専門的なM&Aファイナンスを学びたい──社内兼業への挑戦

▲みずほ銀行 渋谷中央支店渋谷中央第二部 加藤 千紗

東京・渋谷。
駅周辺の再開発が進み、イノベーションやカルチャー発信の中心としても注目される街。

ここには、過去多くのITベンチャー企業がオフィスを構えた歴史もあり、メガベンチャーからこれから世の中を変えていくようなスタートアップまで、多くのベンチャー企業が集まっています。

そんな地で、法人営業に携わるみずほ銀行渋谷中央支店渋谷中央第二部の加藤 千紗は、2020年1月にあるチャンスを掴みました。

それは、M&Aファイナンス営業部での大企業向け買収ファイナンス。
〈みずほ〉で新たに始まった社内兼業で掴んだ仕事でした。

社内兼業は「社員の成長ややりたい仕事を軸に、社内外で通用する価値を向上する」という考え方のもと、〈みずほ〉の幅広いフィールドの中で、やりたい業務に挑戦できる機会や現業では得がたいスキルや経験を得る機会として、2019年に新設された制度です。

その初年度の公募に加藤は手を挙げたのです。

加藤 「お客さまであるベンチャー企業の間で、事業拡大戦略の選択肢が、IPO(新規株式公開)よりも、M&A(企業・事業の合併や買収)がスタンダードになってきているのを感じました。M&Aは今後、色々なお客さまの事業成長の選択肢になると思い、専門的なM&Aファイナンスを学びたいと思ったんです」

この他にも、加藤のM&Aファイナンスを学びたいという思いには、海外支店での経験も大きく影響していました。

もともと入社前から海外勤務に興味のあった加藤でしたが、その気持ちを後押ししたのは初任店で担当したお客さまがきっかけだといいます。

加藤 「初任店の荏原支店には事業で海外進出するお客さまが多く、少子高齢化が続く日本において、企業の海外進出は今後ますます増えていくと感じました。それと同時に、日本でしか働いたことがないことに違和感を覚えたんです。

私は日本が大好きで、日本に貢献したい気持ちが強いんですが、その上で外から日本を見る経験は絶対に役立つと思いました。また、現場に行っていないのに現場のことを語るのは、自分の性に合わないという気持ちもありましたね」

そう考えた加藤は、上司にその思いを伝えます。

エネルギー問題に惹かれてオーストラリアへ。そこで学んだフェアの視点

▲シドニー支店でお世話になった同僚と加藤(右)

キャリア面談で上司からどこの国に行きたいか聞かれた加藤は、資源国で再生可能エネルギー開発に携わってみたいと答えました。

加藤 「上司から海外拠点の中には治安が悪い地域もあるけれど、それでも行く覚悟があるかと問われましたが、それでも『やりたいです』と答えました。そして、赴任先として決まったのがオーストラリアのシドニーでした」

そうして入社4年目に、みずほ銀行シドニー支店にトレーニーとして赴任した加藤。1年強で様々な部署の業務を横断的に経験したといいます。

加藤 「たくさん失敗しながら、多くの人に支えられました。その中で、海外の非日系企業ではM&Aが活発であることや、ファイナンスはキャッシュフローレンディングの考え方が基本であることなどを学びました。再生可能エネルギー案件を通じて資源国ビジネスに触れ、エネルギー問題はグローバルな課題であることも再認識しました」

また、加藤の意識を大きく変えたのが、メンバーが大事にしている価値観でした。

加藤 「多国籍社会のオーストラリアには、様々なバックグラウンドを持ったメンバーがいて、色々な考え方があり、そこに優劣はない。みんなが『フェアでいること』を大事にしていました。そのとき、これまで自分は、みんながある程度の教育を受け、ものの考え方が似ていて、言わなくてもお互いにわかり合えるような、同質的な環境に甘えてコミュニケーションをおろそかにしていたなと気付かされました」

みんながフェアに重きを置くカルチャーの中で大事なのは、お互いのギャップを埋めるのではなく、お互いを理解した上で、組織としてベストパフォーマンスが出せるように努力すること──。

案件によっては、日本の本部の方針とローカルの意向を調整しなければならないこともある中で、加藤は日本から派遣された人間として、自身の役割を再認識したといいます。

加藤 「自分の中に相反する意見をちゃんと内包した上で、多様な人への共感の幅を広げていくように心がけました。全体が見えてないと部分最適に陥りがちで、自分の目線でしかものを語れないと、視座も低くなってしまいます。案件組成の全体を知ることが大事だと実感しました」

業務の全体を俯瞰して、全体最適を意識する。この経験こそ、お客さまと接する営業現場の目線だけでなく、案件の連携先となる本部におけるM&Aファイナンス業務を学びたいという加藤の思いにつながっていったのです。

兼業だから、と甘えず責任もって仕事を全うする──M&Aを自分の強みに

▲社内兼業先のM&Aファイナンス営業部のメンバーと加藤(前列・右)

何事もタイミングだと考える加藤。社内兼業への応募も、「社内兼業がしたいというよりも、学びたいと思った業務がちょうど募集されていたから」といいます。

加藤 「もともと私はすごく準備をしてしまうタイプで、シドニーでは色々な人から『チャンスが来たときに掴むための準備は必要だけど、もう少し走りながら準備しないと。すべてはスモールステップだから』と言われていました。

できたばかりの社内兼業制度は未知数で、兼業によってお客さまや同僚に迷惑をかけないように取り組めるのかと不安もありましたが、もし難しくなったらそのとき考えればいい、まずはやってみようと決意しました」

お客さまへのより良い提案のために自身の専門性向上に取り組みたい。そんな加藤の熱意が伝わり、2020年1月から半年間の社内兼業が始まりました。

加藤 「初めに『トレーニーではないから、ちゃんと兼業の業務にコミットしてほしいし、加藤さんが望むのであればもっと他にも仕事をアサインする』と言ってもらえたことに驚きました。お客さま扱いではなく、自分を一人のメンバーとして、責任ある仕事を任せてもらえたことが本当にありがたかったです」

加藤は支店勤務を中心にしながら営業終了後に週2回兼業先に出勤し、そこで顧客向けの提案資料作成やプレゼンの実施、大型の再編案件のキャッシュフローモデルの作成など、複数の案件を通してM&Aの各フェーズの実務を本格的に経験したといいます。

加藤 「大型の再編案件のキャッシュフローモデルを作るためには、本当に専門スキルが必要で、支店では学び得ないことでした。そうした下地が自分の中にできたことで、支店での仕事にも生かされています。

例えば、M&Aに関するお客さまへの提案は、幅が広がりシャープになってきたと思います。また、本部での考え方が想像できるようになったことで案件のスピード感も上がりましたし、後輩に対しても的確なアドバイスができるようになりました。肌触りがあるのとないのでは全然違いますね」

わからないことは素直に聞き、密にコミュニケーションする加藤の姿勢は、M&Aファイナンス営業部のメンバーにも刺激を与えていました。

加藤 「兼業先の皆さんからも『積極的に案件に取り組んでくれてありがとう。刺激を受けて、互いに相乗効果も発揮できた』と言っていただけたので、すごく大変でしたが、社内兼業に挑戦して本当によかったと思っています」

人生はタイミングの掛け合わせ。そのとき選びたいものを選べる自分でいたい

▲「何事も早すぎることも遅すぎることもない」と語る加藤

社内兼業を経て、大きく成長した加藤。今後も、機会があれば社内兼業に挑戦したいと語ります。

加藤 「仕事でアウトプットしながら、インプットする機会を同時に得られるのはすごく貴重だと思うんです。自分が今必要だと感じる知識を高めることで、お客さまに新たなソリューションが提案できるのであれば、やはりそれはすべきだと思います。今後も、タイミングが合えば、色々な兼業に挑戦してみたいです」

加藤は、〈みずほ〉に入社してからの8年間、人との出会いで自分自身も変化してきたと振り返ります。

加藤 「たくさんの人との出会いの中で様々なことを学び、自分の価値観や考え方も変わっていきました。自分が成長するきっかけとなった様々な体験は、たぶん〈みずほ〉じゃなかったら経験しえなかったことだと感じています。〈みずほ〉に入ってよかったと心から思う瞬間です。

社内でも、社会でも、自分一人の力ではできないことばかりで、人と人との間でしかビジネスは生まれていきません。だからこそ人との関わりを大事にした上で、日本でなのか、世界でなのかまだわからないですが、世の中に貢献していきたいなと思っています」

人との出会いを大切に、そこで得た学びや価値観を一つずつ吸収し、進化を続けてきた加藤。

今後、挑戦してみたいことは何でしょうか。

加藤 「海外トレーニーの経験を踏まえて、海外拠点で〈みずほ〉のビジネスに貢献したいという思いがあり、今はそれに向けて準備をしています。将来的には公共政策大学院でMPP(公共政策修士)の学位を取得したいと思っていますが、今後の自分の気持ちがどこに向かうかは正直分かりません。

もっと若いうちに経験しておけばよかったと思うこともありますが、何事も早すぎることもないし遅すぎることもないし、考えている今がベストなのかなと思っています。自分の人生との色々なタイミングの掛け合わせだと思うので、その時が来たら、それを選択できる自分でありたいですね」

タイミングの掛け合わせによって、自分のキャリアの選択肢はどんどん変わっていく。走りながら考えていけばいい――。

そう語る加藤の瞳には、未来の「なりたい自分」の可能性が無数に広がっているのかもしれません。