先輩の退職を機に担当業務が変更。一人で対処しようともがいた日々

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▲吉村の勤務する鹿児島支店の外観

人や組織は流動的で、絶えず変化を続けていくものです。

チームメンバーの異動や転勤、産休・育休や退職──そうした変化に対して、人員補充が行われる場合もあれば、採用計画のタイミングなどにより、現状のメンバーで対応しなければならない場合もあります。

とはいえ、一人がこなせる業務量には限界があるもの。そこで重要になるのが、チームや組織で協力し、ともに知恵を出し合いながら、効率化を図ることです。

みずほ銀行の鹿児島支店で働く吉村は、同僚が転勤したことをきっかけに、業務プロセスの最適化に着意を持ち、同じ九州にある宮崎支店との業務連携に取り組んできました。

「当初は他部署から新しいメンバーが異動してきたのですが、そのメンバーが転勤することになったのです。鹿児島支店には、その業務に精通しているメンバーはもう私以外に誰もいないという状況。ベテランの私が一人でどうにかしなければと最初は必死でしたが、支店間の業務連携によって悩みごとを解決することができました」

吉村が〈みずほ〉に入社したのは1986年のこと。以来、40年近く鹿児島支店で働いてきた吉村にとって、こうした変化への対応は今回が初めてのことではありませんでした。

「地元での就職を希望しており、ご縁があって〈みずほ〉に入社しました。メガバンクという、地元・鹿児島にとどまらない大きな舞台で働けることがうれしくてたまらなかったのを覚えています。

入社後は融資の事務を担当していたのですが、外国為替を担当していた先輩が退職され、私が業務を引き継ぐことになったのです。外国為替の業務がわかるのは当時その先輩しかいなかったので、支店内には教えてくれる人は他にいませんでした。一人ですべてやらなければならない責任感や不安に押しつぶされそうになりながらも、懸命に業務を覚えていきました。

そうして今に至るまで、40年にもわたり外国為替を担当。支店のメンバーが休みのときなど人手が足りない際には融資事務もサポートしつつ、夢中で職務を果たしてきました。

現在は外国為替の業務が本部に集約されたため、営業担当をサポートするカスタマーサービス業務を主に担っています。メンバーの転勤により他にこの業務に精通した人がおらず、私もこれまで担当したことがなかった業務なのでどうしたらよいのか途方に暮れました。もし他の支店との業務連携の話がなければ、今回もいつまでも『自分一人で乗り越えなければならない』と考え、どこかで限界を迎えていたかもしれません」

同じ悩みを抱えている支店を救いたい──試行店として初めて挑んだ業務連携

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▲ともに連携に取り組んだ宮崎支店のメンバーと一緒に(左が吉村)

吉村のもとに、鹿児島支店と宮崎支店間の業務連携の話が舞い込んできたのは、2022年12月のことでした。

「鹿児島支店では人員不足に悩んでいた一方、これまで各支店で担っていた事務業務の一部が本部に集約されることによって、同じ西日本エリアの宮崎支店では人員に余裕が生まれ、むしろ新たな業務を模索している状況だったようです。それを知った西日本エリアの担当常務が、人員不足に悩む鹿児島支店と、人員に余裕がある宮崎支店がともに助け合ってはどうかと、業務連携を提案してくれたのです」 

支店間の業務連携という試みは、鹿児島支店にとっても、そして吉村にとっても今までまったく想像していなかったものでした。 

「これまで鹿児島支店では、その支店の仕事は支店内で対応することが一般的で、遠く離れた他の支店と業務連携することなど思いも至りませんでした。初めての試みだったので、最初は業務連携がどういうものかわからず不安でした。ただでさえ忙しいのに、新しい取り組みを始めることでさらに自分たちの負担が増えるのではないか──そんな心配ばかりしていました。でも、目的を理解してからは、絶対にこのプロジェクトを成功させたいと強く思うようになったのです。その目的というのは、鹿児島支店が試行店となり、同じような悩みを抱えている支店を救う仕組みをつくることです。

これまでずっと担当してきた外国為替の業務から急に不慣れなカスタマーサービス業務を担当することになり、やる気はあるものの自分の知識や作業スピードが追い付かず、落ち込む日々。それが2年近く続き、今まで培われてきた自信とプライドも失いかけ、長い銀行員生活の中で一番つらい時期だと感じていました。これまで自分は長年頑張って業務に取り組み〈みずほ〉に貢献してきたつもりですが、ここに来てなぜこんな仕打ちを受けないといけないのかなと、あんなに誇りをもって働いていた会社が嫌いになりかけたことさえありました。

きっと同じような想いをしながら働いている仲間が全国の支店にもいるにちがいない。鹿児島支店が試行店として成功事例をつくることができ、その取組みを全国に広めていけば、みんなが前向きにいきいきと働けるようになり、〈みずほ〉はもっとすばらしい企業になる。そんな気持ちで業務連携のプロジェクトに挑みました」

こうした意気込みを後押ししたのは、プロジェクトに関わる他のメンバーたちの熱意も大きかったと吉村は話します。 

「鹿児島支店と宮崎支店だけに任せっきりにしようとするのではなく、西日本エリアのメンバーたちも深くプロジェクトに関わり、熱心に支援してくれました。みんなでこのプロジェクトを成功させて、全国に展開できる礎をつくろう──そうやって一丸となり、ともに挑んでいくことにとてもワクワクしました」

お悩み解決にとどまらない効果を実感。魅力的な人たちとの出会いが財産に

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▲木原グループCEO(真ん中)、秋田CCuO(右から2人目)とともに

業務連携プロジェクトが本格的にスタートしたのは、2023年1月。始動に向けて、鹿児島支店では吉村が中心となって準備が進められました。

「最初に取りかかったのが、業務連携のための仕組みをつくること。私たち鹿児島支店が連携したい業務、そして宮崎支店が対応可能な業務、さらに西日本エリアとして試行店に取り組んでもらいたい業務。その3つの観点からすり合わせを行う必要があったため、仕組みをつくる作業はとても大変でした。

それでも前向きに進行できたのは、宮崎支店のメンバー、そしてエリアのメンバーがいつでも協力的な姿勢でコミュニケーションを取ってくれたからです。そのおかげで私たちからも率直に意見を言うことができ、3方にとっての最適解をみんなで追求することができました」 

そうして建設的な話し合いを重ねた結果、まずは主に営業担当のサポート業務を連携することが決まりました。 

「仕組みができた後は、毎月初めに宮崎支店と打ち合わせを行い、不動産担保の再評価や融資先の格付けなど、具体的に連携したい案件について相談しながら決めていきました。宮崎支店にはこちらが依頼した案件を計画通りに丁寧に対応いただき、結果、鹿児島支店の業務もスムーズに回るようになり、営業担当が営業に集中できる環境を整えられるようになりました」

業務連携の効果は、人手不足の解消にとどまらず、予想以上の実りがあったと吉村は語ります。 

「普段の仕事では一切接することがなかった人たちと出会えたことが、何よりの恩恵です。宮崎支店やエリアのメンバーをはじめ、〈みずほ〉のトップである木原社長や、担当常務と話す機会を得るなど、本気で〈みずほ〉をより良くしたいと考えている人たちとの出会いは、私にとってかけがえのない財産となりました。宮崎支店のメンバーとは、このプロジェクト以外にもお互いにノウハウを共有し合い、それぞれの利点を取り入れるなどして、効率化のためのコミュニケーションを深めています。

地方にある支店は、近隣の支店と距離が離れていることもあり、どうしても支店独自のやり方に慣れ、そこに固執してしまいがちです。そのことを課題に感じていたため、他の支店と情報を共有できる関係性を築けたことで、外部の多様な声を取り入れ、支店内の従来のやり方を見直すきっかけにもなりました」

ともに挑み、たどりついた成功──みんなと想いを一つにする大切さ

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▲仕事に充実感を得られるようになった、と語る吉村(左)

他支店との業務連携によってもたらされたさまざまな効果や恩恵。それは吉村のプライベートにも変化をもたらしました。 

「業務連携による効率化のおかげで時間にゆとりが生まれ、今では趣味を楽しめるようになりました。ワークライフバランスが整ったことで、仕事とプライベートの切り替えがうまくできるようになったのです。そうするとメリハリが生まれ、自ずと仕事が楽しいと感じられるようになっていきました」 

仕事に充実感を得られるようになったことで、同僚との接し方が変わり、職場の空気も変わってきたと吉村は話します。

「自分の業務がひっ迫していると、周りの人を手伝うことはできません。そのためチームのみんなが忙しい場合、手伝う余裕のある人が誰もおらず、それぞれが孤立して自分の仕事と向き合うことになってしまいます。業務負担が軽減されたことでチームに余裕が生まれ、自分自身に向けていた視点が周囲へと向くようになり、みんなで組織を良くしようという意識に変わってきたと感じます」 

試行店として初めて挑戦し、大きな成果が得られた業務連携のプロジェクト。それは形式だけ実施しても、決して成功にはたどりつけなかったと吉村は振り返ります。

「一番の要因は、プロジェクトに関わるみんなが同じ方向を向いていたこと。面倒だとか自分には関係ないと思って進めていたとしたら、決して今回の業務連携は成功しなかったと思います。目的をみんなで共有し、独善的でなくお互いのために挑むことが大事なのだと学びました。これからも、ともに課題を解決する姿勢を大切に仕事に取り組んでいきたいと思います。

業務連携はもともと、同じような課題を抱えている支店を救うために始まったプロジェクトです。嬉しいことに、この取組みは社内表彰制度である『みずほアウォード』の2022年度最優秀賞を受賞しました。他の支店からも業務連携に関する問い合わせを受けており、全国に広げるための支援ができればと考えています。

今、以前の私と同じように行き詰まっている仲間がいたら、打開策はきっと見つかると伝えたいです。一人でやろうとせず、みんなでアクションを起こせば、必ず道は開けます。そして、努力し苦難を乗り越えた先には成長した自分の姿があり、また自信を取り戻すことができると思います」 

支店間の連携によって得た成果を、今度は全国の支店に広げていきたい。かつての吉村と同じ悩みを抱える社員に、解決する術があることを知って欲しい──その想いは、きっと実を結ぶはずです。仲間とともに挑めば、想像以上の未来にたどりつけることを、吉村は知っているのだから。 

※ 記載内容は2023年9月時点のものです