法人営業、二度の育休を経て、グループの将来を担うプロジェクトへ
「将来、自分はいったい何になりたいのか。〈みずほ〉の社員としてどうありたいのか」。 周囲の同僚たちは、目を輝かせながら自分の夢を熱く語っている。ゆくゆくはこの部署に行きたい。出世して支店長、本部部長、役員になりたい。聞こえてくるのは、自信に満ちた声ばかり。 私は……何がしたい?
明確なキャリアビジョンを描けない自分を肯定できず、苦しんだ時期もあった二藤。後に〈みずほ〉の市場バック部門の銀行・信託・証券のグループ一体運営プロジェクトに関わることになろうとは、思ってもいませんでした。
そんな二藤が〈みずほ〉に入社したのは2006年のこと。支店での法人営業からキャリアをスタートさせ、2つの部店で経験を重ねてきました。
二藤 「営業として目標を持って、前向きに取り組んでいました。でも、単に営業目標達成のため仕事をすることに、精神的にも体力的にもだんだん限界を感じるようになっていきました。
というのも、当時は明確なキャリアビジョンを描けていなかったのです。日々の業務に追われるばかりで、『将来、どんな自分でありたいのか』『どの部署でどんな仕事をしたいのか』がわからず、すごく悩んでいました」
入社して10年目となる2015年。二藤に大きな転機が訪れます。
二藤 「当時、すでに営業の現場からは離れ、旧市場事務部(現マーケットビジネスオペレーション部)のデリバティブチームに所属していました。そこに異動した3年目に、私は第一子を出産し、育休を取得しました。その際、育休で席を空ける私を、上司や同僚が嫌な顔ひとつせずに送り出してくれました。
さらに、復職後も温かく迎えてもらえました。そんな職場の方々を見て、ハッと気づいたのです。『まずは目の前で支えてくれる仲間のために、自分ができることをコツコツと返していけばいいじゃないか』と。それからは仕事に対してそれまで以上に主体的に、やりがいを感じながら取り組めるようになり、成果もついてきました」
その後、2020年には2度目の育休を取得した二藤。復職の当日、告げられた配属先は、〈みずほ〉の市場バックオフィス業務の企画を担う、同部署の業務企画チームでした。チームのメンバーは、タイトなスケジュールの中で銀行・信託・証券の3社での一体運営をめざすべく取り組んでいました。
二藤 「復職以前から市場バックの銀行・信託・証券の一体運営化に向けたプロジェクトが動き出していることは知っていました。でも、まさか自分がそこに加わるなんて、夢にも思いませんでした。
復帰直後から期待してもらっていると感じて嬉しかった一方で、それまで大規模なプロジェクトに携わった経験がなく、幼い子どもを二人抱えてのプロジェクト参画に、正直なところ、『自分に務まるだろうか?』と、不安も大きかったです」
3社兼職部のコンプライアンスの整理に尽力。業務効率化の分野でも存在感を発揮
業務企画チームで最初に二藤に与えられた役目は、銀行・信託・証券一体運営に向けて、“銀行代表として、信託・証券2社との兼職に関するコンプライアンス面を整備すること”でした。
二藤 「それまでも大まかな整理は進んでいたのですが、それを実際に運用できるところまで落とし込み、部内の共通ルールとして定めるのが目標でした。
たとえば、銀行と証券会社との間には、利益相反の可能性を排除するための“ファイアウォール規制”と呼ばれる規制が存在します。これは、お客さまの利益を守るための仕組みです。そのため、同じ部署内であっても、お客さまの同意がない限り、お客さまの個人情報は会社を跨いで渡すことができません。そういった点をしっかりとカバーしたルールの整備を、コンプライアンスの担当部署と協働して進めていきました」
同じ〈みずほ〉のグループの中にあっても、これまでの成り立ちや文化も異なる銀行・信託・証券の3社。ルールをすり合わせる作業も一筋縄ではいきません。
幸いだったのは、法務においては、各社で「絶対に守るべきところ」と「譲れるところ」の線引きが明確だったこと。前者の部分を遵守しつつ、実現可能なルールに落とし込む方針のもと、整理を進めていきました。
二藤 「銀行・信託・証券それぞれの実態を整理できたので、他部署の兼職ルールを基にして、当部署に適用できるかたちへと整えていきました。
その過程では、『銀行ではこう考えるけれど、証券ではこういう考え方をする』という具合に、お互いを理解することが欠かせません。異なるカルチャーや考え方に触れる経験はとても新鮮で、視野が広がるのを感じましたし刺激的でした」
コンプライアンスの整備と並行して、自身が旗振り役となって業務効率化にも積極的に取り組んだ二藤。とくに店頭デリバティブの事務を見直し、不要な業務を削減したことで、大幅な効率化の実現に成功しています。
二藤 「統合以前は、銀行と証券との間で売買が成立した場合、最終的に事務部門同士でその内容について確認書類を交換する工程が発生していました。しかし一体運営となり、同一部署内で事務フローが完結するメリットを最大限に活かし、『そもそも工程の省略が可能ではないか』という思い切った発案をして、法律やコンプライアンス面の観点から調整を行ったところ、作業自体を削減することができ、業務効率化につながりました。
それまで当たり前にやっていた業務の進め方を変えるのは、大変なこと。途中でつまずくこともありました。ですが、業務フローを可視化し『どうやったらできるか』をとことん考え続けたことで、最後までやり遂げることができました。
後にこの取り組みは、〈みずほ〉社内の表彰制度である、2021年度のアウォードにも選ばれました。部内他チームや関係部署、そしてプロジェクト参画にあたり背中を押してくれた上司など、たくさんの人の協力があったからこそ実現できたこと。ひとりではできないことでも、社内のメンバーが力を合わせれば、思ってもみない成果につながることを知る良いきっかけになりました」
一体運営はここからが本番。統合の効果を発揮し、どうシナジー効果を生み出すかが課題
プロジェクトでは、法人営業時代の経験も活かしていた二藤。これまでとはまったく違った仕事に、やりがいを感じながら取り組めたと振り返ります。
二藤 「プロジェクトでは、新しいことを取り入れながら、今の時代や環境に即したやり方を自分たちで見つけていく必要がありました。そこには、難しさ、大きなプレッシャーもありましたが、それが良い意味で刺激にもなり、楽しさを感じながら取り組めました」
2020年11月には、銀行・信託・証券での部署名が “マーケットビジネスオペレーション部”へと改められ、それまで別々のオフィスで業務にあたっていた社員が一箇所に結集。連携の効果も見え始めています。
二藤 「グループ内の連携が進んで、それぞれの仕事のやり方への理解が深まれば、互いに良い方法を取り入れるなどして、業務の幅が広がっていくと思います。実際に業務改善につながった成果も見えはじめています。
とはいえ、〈みずほ〉のグループ3社による一体運営はここからが本当のスタート。ルールを作っても、ただ同じ場所で一緒に仕事をしているだけでは意味はありません。ソフトとハードの両面で、一体運営によるシナジー効果をどう生み出していくか。今後は、それが課題だと思います」
2022年7月現在は、マーケットビジネスオペレーション部の運営全体に関わる二藤。企画業務に携わる中で、一体運営プロジェクトで得た気づきや学びが活きていることを実感しています。
二藤 「このプロジェクトで気づいたのは、視野を広げることの大切さです。普段は意識しないと、自分が見えている範囲で物事を考えてしまいがち。気づかないうちに考えが偏り、焦点もずれてしまいます。だから、一緒に仕事をする相手の立場、会社側の視点、お客さまを含む世間一般の視点などの視野を考えられるようになった今回の経験は、企画業務にすごく活きていると思っています。
また企画では、会社がめざす方向性を意識しながら作るのですが、最近は、『会社の方向性はそもそも世の中の流れに合っているのか』『お客さまの真のニーズをとらえているか』と、より広い視点から物事を考えられるようになりました」
自らの変化を実感している二藤。部署のメンバーも、変化を前向きに捉えられる人が徐々に増えてきているといいます。
二藤 「マーケットの移り変わるスピードがとても速く、これまでのやり方が通用しなくなってきました。マーケットビジネスオペレーション部には、そうした変化への対応策を『自分が考えなきゃ』と捉えている人が増えてきています。新たな方法を考えたり、システムを構築したり。プロ意識を持って取り組んでいます」
未来の子どもたちのため、そして恩返しのために──より良い〈みずほ〉をめざして
銀行・信託・証券の一体運営プロジェクトを筆頭に、これまでさまざまな仕事に携わり、多様な人と接してきた二藤。入社当時と今とで、仕事への向き合い方にも変化を感じています。
二藤 「駆け出しのころ、“仕事上の関係は、ギブ&テイクであるべき”と教えられました。でも現時点で、自分が思う正解は、“ギブ&ギブ”。
その考えにいたったのは、自分が知らないところで、たくさんの人に支えられていることに気づいたから。同僚も、上司も、子どもたちも家族も、もちろん、それ以外の人も、こちらから与える前に、すでにたくさん与えてくれているのです。ですから、自分ができることをひたすらやり続ける、“ギブ&ギブ&ギブ……”しちゃうくらいが、ちょうど良いと。
そして、自分のしたことが回り回っていずれ自分に返ってくる。そんな良い循環が、仕事のやりがいにもつながると感じています」
二藤は「今後は〈みずほ〉をより良くしていくための貢献をしていきたい」と未来を見据えています。
二藤 「支店時代にキャリアで悩んだ期間、『何のために働くのか』、『何のために生きるのか』と、考えたことが多くあって。当時は本当に苦しかったです。でも、今はそれを考えるのが大事だったと、思います。
今回の銀信証一体運営も『何のため』なのかを、一人ひとりが考えられることがきっと大切なはず。それはきっと、自分は何のために働き、生きるのかにもつながるはずです。
私の場合は2つ。周囲への恩返しのため、子どもが生きる次世代のために良い会社を残すため。そして〈みずほ〉をより良い会社にすることは、その2つにつながると思っています。〈みずほ〉をより良い会社にすることで、お客さまに新たな価値を提供することができる。また、社内の仲間も働きがいを感じることができ、子どもたちの時代にも良い会社を残していける。そうやって、目の前のことが『何のため』なのかがわかると、働く意義が見えてきます」
こうした想いや考えを今後も積極的発信していくために──考え方に共感してくれる人を少しずつ増やしていきたい。そして、〈みずほ〉がもっと良い方向に進んでいく原動力のひとつになれたらいい。
二藤は、今後もそんな想いのもとで、挑戦を続けていきます。その行動は〈みずほ〉の未来をより良い方向へと、導いてくれるはずです。