現場の方が使いやすいものをつくるために欠かせないのは、信頼関係を築くこと
河内が所属するのは、情報システム本部 システム開発部。不二越社内で使用するシステムの設計、開発、システム導入フォローなどを担当する部署です。中でも河内は、製造・IoT開発担当として油圧事業部の製造現場で利用する製造管理システムに携わっています。
河内 「工場内のIoT化を推進するのが私たちの役目。たとえば、工場内でいつ誰が何をどれだけ製作したかを作業者にタブレットで入力してもらうなど、これまで紙ベースで残していた情報をデータベース上に残すことで、効率的に情報管理できるようなしくみづくりを進めています。
システム開発部が担当するのは、現場の作業者の方と打ち合わせして仕様を決めるところから、開発、導入、運用のフォローに至るまでの工程すべて。現場にはシステムに慣れない方も多くいらっしゃるので、不安を払拭するための対応なども行っています」
油圧事業部内にはさまざまな製作課があり、それぞれ製作するものに合わせて機能が追加されるため、課によってシステムの仕様も進捗状況もさまざま。最初のテスト対象として現在取り組むモータ課がある工場へは、週に1度のペースで訪問していると言います。
河内 「班長さんや係長さんと話す機会が多くあります。たとえば、『タブレットの調子が悪い』など、現場で実際に物を見ないとわからないことがほとんどです。そのため、工場に頻繁に足を運び、そこで働く方と話しながら生の声を拾うようにしています」
油圧事業部を担当するチームは、上司と先輩、河内の3人体制。入社2年目にも関わらず、河内にも大きな裁量権が与えられていると言います。
河内 「現場を訪問する際は上司も同行しますが、仕様の決定や開発自体は先輩と私のふたりで進めています。たったふたりでシステム開発することに不安もありますが、大きな仕事を任せてもらえているのはありがたいこと。やりがいを感じながら取り組むことができています」
そんな河内には、社内のシステム開発を担う技術者として大切にしていることがあります。
河内 「現場の方に使いやすいと思ってもらえるようなシステムづくりを何よりも大事にしています。どんなに機能的なシステムだとしても、それが作業者にとって操作しづらいものであれば、使ってもらえませんから。
現場視点のシステム開発に欠かせないのが、作業者の方と信頼関係を築くこと。『河内さんに頼んだらなんとかしてもらえそうだ』と思ってもらえるよう、『使いにくいところはないですか?』『困っていることはありませんか』と、現場で働く方と顔を合わせるたび積極的に声かけするよう心がけてきました。そのかいあって、最近では『河内さんに相談したいことがあるんだけど』『システムが今こんな状態だけど大丈夫?』と先方から連絡をもらうこともあります」
巨大なロボット開発や技術営業の仕事がしたいとの想いで不二越へ
大学では知能ロボット工学科で電子や機械、情報系の知識など幅広く学んだ河内。中でも関心を深めたのが、機械分野でした。
河内 「最初は、機械が目に見えて動くところに興味を持ちました。その後、ロボット開発や実際に機械を動かして物をつくる授業を受けるうちに、機械に関わる仕事がしたいという想いが高まっていきました」
機械業界の中でもとくにロボット事業に関心があったという河内。2019年に世界最大級のロボット見本市『国際ロボット展』に参加したことがきっかけで、不二越への就職を考えるように。
河内 「『国際ロボット展』で高さが2mほどもある不二越製のスポット溶接ロボットを見て圧倒されたのを覚えています。それまでも不二越の存在は知っていましたが、社員の話を聞くうちに、自分もそんな大きいロボットの開発に携わりたいと思うようになりました。
また、人と会話することも好きだったので、技術的な専門知識を活かして製品をお客様に提案する技術営業の仕事に携わりたいという気持ちもあって。会話が大事な仕事ができるかもしれないと考え、不二越への入社を決めました」
ロボットに関わる部署を希望していた河内でしたが、入社後に配属先となったのはシステム本部。当初はもどかしさを感じたものの、現在は前向きな気持ちで仕事に取り組めていると言います。
河内 「今は情報システム本部に配属されてよかったと考えています。自分が発信した意見を想像以上にどんどん取り入れてもらえたり、現場の方と直接会話する機会も多かったり。自分にとても合った部署だと感じています。何より、不二越の工場のIoT化に最初から携わり、新しい挑戦をさせてもらっていることがとてもおもしろいと感じています」
とはいえ、大学での勉強は機械系が中心。入社後はシステムに関する知識を中心に勉強に励んだと言います。
河内 「最初のころはシステム系の知識がわからないことも多く苦労しました。そんなときに不二越では、仕事に必要な知識習得のために、自習時間を設けてもらえるんです。上司から借りた本を読んだり、学習プログラムに取り組んでプログラムを書いたりしながら、知識を習得していきました」
その後、少しずつ開発の仕事にも携わるようになっていった河内。ミッションを段階的にこなしながら、システム開発者としての基礎を身につけていきました。
河内 「最初に携わったのは、仕様が決まっているシステムの簡単な画面の開発。そこから『こんな感じのものをつくってみてくれる?』という具合に徐々にざっくりしたものになっていって。今では、『今度は自分で画面を設計してみて』『ゼロからこの画面をつくってみて』といった指示を受けて開発に取り組んでいます」
※なお、現在、技術系の方の採用については、専攻や研究内容を確認し、選考時に希望をお伺いした上で事業部ごとの採用を主としています。
対話を通じてより良い開発につなげていくことがやりがいに
現在のプロジェクトに取り組むようになって1年以上になる河内。現場の作業者らとの信頼関係が構築できていることを実感していると言います。
河内 「開発したシステムを実際に作業者の方が操作する中で、『使いにくいところはないですか』『わかりにくいところがあったら教えてください』と使い心地を聞くと、『すごくわかりやすいシステム。とても扱いやすいですよ』と言ってもらえました。
どうすれば使いやすくなるかと自分なりに考え抜いてつくったシステムに対して良い評価だったのは、信頼関係ができているからこそ。『些細なことでもいいので、何かあればすぐに声をかけてほしい』と何度もお伝えしたり、『操作方法がわからない』と言われたときも『操作手順書を見てください』と返すのでなく、その場で丁寧に説明するよう心がけてきたり。会議だけで会話を終わらせるのでなく、いろいろな場で積極的にお声がけし、こちらの考えを伝え、また作業者の方の気持ちを汲み取ろうと努めてきたからだと思っています。
最初のころは、何を聞いても『特に困ったことはありませんよ』と言われるだけだったのですが、最近では、『こういうことで困っていて』とメモを残して待っていてくれることも増えてきました」
入社以来、徹底してコミュニケーションを大事にしてきた河内。今の仕事のやりがいについてこう話します。
河内 「作業者の方の声を反映させながら開発し、それを実際に使ってもらった上でまた意見をもらうという具合に、現場視点で最適なシステムをつくれることが開発の仕事の醍醐味ですね。対話を通じてより良いものをつくっていく仕事にとてもやりがいを感じています」
能動的なシステム開発を通して、製造現場のIoTに取り組んでいきたい
一方、現場から声を吸い上げるだけでなく、河内が自ら意見して開発に活かすこともあるといいます。
河内 「不良品が出たとき、作業指示をシステム上に作成した上で、それに対して実績として不良品に関する情報を登録する流れになっているのですが、同じライン、同じ型式で複数の作業指示が出るときがあって。そのため、どの作業指示に対して不良品を登録すればいいか、作業者の方がわからなくなるケースがあったんです。
そこで、タブレットのカメラを使って指示書に記載されたバーコードを読み込むと、作業指示の画面が出てくるように仕様を変更。それによって作業者の方が判断に迷うことがなくなりました」
そうやって今後も能動的にシステム開発に取り組んでいきたいと話す河内。いずれは、事業部側から現場へのIoT導入やシステム化に携わってみたいと言います。
河内 「システム開発は、事業部からの要望を受けて機能追加・更新していくのが基本的な流れ。情報システム本部はどちらかというと受け身な立場にあって、たとえば、『こういう機能があったほうがいいのでは?』『こういうシステムにするとより効率的になるのでは?』という意見を出しづらいところがあるんです。将来的には、事業部のシステム推進を行っている側にまわって工場のシステム化に関する企画提案を行い、根本的なシステムの機能改善に取り組みたいという思いがあります」
年次を重ねるにつれてシステム開発へのモチベーションを高めてきた河内にとって、技術者としてのキャリアはまだ始まったばかり。不二越でしかできない仕事を成し遂げるため、その挑戦は続きます。