「RPAって何?」からのスタート。できることから始めていった

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薬学部を卒業し、新卒で田辺三菱製薬株式会社に入社した北里。入社当初はMRとして営業活動に携わり、その後、育薬本部へ異動してからは学術文献の検索や管理を担当しています。 

北里 「現在は『くすり相談センター』に届く「顧客の声」の集計・分析、コミュニケーターの応対品質評価ツールの開発、医療従事者向けのAIチャットボットのメンテナンス、そして部内業務のRPA化推進に携わっています」

北里が6年間で経験した仕事内容は多岐に渡ります。

RPA(Robotic Process Automation)とは、これまで人間が行ってきた定型的なパソコン操作を、ソフトウェアのロボットにより自動化するもの。決まった定型業務をロボットが行うことで、工数削減や生産性の向上が期待できます。

実は北里がRPAに関わることになったきっかけは、上司からの推薦。推薦された当初は「RPAって何?」という、全く知識のない状態だったと北里は振り返ります。

北里 「最初は何も分からず、困惑もしましたね。でも、当時は会社としてRPAを導入したばかりということもあり、社内説明会や研修を受ける機会がありました。さらに、ロボット開発時にはRPA事務局からの手厚いサポートもあったので、比較的スムーズに業務に入ることができました」

言葉の意味すら知らないところから始めたRPA。まずは当時所属していたグループ内で、できることからスタートしました。

北里 「研修を受けると、人の判断に委ねない業務や、毎月のルーティン業務がRPAに向いているということが分かってきました。まず、『RPAができるかどうか一緒に考えていきましょう』と声をかけ、『RPA化要望業務一覧表』への記入をグループ内で展開するところから始めました」

最初に要望が挙がったのは、ひたすらテキストを貼り付けるなどのエクセルを使った単純作業。これらをRPA化することで、今まで費やしていた時間を他の業務に充てられるようになったと言います。

北里 「たとえば、1件5分しかかからない業務でも、年2,000件発生すれば10,000分かかることになります。これだけの時間がかかる作業も、ロボットを開発することにより、ボタンひとつで一瞬で完了できるようになりました。
RPAを実際に動かしてみた人はすごく感動してくれるんです。『この業務にイライラすることがなくなった』、『毎週決まった時間にやらなきゃと焦らなくて良くなった』という声も聞きました。実業務だけではなく、メンタル面の負担も軽減されることで『ありがとう』と言われることもありますね」

RPA化を意識することで、働き方が変わっていく

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▲RPA化推進担当チームメンバーと(当社キャラクターのたなみんと一緒に)

RPA業務がスタートして一年後に自部署に「RPA化推進担当チーム」が発足。開発ルールに基づきながらも北里が一人で行っていたRPA化の判断が、複数人で行えるようになりました。

北里 「RPA化に値するかどうかの判断基準、運用フローを作成し、明文化していきました。今では、RPA化要望の申請があがってきたらチームでヒアリングして話し合い、複数の目線でRPA化するかどうかを判断しています」 

RPA化すれば便利になる業務もあるものの、すべてをRPA化すればいいわけではありません。ロボットと人間の強み・弱みを正しく理解し、業務分担・共存することが大切だと北里は言います。

北里 「ルールやフローが明文化できる業務であればロボットでもできますが、人が判断した方がいい場合も結構あるんです。また、ロボットの開発時間がRPA化による業務削減時間を越えてしまっても、業務効率化とは言えません。この兼ね合いも運用フローで定めています。
今まで40〜50件くらいRPA化の依頼があったのですが、その中には属人化していることが原因で業務が非効率になってしまっている場合もありました。そういったケースでは、『業務フローを変更したり、エクセルを作り変えたりすることで効率化できるのでは?』と提案することで、RPA化ではない形で、業務効率化につながった事例もあります」

ロボットが全て良いとは思っていない──RPAをすすめる北里は、広い視野をもって業務全体の効率化を捉えています。

北里 「ロボットの開発に携わり、エクセルのスキルを磨いていく中で『ロボットでなくても作業用のエクセルの作り方を変えるだけで、業務自体がもっと効率的になる』と気づくことがあります。見方を変えることも効率化には必要です。
RPAに関して部内で共有し、理解してもらえるようになったことで、依頼や相談の数は落ち着いてきています。RPA化できる業務の洗い出しが一通り完了したのもありますが、RPAへの理解が深まり、皆さんが自身の業務を見つめ直すきっかけになったからかもしれません。RPA化が叶えられなくても業務を見直すきっかけになることで、皆さんのお役に立てたのかなと思っています」

「人にしかできないことをする」RPA化において大切なこと

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RPA化によって創出した時間は、「人にしかできない業務に費やすことが大切」だと北里は語ります。

北里 「一人ひとりが普段の業務にRPA的な思考・意識を持つことで、より効率的に働けると思っています。残業が減るだけではなく、創出した時間でロボットにはできない『人の頭で考えて作り出していく時間』を増やすことができますよね。その結果、仕事の充実度も上がるはずです。
『何か作業をすること』『発表資料を作ること』など、手を動かすことだけが仕事ではありません。『誰かと話し合ってものごとを進めていくこと』『アイデアを出すこと』など、手は動いていないけれど、考えている時間も大切な仕事。これらは表に出てはいないけれど、本当はもっと時間を費やしたいところだと思うのです」

北里が参加した「タスクの優先順位の付け方」の研修。そこでは、「仕事は4種類に分類できる」ことを学びました。

北里 「一番目は緊急度も重要度も高い仕事、これは第一優先だと思います。二番目が、緊急度は低いが重要度が高い仕事。三番目は、緊急度が高いが重要度は低い仕事。そして最後に、緊急度も重要度も低い仕事です。
このうち、なんとなく時間を取られがちなのが三番目の仕事。ここに注力してしまうと、時間ばかりが過ぎて、本当に必要な成果が得られにくくなってしまいます。三番目の仕事に時間をかけるよりも、二番目の仕事にもっとウェイトを掛けられるようにしたいと考えています」

ロボットで代用できるものは積極的にRPA化する。そうすることで、『人だからこそできる仕事』に時間を割くことができるのです。北里が熱い想いを持つようになったきっかけは、MR時代にまで遡ります。

北里 「MR時代は常に目の前の業務に追われていました。本当は『どうやったらもっと市場を拡大できるか』と戦略を練り、チームでリーダーと相談をする時間をつくるべきだと思うこともありましたね。なので、今ではロボットに任せられるところは任せる、そうでないところはしっかり時間をかけることが大事だと思っています」

自身の苦い経験があるからこそ、北里は、RPA、ひいては業務の効率化に真剣に向き合っているのです。

人と人をつなぐツール「RPA」。その可能性を広げていきたい

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▲同僚と

未経験からスタートし、今ではRPA業務を担っている──そんな北里は、RPAをどう捉えているのでしょうか。

北里 「RPAは人と人をつないでくれるツールだと思っています。ロボットって冷たいイメージを持つ人もいるかもしれませんが、RPA化の目的は人の業務を奪うことではありません。ロボット化できる部分を人が関わって作り上げ、業務をより良くしていくことなのです。『人の得意なところ、ロボットの得意なところを、共存させていく』という考えでやっています。
目の前に座っている人が、毎日どんな仕事をしているのかわからないということってありますよね。けれどもRPA化を進めることで、一人ひとりがどういう業務をしているのかという理解が深まり、部内コミュニケーションが生まれます。そしてそれは、分からないことがあったときに誰に聞けばいいのかを知ることにもつながっているのです」

先生から感謝されたMR時代、そして同僚から感謝される現在。両者は同じくらい嬉しいことで、自身のやりがいにもつながっているといいます。

北里 「ひとつのロボットを作るだけでも、現場の社員と『ここが上手くいかない』、『ここをもっと良くしたい』など、細かいやり取りをしながら進めていきます。そして最後に『ありがとう』といってもらえるのは単純に嬉しいですね。
そして私自身も、ロボットを作れば作るほど経験値が上がっているんです。『こうやってロボットを組んだらできないことができるようになった』、『エクセルにこんな機能があったんだ』と学びにも結びついていると思います」

最後に、今後の展望を聞いてみると、未経験の分野に挑戦してきた北里らしい答えが返ってきました。

北里 「もっと皆さんにRPAに興味を持ってほしいです。RPA的思考を満遍なく持てるようになると効率化が進み、働き方改革にもつながっていくと思います。この思考が浸透していけば、開発をしたいと思う人や、実は開発に向いている人が現れるかもしれません。未経験の私ができたので、皆さんも開発できる可能性を持っているはず。現在、社内では独自のRPA認定制度が始まり、基礎研修だけでなく高度開発者育成研修や個別相談会などRPA開発環境がますます整備されてきているので、始めてみる絶好の機会だと思います。『できるかも』という思考を持ってもらいたいです」

上司の推薦がきっかけでRPAに携わることになった北里。普段から持っていた効率化への想いと、勉強しながら身につけた技術が合わさることで、社内業務の効率化は加速しています。北里の熱い想いは、RPAというツールを通じて、これからますます広がっていくことでしょう。