憧れの探偵として、依頼者の真の悩みを解消したい

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私は、中学生のころから探偵に憧れていたんです。きっかけは、テレビでたまたま再放送していた松田優作の『探偵物語』。その姿を見て、「格好いい」と思いました。当時、周りにはそれに共感してくれる人はあまりいなかったのですが……。

高校、大学でもその想いは変わらず、就職活動で探偵事務所のMRの選考を受けました。とにかく一度チャレンジしようと思っていました。もし失敗するとしても、若いうちだったらいいかなって……。

数ある探偵事務所の中でもMRを選んだ理由は、依頼者のアフターフォローにも力を入れていることです。就職活動の中で、いろいろな探偵社のホームページを見ました。その中でMRは「担当カウンセラー制度」を置き、依頼された案件についての実施報告後も依頼者と連絡を取り合うなど、報告書を渡しっぱなしにせず、依頼者の真の悩みを解消するところまで行っていたんです。そのような探偵事務所は、私が見た中でMRだけだったので、この会社で働きたいと思い、履歴書を送りました。

当時、さまざまな事件が世の中で起きているのを見聞きする中、単なる調査だけではなく依頼者のケアの重要性も感じ注目しました。多くの探偵事務所では、報告だけして終了というケースが多い一方で、アフターファローにも力を入れているのはMRの強みだと思ったんです。

MRに新卒で入社した当初は、まさに会社も大きくなっていくタイミングでした。20名程度だった調査員も増えていき、部署も新設されていく真っただ中。そのころは、調査員が相談員とコミュニケーションすることが少なく、どのようにアフターフォローをしているかを新人の私が見る機会が限られていました。しかし、最近は業務の全体像もわかるようになり、アフターフォローの大切さをあらためて感じるようになりましたね。

お調子者だった学生時代と一転し、入社後に味わった挫折

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私は幼いころ、お調子者でした。学校の通信簿にもそのことはよく書かれていてましたね(笑)。

高校のころに各クラスで文集をつくることになったとき、私は学級委員をやっていたにもかかわらずふざけた内容で書いたのですが、結果として校内で注目を集めてしまうことになりました。思いついたらとりあえずやってみよう、という思考性だったんです。

その思考から、私はMRへの入社を決意します。

でも実は両親は、探偵事務所であるMRへの入社は反対していました。ただ、「それでもやってみたい」という気持ちが強く、自分の気持ちを貫いて入社したんです。

両親を説得し、意気込んで入社をした私ですが、調査員になったばかりのときに挫折をしてしまいます。

調査のため昼夜逆転の生活を繰り返す中で、体調を崩してしまいました。1カ月で10kgも痩せて……。新卒入社だったので気負いもあったと思います。

当初は憧れて始めた仕事でしたが、一度は退職まで考えました。そんなときに会社から「報告書を専門で作成する部署をつくろうと思うんだけどどう?」と話がありました。

調査のときのような体調を崩すリスクは低いと考え、退職は踏みとどまり、入社1年目の途中から現在の編集部に異動することになりました。私はそこの第一号社員ということになります。


編集部としての挑戦とやりがい

編集部では、依頼者からの調査案件に関して実施報告書をとりまとめる業務を一任されています。依頼者に対して、いかに調査結果をわかりやすく伝えるかを追求しています。

具体的な業務内容の例を挙げると、地図の貼り付けや、結果の裏づけとなる見逃せない瞬間の映像をアップやスローに編集することです。センセーショナルに伝わる報告書作成を心掛けていますね。

また、時には調査をしても根拠を取り切れないケースもあるんです。そのときは、なぜ取り切れなかったのか、理由をしっかり記載して依頼者に納得してもらえるようにしています。

編集部という部署は、社内のどの部署とも中立の位置にあり、第三者的に見ることができる機関でもあります。いかに軋轢を生まずにコミュニケーションをスムーズにできるかが求められます。そのため双方の利害をいかに一致させるのか、その調整が難しいです。編集部として、社内の架け橋のような存在になれればと思っていますよ。

現在は3名体制で業務を回しながらも、私は他2名の社員のマネジメントやサポートを中心に行っています。メンバーは優秀で私の指示がなくても、各自判断して先回りや工夫をしながら業務を進めてもらえるので助かっていますね。

私は、トラブルが起きているものや細かい調整が必要なものを巻き取るようにし、いかに全員が手を止めずに業務に着手できる環境をつくるかに気を配っています。

これまで多くの案件に編集部として携わってきました。その中でもとくに記憶に残っているのが、盗聴調査です。

依頼者の多くは思い込みであることが多く、「近所の人から嫌がらせを受けている」「声が聞こえる」「同僚に嫌がらせをされているんじゃないか」などさまざまな理由で依頼をしてきます。

とある依頼者が、他社でも調査をしてもらっていたが結論が納得できないと当社に依頼をしてきたことがありました。周囲や親にも取り合ってもらえない経験をして深く悩んでいる中、私たちから調査報告ともに丁寧にアフターフォローをしたことで、最終的には涙を流して喜ばれたことがあったんです。「今まで誰にもこの苦しみを言ってもわかってもらえなかった……」と。MRで働いていること、またアフターフォローの価値を感じる瞬間でもありました。

挫折をもとに得られた気持ち、そして共に働くメンバーへの想い

2020年現在、私は36歳ですが、このままあと30年ぐらいは働きたいと思っています。

30年も経てば会社も世代交代していくと思いますが、今後も会社が続くように一社員として頑張りたいですね。探偵事務所は一般的な仕事ではないと見られてしまいますが、私自身、 妻と小学生の子どもがふたりいて、家も購入して普通の暮らしを送っています。

一緒に働くメンバーも、家庭を持ったり、金銭面で苦労せず働いたりできるよう支えていきたいです。そのためにも、自分が家庭を持ちながらも働くことができている様子を、もっと他のメンバーにも知ってもらう必要があるかもしれないですね。

MRに入社して13年──。現在は調査員としては働いていませんが、編集部で働くことは自分にとって良い経験になっています。

そして今になって考えれば、最初に入社して挫折したことは良かったかもしれないと思っています。それまでお調子者だったこともあり、そのまま順風満帆に進んでいたら傲慢になっていたかもしれません。

挫折を味わったことで、謙虚な気持ちを持てるようになったことが、今こうやって編集部として仕事ができている理由なのかもと感じていますね。今後もその謙虚な気持ちを忘れず、小さいころからの憧れだった探偵事務所で働けていることを誇りに思いながら働きたいです。