人の役に立つ仕事がしたい──工学に惹かれ材料の世界へ

マテリアル事業部 技術部所属 中元 宏

総合機械メーカーの不二越では、良い商品のために良い材料から作ろうという考えのもと、マテリアル事業を展開しています。2016年に新卒入社した中元 宏は、マテリアル事業部技術部新材料開発室で働く社員です。

工具向けなど特殊用途の鋼材からさらに裾野を広げ、新しい材料をどう設計し、どのように作るか考え、製造寄りの開発を行なっています。

中元 「イメージしやすいものでいうと、ドリルに使う材料を開発しています。ドリルは鉄に穴を開けるための製品なので、普通の鉄よりも強い材料を使わなくてはなりません。また、機械のなかでも左右に動くレールの部分は、摩耗に強い材料で作らないと壊れやすくなってしまいます。一般的に人の目に触れないようなところに、私たちが開発した材料が使われています」

中元は大学の工学部で金属系の材料を専門に学び、大学院に進学してから不二越へ入社しました。工学に興味を持ったきっかけは、高校の総合学習で興味深い話を聞いたことです。

中元 「たとえば医療でも、器具やロボットなどが治療を支えています。そのように、今や工学はあらゆる分野を支え、大いに世の中の役に立っているんだという話を聞きました。当時から将来は人の役に立つ仕事がしたいと強く思っていたので、工学を勉強しようと思ったんです」

そして大学で材料を学び、就職活動時に不二越の存在を知ります。商品を作るための材料から一貫して作り続けているメーカーというユニークさに惹かれ、入社を決意しました。

輝かしい発展を影で支える材料分野は、自身の性格にぴったり

“縁の下の力持ち”。

中元は材料分野の特徴を、この言葉で表します。材料を開発する仕事は、機械を製造するよりも地味に見えやすいもの。しかし、中元は自身の性格やこれまでの経験を振り返り、縁の下の力持ちである材料分野が性に合っていると実感しています。

中元 「私は学生時代バスケットボールをしていたんですが、リバウンドを拾い他プレイヤーを支えるポジションがメインでした。だからこそ、他分野を影で支える材料分野のスタンスには、親近感を覚えています」

さらに中元は、材料はあまりヒットが出ない一方で、当たると大きい分野だと考えています。

中元 「2019年のノーベル化学賞受賞で脚光を浴びたリチウムイオン電池は、わかりやすい例です。電池を構成する材料を適切に設計し組み合わせることで性能が向上し、スマートフォンなど今の生活になくてはならない製品が使えるようになりました。

新材料開発は、人々の生活をガラリと変えるポテンシャルを持つ、世の中に欠かせないものです。大きな付加価値を生み出せるのが、材料の魅力だと思います」

材料がおもしろいと語る中元も、大学時代に材料の研究をしていた頃はなかなかうまくいかないこともありました。膨大な量の実験をしてトライアンドエラーを繰り返すのは大変な作業ですが、中元自身はそれを楽しいと感じていたのです。

人々の生活に大きなインパクトを与えるため、コツコツとやるべきことを進める。そんな地道さが材料分野にうまく合ったため、不二越でも新材料開発に励めているのです。

新材料開発室では、室全体がひとつのチームとなって動いています。室のなかだけでクローズしているのではなく、疑問があれば他室の社員に聞きに行きます。相談されたらきちんと話を聞き、答える職場風土があるからこそ、周囲と連携しながらスムーズに仕事を進められるのです。

中元 「鉄鋼材料分野はさまざまな知識が必要ですし、扱うモノが大きいので、すべてをひとりでこなすのは不可能です。周りの人に協力を依頼するなどして、人の手を借りながら進める必要があります。そのため、きちんと計画を立てて仕事を進めることが重要です。そのなかでわからないことがあれば、周りに助けを求めるようにしています」

頼りやすい職場風土により、抱え込む癖をなくして正しく助けを求めるように

今でこそ周囲と協力しながら仕事を進められるようになった中元ですが、実はもともと自分ひとりで何でもやりたがる癖がありました。

中元 「“頼ることは負け”のように考えていて、困っても助けを求めずひとりで抱え込む癖があったんです。たとえば入社当初、専門的な装置の動かし方がわからなかったときも、自分だけで何とかしようとしていました。今思えばひとりで考えたところで答えが出るわけがないんですが、当時は本当にひとりで解決しようとしていましたね」

相手がいて納期が決まっている仕事は、きちんと期日内にやり遂げなければなりません。すべてを自分で抱え込む仕事の進め方に段々と限界を感じるようになった中元は、少しずつ周囲に助けを求めるようになりました。

中元が周りを頼るように変われたのは、不二越特有の連携しやすい職場風土があったからです。

中元 「当社では開発室と製造工場が同じ敷地内にあるので、わからないことがあれば歩いて現場まで聞きに行けます。そして現場の方も、知らないやつがきたと邪険にせず、質問すれば優しく教えてくれるんです。基本的にみなさん新卒社員を気にかけてコミュニケーションを取ってくれるので、抱えている仕事の話も積極的にしていこうと思えました」

不二越の強みでもある開発チームと生産チームの密接な連携が、業務プロセスの改善にもつながっている。それを肌で感じた中元は、今ではきちんと周囲に助けを求めながら業務を進めています。

中元 「当たり前ですが、自分より経験もスキルもある方ばかりなので、頼らない理由がないと考えるようになりました。ちょっと困って聞いてみたら、問題が一瞬で解決したケースも多くあります。そこでよく自分の無力さを痛感しますが、周りから学びながら働けることに感謝もしていますね」

自らが手がけた材料を、世の中へ送り出したい

留学先のアメリカ カリフォルニア州にて撮影

中元は、入社直後に入ったチームが国際学会に参加したため、ボストンで英語による学会発表を行ないました。

不二越では、入社1年目の社員に2カ月間の海外語学研修を義務付けています。中元はアメリカのカリフォルニア州へ行きましたが、帰国後も英語力を維持するためコツコツと勉強を続けていました。その結果、TOEICでも高得点を取得し、上層部の目に留まったのです。

中元 「特に鉄鋼は高度経済成長期に“産業の米”と言われ、産業の中核を担うものだったので、金属材料は広く深く研究されており相当な量の知見が存在します。これまで積み上げられてきた知見を身につけたうえで、製品の特徴や開発の経緯などを英語で説明しなければならないのは、大変でした。でも、貴重な経験をさせていただいたと思います」

若手社員のうちに海外での学会発表という輝かしい経験ができた中元。しかし、それで満足しているわけではありません。今後は、自身が携わったと胸を張って言える成果を出したいと考えています。

中元 「すでに軌道に乗っていたプロジェクトに良いタイミングで参加し、集大成である学会発表というご褒美をうまくいただいたと思っています。だからこそ、次は自分が1から携わったものを世に出して、会社の利益に貢献したいです。ひとつの開発に5〜6年ほどかかっていたのを見ているので、この先5〜6年で成果を出したいですね」

目標達成のために、中元は勉強を継続しています。

中元 「産学連携の勉強会や発表会があるんですが、それらに会社の代表として出席しています。世の中の最新研究の動向を知れる貴重な機会なので、知識を吸収して会社に還元するのが自分の役割です。もちろん自分の業務にも活かし、新しい商品の開発に役立てていきたいですね」

縁の下の力持ちとして世の中を支えるため、努力を惜しまず勉強し、新材料の開発に奮闘する。

そんな中元が世の中に新たな成果を発表できる日は、そう遠くないでしょう。