平穏な日々に訪れた、あるできごと

▲学生時代は、ピアノの練習に日々明け暮れていた。

3歳のころ、音楽好きな父の影響でピアノに触れた山岸が目指していたものはピアニストでした。そのため大学では音楽科でピアノを専攻。ピアニストの道は諦めたものの、音楽講師としての仕事を選びました。

山岸 「教師になってしばらくした後に結婚したんですが、これを機に自分自身がずっと好きだったインテリアの仕事をどうしてもやりたいという想いが強くなって。それで、再度勉強を始めました」

山岸は専門学校で学んだ後、インテリアデザイナーとしてのキャリアを築いていきました。

忙しくも楽しい日々だったと語ります。その後、出産し娘を授かり、子育てとパートの平穏な日々を過ごしていた30代の山岸に転機が訪れます。

山岸 「旦那がいきなり会社を辞めて“起業する“と言いだしたのです。すでに事業用のビルまで借りていて。それがきっかけでお互いの価値観がずれ始めて、話し合いの末、離婚することになりました。この生活がずっと続くと信じていたばかりに、当時はとてもパニックに陥りましたね」

離婚した後の生活は、とにかく必死な毎日を過ごした山岸。子育てをしながら、必死に勉強し、働いていたと言います。

山岸 「私ひとりで娘を育てなくてはならなかったので、パートでは不安定でした。なので、フルタイム正社員としてキャリア復帰しました。男性ばかりの建築業界の職場で、ソフトばかりではなくハード面の必要性も痛感し、建築士2級や福祉住環境コーディネーターの資格も取りました。CADで図面を書くことや、実際に現場に出て行くこともしましたね」

求人のチラシがカウンセラーとの出会い

山岸が子育てもひと段落というタイミングで見つけたのが、“MRのカウンセラー募集“の求人チラシでした。それを手に取ったとき、自分の人生の最後は苦しむ人に寄り添う仕事がしたい──そんな想いが山岸の心に浮かび上がりました。

そんな山岸はもともと、高校時代からカウンセリングに興味を持っていました。そのきっかけは彼女の家族でした。

山岸 「私の兄はお産の際の事故で障がいを持っており、母親はそのことで何度も自分を責めてしまっていて。本来明るかった母が兄の成長と共にふさぎ込む回数が増えていったんです……」

山岸は、そんな悲痛な母親の姿を幼いころから見てきました。

山岸 「自分が母親の精神的な面での支えにならなきゃと勝手に思っていました。それで、高校生のころは、毎日図書館に行き、心理学やカウンセリングに関する本をむさぼる様に読んでいました。とにかく自分ができることを探していたんです。そのときは必死だったんだと思います」

さらに、もうひとつの経験が彼女の背中を後押ししました。

山岸 「離婚に直面したときは正直人生で1番きつかったんです。精神的にも肉体的にもかなり大変でした。心配してくれる友達の存在はとても大きくありがたかったのですが、なかなか実質的なことはわからないのは当然で、頼れる人もいませんでした。

どうしたら良いのかもわからなくて当時はたくさん悩みました。だからこそ、その様なときに、寄り添いながらきちんとしたアドバイスもできる存在になりたいと心から思いました」

自分自身の経験を同じように苦しんでいる人のために生かす、その決意を胸にMRへ入社しました。そんな山岸の現在の業務は、夫婦間や家庭関係の悩みを持った方々のカウンセリングがメインです。

山岸 「まず、依頼内容をお聴きして、調査部に依頼書を渡し調査してもらいます。そして、調査が終わり、“アフターケアをするまで“がわれわれMRのカウンセラー業務になります」

そのほかにも、山岸が自らの教育現場の経験を生かし活躍しているのが、MRの育成担当の仕事です。

ありがとう。感謝を綴るその手紙こそがやりがい

育成担当という立場で山岸が見てきたものは、現実と理想とのギャップに耐えられず辞めていく新人たちの姿でした。

山岸 「最初は、カウンセリング業務って“人の役に立ててやりがいがある”そう思って皆さん入社されるのですが、いざ深刻な悩みを抱えているクライアントさんと直面するとなんとかしてあげたいと感情移入し過ぎてしまい、逆に自分の方が精神的に滅入ってしまうことがあるんです。

人生を左右する悩みをお持ちの方に寄り添う仕事なので、私たちの精神状態もとても大事です」

新人育成担当を6年務める山岸は、続けていく大変さを痛感しています。

山岸 「それでも、ベテランカウンセラーに同席し、一緒カウンセリングに入って、一生懸命にメモを取って必死に頑張っている人もたくさんいます。その姿には、とても勇気をもらえるし、成長した姿を見るととてもやりがいを感じます。

この仕事は長く続けていくことで、カウンセラーとしての姿勢が身についていくんです。だから、新人には最初に感じるギャップを乗り越えて、クライアントさんに心から喜んでいただけるカウンセラーになってほしいと思っています」

カウンセラーとして、山岸はどんなやりがいを見つけたのでしょうか。

山岸 「やはり、初めは暗いお顔をなさって泣いていらしたクライアントさんが最後に元気になられ、ステキな笑顔を見せてくださることが一番です。ほかにも、『MRに出会って人生が変わりました』というお手紙をいただくこともあります」

何百人ものクライアントと接する山岸のモチベーションにあったのは、クライアントからいただいた感謝の手紙の数々でした。

山岸 「最初は、皆さんとても不安を抱えています。だれに頼っていいかもわからず、苦しんでいます。だけど、“MRに相談に来たこと“はクライアントさんが一歩踏み出した証です。悩むだけでは何も変わらないし、悪いことばかり考えていると何をするのも怖くてどんどん動けなくなっていく。

一歩進むことを決意できれば人生は必ず開けて行きます。私たちカウンセラーはそんなクライアントさんに寄り添い、前に進むことを応援したいと思っています。だから、躊躇わずに頼ってほしいのです」

責任重大、だからこそ、喜んでもらったときのやりがいは絶大なもの──人生が明るい方向になった人を何人も見てきた山岸はこう語りました。

無駄な経験なんてない。この仕事にはすべてが生きる

山岸はこれまでの経験を生かして多くの人の心に寄り添っています。

山岸 「もちろん自分自身の離婚経験は生かせていますが、その経験だけではありません。家族のことで悩んだ経験や、過重労働して入院した経験、出産や子育ての経験、専業主婦の経験も。この仕事は、人生のあらゆる経験が生かせる職業だと思っています。

自分が苦しんだことが生かせるんですから、今となってはいろいろな経験をしていて逆に良かったのかなとも思います。クライアントさんにも今はつらくても人生に無駄なことはひとつもないとお伝えしたいです」

山岸のカウンセラーとしての姿勢にも、相手への想いが現れています。

山岸 「一人ひとり、抱えている悩みや環境も違う。だれひとりとして同じケースはないのです。なので、その方の目線に立ち、その方がどんな悩みを抱えているのか、これからどうしていきたいのかをちゃんと理解することを一番に心がけています。

どんな決断でも最後は幸せになってほしい。そのために、私ができることは何かを常に考えています。やっぱり、相談して良かったなと思って帰ってもらいたいですね」

山岸は、いろいろな思い入れのあるこの仕事を生きがいと話します。

山岸 「カウンセラーとしてさまざまなアドバイスはさせていただくのは当然なのですが、むしろ自分の方が勉強させていただいています。この仕事は、クライアントさんに教えてもらうことがたくさんあるんです。ときには、クライアントさんのお考えを聞き、感動することもありますし。

クライアントさんと向き合っていると、同時に自分を見つめ直す機会にもなります。まだまだ知らない自分がいて、それに気付かされます。人生の見方や、考え方も広がるんです。MRにくる前と後では私自身の人生が全然違いますよ。今では、この職が私の生きがいです」

どんな人の心にも寄り添える山岸。さまざまな悩みを抱えるクライアントに対して、柔軟な考え方ができるのは、これまでの経験があるからでしょう。真摯にクライアントに向き合う山岸の姿勢は、新人に受け継がれ、これからもMRを引っ張ります。