新商品「みずほサステナビリティ・リンク・ローンPRO」の誕生

▲左から、今井、角谷、八木

時代の移り変わりによって、企業が求められる形も変容しています。これまでの常識は覆していかねばならないし、当たり前の形を変えていく必要がある。

そんな現代において大きなテーマとなっているのが、SDGsです。ビジネスを通じた持続可能な社会の実現が世界的に望まれる中、〈みずほ〉でも大きな一歩を踏み出しました。それが、2021年10月より取り扱いをスタートした商品「みずほサステナビリティ・リンク・ローン PRO(以下みずほSLL PRO)」です。本商品の特徴は、国際的な原則である「サステナビリティ・リンク・ローン原則」(以下、SLLP)に適合したフレームワークを自社内に作成した点です。

八木 「みずほSLL PROは、サステナブルファイナンス商品のひとつ。企業から〈みずほ〉へ資金調達を依頼いただく際に、その企業ごとのサステナビリティ戦略に沿った野心的な目標を決めてもらい、年に一度、その目標の達成状況に応じて金利が変動するという仕組みの商品です。

同様の商品自体は以前からあったのですが、今回声を大にしてお伝えしたいのは、『お客さまが設定したサステナビリティ目標がSLLPの要件と整合しているかどうかの評価部分を内製化した』という点です」

これまでは銀行以外の外部評価機関に依頼してローンの評価をしてもらっていたものを、すべて〈みずほ〉で行えるような仕組みを作りました。

八木 「外部評価機関から商品の仕組み自体にお墨付きをもらっていますので、都度お伺いを立てて評価してもらう必要がなくなり、お客さまにとって経済的にも時間的にも大きなメリットが生まれました。また、国際的に認められた原則に適合したローン調達ということで、お客さまである企業が自社のサステナブルな取り組み例として対外的にアピールできる点も、メリットと言えるのではないでしょうか」

今井 「そういった意味では、お客さまのサステナビリティ経営を推進できる商品であり、取り組みですね。〈みずほ〉では、これまでお金を貸し出すときは、その企業の財務データをもとに信頼できるかという事業の評価に留まっていたのですが、近年、環境・社会課題などにどうアプローチしているかという姿勢も評価の一部になってきています。

これは〈みずほ〉にとって、価値観の大転換です。大企業だけでなく、中小企業の方々にも利用していただきやすくなりましたし、非常に大きな意味がある商品だと思っています」

各々の想いを胸に、社内兼業として法人業務部「SDGsビジネスデスク」へ

▲虎ノ門支店で本業に邁進する八木

今回、みずほSLL PROを開発したのは、八木、今井、角谷をはじめとする〈みずほ〉で社内兼業に取り組む法人業務部「SDGsビジネスデスク」のメンバー。これは、参加メンバー各々が本業の業務を持ちながら、週に8時間程度を捻出して兼業に充てる、社員のキャリア形成支援のひとつです。

たとえば八木の本業は、みずほ銀行虎ノ門支店の中にある法人営業。SDGsビジネスデスクの一期生として、2年前から兼業を行っています。

八木 「本業では、省庁系の外郭団体や財団・社団法人の方々を相手に、コンサルティングビジネスを行っています。その中で、ここ数年『SDGs』や『ESG』といった話題を本当によく耳にするようになりました。しかも、皆さん課題意識を明確に持っているので、知識も当然深い。これは自分でも勉強していかないと対等に会話ができない、という思いから、SDGsビジネスデスクへの参加を決めました」

同じく、2年前からSDGsビジネスデスクに在籍しているのが今井です。当時はみずほ銀行浜松町支店で、八木と同じく法人営業に携わっていました。

今井 「八木さんと同様に、お客さまとのコミュニケーションの中で『SDGs』がよく話題にのぼるようになってきた中で、個人で調べてある程度の会話はできても、〈みずほ〉としてこんなことができますよ、というご提案ができないことを歯がゆく思っていました。そこで、実際に提案できる商品を作っていきたいという想いを抱き、SDGsビジネスデスクに応募しました」

こうして取り組み始めた兼業でのSDGsやESG分野がとてもおもしろく、もっと深く関わっていきたいと思うようになった今井は、「ジョブ公募制度(部署が部員募集をかけ、その部への異動を希望する社員が応募できる社内制度)」に立候補。希望がかない、みずほリサーチ&テクノロジーズの環境エネルギー第2部に異動となりました。

今井 「現在は主に民間企業向けのコンサルティングを担当しています。気候変動対応等の非財務情報の開示や、気候変動がどの程度企業に影響があるのか定量化する業務を中心に、さまざまな企業のサポートを行っています」

今井の場合は、兼業での経験がきっかけとなって自ら手を挙げて異動しキャリアを切り開いたケース。〈みずほ〉にとって、社員が兼業に取り組むことに大きな意義があることが、この例からも感じ取れます。

一方、角谷はSDGsビジネスデスクが立ち上がった1年後の2021年度からデスクに参加しました。本業では、みずほ銀行プロジェクトファイナンス営業部のグローバル環境室に在籍しています。

角谷 「本業では主に、発電所や道路の建設など大規模インフラ開発に対するファイナンスを実施する際の、環境社会リスク評価を行っています。大規模な開発は、プロジェクトサイトやその周辺の自然環境や地域社会に大きな影響を与える可能性があります。たとえば、建設中・操業中の騒音や振動などです。私の所属するグローバル環境室では、みずほ銀行が融資するプロジェクトにが環境・社会に与える影響に十分に配慮して実施されているかどうかについて『エクエーター原則』という国際的な原則に則って確認・評価しています。

金融機関では近年、私が本業で携わっているような投融資先の環境・社会へのネガティブインパクトの軽減だけでなく、ポジティブインパクトの創出を目指す取り組みが進展しています。環境・社会へのポジティブインパクトを生み出すビジネスに関わって攻守両面からサステナブルな社会の実現に貢献したいと思い、兼業に応募しました」

きっかけは三者三様ですが、それぞれの経験と想いを胸に、サステナブルファイナンス商品の開発へと進んでいったのです。

いざ、新商品開発へ。メンバーが揃い、加速し始めたプロジェクト

▲リスク評価を本業とする角谷の参加がプロジェクトを好転させる

みずほSLL PROのプロジェクトにメインで携わったのは、八木、今井、角谷を含めて5名。

プロジェクトが立ち上がり、法人業務部のSDGsビジネスデスクの募集が開始されたのが2020年2月、みずほSLL PROのもととなるアイデアが生まれたのは5月頃でした。

八木 「キックオフの段階で、〈みずほ〉としてサステナブルファイナンス商品を作ろうという共通認識はありました。その後、海外事例なども参考にしながらプロジェクトメンバー内で議論する中で、当時利用が急拡大していたサステナブルファイナンス商品である『サステナビリティ・リンク・ローンをもっと使いやすくできないか?』という課題に取り組むことになりました」

とはいえ、コンセプトの段階から商品の具体的なアイデアに至るまでは、紆余曲折ありました。一体なにをやったらいいのか。どのように進めていけばいいのか。各メンバーはもちろん、SDGsビジネスデスクとしても商品をつくるのは初めての挑戦。しかも全員本業の業務を抱えながら、霧の中を彷徨うような状況が続きました。

そんな中、ちょうど角谷が加わったタイミングで、事態は好転していきます。

八木 「目指す姿がだんだんと形になっていた反面、そのためにはどんな手続きが必要で、どんな手順で進めていけばいいかが詰められていなかったんです。そこに、リスク管理などに関して本業での知見を持っている角谷さんがプロジェクトに参加してくれたおかげで、一気に話が前に進みはじめました」

角谷 「少し角度は違いますが、本業において環境社会リスク評価業務に携わっているので、業務フロー作成やリスク面の整理などは、プロジェクトのお役に立てたかなと思っています」

角谷の参加が本プロジェクトを成功に導いた大きな布石となりました。各メンバーの強みを生かした役割分担が、パズルのようにぴたりとはまったのです。営業出身の八木と今井は勢いを持ってプロジェクトを進めていく、たとえるならばアクセルの役割。一方、角谷はリスク管理面から問題がないかを俯瞰して確認する、いわばブレーキの役割。他のメンバーもうまく役割分担ができ、プロジェクトが加速しはじめました。

八木 「『お客さまにとって使いやすく、サステナビリティ推進に資する商品を作る』という熱意を、遠回りしながらも前へ進みながら、メンバー全員で大切にしていました」

「商品を作る」って?プロジェクトに次々と立ちはだかる壁

▲兼業をきっかけに本業で新たな道を開拓した今井

プロジェクトがスタートしてからローンチするまで、約1年半。具体的にプロジェクトが進み始めてからも、課題は山積みでした。まず立ちはだかったのが、「商品をどうやって作るのか」ということ。

八木 「常に新しい商品ができているのはもちろん知っていましたが、私たちは営業として商品を販売する側だったので、商品作りの仕組みを学ぶところからのスタートでした。詳細が記された書類はたくさんありますし、資料を熟読するのですが、日々生じる課題を誰に相談したらいいのかがわからない。これがひとつめの壁でした」

角谷 「私は反対に営業の経験がないので、手続の作成プロセスはある程度わかりましたが、それがどのような形になって現場で使われているのかという視点が不足していたように感じました。様々なバックグラウンドのメンバーが集まったからこそ、知恵を寄せ合って一つひとつ解決することが出来たのだと思います」

さらには、今回の一番の売りである「外部評価機関からお墨付きをもらう」という点も、大きなハードルとなりました。

八木 「当然ですが相手はその道のプロですから、知識不足のまま同じ話し合いの土俵に上がるのはリスクが大きすぎると感じながらも、それでもどうにか形にしていきました。外部機関の方に納得してもらいSLL PROへの適合を認めてもらうまでには、本当に大変でした」

今井 「さらに言うと、私たちは全員兼業メンバーでプロジェクトを行っているため、本業が繁忙期に入ったり、部署異動があったりと、100%兼業に専念できない状況もありました。幸い、デスク長やプロジェクトメンバーが寛大に受け止めてくれたのでありがたかったですが、兼業ならではの難しさはありましたね」

加えて、角谷がプロジェクトに参加したのは、ちょうど新型コロナウイルス感染症が蔓延し始めたころ。角谷は、八木にも今井にも直接会うことのないままプロジェクトは進行しました。

角谷 「このプロジェクトに参加するまで八木さんや今井さんと一緒に仕事をしたことはなく、プロジェクト開始後もオンラインでしか会えなかったので、他のメンバーが今どのくらい忙しいかなど見えづらかった点はありました。

また、私たちは兼業ですが、先方は本業の方なので、当然ながらタイムリーな対応が求められます。スピード感を持ってプロジェクトを推進するのも大変でしたね」

兼業者が中心となって進められた〈みずほ〉の新たな挑戦は、決して順風満帆といえるものではありませんでした。しかし、意外なところから光が差すことになるのです。

ストーリー後編に続く