品質保証と配合設計を兼務。大切にしているのは、業務の本質的な意味を考えること

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▲工場内での製造直後の製品チェック

碧南工場では、鶏、豚、うずら、鴨、そして他社からの製造委託というかたちで競走馬の飼料を製造しています。中でも私が所属する品質保証課が担うのは、品質保証と配合設計です。

品質保証業務の例としては、ISOの推進活動や、製品・原料の検査分析による品質管理などが挙げられます。ひと口にISOの推進活動といってもその内容はさまざま。たとえば、製品の各製造工程において安全に機能しているか、工場内の各工程に携わる人たちがふさわしいスキルを持ち、決められた手順のもと安全に働けているかどうかを、拠点内の従業員で検証活動をすることを目指した啓蒙活動などを行っています。

配合設計業務とは、製品設計のメンテナンス、いわば製品のレシピ管理のことで、原料の供給状況に応じて設計の最適化などを行っています。

たとえば、コロナ禍の影響で小麦粉や「ふすま」と呼ばれる小麦の皮の供給量が大幅に減りましたが、それらの配合率を下げながら、期待されているスペックなどを維持できるよう調整することがありました。

また、研究所や営業から持ち込まれる製品に関する提案、お客様から寄せられる要望への対応・調整も行うほか、製品の原料コスト管理にも取り組んでいます。

部署のメンバーは、社員が課長と私の2名。これに製品や原料を検査分析するチームに所属する派遣社員3名を合わせた5名体制です。

仕事をする上でとくに意識しているのは、「なぜその作業が必要か」を自問すること。歴史のある工場ということもあり、必要性を理解しないまま慣例的にやっている作業が少なくありません。凝り固まった視点を疑い、作業に取り組む理由や意義を常に考えるようにしています。

また、目の前の業務に追われていると、将来的に新しいことに挑戦する機会を失ってしまいがち。本当に必要な作業かどうかを見極めながら業務にあたることは、新しい取り組みのための余力をつくることにつながると考えています。

私がそうした姿勢を身につけるきっかけになったのは、いまの課長が赴任してきたときのこと。私が業務の説明をしていた際、ある作業をする理由について聞かれて答えに窮してしまったんです。当時、目の前にある業務をこなすことに懸命で、作業の必要性を省みる余裕がなかったんです。課長の客観的な視点から発された素朴な疑問によって、それまでの私の考えがいかに独りよがりで凝り固まっていたのかに気づかされました。それ以来、自分が取り組んでいる業務にどんな意味があるのか、役に立っているのかを考えるようにしています。

畜産を学ぶ中で芽生えた飼料への関心。お客様との接点を持てることが仕事のやりがいに

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▲製造現場にて現場社員と打ち合わせ

学生時代は、牛に特定の餌を与えた際の免疫系への影響やうずらの生理について研究していました。そうした研究をきっかけに飼料業界への関心が高まり、就職活動する中で出会ったのが日清丸紅飼料でした。

日清丸紅飼料に惹かれた理由は、農家さんとも距離感がとても近いこと。営業に限らず、研究開発や製造の面などでも農家さんと接点を持っているところに好感を持ちましたね。また、自分の研究対象だったうずらの飼料にも力を入れてることを知って親近感が湧いたことも、当社に興味を持つようになった理由のひとつです。

実際に入社してみて、やりがいを感じながら仕事ができています。業務のプロセスの一例としては、まずお客様から営業経由で製品に関するご要望をいただき、農場の環境などの状況、原料供給事情、工場の現在の製造状況を考慮しながら関係部署の方々に力を借りながら配合設計を検討。さまざまな製造工程を経て、最終的に製品として出荷されていきます。その後、製品の使用状況確認のためにお客様の畜舎を訪ねて様子を視察することがあるのですが、「新しい飼料、とてもいい感じだよ」と直接言葉をかけていただけることがあるんです。そんなときは、「この仕事、この会社を選んでよかった」と心から思えます。

苦い経験を機に原点へ回帰。コミュニケーションを徹底して目指すは、安全な工場運営

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▲トランスバック包装に詰められた製品のチェック

お客様からいただいた言葉の中でも、とくに印象に残っているものがあります。営業担当と技術サポート部員がとある農家さんを訪問する際、製造課社員と私が同行したときのことです。「うちのことをいろんな立場の方がよく見てくれることはとてもうれしい。ありがとう」と言葉をかけられ、製品の改善内容についても好評価もいただきました。そうした声の一つひとつが仕事への原動力になっていると感じます。

一方、失敗の経験は数知れません。たとえば、数年前にこんなことがありました。配合設計業務では、工場の実情に合わせて設計を組む必要があります。原料を計量器で計ってからミキシングするのですが、当然計量器のキャパシティを超える配合内容であれば製造できません。当時、多忙だったこともあり、基本である原料配合率の制約を失念。工場の稼働を一時的に止めてしまい、工場の皆さんにたいへんな迷惑をかけてしまいました。

その一件で、ただ数字を確認しながら飼料を配合するだけでなく、製品を安全につくることもが自分の使命であることを再確認。それからは再び基本に立ち返り、トラブルなく製造することを常に第一に意識するようにしています。

製品上の安全を確保する上でとくに大切にしているのが、工場で製造を担当する人とのコミュニケーションを密に取ること。忙しいときはとくに、どうしても独りよがりな考え方をしがちで、相手が知らないことを「知っているはず」と思い込んでしまうことがあるからです。「この原料はこの配合率で計量可能ですか?」「問題なく製造できますか」と、しつこいと思われるくらい逐一声かけし、コンセンサスを得てから実際の作業に入るようにしています。

われわれの配合設計の仕事には、まだまだ業務を効率化できる余地があると感じています。たとえば、計量時に手作業が必要な原料があるのですが、それらの原料を使い続けることに必然性があるかを改めて検討していくと、必ずしもその必要がないケースがあるんです。そうやって手間のかかる原料をひとつでも減らすことができれば、作業が効率化され、工場で働く人の負担が減ることになります。小さなステップですが、現場が、ひいては会社が良いほうへと変わっていくことを実感できることが、この仕事の醍醐味のひとつかもしれません。

食の絆を未来へ──持続可能で豊かな社会づくりに貢献できるような企業を目指して

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▲中部支店碧南工場前にて

今後は、私の上司のように工場全体に関する幅広く深い知識を備え、常に改善を提案し続けられる存在になっていきたいですね。会社の成長に貢献するためにも、仕事に対する価値観をどんどんアップデートして、新しいことを積極的に挑戦したいと思っています。

また、これから力を入れてきたいと考えているのが、作業者の教育訓練です。それぞれが担当している業務でミスした場合のリスクについて、当事者が理解できていないケースがあります。客観的な立場から業務の意義や重要性について指導・啓蒙し、意識改革していきたいと考えています。

これから当社に入社してくださる方には、自分と違う価値観を受け入れられるような柔軟な姿勢が必要なのではないかと考えています。考え方は人それぞれです。「こういう価値観を持つべき」と思うより、悩みながら仕事に取り組み、時間をかけて自分の価値観を作ると良いのかと思います。業務の意味を考え、工場の長い歴史の中で培われてきた慣習に対し、新しい視点で向き合える人に入っていただければ、会社はより良くなっていくはずです。

というのも、中部支店は、いま変革の時期を迎えています。ハード面では、事務所を大幅に改築し、一部フリーアドレス制およびワンフロア化を導入しました。以前のレイアウトでは、他の部署と物理的に分けられていて、部署間のコミュニケーションが生まれにくい状態でしたが、現在はすべての部署が同じフロアを共有し、気軽に意見交換できるような環境が整っています。ソフト面に関しては、古い価値観を積極的に見直そうとする動きが社内に芽生えつつあるので、その流れによりいっそう勢いがついていけばと考えているところです。

畜産用飼料の原料には、食品の副産物や残渣物が多く使われています。碧南工場でもたとえばカップ麺などの製造過程で出る製麺屑、胡麻油、お菓子やパンの残渣物などを有効活用しています。そういう側面でSDGsに寄与していると思います。持続可能な社会づくりに貢献できるのも飼料会社で働く魅力のひとつだと言えるでしょう。日々の仕事が食の未来をつくることにもつながる──その点をモチベーションにできる方と是非一緒に働きたいですね。