始まりは思わぬ場所。ポリシーを貫き、気持ちを切り替える

▲現在アメリカ合衆国オハイオ州に駐在している植原、在宅勤務環境での一枚。

2020年12月現在アメリカでキャリアを歩む植原の原点──それは、幼少期にまで遡る。

子どものころから英語が好きだった植原。就職活動の軸は英語が使える仕事、かつ海外に行ける仕事だった。

植原 「実際海外旅行に行って興味を持つようになったわけではないのですが、小学生のころに海外のテレビを見たときに、漠然と海外の生活っていいな感じるようになったんです(笑)。英語を使えるフィールドで働く上で、商社であれば商材に縛られず、規模感のある幅広い分野に携わるビジネスを手掛けることができるのではないかと考え、日鉄物産へと入社しました」

海外で英語を使って仕事をしたいという想いから商社に入社を果たした植原。しかし、配属先は思いもよらぬ場所だった。

植原 「経理部主計課配属と言われたときは、ぽかーんとしてしまいましたね。そもそも主計が何をしているのかをまったくイメージできなかったんです。数字を合わせる、細かいところをしっかり見るのは、向いていないタイプだと思っていましたね」

海外への想いが強い反面、入社後に配属されたのは国内勤務がメインとなる管理部門だったため、当初は大きく気持ちが揺らいでいた植原。しかし、気持ちを切り替えてモチベーションを維持していた。

植原 「やる前から、これはできないと決めつけることはやめようというポリシーがあるんです。希望通りの配属ではないから辞めるのではなく、まずはやってみようと思いました。初めは手探りでも、仕事を覚えていく過程でやりがいを持てるんじゃないかと思ったんです。『まずはやってみる』と、気持ちの切り替えができたのは良かったかもしれません」

入社1年目では、月次予算管理を担当し、毎月業績のまとめ業務を遂行。それに加え、年に2回、予算をつくるタイミングでは取りまとめを行った。

植原 「各部署からの数字を集計して、資料に落とし込む作業なんですが、自分のつくった数字が反映されているのを見ると『自分はここをやったんだな』と見ることができて嬉しかったですね。予算に関しても会議を重ねて確定したときに自分の成果を実感できました」

上司の言葉を糧に。任された統合という重大局面の仕事で得た気づき

▲組合主催のソフトボール大会に参加した際の部署メンバーでの集合写真 ※上部右から3番目が植原

2年目から税務チームに異動となり、税務調査対応の担当を任された植原。税務調査対応は全社的に行う必要があるため、部署間を越えたコミュニケーションの機会が増えていく。

植原 「税務の知識もあまりなかったので、大変さや難しさを感じる部分はもちろんありました。そんなとき『いい意味で若さを使えばいい。知らなければ頭を下げるのも作戦の一つ』と上司にも教えてもらったことが印象に残っています。わからないことはわからないと伝え、教えてくださいという姿勢で業務にあたっていました」

経理部での業務を少しずつ理解してきた植原は、3年目(2013年)に岐路を迎える。当社は2013年に日鐵商事と住金物産が統合した歴史を持つが、このタイミングで植原は、一部の経理・会計セクションの統合のチームリーダーを任されることになったのだ。

植原 「当時、税務を担当していたので、税務のチームの一員として、固定資産などの項目のシステム統合を行いました。2社で異なる基準を取っていたので、どちらに合わせていくかの舵取り役を担ったんです。まだ実務の知識がしっかりと構築されているわけではなかったのですが、その状況下で自分の会社はこういうものだと覚え、とにかく必死で勉強しました」

システム統合の舵取りを行う中で、植原は仕事を進める上での重要な気づきを得る。

植原 「税務調査対応での経験とつながる部分がありますが、適切な関係者を選定し適切なタイミングでコミュニケーションを取ることが重要でした、整えてほしい項目について誰であれば適切に対応してくれるのか、頭を悩ませた記憶があります。とくに私だけでは判断ができなかったので、社内のいわゆるキーマンと呼ばれるような方の力も借りながら、誰にどんな依頼をして、どういう風にやってもらうかを決めていきました。

 人を動かすという立場になると、一人ひとり考え方がぜんぜん違うのでそこでも学びがありましたね。自分の意向を伝えても、全員同じように動いてもらえるわけではないため、相手の要望も聞きながら、意図を伝えられるように咀嚼したり、自分がわからないときは素直に教えてくださいと伝えたりしながら進めていきました」

言語が通じなくても。異なるバックグラウンドや、その文化を理解する

▲実務研修時、メキシコの会社にて、営業部と会議をしている写真 ※左手前が植原

さまざまな業務を経験し、経理部員として、一人前になっていく植原。しかし、そんな中でも入社時からの想いは変わっていなかった。当社には海外チャレンジ制度という、現地で語学や文化を学ぶ語学研修と海外の現地法人や事業関連会社で実務を学ぶ実務研修を組み合わせた制度がある。植原はその制度を利用し、海外への切符を手にする。

植原 「海外で仕事をしたいという想いは持ち続けていました。6年目になったタイミングで、上司から『今年は受けてみるか?』と声をかけていただいたときは嬉しかったですね。ぜひチャレンジしたいと伝え、海外に行けることになりました。

最初の半年間はアメリカで語学研修をしました。日中は語学学校に行き、夜間は大学で勉強するという生活はなかなかハードでしたね」

かなえた海外への夢。しかし、現実はそう甘くなかった。

植原 「実務研修ではメキシコにある当社関係会社で経理、会計、在庫管理のシステム統合をしたのですが、言語が違うとさらに大変な仕事でした。配属して間もなく、財務諸表のレビューをさせてもらう機会をいただき、いくつか質問項目を挙げた際に、『直接担当者に聞いてみて』と上司から言われたんですが、担当者がメキシコ人なんですよね(笑)。

スペイン語を学んでいたわけじゃなかったのでどうしようかと悩んだ結果、ビジュアル解説をすることにしました。シンプルに数字とイラストを描いて、指差しで質問する形式です。相手も「あ、おそらくこういうことを言ってるんだな」という推測のもと、その過程を頭に入れたまま次の図を書いて対応してくれました(笑)。非常にインパクトのある経験でしたね」

植原にとって海外で働くこと。それは一言でいうと、文化を理解することだった。

植原 「文化は一括りにいえるものではなく、たとえば言語であったり、相手の生い立ちであったり、その国を取り巻く環境であったり、そのときの経済状況であったりとさまざまな要素が合わさっています。そうした文化を理解することが、海外で働くということだと考えています。

これはあくまで自分の経験上の話ですが、たとえば、アメリカ人には、仕事より家族や個人の時間を優先するという国民性があります。彼らはどれだけ忙しくても定時で帰ります。残業は基本的にしないという考えなので、そうした背景を把握しておくことが大切です。残業しない分、日中の仕事の中での集中力・パフォーマンスは非常に高いので、その時間内でいかに効率良くやってもらうか、考えながら毎日仕事をしています。彼らが一番集中しているときに、いかに適切に情報を伝えるかを考えるようになりました」

異なる文化やバックグラウンドを持つ人たちと一緒に働くことは簡単ではない。しかし、海外で働くことにずっと憧れてきた植原は、そうした文化の違いを含め、さまざまな経験ができるのが非常に楽しいと語る。2019年3月、メキシコでの実務研修を終え、植原はアメリカの関係会社の駐在員となり現在に至る。

どんな場所でも自分の力を活かし花を咲かす。経験に裏打ちされたメッセージ

▲工場内のヘッドレストステイ製造設備の前での写真。右手に持っているのはヘッドレスト完成品

商社の管理部門として働くやりがいについて、植原はどのように感じているのだろうか。

植原 「適切なタイミングで適切な情報を適切な方に伝えられることだと考えています。決裁者にとって、数字は定量判断の重要な材料になります。その材料を適切につくり、共有できることに経理としての醍醐味があると思うんです」

もともとは語学力を活かしながら、営業をしていきたいと考えていた植原が、今の立場から描く将来のビジョン──それは「自身が置かれた環境で花を咲かせること」。

植原 「経理でしかできない仕事、醍醐味を学ぶ機会をたくさんいただいたため、この業種で力を発揮できるように成長していきたいと思っています。海外駐在員になってから強く思っているのですが、経営層や上層部に近いポジションで日々業務ができることに大きな魅力を感じています。

今後のキャリアを考えた際、海外で経営側に回ったときに自分はどういうパフォーマンスを発揮できるのかを考えます。今は情報をつくって正しく伝えて決定をしていただく側のポジションですが、それを決定する側になったとき、自分の力をどう活かせるか考えています。日本とメキシコ、アメリカの3か国で管理部門をさせてもらえたという珍しい経験を活かしたいですね」

入社後の思わぬ初期配属からさまざまな経験を経て成長し、海外駐在の夢をかなえた植原。現在、就職活動中の学生に向けたメッセージを自身の言葉で語る。

植原 「今後社会人となる学生の皆さんも、私が置かれた環境と同じように、全然違うフィールドに立たされることがあるかもしれませんが、そのときに『一回やってみる』ということをぜひ大切にしてほしいです。目の前の業務に取り組みながらも、自分が思い描くキャリアを持ち続け、発信することができれば、自分の目標に達することができると思っています。

回り道と思うこともあるかもしれませんが、自分とは違うからやらないと決めつけてしまうと、道が閉ざされてしまいます。ぜひ先入観を持たずにチャレンジしていってほしいです」

植原のこれまでの経験が、こうしたメッセージを地に足がついた言葉へと変化させた。そして、植原はこれからどんな場所に行ったとしても、その場所で力強く大きな花を咲かせ続けるだろう。