充実した業務の中に感じた自分の限界──キャリアを見つめ直し新しい道へ

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働くということ。

それは会社で仕事をすることがすべてではなく、誰もがプライベートとの折り合いをつけながら成り立たせているものだと言えます。そしてキャリアを積むほど、ライフイベントに向き合う機会も自ずと増えるものです。

そうした転機と向き合い、自分らしくより良く働くにはどうすればよいのか。

石川もまた、その答えを探し続けている一人です。最初に仕事の転機が訪れたのは、今から7年ほど前。みずほ銀行の人事部で、グローバル拠点間異動制度(海外拠点の現地社員が拠点間を跨いで異動する制度)の枠組みを構築する業務を担当していたときのことでした。

「会社がグローバル化を推進していくにあたり、海外拠点で働く現地採用の社員を一定期間東京の本部へ派遣する異動制度の体制づくりに携わっていました。労務管理から評価制度の整備、さらには住まいの手配や帯同する家族への対応まで。

ゼロからすべてを考えて構築しなければならない上、日本と海外の法令の両方を順守する必要がありました。想像以上に大変でしたが、仲間と助け合いながら形にしていくことにやりがいを感じていました」

海外から異動してきた社員は新しい職場でいきいきと働けているか、成長につながっているか。社員にもっと寄り添いたいと考えた石川は、自分も海外での就労環境を実際に経験したいという想いを上司に話し、シンガポールへの赴任を実現します。

思い描いたキャリアを順調に歩んでいた石川。しかし帰国後、仕事をする中で思い通りにならない躓きを感じるようになります。

「運用面、海外赴任も経験し、やりきった感がある一方、枠組み通りにいかない難しさ、課題に対して解決策を新たに生み出せない自分に停滞感や限界、もどかしさを感じるようになりました。別の道を探ってみてもよいのではないか──そう考え、自分自身のキャリアを見つめ直すようになったのです。

そこで、上司に声をかけて相談の場を設けてもらうことにしました。上司の助言は『過去の経験を活かせるキャリア』を選択するということ。その言葉をヒントに、人事の経験を活かして人と会社を守るコンプライアンス業務に携わりたいという想いを抱くようになりました」

異動後の不安を乗り越えて。過去の経験はすべて今に活かせることを実感

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▲同僚との集合写真(前列右から3人目が石川)

キャリアの悩みを上司に相談したことがきっかけで、新たな道を見出した石川。希望していたコンプライアンス統括部 海外コンプライアンスチームに配属されることになりました。

「1年目は日本の法令や現地の法令がきちんと順守されているかを確認するために、手続きの作成や枠組みの運営を担いました。自分からコンプライアンスに携わりたいと言ったものの、知識はほとんどない状態からのスタート。わからない言葉に出くわすたび、その場で調べて学びつつ、実務を通じて知識を習得していきました。

そんな努力が報われ、2年目にはアジア・オセアニア地域の担当として、海外拠点や地域の担当者と直接対話し、インシデントの報告を受けたり、それに対する指示を出したりと、現場の運営管理を担当するようになっていました」 

未経験から挑戦したコンプライアンス業務。わからないことばかりでも、周囲の協力によって乗り越えられたと石川は振り返ります。 

「部署には知識や経験が豊富な同僚がたくさんいたため、その都度教えてもらうことができました。チームの連携もとても良く、海外特有の状況にどう対処するかで困ったときでも、関連する各専門分野の担当者に相談できるなど、サポートしてもらえる環境があったことは業務を進める上で大きな支えとなりました」

一つずつ業務を覚え、新しい仕事に慣れていった石川ですが、新しい部署にきて半年ほどは異動したことに不安があったと話します。

「当初はコンプライアンスについてわからないことばかりでしたし、前の部署のほうが要領よく仕事ができたのにと、後ろ向きに感じてしまうこともありました。でも、周りの人に支えられて業務の内容を少しずつ理解していくうちに、仕事がどんどんおもしろくなっていったのです。それは、人事での業務も含め、これまで過去の部署で得たすべての経験が、必ずどこかで活きることに気づいたからでした。

未経験の業務とはいえ、たとえばコミュニケーションの取り方や情報の整理の仕方、改善策の提案など、これまで培ったスキルは別のフィールドでも活かすことができ、別のフィールドで活かすからこそ新たな学びやさらなる成長につながります。現状を変えるために思いきって部署を異動したことで、どんな経験もキャリアを豊かにしてくれるのだと身をもって実感することができました」

一人で100%やり遂げなくていい。仕事と介護の両立を通じて得た新たな気づき

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▲ミーティング中の石川

異動を通じて学んだ、キャリアとの新たな向き合い方。充実した気持ちで業務に取り組んでいた石川に、今度はプライベートでの転機が訪れます。

「きっかけは、コロナ禍で在宅勤務が増え、高齢になった両親と接する機会が増えたこと。両親が以前のような生活を送れていないことに気づきました。シンガポール赴任から帰国し、久しぶりに両親に会ったときにも少し変化を感じていたのですが、そのとき以上に同じ話を繰り返したり、身体的にも不調が表れたりするようになったのです。寄り添ったケアが必要だと感じるようになりました」

仕事の都合など一切かまわずに降りかかる日常生活の問題。働きながら両親のケアをしなければならないという状況の中で、石川は自身のありたい姿について考えるようになります。

「最初はやらなくてはならないことが一気に増えて、とにかく目の前のことを終わらせることに気をとられていました。でも慣れてくると、次第に両親の気持ちを考えられるようになっていきました。両親と一緒に過ごす中で気づいたのは、以前のように話したり動いたりできないことを、本人たちもとても不安に感じているということです。

そのことを理解してからは、本人たちにとって安全・安心な環境をつくりたいと考えるようになり、親のペースや気持ちに寄り添えるようになりました」 

両親の想いを尊重しながらケアをする石川。それを仕事と両立するには、職場の理解や両立を支援する制度も必要です。

「病院への付き添いが必要なときなどは事前にチームメンバーに伝え、フレックス制度を利用しながらその日の業務が完了できるように調整しています。仕事と両親のケア、最初はどちらも完璧にやり遂げたいと思っていましたが、そうはいっても時間は有限なので、その両方を同じ時間内に一人で100%やり切るのはとても無理な話です。

自分ができるメドまで、それが80%だったとしてもここまでやったらとよしと割り切る。これまでの自分と比較せず、今の自分が仕事に向けられる時間・エネルギーのなかで最善を尽くししっかりと仕事をすることで介護とのバランスが取れていると感じます。

仕事も介護も一人では成り立たないものです。自分ひとりで抱え込まず、周りの人や家族に力を貸してもらおう──そういうマインドに変わっていったのです。今は、こうして両親のケアをしながら仕事を続けていられることが本当にありがたく、働き続けられる限り、会社に貢献したいという想いを抱くようになりました」

仕事と人生の転機を成長の糧に。変化を受け入れて芽生えた感謝の想い

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石川は2023年4月から、異動によりリスク統括部 非財務リスクチームにて新しい業務に挑戦しています。

「今はとにかく自分の役割をきちんと果たせるようになることが目標です。思い通りにいかずにがっかりすることもありますが、振り返ってみて思うのは、異動や転機など変化を経験するたびに必ず何かを得られるということ。だから今回の異動も、最終的には次につながる経験ができると信じる気持ちが根底にはあります。

年齢を重ねるにつれて環境が変わることに抵抗を感じてしまいがちですが、年齢を重ねても新しい仕事に挑戦できるのは、とてもありがたいこと。日々新たな意味を見出しながら、自分の職務に取り組んでいます」 

転機が訪れるたび、壁にぶつかりながらも道を切り開いてきた石川。自分と同じような悩みを抱える仲間へ、伝えたい想いがあります。

「介護については、誰もがある年齢になれば同じ症状が起こるというものではなく、人によって進行具合も異なります。そのため誰かと悩みや想いを共有することが難しく、周囲に相談しづらいと感じるかもしれません。でも少し勇気を出して話してみれば、理解してくれる人がたくさんいることにきっと気づくと思います。

〈みずほ〉には、仕事を続けながら家族のケアができる制度が整っており、状況を理解してくれる仲間が会社にたくさんいます。〈みずほ〉のそうした環境を活かして自分に合った働き方を選択し、周囲を巻き込みながら仕事とプライベートの変化に自分なりに向き合ったことで、私自身、多くの気づきが得られました。

介護は、会社の仕事と違い、誰かが見ていて頑張りを評価するわけでもなく、完成やゴールがない世界。一方で、仕事は自己実現の場。まったく異なる2つを同時に行っているからこそ、それぞれの良さが見え、親と向き合う時間の温かさや、働き続けられるありがたさがわかるようになったのです。気負わず変化を受け入れていけば、必ず成長につながっていきます」

働くすべての人に訪れる仕事や人生の転機。大切なのは一人で抱え込んでしまわずに、周りに相談し、力を借りながら向き合い、自分にとっての新たな意味や価値を見出していくこと。 

そのことを学んだ石川は、この先再び転機が訪れたとしても、家族や周囲と対話をしながら、自分はどうありたいのかを大切に考え、行動し続けるはずです。

他の誰でもない、自分らしい人生をより豊かに、より深く描き続けていくために。

※ 記載内容は2023年8月時点のものです