憧れの姿を現実に──「でっかい金額×海外」で就職活動

2021年現在、2,000名を超える社員が在籍する日鉄物産内でTOPクラスの売上高を誇る脇山 孝太郎。

そんな脇山の商社パーソンとして原点は学生時代にまでさかのぼる。

学生時代は、スポーツの世界に没頭していたのだ。

脇山 「小さい時からバスケットボールに打ち込んでいて、高校は全国大会に出場する強豪校へ入学しました。ある程度腕に自信があったんですが、全国クラスになると太刀打ちできず、途中で挫折してやめてしまったんです。

大学に入ってからは、再び何かに本気で打ち込みたいと思い、ボクシングを始めました。バスケに注いでいた情熱をボクシングに投下し、2年間でプロテストを受けるレベルまで到達し、テストに受かったらプロになろうかなと思っていました。結果的にプロテストには落ちてしまい、プロボクサーの道は断念しました」

プロボクサーを目指した経験を経て、人間としても成長しさまざまな気づきを得た脇山は、これまでスポーツに注いできたエネルギーを別のことに投下することに。

脇山 「二つの競技を経験して、自分で手を抜いたら自分に返ってくるし、打ち込んだ分は成長するんだと学びました。自分でも自分の成長を感じましたし、このエネルギーを何かに使いたいなと思って、カナダに留学をしたんです」

2年間のカナダ留学を経て、グローバルな環境で働くことに興味を持った脇山。就職活動では、商社業界を志望した。また、“グローバル”というキーワードのほかにも脇山が商社のビジネスに惹かれる理由があった。

脇山 「ボクシングでも留学でも、自分が頑張って、時間や労力を投下したものが跳ね返ってくるのが楽しかったんです。なので、ビジネスでも必死にやれば手応えを感じて楽しむことができるだろうと考え、どうせなら扱う金額が大きい商売をやってみたいなと思ったんです。当時思いついたのが、鉄鋼かエネルギーでした。その中で英語を使ってビジネスをしていたら、さらにかっこいいんじゃないかと思いました」

「でっかい金額×海外」という二つの軸で就職活動に取り組んだ脇山。さまざまな商社を見た中で自分の憧れを実現できそうなのは日鐵商事(現:日鉄物産)と考え、2008年に入社。

入社して12年が経ち、今では、学生時代に思い描いていた「海外ででっかい金額を扱える」仕事を実現できているという。

脇山 「学生時代キャリーケースと英字新聞を持って、急いでエスカレーターに乗りたかったんです。会社に入って実際にやっていますが、たまにふと感じます。『あ、昔憧れていた海外ででっかい仕事だ』と。人の原動力って実は単純なものだなと思います」

3年目でタイに駐在。新たな事務所の立ち上げと新規顧客開拓に成功

▲タイ駐在中に成約させた新規案件の現場にて(太陽光発電パネルの足場)

入社後、鉄鋼薄板の輸出をメインで行う部署へ配属された脇山は、2年間ほど東京本社で自動車の外板や家電、建築資材用途で使われる薄板(コイル)の輸出業務に従事した。商社パーソンへの憧れが原動力となって、若い時期から結果を残せた脇山は、入社3年目(2010年)でタイへの駐在が決まった。

脇山 「入社3年目の海外駐在は比較的早い方です。若い年次から駐在できたのは、『駐在したい』という自分の意思、人事決定権のある役職者の意思、そして受け入れ側である駐在先のニーズ、複数の総意のハーモニーがあったからだと思います。」

脇山はこのチャンスを活かし、駐在してから間もなく新しい風を吹かせた。

脇山 「もともと東京で担当していたバングラデシュの商売を、バンコクでも管理していました。東京からバングラデシュへは直通便がなく、大体バンコクで乗り継ぐので、行くのに24時間程度かけていたんです。タイ駐在後はバングラデシュへのアクセスも良くなり、1カ月に1回くらい行くことにしました。

すると、ご贔屓にしてくれるお客様が増えていき、『こんなに商売チャンスがたくさんあるなら現地に事務所をつくったらどうか?』ということに。そこで、私が1年半くらいかけてバングラデシュ事務所を立ち上げました」

その一方で、脇山は同時にタイでの新規案件の開拓にも注力していた。

脇山 「タイでの新規案件として、太陽光発電の足場の管を3プロジェクトで計1万トンくらい納入する商売をつくりました。

毎日タイの投資会社一覧の新聞記事を見て、太陽光の投資家に飛び込み営業をしました。すると、あるプロジェクトのオーナーさんが話を聞いてくれたんです。そこで着々と話が進み、そのオーナーさんが関わる設計会社を紹介してくれて、その設計会社さんと成約に至りました。」

このプロジェクトにおいて最も達成感を感じたのは、金額の規模ではなく、狭い鉄鋼業界で新規のお客様を開拓したことだと脇山は語る。

脇山 「鉄鋼の商売は意外と業界が狭いので、新規拡販と言っても業界では誰でも知っているお客様がほとんどです。業界の垣根を超えた取引も少ないのですが、この太陽光の足場を納入したお客様は他の鉄鋼業社の既存顧客でもないんです。

しかも、商売としてお客様はコストメリットを感じ、サプライヤーは商品を販売できて、そしてうちはしっかりと利益を得るという見事な『win-win-win』となりました。もっと言えば、環境に優しいエコプロダクトの拡販となったので、『win-win-win-win』の商売だったなと思います。

このプロジェクトを通じて、海外でも商売ができるんだという自信につながりましたね」

海外で気づいた日鉄物産の強み──メーカー型商社と仕入れ先の安定感

▲脇山が扱っている薄板のコイル

2014年に脇山はタイから帰国し、駐在前と同じ部署へ戻った。

それから約7年間、脇山は結果を出し続けて、2021年現在では社内でTOPクラスの売上高を誇っている。これまでの功績について脇山は、海外で商売をして気づいた、鉄鋼を扱う商社としての日鉄物産の強みがあったからこそだと語る。

その強みの真実は、「メーカー型」と「ユーザー型」の違いにあるという。

脇山 「売買においてはつくる人と買う人の両方が必要です。商社はこの売り手と買い手の間に入って商売を行うのですが、当社の場合は、つくる側(メーカー)の論理で売りたいというニーズを体現化する営業組織の要素が強いんです。それが日鉄物産という名前にも出ているように、製鉄材料を売るプロ集団という要素が強くあります」

グループ会社との関係があるからこそ、日鉄物産は成長を続けていけるのだという。

脇山 「買いたい人たちが困っている中で、私たちはお客様のニーズへ一生懸命に答えようとしているんです。要するに、うちの会社の特徴であり強みでもあるのは、強力な仕入れ先がパートナーとしていることだと思います。

それは、お客様から期待されていることの一部でもあります。たとえば、『日本製鉄から仕入れるんだったら、日鉄物産でしょう』と言われますが、実際、日本製鉄からの仕入れは日鉄物産が世界で一番うまいんだろうなという気はします」

とは言え、個別で他のメーカーからも仕入れているという。

脇山 「他のメーカーからそこまで自由に鋼材を仕入れられないことが課題ではあるのですが、顧客の期待に応え続けてきたことで、バイヤーさんから信頼を受ける場合があるんですよね。この信頼が育まれていくと、グループ会社の鉄鋼ではないものの、扱いもできる商売はたくさんあります。こういうのも十人十色でお客様の趣味趣向もあるし、担当者への信頼の刺さり込みもあるし、本人の力量次第だと思います」

何より大事なのは仕入れ先のバランスと安定と脇山は語る。

脇山 「仕入先においてもメインとサブがあるのですが、当社の場合はメインの部分が強くて、そこで得た信頼でサブの仕入先とのビジネスがどんどん伸びていくというのが勝ちパターンとしてあります。要するに、メインの仕入先が弱かったらサブが育つこともないので、私がやっている商売の場合は、グループ会社の鉄鋼メーカーの鋼材を扱うことの上に信頼が成り立っていると言えます」

お客様も恋人のように──営業上で大切なマインド

脇山の成功にとって「メーカー型商社としての日鉄物産の強み」に負けないほど大事な要因がある。

それは「徹底的に周りのニーズを考える」ことである、脇山が常に大切にしているマインドであった。

脇山 「仕事をする上で常に意識するようにしているのは、他者からの信頼です。見えないものですが、『こいつだったら納期通りに間に合わせてくれるだろう』とか、『この分野で困ったらこいつに頼もう』とか、メーカーさんもモノを買いたいと言ってくれるユーザーさんも同じですね。振る舞いや行動は常に見られているので、私の肩に乗っている信頼を気にするようにしています。

たとえば、お客様とやりしている時は常に相手の立場にたって、『自分はこのお客様にはこういう人間だとブランディングをされているから、こんなことしないで欲しいと思うだろうな』と、相手に思われているだろうことを気にするようにしています。信頼に勝る成功の要因はないと思います。」

そんな信頼を養うために、仕事する上で常に「人の役に立っているかどうか」について考える必要があると語る。

脇山「 人の役に立っているかをすごく考えるようにしていますね。営業で陥りがちだなと思うのは、数字を求められるので売り上げも利益もなんとか自分のところに残さないといけないという考えです。しかしその考えに陥ってしまうとお客様と長く続かないですし、結果的に自分のためにもなりません。

私はよく取引先を恋人に例えて考えるんです。『この情報をいち早くお届けしたら喜ぶんじゃないかな』とか、『今日は機嫌が悪いかな』とか。私がマッチアップする商売相手のお客様のためになっているか、その相手のリズムになっているかをとことん考えます。一生懸命考えて本当に人の役に立つ提案ができれば、それが信頼につながり、成功になると考えています。」

一方で、「楽しむ気持ち」も仕事上では欠かせないと言う。

脇山 「自分のテンションが最も高まる瞬間は、自分が何かを動かしたことによって他の人がメリットを享受していることを感じ、それが会社のためにもなったと実感できるときです。全関係者のハッピーを実現できたときに、一番テンションが上がりますね。

もう一つ私が楽しんでいるのは、『存在の証明』かなと思います。営業はみんなと同じことをやっていたら覚えてもらえないし、同じ提案をしていたら、他社の営業社員と名刺を並べられて終わりです。なので、僕が存在したという印象を絶対に残したいなという気持ちがあります。」

「信頼」、「人の役に立つ」、そして「楽しむ気持ち」。これからもこの三つを大切にし、脇山は挑戦をし続ける。