「なぜ自分が仙台拠点に配属されたのか、考えてごらん」

▲みずほ銀行 仙台法人部前にて

2019年に仙台法人部へ、3ヵ店目の異動として着任するまで東北とは無縁だったという伊藤。

伊藤 「正直、最初はあまり深く考えず『会社が決めた異動なんだけどな』ぐらいに思っていました。今まで通り、目の前の業務を一生懸命こなしてキャリアを積んでいく感じなんだろうなと」

そんな彼に着任当初の上司から問いかけられた言葉がありました。

なぜ仙台拠点に配属されたのか、考えてごらん──

伊藤 「『なぜ自分がこの地にいるのか』。そう問われたことは入社して初めてだったので、上司の言葉はすごく胸に残りましたが、すぐには答えがわからない中、担当先を訪問する毎日でした」

──2011年3月11日、宮城県の三陸沖を震源とし、日本国内観測史上最大規模と言われる東日本大震災が発生しました。最大震度は7を観測、その後も続く大きな余震。それだけでなく、岩手県・宮城県・福島県の太平洋沿岸を巨大な津波が襲ったことで、人々の暮らしは甚大な被害を受けました。

 伊藤は、担当する食品会社から東日本大震災被災当時の話を聞きます。

伊藤 「震災当時、自社の工場が津波で流されてしまって、事業が全くできなくなってしまったそうです。しかし、自社の存続すら危ぶまれる危機的状況の中でそのお客さまが選んだ選択は、『助け合い』でした。残った備蓄で地域の方々へ炊き出しや食料の支援を行い、地域の方々の支援を優先したと伺いました。

宮城の方々は、本当に優しくて、そして強いんです。仙台に着任する前は、震災から年月が経っているとはいえまだまだ復興の途上なのかな、と勝手に想像していました。しかし、実際に地域の方々と接した際には、その前向きな姿に驚かされたのです」

地域の方々の前向きな姿と湧き上がるパワーは、次第に、伊藤に「一緒に頑張りたい、自分も力になりたい」と心から思わせるようになります。

伊藤 「ひょっとして、これが自分のこの地で働くことの目的や意義なのかな?と。まだ確信は持てませんでしたが、少しやるべきことが見えてきたような気がしました」

苦難を乗り越えた宮城のパワーに心が動き、共に成長していく

▲会議中の様子

みずほ銀行仙台法人部では、“復興から創生へ”というテーマのもと、宮城県の歩みに加わりその持続的発展に貢献するため、2019年に「仙台宮城活性化プロジェクト」を立ち上げました。

このプロジェクトは、〈みずほ〉が地域に根を下ろすメガバンクとして金融の面でお客さまの事業を支えていくことはもちろんのこと、それだけではなく、それ以上の存在―地域に不可欠な存在として、もっと貢献したいという思いから発足したものです。

〈みずほ〉のネットワークを活用してまちづくり活動への参画を行い、行政や地元住民・企業との連携を図ることで、仙台市の都心再構築、宮城県の産業力強化・集客力アップを目的としており、伊藤は、2020年より同プロジェクトのリーダーを務めています。

伊藤 「震災後、〈みずほ〉では社員参加型のボランティア活動や地域主催イベントの支援、社員食堂での被災地産品を使ったメニュー提供、都内を中心とした物産展など、被災地域の復興に向けてグループ全体で様々な取り組みを行っていました。その取り組みに加えて、現地にいる自分たちだからこそできることをやっていかなくてはいけないと思ってはいたものの、被災を経験していない自分にはまだどこか、自分事として考えられていない感じがしていました」

プロジェクトメンバーに被災を経験した人がいない中で、地域の方々と同じマインドで地域創生へ取り組むためにはどうしたらよいのか、伊藤は葛藤していたのです。

伊藤「被災された方の心に負った傷の大きさは簡単に想像できるようなことではないと思っています。ただ、担当しているお客さまや日々の銀行業務だけに目を向けるのではなく、地域に視野を広げ積極的に足を運ぶことで、街がとても活発に動いていることに気づきました。

例えば、宮城には、まちづくりや地域貢献を本気で考え、それを実行しようと挑戦するパワーを持つ企業・団体がたくさんあります。その、前に進もうとする原動力は、10年前に発生した東日本大震災からの復興を経験している地域だからこそ持つパワーなのかな、と感じることもあります」

また、まちづくりに動いているのは、企業や大人だけでありませんでした。学生など若い世代の人々も、積極的に市のイベントやワークショップに参加しながら、地域を盛り上げようと一生懸命取組んでいるといいます。

伊藤 「自分よりも若い人たちが、自らが住む街をよくしていこうと全力で取り組む姿を目の当たりにし、刺激を受けました。与えられた目の前のことだけに取り組んでいるのではいけないと、気づかされたのです」

地域創生の発展へ向けて、歩み始めた〈みずほ〉のプロジェクト

▲プロジェクトの後輩と青葉通にて

仙台法人部が拠点を構える「青葉通」。そこでは、通りに隣接する企業や商店による地域ネットワーク「青葉通まちづくり協議会」が運営されています。

同会は、青葉通遊歩道を活用した社会実験として、2020年10月23・24日に「青葉通テラス」というイベントを行いました。これは、仙台中心部特有の広い歩道に、芝生をひいて軽食を楽しめるようキッチンカーやテーブルを設置したり、アート空間を演出したりすることで、通りを憩いの場として地域の方に楽しんでもらいながら人の流れを検証するもので、2019年に続き2度目の開催です。

伊藤は、地域の方々の信頼をもっと重ねていき、宮城という土地を盛り上げていくその過程に〈みずほ〉の意見が取り入れられるように頑張っていきたい。そして、地域の人たちの笑顔が見たい──。そんな思いを胸にプロジェクトメンバーと共に参加しました。

伊藤 「開催当時から参加している他企業や地域の方々と比較して、〈みずほ〉としての取り組みはまだまだ後発です。2020年度はイベント当日の運搬や会場の設営・撤去作業、イベント中の子どもが遊べる広場を安全に運営するための警備等、裏方の仕事でのサポートがメインでした。開催までの会議等に参加し、他企業の方々の活発なやりとりを目の当たりにすることで、我々もただ参加するだけでなく、もっと貢献したい、自分たちからも新しい何かを発案したいと思うようになりました」

また、今回のイベントや、仙台市が開催するワークショップや地域の協議会に参加し、仙台市の企業や地域の方々と接していく中で、伊藤はあることに気づきます。

伊藤 「地域の方々や企業は、ただ復興に向き合っているだけではありません。『仙台を東北の顔としてふさわしい街にしていこうよ』、『仙台発のグローバル企業になりたい』など、力強いパワーと結束力を持って「仙台発」「宮城発」を興そうとしています。そして、その思いを実現させるためには現地にいる私たちだからこそ見える課題や、地域の人が求めていることの本質を直に感じ、結果に結びつける必要があると考えたのです」

〈みずほ〉と地域の信頼関係構築はまだまだ途上段階である、そして、それを本気で発展させることは〈みずほ〉の存在意義につながり、仙台拠点にいる〈みずほ〉社員全員で地域創生に熱い想いを持って取り組めたら銀行という枠を超えた関係づくりや地域への貢献ができる。そして、地域ナンバーワンの金融機関になれる。

そう伊藤は確信しています。

宮城のために進み続ける原動力と〈みずほ〉仙台拠点が受け継ぐ意志

▲プロジェクトメンバーと伊藤

伊藤が宮城という地でプロジェクトリーダーとして進み続ける原動力はどこにあるのか。

伊藤 「一番の原動力は、地域の人たちの笑顔が見たい。ただその一心です。愛にあふれる宮城の方々が喜んでくれたら自分も嬉しいんです。そんな思いを持ちながら、日々プロジェクトに取り組んでいます」

また、伊藤の思いは仙台法人部の後輩たちにも伝わり始めています。

伊藤 「入社3年目の気仙沼・南三陸地域を担当している後輩に声をかけ、昨年度から地域活性化プロジェクトに参加してもらっています。当初はただ漠然と参加しているだけだったという彼が、イベントへの参加やお客さまとの交流を通し、意識や行動が変わってきているのを強く感じます。

彼は『その地の歴史を知らないことは失礼になってしまう。知る努力が必要だ』と積極的に宮城県内の色々な場所に足を運ぶようになりました。被災された経営者の方からの相談にも親身に乗り、その姿勢は仕事の成果にもつながっています。彼の『困難な案件もできる限り力になりたい』と奮闘する姿は、私や周囲にとても良い刺激を与えてくれます」

宮城という土地を愛する気持ち、地域の人々を愛する気持ちが育っていくに連れて、〈みずほ〉としての「仙台宮城活性化プロジェクト」も着々と、若い世代も巻き込みながら、できることから歩みを進めるのでした。

伊藤 「『〈みずほ〉だけでできること』は少ないかもしれません。しかし、社内だけでなく、地元の幅広いネットワークを更に強化することで、『〈みずほ〉だからこそできること』はもっとたくさん実現できるはずです。

それが実現できたときに、『この地に〈みずほ〉があってよかった』と感じていただけるのではないかと信じ、日々模索しながら動いています」

なぜ仙台拠点に配属されたのか、考えてごらん──

着任当時の上司の問いかけを、伊藤は今でも覚えています。そして、自分が今携わっている取り組みが、いつか自分が仙台を離れたとしても〈みずほ〉として受け継がれてほしいと願っています。

宮城にとって〈みずほ〉がかけがえのない存在になるよう、地域創生の発展へ向けて伊藤の挑戦は続きます。