東京レインボープライドで感じた、変化の手ごたえ

▲2019年の東京レインボープライドには、多くの〈みずほ〉社員が家族とともに参加した

2019年4月28日(日)渋谷・代々木公園──

LGBTなどのセクシュアル・マイノリティの存在を社会に広め、性的指向や性自認にかかわらず、すべての人が自分らしく誇りをもって前向きに生きられる社会の実現を目指す、日本最大級のLGBTイベント「東京レインボープライド(TRP)」が開催され、2日間で合計20万人が参加しました。

〈みずほ〉では、2016年からLGBTの社員が安心して働ける職場環境づくりに向けて、人事制度や福利厚生制度の見直しや社内研修を実施し、社内の意識改革に取り組んでいます。その取り組みの一つが、TRPへの協賛です。

2017年からTRPに参加しているみずほFGはこの年、初めて企業ブースを出展しました。〈みずほ〉公式キャラクターとのフリーハグや、みずほ銀行の住宅ローンにおける同性パートナーへの取り組みに関するアンケートなどを展開し、約1,000人がブースに訪れました。

〈みずほ〉の社員リソースグループの一つ、Mizuho LGBT+ & Ally Network(M-LAN)メンバーの村山 佳織は当日の運営スタッフとしてイベントに参加しました。

村山 「2019年のTRPは、企業ブースのスタッフを社員のボランティアで運営することとなり、私も参加しました。30人以上のボランティアが集まったのですが、LGBTに関心がある社員がこんなにたくさんいるんだと、うれしくなりました」

社員リソースグループは、普段の業務では接点がない社員同士が、自分自身と組織の成長に必要だと感じるミッションの下に集まって自主的に活動する、完全ボトムアップ型の社員コミュニティです。

その中でもM-LANは、LGBT+に関する社内の理解を促進することで、誰もが生き生きと働ける多様性に富んだ職場づくりに貢献することを目的に活動しています。村山をはじめとするM-LANのメンバーは、人事部と共に、TRPの企画を作り上げてきました。

同じく、当日のイベントに参加したM-LANの山中 紘子は、TRP当日の様子を笑顔で振り返ります。

山中 「金融機関の商品やサービスは形があるものではないので、様々な人に私たちの取り組みを直接知ってもらえるTRPのような機会は、とても貴重です。

あの日は、中学生の4人組が、学校の課題で〈みずほ〉のLGBTの人たちに対する取り組みについて教えてほしいとブースを訪ねてくれました。興味を持ってくれたことがうれしくて、いろいろお話ししました」

山中と村山は、共にLGBTのアライとしてM-LANやTRPに参加しています。

彼女たちが考える「アライ」とは、どういう存在なのでしょうか。

困っているお客さまの役に立ちたい―CEO提案に込めた信念

▲みずほ銀行M&Aファイナンス営業部 山中 紘子

みずほ銀行M&Aファイナンス営業部で買収ファイナンスに携わる山中は、案件を通じて丁寧にお客さまと向き合うことを信条にしています。そんな山中の思いを一層強くした忘れられない出来事があります。

それはグループの若手社員を対象にした、新規ビジネス創出を目指す約半年間の研修です。山中がこの研修に自ら参加したのは、2016年のことでした。

研修で山中が参加するチームが提案したのが、住宅ローンや生命保険・遺言信託などを同性パートナーがいるお客さま向けにパッケージ化した商品でした。

山中 「社内でLGBTの取り組みが始まったけれど、お客さまには何もできていないのではないか、とチームで議論しました。

日本では法的な婚姻関係を前提とするサービスは、パートナーが同性であるために結婚できない方は利用できません。法律を変えるのは大変ですが、事業会社として、サービス内容を変えることはできるのではないかと考えたのです」

提案内容を検討するにあたり、チームメンバーは全国のLGBT当事者17名にインタビューを行いました。丁寧な調査と綿密な検討の甲斐あって、山中がプレゼンターを務めたチームの提案は高く評価されました。グループCEOの「これ、やってみようよ」という言葉が追い風となり、社内が一気に動き始めました。

当時、日本の金融機関で取り扱う住宅ローンにおいて、家族と共同名義でローンを組むペアローンや、審査に必要な収入額を家族と合算する際の対象となる“家族“に、同性パートナーは含まれていませんでした。その定義を見直し、ローンの選択肢を増やすことで、同性カップルのお客さまがよりニーズに合ったマイホームを購入できるようになります。

提案から約4か月後の2017年7月、みずほ銀行は住宅ローンの収入合算と家族返済における配偶者の定義を変更し、同性パートナーを配偶者と同様に取り扱うことを正式に発表しました。これは邦銀では初めての取り組みでした。

山中 「まさか自分たちの提案をきっかけに商品改定が実現するなんて思ってもみませんでした。ただ、お客さまにも会社にとってもいい提案だという自信はあったので、うれしかったです」

山中はここで、少し表情を引き締めました。

山中 「私たちの提案に『目の付け所がよかったね』という評価は欲しくありませんでした。LGBTのブームに乗っかったと思われるのだけは絶対に嫌だったんです。

困っている人を何とかしたい。LGBTの人を特別に扱うのではなく、何かの事情があって〈みずほ〉の商品を利用できない方がいるなら、使えるようにしたい。ただそれだけです」

これが、山中の強い信念でした。

〈みずほ〉を信頼して来店してくれたお客さまに、笑顔になってほしい

▲みずほ銀行浜田山支店 村山 佳織。タブレットには、LGBTアライであることを示す虹色の〈みずほ〉のアライステッカーが

みずほ銀行浜田山支店で個人のお客さまの資産運用相談を担当する村山が「アライ」という言葉を知ったのは、2017年にLGBT当事者が出演するドキュメンタリー映画「私はワタシ~over the rainbow~」の試写会でのことでした。軽い気持ちで映画を観に行った村山は、その内容に衝撃を受けました。

村山 「LGBTという言葉は知っていましたし、テレビの情報などで理解しているつもりでした。でも、全然違った。この映画には、生々しくて切実な声がたくさん詰まっていました」

試写会の途中、村山は周囲に多くの映画出演者がいることに気付きます。

村山 「その一人が話してくれたのが、性別欄に丸を付けるのがとてもつらいということ。その方は、体と心の性別が一致していない方でした。私の仕事では、お客さまに申込書の性別欄に丸を付けてもらうことがよくあります。

これまで、お客さまの外見で性別を判断して『女性に丸を付けてください』などとご案内していました。わかりやすいようにと思ってやっていたことがお客さまを傷つけていたかもしれないと知り、ショックでした」

この経験がきっかけとなり、村山はアライとしてM-LANに参加することになります。

2019年のTRPの後、村山は奇跡のような出会いを体験しました。

村山 「ある日、支店の窓口にご来店されたお客さまが私のタブレットに貼ってあるアライステッカーを見て『〈みずほ〉には本当にアライの社員がいるんだ』とおっしゃったんです。その方は、LGBTの当事者で、TRPの〈みずほ〉のブースに来てくださった方でした」

そのお客さまは、ブースにいたのは社員ではなく、その日だけ雇ったアルバイトだと思っていたそうです。村山が、ブースの運営はボランティアで参加した社員が担っていたこと、そして、自分もその場にいたことを告げると、お客さまはとても驚き、喜んでくれました。

村山 「その方は、ご自身のセクシュアリティを気にされて、銀行のような、自分や家族のことを相談する場を避けてきたのだそうです。でも〈みずほ〉が企業としてしっかりLGBTのことを考えていて、アライの社員もいるということがわかって、とてもうれしいとおっしゃってくださいました」

そのお客さまは村山を信頼し、ご自身の資産について様々な相談をしてくれました。アライであることを示す虹が、お客さまと村山をつなぐ橋になった瞬間でした。

アライに特別なことは必要ない。できることから始めよう。

▲山中(左)と村山(右)、アライとしてのメッセージ

M-LANでは、社内向けにLGBTへの理解を深めるためのイベントを開催し、メンバーの体験談や思いを発信しています。山中と村山も、アライとして、自らの経験を語ったことがあります。

山中 「私のゲイの友人は、勤務先で『彼女はいるのか、結婚しないのか』という話をされるのが苦痛で転職しました。同じようなことは身近に起きていると思います。

M-LANのイベントに参加する人は、まだ自分が知らない新しいことを知ろうとしている人だと思います。そういう人たちに、たとえ悪気がなくても、何気なく発した言葉が誰かを傷つけているかもしれないことを伝えたいんです」

村山は自ら企画した、映画「私はワタシ」の社内上映会に200人を超える参加者が集まった日のことを、〈みずほ〉に入って一番うれしかった瞬間だと言います。

村山 「私が初めてこの映画を見たときの衝撃を〈みずほ〉の仲間にも感じてほしいと思い、やっと実現できた上映会だったので、胸がいっぱいになりました。

イベントではこの映画と出会った日のことを話したのですが、熱心に話を聴いてくれる参加者、熱意をもって一緒に実現してくれたM-LANの仲間、自分のことを伝えたいと映画に出演した当事者の方、それぞれの思いが一つになったように感じて、思わず涙が出ました」

2人がアライとして大切にしていること──その答えは、奇しくもそっくりでした。

山中 「LGBTアライだからといって意識していることはありません。ただ、私は自分に関わる人が困ったり悲しんだりせず、自分らしく生きていければいいなと思っているだけです。

そのためには、その人がどんなときに困るのか、どんなことをされると傷つくのか、という最低限の知識が必要だと思います。

それはLGBTに限った話ではなく、誰に対しても同じことですよね。特別なことは、何もありません。私は、私に関わる人の“ありのまま“を受け入れられる人間でありたいと思います」

村山 「アライって、LGBTに限ったものでもないし、そんなに大層なものでもないと思うんです。家族や友達、一緒に働く仲間やお客さまは、私にとってみんな『大切な人』です。アライというのは、自分にとって大切な人が安心して自分らしく過ごせるよう、少しだけ気を使える人だと思います。

その気持ちを表現してくれる虹色のグッズでLGBTアライだと伝えることで、誰かが安心してくれるなら、私は喜んで身に着けようと思います。やっていることなんて、そのくらいです」

山中や村山らの活動により、2017年にたった7人で始まったM-LANは、2020年には250人にまでメンバーが増えました。

〈みずほ〉の中にできたアライの輪は、社員一人ひとりの思いを通じて、少しずつ広がっています。