつを拾い上げて、一つの事業に仕立て上げていくもの。つなげるだけじゃなくて、きちんと事業を創造していくことが大切です。」

そんな商社パーソンとしての醍醐味を感じつつ、吉田が今後必要になる人材として考えているのは、グローバルで活躍できる人物だ。これは海外で活躍することだけを意味するものではない。国内でもグローバルを意識して仕事をすることが成長につながる。

そして、吉田自身がそんなグローバルな舞台で長く仕事を続けてきたからこそ、海外で活躍する上で語学より大切なものが3つあると考えている。

吉田 「一つ目は『好奇心の強さ』です。新しいものや変化していくものに対して、興味を持って行動し、仕事や事業につなげていくイメージを持つのにとても役に立ちます。

二つ目は、『相手の話をよく聞き、相手をリスペクトできること』です。イメージを実現するためにも、他者が何を考え、どういうニーズを持っているかを謙虚に知ることが重要になります。

三つ目は、『物事を柔軟に考えられること』です。一つの発想にとらわれず、実現の手段を考えるためにも、この力は欠かせません。」

こうした3つができた上で、チームワークも重要だと吉田は考えている。

吉田 「今まで三つの大切なことを意識していろんな仕事をやってきましたが、自分一人でできたことは一つもありません。常にチームワークでやってきました。ですから、『うまく周りを巻き込んでいくリーダーシップ』も大切な要素だと思います。」

国内・海外で多くの経験をしてきた吉田は、その視座を常に高く持とうとしている。日本から海外の舞台へとその視線を伸ばしながら、ビジョン実現のためにこれからも挑戦を続けていく。