地域社会のデジタル化を推進すべく立ち上がった、セミコンサルチーム
2022年4月、NECソリューションイノベータ株式会社の中で自治体DXを専門に担当する“自治体DX推進グループ”が立ち上がりました。このグループでシニアプロフェッショナルとして従事しています。2021年度までは公共ソリューション事業部で、シニアマネージャー、いわゆる部門長をしていました。所属は変わりましたがメインのお客様は変わっておらず、地方公共団体の皆様と仕事をしています。
2022年11月現在、国はデジタル化による社会の構造改革を目指しています。災害や新型コロナウイルス感染症の影響でデジタル化に遅れが出ている中、データを利活用できる環境が整っていない、あるいは人が育っていない。そういった種々の問題への対応が急務とされています。これを受け、国から各自治体へDX推進計画が示されました。たとえば、2025年度までのシステム標準化、行政手続きのオンライン化など、既存システムの延長で対応が必要なものがたくさんあるんです。それらについては、私が昨年度まで所属していた公共ソリューション事業部が担っています。
それと並行しながら新たに取り組まなければならないのが、地域社会のデジタル化です。各自治体は地域産業を活性化するため、ITやデータを使って効率的な行政事務を推進したり、デジタル化によって市民サービスを活性化したりと、さまざまな取り組みを行っています。その取り組みに対して、当社としても集中的にビジネスの検討を進めるため、お客様対応中心の既存システムの人員とはメンバーを切り離して新しい組織で対応していくことになり、自治体DX推進グループが立ち上がったという流れです。私たち自治体DX推進グループが担うのは、行政内部のDX化。お客様の業務システムをIT化するだけでなく、課題の抽出や業務改革を見据えた提案、DX推進計画の策定支援などを行っています。いわゆる超上流、セミコンサルのような位置付けですね。
自治体DX推進グループには、大きく3つのグループがあります。ひとつは、お客様がDXで困っているところに新しいソリューションを生み出す“ビジネス創出グループ”。続いて、北海道から沖縄まである各支社の情報を収集し、まとめた上で横断的に展開する“アカウント戦略遂行グループ”。そして、それらふたつのグループと連携し、重要なお客様に入り込んでコンサルティングを担当する“DX横断連携グループ”です。私は、この3つのグループの全体のプロジェクトを推進するプロジェクトマネージャーのような役割を務めています。
スペシャリストが多い環境で、ゼネラリストである自分の強みを知った
私は1993年の入社以降、もう30年近くになりますが、公共領域一本でやってきました。実は公共ソリューション事業部には、そういう人が多いんです。その中で私が少し珍しいのは、担当業務が4~5年ごとに変わっていること。たとえば、住民記録や税など、ひとつの業務に長く携わる人が多いのもまた当事業部の特徴なんです。そのため、業務知識に関して自治体のお客様よりも詳しくなっていきます。お客様側の担当者が異動することがあっても、当社側の担当者は担当し続けるので、長期的な運用面のアドバイスや法改正に合わせた提言などもできるメンバーが多いんです。それが当社の公共ソリューション事業部の強みでもあると思っています。
私はそこまでのレベルに達する前に担当業務が変わっていったタイプなので、そういった先輩方をうらやましく思うこともあります。その一方で、幅広い業務を経験してきたことが自分の糧になると捉えられるようになりました。そう思えるようになったきっかけが、2000年ごろに日本政府が掲げたe-Japan戦略です。NECだけでなく他社ともコンソーシアムを組んで、国のe-Japan戦略に対する実証実験に携わったときに、ひとつのプロジェクトにどっぷり浸かって身につく狭く深い知識よりも、幅広い知識のほうが役立つ場面もあることを学びました。e-Japan戦略に入る直前は財務会計システムを担当していて、「このままどんどん財務のスペシャリストになって、先輩たちのようにハイレベルな会話をお客様とできるようになれたら」と思っていたんです。でも、e-Japan戦略のコンソーシアムで社内外のいろいろな方々と話したことで、意識が変化していきました。
これがキャリアに対する考え方の転換点だとしたら、2008年に担当した大規模財務会計の案件は、プロジェクトマネジメントに対する考え方の転換点となりました。次の項で詳しくお話しします。
他者満足を自己犠牲の上に成り立たせてはいけない──失敗経験を通して気づいたこと
e-Japan戦略以降も、4~5年と短めのスパンで担当業務は変わっていきます。2005年にマネージャーに昇格し、その後、2008年から大規模財務会計に携わりました。それまでは基本的に4~5人規模のチームリーダーをしていたのですが、2008年に経験した某県の大規模財務会計システムには、最大で80名ぐらいのメンバーが入りました。そのプロジェクトの責任者にいきなり抜擢されたんです。しかも、その前に当社が担当していた大規模財務会計システム案件の成果があまり振るわなかったこともあって、PMOやさまざまな幹部、部署がプロジェクトを細かくチェックしに入ってくるという体制。社長報告もあり、最も印象に残っている仕事でした。
私には、「仕事は他者が満足してこそ」という信条があります。メンバーが4~5人規模だったときは、自己犠牲でなんとかなってしまう場面も多く、「徹夜すればいける」と発想しがちでした。でも、これだけのプロジェクトとなると、とてもひとりだけで抱えられるレベルではありません。80人もの規模で各ステークホルダーの意見を聞きながら進めていると、プロジェクトがなかなかドライブしないときもあります。そういうときにちょうど幹部のチェックがあり、「それは抱え過ぎだぞ」ということで、ヘルプの人に入って助けてもらう場面がありました。
社内には、それぞれの業務に特化したさまざまな人がいます。もちろん技術力のある人もいますし、鋭い嗅覚で課題をつかんで推し進められる人もいる。それぞれの強みを発揮して、プロジェクトに貢献してくれました。先ほどのエピソードは責任者としては失敗経験でしたが、学びも非常に多かったと思っています。それまで、“他者満足”と単純に考えていましたが、「それを自己犠牲によって成り立たせてはいけない」と痛感した経験でした。
自治体の課題を言語化し、DXを推進するコンサルタントを
現在の部署は2022年の4月に立ち上がったばかりということもあり、上期は細かな課題の整理で手いっぱいでしたが、ここへきてそれもだいぶ落ち着いてきました。下期以降は実際にお客様先に伺い、ヒアリングやコンサルティングにも少し踏み入って、プロジェクト推進に役立てたいと思っています。
先日も九州に行ってきましたが、やはりお客様の課題ややりたいことをお聞きするのはとても楽しいですね。私個人の価値観ですが、「とにかく人の話に耳を傾ける」ということを大切にしています。いまは情勢的にオンラインになることもありますが、対面で相手の表情を見ながら話すのは非常におもしろい。今後もそういう活動を続けていきたいと思っています。チームのほうは、新規ビジネス創出グループのタスクフォースがちょうど立ち上がったところです。社会保障系のプロフェッショナルが各支社から集まっており、ここで新しいソリューションを生み出すのが当面の大きな目標です。
最後に、自治体DX推進グループではいま、「お客様の課題を引き出して、2年後にこんなシステムを入れてみよう」「3年後にこういうソリューションがあるといいよね」といった具合に、超上流のコンサルティングができる人材を探しています。いままでは「明るい未来のためにこうしよう」と風呂敷が広げられた後の状態から入り、「とはいえ、現実的にそれをどう実現していくのか」たたみにいくのがわれわれの役目でもありました。同業の方であれば、共感してくださる部分も多いと思います。
しかし、当社でコンサルティングをするということは、自分たちでビジョンと共に風呂敷を広げ、それをお客様に共感いただきながら自分たちでたたむイメージを描きながら提案ができるということ。その点が、ほかのコンサルティングファームとは少し違う当社の強みでもありますし、コンサルとして入っていただけた方には、ほかにはない成長機会が待っていると思います。