2つのファームを経験。両極端の環境で学んだ、コンサルの基礎と応用

就職活動時、特定の業界や業種を志望できるほど自身の中に熱くなれるものがないと感じていた久井。将来やりたいことが見つかったときに、それを実現できるだけのスキルが習得できる仕事を探していました。

久井 「汎用的で高い水準のビジネススキルを、それも速い成長スピードで身につけるのなら、コンサルはありだなと考えていました。当時、恩師のように慕っていた方からも同様のアドバイスをもらっていて。コンサルと、個人的な趣味から興味があった音楽業界を中心に就活していましたが、将来的に融通が利きそうだという理由でコンサルに絞りました」

最初の就職先として久井が選んだのは、外資系コンサルファームでした。日系の大企業向けの長期的なプロジェクトを担当し、コンサルのイロハを学ぶ中で、だんだんとクライアントの幅を広げ、多様なプロジェクトに挑戦してみたいと思うようになったといいます。

久井 「日系大企業だけでなく、幅広いクライアント・ソリューションの仕事をしてみたくなって。海外にも足を踏み出してみたい、より自分の影響力を行使できる、成長途中のファームに身を置いてみたいという気持ちもありました。

転職先として選んだのは、その3つの条件が揃ったアドバイザーファームです。経営コンサルティング、投資ファンドなどを手がける企業の香港法人に現地採用されるかたちで入社しました。
希望していたとおり、メガバンクからスタートアップまで、幅広い企業のプロジェクトに関わることができました。教科書的な内容以外のことも学べたおかげで、コンサルとしてのスキルをより高次元に持っていくことができたと思います。

同じコンサルファームでも、1社目と2社目はまったく違う世界でした。一方は名の知れたビッグファームで大きなクライアントを相手に大型プロジェクトにじっくり取り組む環境、もう一方はベンチャーのような環境で、多種多様なクライアントを相手に、複数のプロジェクトを掛け持ちしながら、社内活動含めすべてを手造りしていく環境でした。それぞれ吸収できることがたくさんあり、両極端の経験ができたと思っています」

当事者として関われる場を求め新天地へ。選んだのは、嘱託社員という働き方

転職して4年目、30歳という節目を迎えるにあたって、キャリアを見直していたという久井。ちょうどその折、三井物産のビジネスコンサルティング室(以下、ビジコン室)で働く、知人から声がかかりました。 

久井 「コンサル2社を渡り歩く中、コンサルタント『あるある』ではありますが、事業会社やベンチャー企業に入って、事業の当事者として仕事がしてみたいという気持ちになっていきました。そのタイミングで『総合商社内部のコンサル部隊に関心はないか』と声をかけていただいて。

コンサルとして培ってきたスキルを生かしながら、自社グループ内の色々な企業の事業に携われると聞いて、興味を持ちました」

入社するにあたっては、正社員と嘱託社員のふたつの道がありました。無論、どちらを選んでも、業務内容や期待される役割に変わりはありません。両者の違いは、いわばキャリアの考え方の違い。部署間の異動や出向などもしながら三井物産という大きなプラットフォームで活躍するのが正社員、ビジコン室に軸足を置いて有期契約でプロフェッショナルとして活躍するのが嘱託社員というイメージです。

久井 「嘱託社員は、入社年次や社内階級に関係なく、これまでの経歴やスキルに応じて、契約条件を提案されます。期待される役割も明確で、個人としてこれまでの経験や身につけてきたことを評価してもらえていると感じました。

最初は『嘱託って何?』という感じでしたが、自分のパフォーマンス次第で待遇も変わる。それがモチベーションにもなるし、おもしろいと感じたんです」

 また、入社を決めるにあたって、“人”の部分にも惹かれたといいます。

久井 「今回の転職では、小さい子どもがいることもあり、仕事と家族の両方を大事にできる環境を望んでいたんです。面接する中で、ビジコン室には自分と似たバックグラウンドの人がたくさんいながらも、『働きながら、家庭も大事にしたい』と考えている人がとても多いことがわかりました。仕事の水準が高いだけでなく、ワークライフバランスにも理解がある。『この人たちと一緒に働きたい』と強く思うようになりました」

ワンチームで事業を共に作り上げていく。社内の支援組織ならではの醍醐味

コンサルファームと事業会社、異なる立場を経験してきた久井。両者の違いについて、次のように話します。

久井 「コンサルファームの場合、解決すべき課題があらかじめ具体的に決まっているのが普通で、期限も明確です。会議の資料も、細部まで徹底的に作り込んでいかなくてはなりません。

他方、事業会社内の支援組織の場合、『業績が思うように上がらない』『人事制度を改善したい』といった抽象的な課題が投げられて、まずは壁打ちするところから始まることも少なくありません。やわらかめの案でも気軽に提案できますし、期限についても、会社間の契約で合意した期限を死守するというよりは、取り組みの進捗を見ながらスケジュールを柔軟に調節するなど、融通がきくんです。

また、事業会社内の支援組織だからこその魅力を感じているという久井。

久井 「コンサルファームは、過去のプロジェクトの内容をクライアントに対してむやみに話すことはできません。ところが、同じグループ内の場合、合意さえ取れていれば社名や数字なども含め、成功・失敗事例を比較的オープンに共有できるんです。ビジコン室の仲介がきっかけで、グループ企業同士が『一緒に頑張ろう』と意気投合したこともありました。

「プロジェクトで売上を立てる」などのビジネス上のポリティクスに過度に左右されることがないのも、同じグループ内ならでは。すぐに芽が出ないことでも、長期的な視点から本当にやるべきことは何かを考えて取り組めるのも、コンサルファーム時代にはなかったことです。

また、自社の投資先が取引相手ということは、仕事の結果が自分たちに直に跳ね返ってくるということ。事業の当事者として取り組めている感覚がある。グループ企業の方とは、『お客様』としてではなく同じグループに属するいわば『ファミリー』として、ワンチームで一緒に考え、作っていける楽しさがありますね」

さらに、久井は三井物産、ビジコン室だからこそのやりがいも感じているといいます。

久井 「入社2カ月目から手がけた海外の大手企業グループへの出資に関する案件が、経済紙の一面に掲載されたときは感動しました。これまでも大きな案件に関わったことはありましたが、それはあくまで黒子の立場としてであり、自分の会社の名前が出ることはありませんでしたから。自分が関わっているビジネスが新聞などで『三井物産の業績の鍵を握る』などと評価されているのを見ると、気が引き締まると同時に、やりがいも感じますね。

また、大きなプロジェクトを手掛けるたびに、国内外を問わず、社内のネットワークが広がっていくんです。そうやって仲間ができていくのも、ビジコン室だからこそだと感じています」

ここは「違い」を作り出せる場。三井物産、ビジコン室だからできることを

ビジコン室に入って1年とおよそ半年。久井の現在の目標は、モスト・トラステッド・アドバイザー(最も信頼されるアドバイザー)になることだといいます。

久井 「『ビジコン室に何か聞きにいくなら、久井さんに』とグループ企業の人たちから思ってもらえるようになれればと。最近は、自分が室で担当している業界でもあるウェルネスやヘルスケアの社会的なニーズが高まっています。専門性をますます高めていきたいです」

また、三井物産が全社的に推進する、事業経営力強化の取り組みにも参加している久井。グループ企業の経営改善活動以外の領域にも注力したいと話します。

久井 「経営力を高めたいと考える社員を対象とした研修にも携わっていますが、たとえば世界中の企業に出向している社員たちをつないで、互いの成功・失敗経験をシェアできるような環境を整えたり。そうしたコミュニティ作りができればと思っています。

個別のプロジェクトと違って、そういった組織開発は企業に根強く残る部分。すぐに結果は出ないかもしれませんが、根気よく続けていきたいです」

そして、自由にやりたいことができているのは三井物産だからこそ、ビジコン室だからこそと久井は強調します。

久井 「『なんでも好きなことができます』とうたっている企業は多いですが、ビジコン室では本当に何にでも挑戦できる環境があると実感しています。理由はふたつあると思っています。まず、三井物産がありとあらゆる分野でビジネスを展開しており、興味がある業界があれば、グループとしてそこに大抵何かしらの事業・企業を持っていること。もうひとつは、ビジコン室の風土です。

担当する業界やプロジェクトについて、組織からアサインされる部分ももちろんありますが、仕事を開拓していく中で『これをプロジェクト化してもいいですか』と手を挙げると、本当にやらせてもらえる。ビジコン室の挑戦するカルチャーが追い風となって背中を押してくれているのを感じます。

個人として能力・成果を示すことができれば、仕事を選ぶことも、大きなプロジェクトに関わることもできて、『違い』を作り出していくことができる。事業会社の一員として直接的に事業に貢献できること、色々な企業の支援を通じて幅広く新しいことを吸収できること、その両方の良いとこ取りができるのが、ビジコン室だと思います」

コンサルファームで培った問題解決力と、三井物産の力学を掛け合わせながら、久井はこれからも新しい化学反応を創出し続けていきます。価値ある「違い」を、生み出すために。