自治体領域で新規事業創出活動に従事。シニアプロフェッショナルとして共創活動を推進
2022年11月現在は、自治体様の領域で新規事業の創出活動を主に担当しています。ミッションは、これまで取り組んでこなかった分野で新たにビジネスを成り立たせること。当社では自治体様の基幹システムの開発・導入・保守に長年携わってきましたが、将来的に事業規模が縮小することが予想されます。そこで、それを補うために、ITを活用して自治体様の困りごとを解決するための新たな領域への提案などを行っているところです。
自治体様は予算に基づき遂行する必要があるので、新しい取り組みへのスピード感がどうしても遅くなりがちです。数年後に到達を目指す具体的な数値目標はあるものの、「これをやっていけば結果が出る」と約束されてるものが何ひとつない状態なので、正直苦労が絶えませんが、それだけやりがいもあります。メンバーは私を入れて3名。全社スマートシティ推進プロジェクトのほか、自治体以外の領域で新規事業に取り組んでいるグループなどと連携しながら取り組みを進めています。
2017年に着任してまず取り組んだのが、外部のセミナーの参加でした。たとえば当時、総務省・東海総合通信局主催のセミナーでは、名古屋大学の先生方が地域情報化アドバイザーを務め、地方創生などをテーマにさまざまな公演をされていたんです。そこに何度か出席し関係を深めるうちに、2018年には同大学との共同研究の契約を、2020年には同大学・高山市との産官学連携を締結することができました。とはいえ、産官学連携などはまだビジネスとして完成には至っていません。数年かけて少しずつ領域を広げ、全国の自治体様にも同じようにアプローチするための方法を模索している段階です。
2022年度からはシニアプロフェッショナルを務めています。通常、部門長はシニアマネージャとして組織マネジメントを担当することが多いのですが、私は高度専門職という制度の中でビジネスプロデューサという立場。“共創”のカテゴリーで社内認定されていて、人脈形成や組織間の産官学連携協定を進める中でビジネスを創出する役割を期待されているので、NECグループ内や社外とのあいだを取り持つなど、共創活動を推進しています。
もちろん、単独で行うには限界があるので、社内で他の地域を担当する同じポジションの方、その分野の技術に長けている社内外の方と共に活動することが多いですね。働き方としては、出社中心。たとえば、部下たちとの会話でも、ちょっとした表情の変化を見逃したくないと考えているからです。新しい働き方としてのリモート会議においても、他の方がどのような反応をするかなど、注意深く見るようにしています。
官庁系、自治体系システムなどを経験。大切にしてきたのは人とのコミュニケーション
コンピューターに関心を持ったのは、中学生のとき。友人が所有していたパソコンに夢中になって毎日通い詰めていたのを覚えています。大学での専攻は情報系ではありませんでしたが、就職するならこの分野だと思っていたので迷いはありませんでした。当社には、純粋にコンピューターが好きだという理由で入社しました。ものづくりに興味があり、プログラマーを目指すつもりでしたが、経営情報システム部というスタッフ部門に配属され、社内システムの開発や運用を担当しました。
その後、官庁・警察システムで業務・インフラ構築のプロジェクトに関わり、プロジェクトリーダーを務めた後、自治体統合内部システムのプロジェクトでもリーダーを経験しています。この頃になると、メンバーに業務を任せ、インフラ的な視点とプロジェクトを俯瞰的に見る役割を担っていました。プロジェクトの立ち上げ時、責任者、プロジェクトリーダー、業務リーダーを階層的に配置するのが、当社の標準的なチームビルディングです。プロジェクトをスムーズに進める上で明確な役割分担が必要なことは、現場での経験を重ねながら学んできました。
入社以来これまで、一貫して大切にしてきたのは人とのコミュニケーションです。ときに、無理難題を押しつけてしまったり、言うべきことを遠慮して伝えなかったりしたことがありました。また、「はい」と返事されたとしても、そこにどんな感情がともなっているかを知らなければ、正確な意味を捉えることはできません。相手が何を考えているかを理解しないままプロジェクトを進めると、良い結果につながらないことを過去の経験から学びました。
たとえば、ある企業様から委託されてプロジェクトを一緒に進めていたときのこと。お客様の中にとても難しい方がいて、こちら側の説明をなかなか聞いてもらえないことがありました。委託元の企業様が調整役を行うはずでしたが、「話が通じないので助けてほしい」と頼まれ、あいだに入ることに。お客様からお話を伺い、「私はこう理解しました。その認識でよろしいですか」と確認させていただいたところ、すんなりとわかっていただけたんです。それを機に長く停滞していた案件を再始動させることができました。こういった経験でコミュニケーションの重要性を学ぶことができました。
入社して2年目のとき、行動・性格分析に基づいたコミュニケーション理論の研修を受けていて、言動から相手をタイプに類型化し、タイプに応じて最適な対応をする訓練を受けていました。このお客様はまさにそのモデルケースとなるような事例。研修で学んだことが役に立ったと思います。システムエンジニアの領域では、いろいろなかたちでコミュニケーション能力が求められます。人の顔色を伺ってばかりいても前には進めませんが、猛進するタイプばかりでもいけません。「この場面ではこういう提案をしたほうがいい」など、いったん立ち止まって考えるタイプも組織には必要だと思いますし、それが自分の役割だと思っています。
高山市での新規事業で手ごたえ。全国展開とビジネス化に向けて見えた課題
当社では、これまでNECからSIを請け負うケースがほとんどでしたが、最近はお客様と当社が直接契約することも増えています。そこで、当社の中で新規商材を全国の支社で情報共有しながら拡販していこうというタスクフォースが立ち上がり、東海支社では私に声がかかりました。最初は通常業務をこなしながら片手間でやっていましたが、会社としてそれを専任化することになり、現在にいたっています。
中でも印象的だったのが、高山市での取り組みです。高山市に宮川朝市という有名な観光地があるのですが、川を挟んだその反対側にある商店街からは人通りが減っている状況がありました。そこで、観光で訪れた方に、商店街を通っていただくために、高山市は人道橋(現在の行神橋)をかけることを決めました。その際、橋の建設前後における商店街の人通りを定量的に確認することで、公共事業の効果をデータに基づき検証をしたいとの相談を受け、当社は製品部門の力を借りて商店街にカメラを設置し計測を実施しました。
結果、橋の建設後に新型コロナウイルスの影響がある中においても、商店街前を通る人が増えたことが確認でき、市として公共事業の効果を市民に対して示すことができました。この取り組みを評価され、高山市、名古屋大学、当社の間で産官学連携協定を締結しました。現在も新しい取り組みを進めています。
現在、こうした取り組みの事例を全国的な展開に向けて準備を進めているところですが、全国の自治体が予算を確保するだけの説得力はまだ足りないと感じています。実績をさらに積み上げ、「お金をかける意味がある」と思っていただけるような価値を提供しようと手を打っているところです。社内でも、「良い取り組みだね」と言ってもらうのは簡単なのですが、大事なのはそれをどう事業化するか。企業なのでビジネスにつなげていくことも考えなくてはなりません。明確なロードマップを描いたり、一般にビジネスプランと呼ばれるものを自治体の領域に適用したりすることが求められていると考えています。
あえて難易度の高いポジションに身を置いて、自分に磨きをかける
新規事業では、何もないところからいろいろなことを積み重ねて成果につなげていきます。そうやってゼロからイチを生み出すのは大きな苦労を伴うだけに、契約が取れたときなどは、とても達成感を得られます。これまで長く続けてきた事業で大きな利益を生むことも大切ですが、たとえ事業の規模は小さくとも、まったく何もないところから新しいことを生み出すことができたときに、私は大きな達成感を覚えます。同じようなことに取り組んでる人なら、きっと共感してくれるはずです。
今後は、まだ誰もやったことがないものを事業化し、「これを立ち上げたのは私だ」と言われるような存在になれたらと思っています。私は野心的なほうではありませんが、「よくやった」と自分で自分を評価できるような仕事ができたらいいですね。そのためにも、いまの領域に引き続き関わっていくつもりです。予算の確保が難しい自治体の領域で新規事業を創っていくのは難易度が高く、難しい傾向にあります。だからこそ、自治体に軸足を置き、自治体の視点で取り組んでいくことで、学べる部分が大きいと考えています。あえて難しいポジションに身を置き、自分なりに会社や社会に貢献することを目指して、もう少しあがいていこうと思います。