新しい技術に触れたい、つくりたい。ワクワクする心をかみしめながら集結
フィールドワークをメインとしながら、多様な企業との共同研究・開発案件を進めている大阪大学経済学部・中川ゼミ。当社もかねてより、研究先企業のひとつとして名を連ねてきました。
2018年度に実施された「AIオフィス」プロジェクトには、4年生の東村奎希さん、木村迅さん、金道賢さんと3年生の渡辺いぶきさん、佐々木美都さんが参加することになりました。
東村さん 「『AIオフィス』プロジェクトへの参加を決めた理由は3つあります。1つめは、就職する前に、内定先の業種には関連のない技術に一度触れておきたかったから。2つめは、ベンチャー企業との連携に対する興味。3つめは、オフィスというテーマに引かれたから。3年生のときに組織論を学んだので、どういう仕組みをつくれば一人ひとりの生産性が上がるのかを知りたかったんです」
金さん 「僕は“AIを使って新しいビジネスを生み出す”というプロセスに関心がありました。スタートからゴールまで、学べることがとてつもなく多いのでは、と」
5人に共通していたのは“AIに対する興味”。そのワクワクを実現可能な企画へと導くべく、サポート役となったのはMJEに新卒入社して1年目、経営企画室でIPOや会議の補佐を務める泉良祐です。
泉 「入社して間もないころ、代表の大知からこの話をされまして。正直、社内のこともよく分かっていない状態だったのですが、おもしろそうなプロジェクトだったので、ジョインさせてもらいました。理系の学部出身者としての経験も生かせますし、とにかく、今までにないものをつくるという点に引かれたんです」
12月1日におこなわれた「AIを用いたオフィスの課題解決・ビジネスプランコンテスト」発表をゴールに見据え、未知の世界に足を踏み入れたメンバーたちの7カ月間にわたる挑戦をたどります。
ニーズをつかみたい一心でヒアリングに注力 直前にまさかの企画変更
本プロジェクトの目的は「AIを活用して、オフィスの課題を解決する」製品企画をつくり上げること。
メンバーたちはまず、製品として世に出回っている経費精算のような実用ツールではなく、ゼミ研究で扱っている「イノベーション」をテーマに企画をおこなうことを決めました。
しかし、当初メンバーから出たアイデアは、ユニークでありながら、どこか腑に落ちないものばかり。
渡辺さん 「たとえば、香りと生産性との相性に着目し“そのときの心理状態に合わせた香りを一人ひとりに噴射させることによって、モチベーションアップさせる”というようなアイデアを大枠でつくり、MJEの大知社長や知人の会社員にヒアリングしたんですが……“うーん、おもしろいと思うけど、社会人のニーズとは少しずれているよね”という意見が多かったんです」
学生である自分たちで企画を練っていては、ターゲットに刺さらないものになってしまう。
そう気づいたメンバーは、現場で働く人の生の声を集めることに注力。シフトチェンジしたことで「会社員一人ひとりには公正な評価が必要だ」というひとつの結論にたどり着きます。
東村さん 「効率性だけを追い求めるのではなく、ときにほかの人の業務を手伝うような助け合いの場面も組織には必要だし、評価されるべきものなんじゃないかと。でも、成立させるためのベストな方法が見つからなかったんです。その後、紆余曲折を経て、でき上がったのが、ゲームというエンターテイメント要素をプラスさせた営業マン向けのツールでした」
製品名は「Guild」。営業マンをRPGに登場するキャラクターのように見立てながら、一人ひとりのスキルや性格を可視化。クライアントや人事配置のマッチングに役立てたり、人材育成やキャリア支援の材料として活用する、いわばトップセールスマン育成システムです。
しかし、コンテスト本番3日前。積み上げてきたプランを「白紙に戻す」という苦渋の決断を下しました。どうしてそのような事態になってしまったのでしょうか。
発表テーマは“失敗”に 怖がらずに本番に挑む
手塩にかけて育んできたはずの「Guild」。本番直前にして1から練り直すことになった理由はみんなが抱いていた“もやもや”でした。
木村さん 「技術担当として、このプロジェクトで1番苦しかったのが、実はこの『Guild』でした。人のスキルというあいまいなものを定量化する難しさを感じていて。実現できる範囲で提示した最終形に、自分自身、納得がいかなかった部分は正直ありましたね」
東村さん 「修正しなきゃいけない必要性をどこかでみんな、感じていたのに、どこから手をつければいいのか分からなかったんですよね。でも、ゼミ内で事前発表をしたとき、先生も仲間もイマイチな反応で。そこで、ゼロに戻す決心がつきました」
決意したのは本番3日前。深夜までみんなで考え、絞り出したのは、誰もが経験したことがある「失敗」というテーマでした。
金さん 「製品名は『AIしくじり先生』。ゆとり世代・さとり世代と言われる若手社員、特に新入社員をターゲットにしたアプリです。失敗は成功のもと、とよく言われますが、失敗への恐怖を克服し、次の行動につなげてもらうことが狙いです。
ビジネスモデルの構築を担う戦略担当として、最も難しかったのはCVCA(Customer Value Chain Analysis)を分析し、図にまとめる作業。この製品の価値がどんな顧客に提供されるのかを想定するものなんですが、限られた時間で完成させるのが本当に大変で」
その裏で、自分自身に歯がゆさをにじませていたのは、営業担当の渡辺さんです。
渡辺さん 「テーブルを囲んで、みんなが議論しているとき、私は、アイデアや情報をうまく提案できずにただそこにいるだけで。ブレインとして、本当に役に立てなかったんです。だから、発表はがんばろうと思いました」
コンテスト当日。渡辺さんはメンバーの思いを胸に、プレゼンに挑みました。
社会人チームのなかで堂々3位の健闘!1年目新卒社員が気づかされたこと
もともと人前に立つのが得意ではないと言う渡辺さん。「AIを用いたオフィスの課題解決・ビジネスプランコンテスト」では、いつも以上に緊張したと言います。
渡辺さん 「MJE、中川ゼミとともにコンテストを主催しているのが『BOND×BBT MBA』。そこで学ぶ社会人たちが今回のライバルだったんですが、情報量の差が一目瞭然で。一緒の土俵で戦っているという感じではなかったですね」
当日は、地域課題、業務効率化、働きがい、職場の癒しなど、時事問題から個人に対する課題解決まで幅広い7テーマで発表されました。学生から見た社会人たちの姿は、どのように映ったのでしょうか。
木村さん 「とてつもない向上心と機動力を感じましたね。仕事をしながらタイトスケジュールで挑んでいるのに、どのチームも、滞りなく、抜け目なく企画をつくり上げていたのが驚きでした」
情報量や視点、スキル――圧倒的な差を見せつけられたかのように見えた『AIしくじり先生』。しかし会場での得票数はなんと3位に!その結果に1番驚かされたのは何を隠そう、MJE側のサポート役・泉です。
泉 「実は、直前で変更したこの企画に対して“評価されるのは難しいだろう”と決めつけていました。でも実際はかなりの健闘ぶりで……社会人1年目の、自らの読みの甘さを痛感しました。
また、コンテストで発表されたようなBtoBの製品は“ユーザー個人としての使い勝手はもちろん大事ですが、企業や組織に、どのような効果を与えるのか?そこをシンプルに分かりやすく伝えることも重要“だという視点も学びに。MJEもBtoB向け事業が中心ですし、今後の糧にしていきたいです」
「新規事業の8割は失敗するもの」という考えをベースに挑戦を重ねてきたMJE。奇しくも、今回メンバーが編み出した製品企画も失敗がテーマでした。
MJEは今後も、大阪大学をはじめとする連携先とともに“成功のもと”を生み出し「データマネジメントカンパニー」に一歩一歩近づきたいと考えています。