映画で惹かれた未来のモノづくりを仕事に

工場で使用される産業用工作機械を制御する、油圧機器のバルブやポンプの開発に携わる吉田 圭佑。駆動の要を握る技術開発に彼が興味を抱いたきっかけは、小学生のころに観た1本の映画でした。

吉田 「SF映画の名作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で描かれていた、科学技術を通して描かれたモノづくりへの感動がきっかけです。ブラウン博士(ドク)が新たな発明をする姿が子どもながらにカッコいい、と思ったんです。中学卒業後の進路選択のとき、その魅力に近い分野を探していて、制御工学という分野を知りました。そこから高専、大学と進学しながら、モノの動きを制御する研究を続けました」

吉田が研究していた制御工学とは、機械を制御(コントロール)するための方法論全般を指します。自動制御によって機械を高速かつ安定的に動かすシステムは、ロボットやモビリティ、人工衛星などあらゆる領域で活用されます。

吉田 「“モノを動かす“ことは、私の夢そのものです。しかし、自分の理想の仕事に関わるのはなかなか難しいものと考え、就職活動当時は、これまで学んできたことを少しでも活かせれば、と広く就職先を探しました。そんななか、“モノを動かす“ことの代表格であるロボットにも注力していると知って臨んだのが不二越です。面接時、意外にも油圧のことを多く質問されました。興味を持って調べてみると、油圧の分野でもモノを動かすことに関われることを知りました」

自身にとって新しい分野で、“モノを動かす“。吉田の夢から引かれた一本のキャリアは、ここから始まったのでした。

油圧機器のデジタル化がモノづくりの視点を変えた

吉田 「不二越へ入社した後は、油圧事業部技術部産機技術室という部署で働いています。完成までのプロセスに携わった新商品『ERD(※)』のプロジェクトでは、メイン担当者として商品を世に送り出しました。考え抜いた商品を現場の方に買ってもらえる瞬間は、やはり嬉しいものですね」

油圧機器のデジタル化は、近年、特に需要の高まっている領域のひとつです。油圧機器はバルブで鉱物油などの液体を制御して、機械の動きをコントロールしています。これまでは手動で調整する必要がありましたが、デジタル化が進めば油圧調整の簡易化が可能です。そうなれば、現場の業務効率の向上や働き方改革といったさまざまな効果が期待できます。

吉田 「デジタル化のメリットは、調整の工程を数値化できることです。ベテランの感覚が正確性につながる業務を定量的に表現できれば、若手の育成や、テレワークによる指示なども容易になるでしょう。『ERD』を導入したことで、工数削減を実現した企業事例も挙がっています」

開発は少数精鋭で行われました。そのメイン担当者として、吉田はユーザーのフィードバックや社内のアドバイスなど、さまざまな声を聴きながら『ERD』を形にしていきました。

吉田 「使いやすいと思って作ったものが、現場のテストユーザーには使いづらいと言われることもありました。開発者は機能がたくさんあったほうがいいだろうと思いがちですが、時にはユーザーが迷わず使えるよう、シンプルに作ることも大切であると学びました。商品開発の責任者として立つことには緊張感がありましたが、改善を重ねて完成したERDは、現場で高い評価を得るものになりました」

学生時代から変わらない“モノを動かす“ことへの情熱は、やがて人々の手に渡る商品へと結実しました。人々の使いやすさを考慮した『ERD』は、今後多くの企業の未来を変えていくでしょう。

※電磁比例弁用デジタルコントロールアンプ。デジタルでの制御を可能にした油圧機器。

少数チーム体制と研修制度が本人の実績を底上げする

入社4年目で『ERD』開発の責任を持つ立場に立った吉田。慣れない業務を進める中で、不二越の体制や人材育成のしくみにたびたび助けられたと吉田はいいます。

吉田 「一般的に複数人で分担するプロセスも、不二越では一人の担当者が一貫して携わります。私の場合は、油圧関係のものは基盤設計からソフトまで見ています。こうした体制が敷かれていることで、早い段階から私は商品開発の中心を経験することができました。少人数で大規模なプロジェクトを動かすのは大変ですが、同時にやりがいも感じます。進行中は上司のアドバイスを仰ぎながら進められるので、不安はありません」

また、不二越は技術的なアドバイスだけでなく、ビジネスパーソンとしてのスキルアップにも注力しています。潤沢な研修や展示会参加などの経験は、吉田が苦手意識を持っていたコミュニケーションスキルの向上にも役立ちました。

吉田 「もともと私はコミュニケーションが得意なほうではなくて。たとえば、打ち合わせや商談といった場への苦手意識が強くありました。しかし、若手でも展示会を通じて商談に触れる機会などをいただけるうちに、だんだんとビジネスの場でコミュニケーションを取ることに慣れていきました。展示会でわからなかったことは持ち帰り、調べることも多く、新たなことを学ぶきっかけにもなりました。また、うまく情報を伝える方法を学んだプレゼンテーション研修は、のちの『ERD』の商品説明会で大いに役立ちました。」

幅広い研修のなかには、海外研修も含まれます。2カ月間の海外滞在経験は、英語で交流する機会の少なかった吉田にも変化を与えました。

吉田 「私はイギリスに滞在し、語学の学校に通いました。一定期間ネイティブの方々とコミュニケーションを取る機会があったことで、今は自然に英語を話すことができます。」

あらゆる方面から社員の成長を促し、少数でプロジェクトを進める体制を作る不二越。それらの提供された機会を無駄にせず、学びと実践を繰り返すことで、吉田は成長の階段を一つひとつ上ってきました。

視野を広げ、自分のしたいことを仕事に

ERDというひとつの大きな結果を生み出した吉田は、次の目標へと歩みを進めています。

吉田 「『ERD』は途中からメイン担当者として携わった形でしたが、次は自分から提案した新しい製品を開発してみたいです。個人的な目標というより、仕事の目標がアップデートされました。特に、通信システムの強化は重点的に取り組みたい領域です。IoTや5Gといった大きな動きがあるなかで注目される技術ですから、先手を打ちたいです。5Gが実用化されるまでにはおそらく1年程度かかるので、それまでには何かひとつでもプロジェクトを推し進めたいですね」

小学生のころ映画のなかで出会ったきらめくモノづくりの世界。その中心で、吉田は働いています。学生時代から揺れない目標がこうしたキャリアに結びついたのは、分野を横断する柔軟な思考があったからです。

吉田 「こうしたモノづくりに関わる仕事の場合、たとえ分野が異なっても、似ている業務に関われるかもしれません。私の場合、最初はロボットに興味を持っていましたが、のちに調べてみて油圧でも似たことができると知りました。視野を広げることは、自分の活躍できるフィールドを見つける機会につながります」

あこがれた姿を求めて働くキャリアを選ぶこと。情熱に支えられた柔軟さこそが、着実に目標へ向かうための道を固めるのかもしれません。