研究に没頭した学生時代。ものづくりへの興味から不二越へ

総合機械メーカーである不二越の軸受事業部で、自動車や産業機械に使われる軸受の設計を担当している江尻 一博。

もともと「ものづくり」に興味があったことから、大学では工学部の機械系を専攻し、大学院ではマグネシウム合金について研究していました。

江尻 「入学当初から、何かを研究するのに学部の4年間だけではもの足りないだろうと思っていたので、大学院への進学を考えていました。研究室に入ってからは、ほぼ研究が生活のメインでしたね。

ホームセンターに行くとテンションがあがるタイプだったので(笑)、学生時代はホームセンターのアルバイトもしていました」

大学院修了後に入社した不二越とは、研究室時代から縁があったといいます。

江尻 「所属していた研究室では、不二越と共同研究をしていたんです。また、研究室には不二越の社会人ドクターがいて、学生時代からつながりがありました。

大学院修了後は機械メーカーで働こうと考え、地元が富山なので北陸の企業を探していました。そして、企業研究をしているうちに、不二越がベアリング(軸受)や工具、油圧などを手掛けていることを知ったんです」

それまでは不二越の製品に触れる機会はほとんどなかった江尻でしたが、不二越製品のビジュアルを見て、その取り組みに興味を抱くようになります。

江尻 「インパクトのある製品が多く、楽しそうだなと感じました。ものづくりに対する自分の想いと、不二越の事業内容がマッチしそうだなと思い、入社を決めました」

そうして、2013年に不二越に入社した江尻は、軸受事業部に配属されることになります。

産業機械と自動車のフィールドをわたり歩き、軸受設計スペシャリストの道へ

軸受はベアリングとも呼ばれ、その名の通り、機械の中で回転する軸を支える部品です。たとえば、自動車だとエンジンの横についている変速機やタイヤの駆動力の部分、電気自動車の場合はモーターに直についています。自動車だけではなく、産業用機械にも使われていて、身の回りのさまざまな機械内で使用されています。

また、軸受事業部は、自動車と産業用機械(産機)の部門に分かれています。江尻は入社後、産機技術部に配属され、ボールねじサポート用・工作機械用軸受の設計などを手がけていきました。

江尻 「ベアリングは、軸にさして回るので、軸の回転数や受ける力、潤滑について検討が必要です。ですから、仕事はものをつくる目処を立てるところから始まります。

その後に、お客様に仕様を提案して試作するものが決まる。そこで初めてつくる工程に移ります。工場でものをつくるための図面をつくり、製造の値を決めるのも仕事です。工場でつくったあとは、試験や調査などを行い、場合によっては改良し、最終的にOKが出て仕様が決まったら量産される。ここまでが一連の流れです」


こういった一通りの作業ができるまでにかかった期間は、約2年。その間、江尻は問題に直面したり、色々な失敗を経験したりもしましたが、持ち前のフットワークの軽さで、先輩社員の協力を得ながら乗り切りました。

江尻 「自分で1時間考えて答えを探すよりも、10分考えてわからなければ、人に聞く方を選択します。優しい先輩がたくさんいたので、いろいろと教えてもらいました。社会人としての土台づくりの期間だったと思います」

その後、江尻は同じ軸受事業部内にある自動車技術部へ異動。しかし、同じベアリングでも、部門が違えば仕事も違うため、異動当初は戸惑いも多かったと振り返ります。

江尻 「産機技術部では多様なベアリングを広く浅く知ることができましたが、自動車技術部は逆に『特化型』。狭く深くというイメージです。当初はわからないことばかりで、スピード感も違ったので大変でしたね。お客様の開発日程が大前提となり納期が決まっているのですが、その点も含めて厳しかったです。

自動車軸受の試作過程では部品が壊れることも多く、トライアンドエラーの繰り返しでした。エラーばかり出ることもあってなかなか手ごわくて。不具合が出て改良してもダメな状況を繰り返したこともあります」

「受け身」からの脱却。出向経験があるから今がある

出向先の皆さんとサイクリング

自動車技術部に所属して2年半ほど経った頃、取引先の自動車メーカーに出向する機会を得た江尻。今までとは違う「出向者」としての立場で、新しい環境に踏み出すこととなります。

ここでの経験が、江尻に大きな影響をもたらしました。

江尻 「出向先では、さまざまな人の思考に触れることができました。ディスカッションする機会に多く恵まれたんです。みんなそれぞれ想いや考えを持っていて、『すごいな』と素直に思いましたね」

さまざまな人がいて、それぞれの思考がある。

環境が変わることで多様性に触れることができ、江尻の仕事に対する意識も変わりました。

江尻 「タスクが生まれたときに、ゴールを思い描いてから逆算して仕事を考えるようになったんです。『この仕事のゴールはどこか』『期限内に何を出すか』というアウトプットを意識するようになりました。

それに、出向者という立ち位置でしたから、成果を出さないと、いる意味がありませんよね。ですから、何かしら人を巻き込みながら、結果を出せるように試行錯誤しました」

また、今までとは異なる立場から業務に関われたことも、価値観をアップデートするきっかけになったといいます。

江尻「不二越にいるときには営業担当者がお客様と直接対応し、私たちの仕事は注文が来てからスタート、という環境だったので、今思えばゴール(お客様)を強く意識することが少なかったと感じています。言い方を変えれば、ある意味、“受け身”でも仕事ができたんです。

出向によって、実際に商品を使うお客様の状況や、大変さが肌感覚としてわかるようになったのは非常に大きな収穫でした」

最終的なお客様が見えることで、仕事にも変化がありました。

江尻 「お客様から、当社のベアリングを使った試験で不具合が出たとご指摘をいただいたことがあります。そこで、原因のメカニズム解析・仮説立案に始まり、検証の方法を決めて日程に落とし込み、『ここまでに検証を終わらせる』というところまで担当しました。

またこのような一連の流れやスケジュールを、直接お客様にお伝えできるようになりました」 

自分で考えて取り組み、結果を出して、その過程や最終的な成果をお客様に話す。受け身ではなく、前のめりで自ら考え、行動に移す。江尻は、環境が変わったことをきっかけに、自分自身をアップデートさせてきたのです。

不二越というフィールドで、自分なりの付加価値をつけて成長し続ける

江尻には出向経験を通して、強く意識するようになったことがあります。

江尻 「自分なりの付加価値を見つけて成果を出すことです。みんなが同じアウトプットを出すことは、一見良いように見えますが、個人的には『その人がいる価値』がないのかなと思うんです。
それに、自分だからうまくいったと言われたら、やっぱり嬉しいですよね。そのために『最終的なアウトプットはこれを出します』と、最初から相手に伝えるようにしています。また結果を出すために、どう転んでも動けるようなフローを考えることを意識しています」

そうした想いを後押ししてくれる風土が不二越には整っている、と江尻はいいます。

江尻 「走れるフィールドが広くなったときに『好きなだけ走っていい』という雰囲気が不二越にはあります。自分のなりたい姿と、仕事としてやらなくてはいけないことをうまく組み合わせることができたら理想的ですね」

江尻の目下の抱負は、精度の高い性能見積もりができる存在になること。

江尻 「事前に綿密な設計をした上で製品をつくりますが、試作段階ではつくったものが壊れてしまうことがあるんです。予測が外れ、壊れた製品に対応をしていくと、どうしても体力勝負のようになってしまいます。そうした状況は、お客様にとっても非常につらいこと。

だからこそ、ベアリングが壊れる・壊れないを最初から精度よく、より完璧に近い形で、机上で性能を見積もることができる人材になりたいと思っているんです。

さまざまな要因がある中で、見積もりが外れず壊れない製品を生み出すことができれば、すべての工程が最短に変わっていきます。お客様にとっても、我々にとってもWin-Winの状態がつくれるようになるんです」

そのためには、まず予測に必要なツールを使いこなす技術を身につけることと、解析技術を向上させることが大事だと江尻は考えています。

江尻「出向して肌で感じたお客様の想いを背負いながら、技術を身につけて状況を変えていく。そして技術力があるだけではなく、想いを持ちながら業務に関われたら、会社としても良くなりますし、自分の仕事としても、より楽しくなると思います」 

そんな江尻が考える、働く上で必要なこと。それは、自らがなりたい姿を想像し、逆算して何をするべきか考えることです。

江尻 「私がなりたい姿を思い描けるようになったのは、ここ2、3年の話なんです。もう少し早く今の自分にたどりつきたかったなと思うからこそ、学生の方々には、出来ることと出来ないことを自己分析して、何をすればなりたい姿に近づけるか考えることをおすすめしたいですね。

ゴールを見据えることで、人間力も高くなると思います。また、私のように出向という形ではなくとも、国内外にある部門で学び、成長できる環境が不二越には備わっています。
そこを踏まえて、入社を考えている未来の仲間が、『なりたい姿を不二越で実現できるかも』、と感じてくれたらとても嬉しいです」

与えられた仕事を着実にこなすことも大切ですが、なりたい姿を想像できれば、日々の取り組み方も変わる──。

大切にしている仕事への想いを熱く語りながら、不二越に新風を吹き込む仲間が乗りこんできてくれることを、江尻は期待しています。