「学び」を刷新せよ!キッカケは自己研鑽の再活性化

▲プロジェクトを共に振り返る、藤田(左)と片岡(右)

「すべての社員が自らのキャリアデザインを考えるために「学び」と「挑戦」の基盤が必要だ」――2019年5月、ビジネスモデル変革に取り組むみずほフィナシャルグループ(以下、みずほFG)は、人材育成の重点取組の一つとして新たなデジタルラーニングプラットフォーム『M-Nexus』の導入を掲げました。

グローバルキャリア戦略部で長年人材育成に携わり、自己啓発支援施策を統括する片岡 智久はこのプロジェクトの発端を次のように振り返ります。

片岡「導入から10年が経過していた社内のオンラインラーニングシステムを再活性化するためのUI改善やコンテンツを見直す動きが発端です。当時は比較的ライトな案件としてスタートしました」

ところが、2019年度を前に中期経営計画における新しい人事戦略の検討が進み、コンテンツの刷新だけでなく、社員の学びの体験そのものをいかに変えるか、社員の挑戦をどう後押しするのかが焦点となり、人事戦略における「学びと挑戦のプラットフォーム」の重要性がより高まっていきました。 

片岡「新たな人事戦略の焦点に合わせ、オンラインラーニングだけでなくソーシャルラーニングといわれる『社員同士の学び合い』のためのコミュニケーション機能や、社員の挑戦を後押しする公募の機能も必要となりました。さらに、個人の学習履歴や挑戦結果がデータとして蓄積され、『個々にパーソナライズされたキャリアデザインのためのデジタルラーニングプラットフォーム』が最終的なコンセプトとなりました」

当初検討していた既存のラーニングシステムのリニューアルだけでは、これらの要件は満たせない。片岡は急遽、タレントマネジメント機能のカバー範囲が広い海外製品を検討し始めました。 

片岡「コンペで製品とパートナー企業を選定することになり、急いでRFP(Request for proposal)の作成に着手しました。システム案件は初めてだったので、部内の詳しい先輩に聞きながら、『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』という本を片手に、必死にコンペの準備をしました。最終的に海外のSaaS型プロダクトに決まるまでの一連のプロセスには苦労しました」

これまで経験したことのないシステム導入案件。これは自己啓発担当のメンバーだけでは対応しきれない。そう察知した片岡は、部内でプロジェクトチームの立ち上げに動きます。

フラットな関係性から生まれたプロジェクトの一体感

▲多様な個性をもつプロジェクトメンバーたち

片岡の働きかけを受け、システム全体を俯瞰しプロジェクトを推進するプロジェクトマネージャーとして新たに参画したのが藤田 大介でした。藤田はみずほ銀行の国内支店で法人営業を経験後、10年間IT部門でシステム開発や企画に携わってきたIT分野のスペシャリストです。

藤田「人事部門への異動後は初めての業務が多く、勝手がわからないことばかりでしたが、過去の経験が生かせそうな業務だったので少しホッとしました。しかし、安心したのも束の間でした。案件を引き継いだ際は、プロジェクトの案件化(スケジュール化、予算調整、体制構築)が急務でした」

その後、藤田の調整により多様なメンバーがプロジェクトにアサインされ、グループ各社の担当も含めてチームは最終的に31名となりました。

20代後半から30代を中心に組成された今回のプロジェクトチーム。過去にも様々なシステムプロジェクトに携わってきた藤田ですが、このチームには今までにはない「一体感」を感じていました。

藤田「今回はパートナー企業も含めて同世代のメンバーで構成されていて。フラットな関係性でコミュニケーションができ、すごく新鮮でした」

教育チームでマネジメント業務も担う片岡は、マネージャーとしても大きく成長する機会になったといいます。

片岡「チームの一人ひとりが責任感を持って前向きにタスクに取り組んでくれたと思います。膨大なデータ移行やマニュアルの準備など、途中何回か崩壊しそうになった時もありましたが、それぞれの得意・不得意などを生かしてお互いに補完し合いながら進めていけたのも、メンバーの前向きさや責任感があってこそでした」

開発テストが佳境に入った2020年3月には、コロナウィルスの感染拡大という未曾有の危機が世界を襲いプロジェクトにも大きな影響がありましたが、メンバーの結束は緩むことはありませんでした。

片岡「メンバー全員が不安を抱えながら仕事をしなくてはならない状況になり、感染予防にも配慮しながらプロジェクトを前に進めることには困難が伴いました。その中でもプロジェクトのリーダーとして自分のメッセージはクリアに発信し、何が一番大事なのかを見誤らないように配慮しました。この経験はマネージャーとしても成長する機会になりました」

大小いくつもの危機を乗り越えながら高まっていったメンバーの一体感があったからこそ、プロジェクト開始からわずか半年で、みずほグループ58,000人が利用するシステム導入につながったのです。

M-Nexusで社内カルチャーを変革する。細部までこだわった開発

▲「次世代型組織」「洗練」をテーマにこだわってデザインしたM-Nexusのキービジュアル

今回グループで導入したM-Nexusには、キャリアデザインのための機能が4つあります。まず、2020年5月にリリースした「ラーニング」「スキル資格データベース」、そして同年10月には「公募」「コミュニケーション」の機能が追加予定です。

M-Nexusの特徴の1つが、ユーザーの興味関心や保有資格、受講履歴に合わせてAIからコンテンツが推奨される機能。例えば、テクノロジーについて関心を持っているユーザーにはデジタル関連のコンテンツを、他にも自分に近い世代や職務のユーザーが学んでいるコンテンツといった具合です。そして、ユーザーが学ぶたびにデータが蓄積され、その分レコメンドの精度も向上していきます。

そのためにはユーザーが訪れたくなる充実したコンテンツが不可欠です。片岡は、何十社もの外部コンテンツを実際に受講して厳選し、コンテンツ作りにこだわりました。

片岡「コンテンツを選ぶ際に意識したことが2つあります。1つは社会でトレンドとなっている最先端分野で、その道の第一人者の講義を受けられるコンテンツ。もう1つは、深く学びたい時に一歩踏み込んだ専門性の高いところまで学べるコンテンツ。資格やマネジメント関連、PCスキルなどの幅広いコンテンツを継続的に追加していく予定です」

開発を進める中でもう1つこだわったのが、従来の業務プロセスの改革でした。最も大きなインパクトとなったのが、中央集権から地方分権になったことだと藤田は説明します。

コンテンツ掲載や研修募集など、これまで人事が取りまとめて対応していたプロセスを各部署でできるように権限を渡し、更には人事が都度提供していた社員の資格データ等を各部署の管理者が閲覧できるようにしたのは、これまでにないことです。

藤田「M-NexusのようなSaaS製品って、一つのベストプラクティスを買っているようなものなんです。世界中の人が使っていて、その人たちの多様な要件を満たしているものが機能として備わっている。もしくはUIとなっている。それに合わないものは、僕らがおかしいんじゃないのって思うところもあって。例えば、この申請に上司の承認って本当に必要なの?とか。理由があってこだわっているところは残していけばいいですが、改めて見直すチャンスでもありました」

難しく考えず、何かやってみようと思った時のファーストプレイスへ

人生100年時代を迎え、ビジネス環境が変わり、リカレント教育や学び直しが叫ばれ始めた現代社会。仕事も家庭も多忙な中で、自己研鑽になかなか取り組めないビジネスパーソンも少なくありません。

仕事やプライベートで様々な人と出会うように心がけている片岡は、学びや挑戦へのモチベーションの源泉は、できない自分への悔しさと、それができた時の自分への期待感だと言います。

片岡「専門性の高いスペシャリストと話していると、自分のカバー範囲の狭さや専門的な知識不足を痛感し、もっと色々なことを学ばなければという思いに駆られます。

劣等感というか、できない自分への悔しさを乗り越えて、自分に足りないことができるようになると、仕事の幅が広がり、自然と仕事が次のステップに循環していくと思うんです。そうすると自分に対して期待できる瞬間がある。それが次の学びと挑戦に対するモチベーションにつながっています」

人との出会いで自分自身を省みること。それは、環境とも密接にリンクしています。

藤田「人事に来て気づいたのは、学びや挑戦が身近にある環境が重要だということです。仕事に関係なく情報収集への感度が高い人たちが周りにたくさんいる。そういう環境に入ることで、『自分も学ばないと成長できないし、キャリアを考えるきっかけも生まれない』と考えるようになりました。

忙しくても時間は作ろうと思えば作れるけれど、環境はなかなか作れない。M-Nexusの大事なテーマは『社員同士の学び合い』なんです。うまく一人にならないようにして、『みんなでやろう』と職場で声をかけ合うだけでも動機付けになると思っています」

「学べ」と言われても自己研鑽するのは腰が重い。何をしたらいいかわからないという社員の声を多く聞いてきた片岡は、「一歩踏み出そうと思ったときに、とりあえず見に行ってみようかなと思える学び始めの場にすること」が今後の目標だと目を輝かせます。

片岡「一人ひとりが必要な専門性を高め、今後のキャリアを考え実現するためのツールとして社内に定着させたい。その結果社員が自己研鑽に取り組み、知識・スキルや学習したことが可視化されることで、学んだことや挑戦したことがちゃんと評価され、適材適所の人事運営がなされる会社にしたい。〈みずほ〉を人材という面で強い会社にしたいんです」

そのためにも、M-Nexusを〈みずほ〉の新しい文化にしたい。

藤田「あらゆる部署が自由にコンテンツや公募を作り、社員も自由にやりたいことを探して挑戦した結果として、みんながハッピーだと感じるエコシステムになれば良いと思っています。1年後2年後に、想像していないような使われた方をしていると、僕は成功だったんじゃないかなと思います」

始まったばかりのM-Nexus。〈みずほ〉の人材育成は今、大きく変わろうとしています。